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参捨参 厄介事はカエルの顔をしている
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揉め事に首を突っ込みたくないコーネリアスと好奇心旺盛で火中の栗を拾うのが趣味のヤン。
一見すると水と油の関係のように思われがちだが違うからこそ、互いを尊重するいい関係を築けているとも言えた。
コーネリアスは思った。
光汰の時にヤンのように腰の重い自分の手を引っ張っる人間がいたら、少しは変わったのだろうかと……。
「喧嘩っぽいよ」
「そのようだね」
結局のところ、ヤンに手を引かれ、コーネリアスは厄介事になりかねない人だかりへと近付いた。
二人組の少年と一人の男と思われるモノが対峙していた。
十代後半と思しき年頃に見える二人組はコーネリアスが見たところ、言動も自分とあまり変わらないように感じた。
大人になり切れない思春期真っ只中の子供。
コーネリアスがかつての己を評し、零した言葉である。
二人とも腰に剣を佩き、仕立ての良い服を纏っている。
それなりに羽振りのいい勢力に仕官しているのだろうとコーネリアスは判断した。
南東地方特有の訛りも時折、混じる。
コーネリアスがあまりお近づきになりたくないエンディアがあるのも南東である。
二人組の背格好はやや対照的だった。
中肉中背の涼し気な目元の少年と明らかに大柄で厳つい顔立ちの少年だ。
現代日本を生きていた前世――光汰の時も中肉中背だった。
今世においてもそれはあまり変わらず、コーネリアスはとりたてて目立つ背丈ではない。
またも中肉中背でどちらかと言えば、華奢な部類に入る。
しかし、自分とあまり変わらない中肉中背の少年の方が、どう見ても主導権を握っているとコーネリアスは睨んだ。
大柄な少年は常に小柄な少年の判断を頼りにしているように見えたからだ。
「おうおう。てめえよ! どういう了見だ。うちの親父殿が……」
「パン。そういう物言いはよくないな。それではまるで我々が脅しているように聞こえる」
「す、すまねえ」
相手の胸倉を掴まん勢いだった大柄の少年が窘められるような一言で委縮した。
(兄貴分と弟分と言うより、まるで親分と子分だな)
二人組の様子にコーネリアスはそのような感想を抱いた。
彼がそう考えるのも無理はない。
実際、この二人組の関係はコーネリアスが感じたものと似たり寄ったりだからだ。
小柄な涼やかなる少年はジョスラン・ティグル・グリシーヌ。
大柄の柄が悪い少年はマケール・パン・シャンス。
とある伯爵家に仕える将来有望な若き騎士といったところである。
そして、彼らの仕える伯爵はコーネリアスの危惧したお近づきになりたくない国の新興貴族だった。
「しつこいヤツラだケロ」
一方の絡まれた男らしきモノはさも退屈そうにゆったりとした口調で返した。
男らしきと表現したのには理由がある。
口調と声質がそのように感じられるだけではっきりと判別出来ない見た目をしていた。
得物の槍を肩に乗せ、斜に構えた男らしきモノは人ではなかった。
橙色の瞳を収めた大きな目はかなり特徴的だった。
左右がかなり離れており、何より白目にあたる部分がない。
まさにぎょろりとした目と言うべき代物である。
顔の半分を占める口は非常に大きく、人で言えば耳まで裂けた口と表現すべきところだ。
肌は枯葉を思わせる黄みが強いブラウンをしており、体毛が一切ない。
人間大の両生類がそのまま、二足歩行をしていると例えれば、一番分かりやすいだろう。
蛙人と呼ばれる少数民族の亜人だった。
「拙者、しつこいのは嫌いでござるケロ」
グルヌイユの男は感情の全く、読めない顔のまま、場を圧する威圧感を放った。
物見遊山気分で喧嘩が始まるのかと見ていた群衆のほとんどが気に当てられ、呆然自失に陥る。
中には気を失う者まで出る始末だった。
一見すると水と油の関係のように思われがちだが違うからこそ、互いを尊重するいい関係を築けているとも言えた。
コーネリアスは思った。
光汰の時にヤンのように腰の重い自分の手を引っ張っる人間がいたら、少しは変わったのだろうかと……。
「喧嘩っぽいよ」
「そのようだね」
結局のところ、ヤンに手を引かれ、コーネリアスは厄介事になりかねない人だかりへと近付いた。
二人組の少年と一人の男と思われるモノが対峙していた。
十代後半と思しき年頃に見える二人組はコーネリアスが見たところ、言動も自分とあまり変わらないように感じた。
大人になり切れない思春期真っ只中の子供。
コーネリアスがかつての己を評し、零した言葉である。
二人とも腰に剣を佩き、仕立ての良い服を纏っている。
それなりに羽振りのいい勢力に仕官しているのだろうとコーネリアスは判断した。
南東地方特有の訛りも時折、混じる。
コーネリアスがあまりお近づきになりたくないエンディアがあるのも南東である。
二人組の背格好はやや対照的だった。
中肉中背の涼し気な目元の少年と明らかに大柄で厳つい顔立ちの少年だ。
現代日本を生きていた前世――光汰の時も中肉中背だった。
今世においてもそれはあまり変わらず、コーネリアスはとりたてて目立つ背丈ではない。
またも中肉中背でどちらかと言えば、華奢な部類に入る。
しかし、自分とあまり変わらない中肉中背の少年の方が、どう見ても主導権を握っているとコーネリアスは睨んだ。
大柄な少年は常に小柄な少年の判断を頼りにしているように見えたからだ。
「おうおう。てめえよ! どういう了見だ。うちの親父殿が……」
「パン。そういう物言いはよくないな。それではまるで我々が脅しているように聞こえる」
「す、すまねえ」
相手の胸倉を掴まん勢いだった大柄の少年が窘められるような一言で委縮した。
(兄貴分と弟分と言うより、まるで親分と子分だな)
二人組の様子にコーネリアスはそのような感想を抱いた。
彼がそう考えるのも無理はない。
実際、この二人組の関係はコーネリアスが感じたものと似たり寄ったりだからだ。
小柄な涼やかなる少年はジョスラン・ティグル・グリシーヌ。
大柄の柄が悪い少年はマケール・パン・シャンス。
とある伯爵家に仕える将来有望な若き騎士といったところである。
そして、彼らの仕える伯爵はコーネリアスの危惧したお近づきになりたくない国の新興貴族だった。
「しつこいヤツラだケロ」
一方の絡まれた男らしきモノはさも退屈そうにゆったりとした口調で返した。
男らしきと表現したのには理由がある。
口調と声質がそのように感じられるだけではっきりと判別出来ない見た目をしていた。
得物の槍を肩に乗せ、斜に構えた男らしきモノは人ではなかった。
橙色の瞳を収めた大きな目はかなり特徴的だった。
左右がかなり離れており、何より白目にあたる部分がない。
まさにぎょろりとした目と言うべき代物である。
顔の半分を占める口は非常に大きく、人で言えば耳まで裂けた口と表現すべきところだ。
肌は枯葉を思わせる黄みが強いブラウンをしており、体毛が一切ない。
人間大の両生類がそのまま、二足歩行をしていると例えれば、一番分かりやすいだろう。
蛙人と呼ばれる少数民族の亜人だった。
「拙者、しつこいのは嫌いでござるケロ」
グルヌイユの男は感情の全く、読めない顔のまま、場を圧する威圧感を放った。
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中には気を失う者まで出る始末だった。
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