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第一部 薔薇姫と夕暮れ
第21話 後輩うさぎが怒る
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出掛けだから、慌ただしかったこともあって、何となく受け取ってしまった籐の籠。
これはもしかしなくても、シルさんの手作り弁当ですよね……。
持ちやすい大きさのバスケットだから、パン類でしょうか?
普通はこういうったお弁当は妻が渡す物ではありませんか!?
でも、私はお料理が出来ないんでした……。
「せぇ~んぱぁい。今日はまた、一段と百面相が酷いですけど。あれぇ? それは何ですぅ?」
ティナの能天気で明るい喋り方と人懐こい性格は、これまで同年代の同性と交流がなかった私にとって、燦々と輝く太陽のように眩しく、感じられました。
夜の闇の下でしか、私の世界は色付いて見えませんでした。
日中の太陽の光の下にいても目の前に広がる世界は白黒だったのだから。
そんな世界に彩りを加えてくれたのがティナだったんです。
「これね……」
「お弁当ですよねぇ? バスケットだから、パンですかぁ? ローラ先輩もついにお料理に目覚めたんですねぇ。いいと思いますよぉ」
「それがちょっと違うんですよね。説明すると長くなるのですが……」
ティナは料理が得意なのもあって、ギルドにも手作り弁当を持参しています。
なるべく外食をしない方がお金を貯めやすいのだとも言ってましたね。
見た目がふわふわとした印象を与えるだけで実はしっかりした女の子。
それがティナなんです。
いつも私のお弁当まで作ってくれるのです。
悪いからと断っても作ってくれるので、ありがたいことなのに複雑な気分になってしまいます。
「ついでなんでぇ」と彼女は言うけど、決してそうではないでしょう。
凝った作りのおかず類を見ても手を掛けていると料理が出来ない私にも分かります。
そもそも、私が昼を食べないこともあるのを心配して、作ってくれているのだということを……。
それなのに今日はこうして、違うバスケットを持っているのだから、ちゃんと説明しないといけませんよね?
「つまり、先輩は交際期間がほぼ無いまま、結婚したってことですよねぇ?」
「そうね。そうなるわ」
「ローストビーフをパンで挟むなんて、やるわぁ」などとシルさんの作ってくれたお弁当を高く、評価していたティナです。
ところが、結婚するに至った話を説明すると顔が段々と険しくなった気がします。
一体、どうしたというのでしょうか?
「先輩はそんな結婚でいいんですかぁ?」
「え? 何か、いけないのですか?」
「いやいやいやいや。先輩、結婚ですよぉ? 墓場ではないんですよぉ。もっと夢を見て、素敵なものでないといけませんってばぁ!」
「そ、そうなの?」
お仕事の為の契約結婚とは、さすがに言えません。
それは秘密にしないといけませんし。
でも、なぜ、怒られているんでしょう?
結婚がそういうものだとは知らなかったなんて言ったら、余計に怒られそうだから、やめておいた方が良さそうです。
「分かりました。先輩、今度のお休みに先輩のお家に遊びに行ってもいいですかぁ?」
「へ? 遊びに……ティナが来るのですか?」
「はい。そうですよぉ。その男、あたしが直接、確かめてやりますぅ。先輩にふさわしくなかったら、離婚ですよぉ! 離婚!」
「そ、それは困るんだけど」
こういう状態になったティナはもう止められません。
見た目は愛らしくて、かわいいティナだけど、芯の部分は意外と強情なんです。
こうなってしまったからにはシルさんとちゃんと打ち合わせをしないと!
彼に迷惑を掛けないようにしっかりしないといけませんね。
これはもしかしなくても、シルさんの手作り弁当ですよね……。
持ちやすい大きさのバスケットだから、パン類でしょうか?
普通はこういうったお弁当は妻が渡す物ではありませんか!?
でも、私はお料理が出来ないんでした……。
「せぇ~んぱぁい。今日はまた、一段と百面相が酷いですけど。あれぇ? それは何ですぅ?」
ティナの能天気で明るい喋り方と人懐こい性格は、これまで同年代の同性と交流がなかった私にとって、燦々と輝く太陽のように眩しく、感じられました。
夜の闇の下でしか、私の世界は色付いて見えませんでした。
日中の太陽の光の下にいても目の前に広がる世界は白黒だったのだから。
そんな世界に彩りを加えてくれたのがティナだったんです。
「これね……」
「お弁当ですよねぇ? バスケットだから、パンですかぁ? ローラ先輩もついにお料理に目覚めたんですねぇ。いいと思いますよぉ」
「それがちょっと違うんですよね。説明すると長くなるのですが……」
ティナは料理が得意なのもあって、ギルドにも手作り弁当を持参しています。
なるべく外食をしない方がお金を貯めやすいのだとも言ってましたね。
見た目がふわふわとした印象を与えるだけで実はしっかりした女の子。
それがティナなんです。
いつも私のお弁当まで作ってくれるのです。
悪いからと断っても作ってくれるので、ありがたいことなのに複雑な気分になってしまいます。
「ついでなんでぇ」と彼女は言うけど、決してそうではないでしょう。
凝った作りのおかず類を見ても手を掛けていると料理が出来ない私にも分かります。
そもそも、私が昼を食べないこともあるのを心配して、作ってくれているのだということを……。
それなのに今日はこうして、違うバスケットを持っているのだから、ちゃんと説明しないといけませんよね?
「つまり、先輩は交際期間がほぼ無いまま、結婚したってことですよねぇ?」
「そうね。そうなるわ」
「ローストビーフをパンで挟むなんて、やるわぁ」などとシルさんの作ってくれたお弁当を高く、評価していたティナです。
ところが、結婚するに至った話を説明すると顔が段々と険しくなった気がします。
一体、どうしたというのでしょうか?
「先輩はそんな結婚でいいんですかぁ?」
「え? 何か、いけないのですか?」
「いやいやいやいや。先輩、結婚ですよぉ? 墓場ではないんですよぉ。もっと夢を見て、素敵なものでないといけませんってばぁ!」
「そ、そうなの?」
お仕事の為の契約結婚とは、さすがに言えません。
それは秘密にしないといけませんし。
でも、なぜ、怒られているんでしょう?
結婚がそういうものだとは知らなかったなんて言ったら、余計に怒られそうだから、やめておいた方が良さそうです。
「分かりました。先輩、今度のお休みに先輩のお家に遊びに行ってもいいですかぁ?」
「へ? 遊びに……ティナが来るのですか?」
「はい。そうですよぉ。その男、あたしが直接、確かめてやりますぅ。先輩にふさわしくなかったら、離婚ですよぉ! 離婚!」
「そ、それは困るんだけど」
こういう状態になったティナはもう止められません。
見た目は愛らしくて、かわいいティナだけど、芯の部分は意外と強情なんです。
こうなってしまったからにはシルさんとちゃんと打ち合わせをしないと!
彼に迷惑を掛けないようにしっかりしないといけませんね。
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