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番外編

使用人達の言い訳

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【アイリーン誘拐2回目の直後】

「さ、最近アイリーン様が攫われまくってる気がするのはわたしだけ?」

「いや、間違ってないぞ」

「あぁ」

 周囲の使用人達は主人がいない今、1人の使用人の言葉に深く頷いていた。

 そもそものことの発端は、アイリーン様を森のプールへ案内したこと。

 最初にできたプールには、アイリーン様を不埒な目的で見にくる他所からの旅人が増えた為にやむなく森へと移したのだ。後は、ただ単にこの領地に活気を与えてくれたアイリーン様に恩返しの意味だった。

 屋根無しにしたのは自然を味わってもらいたかったから。もちろん毎日掃除もしたし、誰も来ないように目を光らせていた。

 王族の警護も優しく思えるほど徹底した警護網を敷いていたのだ。まさか、まさか、侵入者が他種族とは。

 もうこれ無理じゃね? というのが使用人達の総意であった。後はアイリーンの両親にそのことを伝えてお叱りを受けるだけ。

 クビになるかもしれない。いや、下手すると物理的に首が飛ぶかもしれない。使用人達は恐れながら報告し、返事を待った。

「正直に言うと許し難いわ。でも、貴方達の行動が全て悪かったわけではないの。今回は虎族と龍族のいざこざに巻き込まれただけなのよ」

「だ、大丈夫なのか?」

 あわあわする主人と、何故か冷静な夫人に使用人一同はポカンと口を開けた。

"もしかして、首チョンパは逃れたの?"というのが使用人達の心の声だ。命の危機から脱却できたのだから、涙を流す者もいた。

「やぁねぇ、そんなに酷い人間ではないわよ」

 笑う夫人だったが、以前自分が攫われそうになった時、正当防衛と言ってボコボコにしていた。そして、実はここにいる全員が夫人によって特別に訓練を受けたエリート達。
 
 合格をもらうまでに、命の危機に何度脅かされたか……王族だと舐めていた者達は、ことごとくぶっ潰され、更生させられたのだ。

 ちなみに、隣であわあわしている夫もその1番の例である。昔は野性味あふれるイケイケだったのが、今や夫人の前では見る影もなく……外ではイケイケなのだけど。

「あなた、アイリーンは大丈夫ですわ。だってわたくしの娘ですから!」

 その言葉に、その場にいた全員が納得した。

"確かに、このの娘ならなんとかなる気がする!"と。

 その場にアイリーンがいたなら、すぐさま竹刀を持ってきて全員の頭をかち割っていただろうーー
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