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第49話「思い」
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烏丸は竜太と立華の元を離れてフォンツに走って向かう。
楓の試合を最後まで目を離さなかった烏丸は向かう方向そして、進める足取りに迷いまなかった。
楓を探すため走り出す烏丸は思う。
◇
空っぽになった私からもう奪われるものなんて何もない。
生きる目標も無くなった。戻る国も無くなった。住む場所も無くなった。何もかも全部なくなった。
崩壊したフルーラを逃げるように離れた私は気がつけば地上に出ていた。
母に小さい頃から地上はヴァンパイアを殺す人間もいるから危険だと言われていたので今まで一度もゲートにすら近づいたことがなかった。
だから、私はこの時初めて地上に来た。
ゲートは地下通路につながっており通路をしばらく歩いていると暗闇の中に隙間から光が差しているのが見えた。何かを期待していたわけではないが引き寄せられるようにその光のもとへ向かってみると目の前には人間の世界が広がっていた。初めて見る家々、自動車、そして本物の青い空。
時刻は夜明け前で遥か遠くには薄明るい光がゆっくりと地上を包み込もうとしているた。
ヴァンパイアは地上の陽の光を浴びると苦しまずに死ねる。
ふとそんな事が頭をよぎった。
ヴァンパイアの世界では最も苦しむこと無く自殺できる方法としてよく知られていることだ。
そんな朝日が時間とともに登る。そして、遠くの家々の照らし出し、ゆっくりと地面を這う光が私の事を迎えに来るように少しずつ近づいてくる。
もう少しで楽になれるんだ。
そう思った時だった、誰かが私に話しかけていることに気がついた。
来たときには誰もいないと思っていたはずだけど、人間に見つかったのだろうか?
このとき私は驚くほど冷静だった。人間に殺されるのもいいか。そんなことさえ思っていた。
こんな人生を送ってきた私の最期くらい選ばせてほしかったけど、この世から消えることができるならもうなんでもいい。
今更慌てる必要もないと思った私は声のする方を振り向いた。
そこには白髪交じりの白衣を来た初老の男性が立っていた。私に話しかけたのはこの人間らしい。
彼は名前を大垣と名乗った。彼は人間なのにヴァンパイアを目の前にしても全く動じないどころか目を細めて私に向かってやさしく微笑んだ。
「大切な命を自ら断ってしまうのかい?」
不思議だった。彼と会話したのはこのときが初めてのはずなのになぜか話していて安心する。まるで、温かい光に包み込まれるようなそんな気分だった。
それから、私と大垣という人間は少しの会話をした。
彼はモラドと言う組織の代表をしているらしい。モラドの目的は人間とヴァンパイアの共存を目指し平和な世界を実現するということを言った。
正直、私は人間に対して憎悪もない。別に私達の食料のために存在している生物だと思ったこともない。かといって、仲良くしたいと思っているわけでもない。ただ、どこにも帰る場所がない私に大垣は言った。
「君の命がもっと輝ける場所を私は提供できる。その命を捨てるのなら歴史が変わる瞬間を私達と一緒に目の当たりにしてから考え直してはどうかな?」
「なんで私なんかにそんな事言うんですか?」
「君は心優しい子だ。私は何人ものヴァンパイアと話してきた、だから君の目を見ればわかる。君は大変な苦労をして今ここに立っているんだろう?」
他人の目を見てその人の感情や考えてることが理解できるわけがない。そう思っていた。しかし、私は彼と今初めて会ったはずなのに私の今まで生きてきた歴史をすべて知っているかのように思えた。
「一緒に来ないか? 私は君を一人のヴァンパイアとして必要としている」
彼はヴァンパイアの私に手を差し伸べた。手袋をしているわけではない、武器を携帯しているわけでもない。そこにあるのは生身の人間の温かい手だった。
人の前で泣くなんてだらしない。だから、涙なんか流さない。…はずだった、この時だろう自分が泣けるなんて初めて知ったのは。
私は生まれてはじめて会った人間の前で大粒の涙を流していた。
そして、初めてだった。金でもない、偽の愛でもない自分の中身を認めてもらえたのは。
私はこの日からモラドの一員になった。
モラドでは立華というガキとよく任務をこなすようになった。
立華のことはどうでもいいけどその立華を介してモラドでは多くの人間やヴァンパイアと出会ってきた。そこで会う人間やヴァンパイアは私が今まで出会ってきた2種とはまるで違う存在だった。
それは互いが互いを受け入れて全く違う生物として生まれたのにもかかわず、まるで家族のように接していることだった。
周りの皆は私みたいな性格の悪い新入りに優しくしてくれる。そんな優しさを裏切るように私は自分の過去のことを誰にも一切話したことがなかった。いや、こんな惨めな過去を持っているなんて知られるのが恥ずかしかったからかもしれない。だから、モラドの皆に重い話はしたくなかった。
だから、皆が寝静まった深夜になると一人になりたかった。周りの人間、ヴァンパイアとの関係はすごく良いと思ってる。でも、良いからこそ本音で話せない自分がどこかにいて自分を偽っているように感じていた。
深夜に一人でいると、ふと仲間に裏切られたらどうしよう。と、そんなことを考えてしまう。
今の生活がたった一つの出来事で雪崩のように今まで積み上げてきたものが手元から消えてなくなることだってありえる。
自分が信用していても母親が私を殺そうとしたようにそんな日がいずれ来るんじゃないかって。いや、そんな事あるはずがない…。なんて、一人でくだらない悩みを抱えて堂々巡りしていた。
いつものように私が深夜に外に出ていると私の元へやってくるヴァンパイアがいた。
でも、その一人のヴァンパイアが私の心を開いてくれた。
彼は混血のヴァンパイアでモラドが必死に守り抜こうとしている存在だった。
初めは「こんなもやしが?」と思ったけど彼と話していくうちに何故かもっと自分を出して話してもいいかもしれないと思うようになった。きっと、彼の丁寧に寄り添うような性格が私にそうさせたのかも知れない。
少し調子に乗ってしまったような気がしたけど私は、生まれてはじめて自分の過去の出来事や生い立ちについて他人に話した。初めて、自分の欠点をさらけ出した。
絶対に引くだろうし、こんな話誰も訊きたくない。はじめはそう思った。でも、彼は違った。むしろ、私のことを「すごい」という単純な言葉で表したけど、その言葉はその単語が意味する物以外の内容を含んでいるように思わせるほど彼の反応は正直だった。
彼に自分の事を話して初めてわかった。自分が自分でいることを。そして、過去という自分を含めて自分という存在を受け入れたいって。
だから、彼は私にとって特別な存在になった。
決して、彼を辛い目には合わせたりしない。絶対守り切るって。
だから無事でいて。楓!
楓の試合を最後まで目を離さなかった烏丸は向かう方向そして、進める足取りに迷いまなかった。
楓を探すため走り出す烏丸は思う。
◇
空っぽになった私からもう奪われるものなんて何もない。
生きる目標も無くなった。戻る国も無くなった。住む場所も無くなった。何もかも全部なくなった。
崩壊したフルーラを逃げるように離れた私は気がつけば地上に出ていた。
母に小さい頃から地上はヴァンパイアを殺す人間もいるから危険だと言われていたので今まで一度もゲートにすら近づいたことがなかった。
だから、私はこの時初めて地上に来た。
ゲートは地下通路につながっており通路をしばらく歩いていると暗闇の中に隙間から光が差しているのが見えた。何かを期待していたわけではないが引き寄せられるようにその光のもとへ向かってみると目の前には人間の世界が広がっていた。初めて見る家々、自動車、そして本物の青い空。
時刻は夜明け前で遥か遠くには薄明るい光がゆっくりと地上を包み込もうとしているた。
ヴァンパイアは地上の陽の光を浴びると苦しまずに死ねる。
ふとそんな事が頭をよぎった。
ヴァンパイアの世界では最も苦しむこと無く自殺できる方法としてよく知られていることだ。
そんな朝日が時間とともに登る。そして、遠くの家々の照らし出し、ゆっくりと地面を這う光が私の事を迎えに来るように少しずつ近づいてくる。
もう少しで楽になれるんだ。
そう思った時だった、誰かが私に話しかけていることに気がついた。
来たときには誰もいないと思っていたはずだけど、人間に見つかったのだろうか?
このとき私は驚くほど冷静だった。人間に殺されるのもいいか。そんなことさえ思っていた。
こんな人生を送ってきた私の最期くらい選ばせてほしかったけど、この世から消えることができるならもうなんでもいい。
今更慌てる必要もないと思った私は声のする方を振り向いた。
そこには白髪交じりの白衣を来た初老の男性が立っていた。私に話しかけたのはこの人間らしい。
彼は名前を大垣と名乗った。彼は人間なのにヴァンパイアを目の前にしても全く動じないどころか目を細めて私に向かってやさしく微笑んだ。
「大切な命を自ら断ってしまうのかい?」
不思議だった。彼と会話したのはこのときが初めてのはずなのになぜか話していて安心する。まるで、温かい光に包み込まれるようなそんな気分だった。
それから、私と大垣という人間は少しの会話をした。
彼はモラドと言う組織の代表をしているらしい。モラドの目的は人間とヴァンパイアの共存を目指し平和な世界を実現するということを言った。
正直、私は人間に対して憎悪もない。別に私達の食料のために存在している生物だと思ったこともない。かといって、仲良くしたいと思っているわけでもない。ただ、どこにも帰る場所がない私に大垣は言った。
「君の命がもっと輝ける場所を私は提供できる。その命を捨てるのなら歴史が変わる瞬間を私達と一緒に目の当たりにしてから考え直してはどうかな?」
「なんで私なんかにそんな事言うんですか?」
「君は心優しい子だ。私は何人ものヴァンパイアと話してきた、だから君の目を見ればわかる。君は大変な苦労をして今ここに立っているんだろう?」
他人の目を見てその人の感情や考えてることが理解できるわけがない。そう思っていた。しかし、私は彼と今初めて会ったはずなのに私の今まで生きてきた歴史をすべて知っているかのように思えた。
「一緒に来ないか? 私は君を一人のヴァンパイアとして必要としている」
彼はヴァンパイアの私に手を差し伸べた。手袋をしているわけではない、武器を携帯しているわけでもない。そこにあるのは生身の人間の温かい手だった。
人の前で泣くなんてだらしない。だから、涙なんか流さない。…はずだった、この時だろう自分が泣けるなんて初めて知ったのは。
私は生まれてはじめて会った人間の前で大粒の涙を流していた。
そして、初めてだった。金でもない、偽の愛でもない自分の中身を認めてもらえたのは。
私はこの日からモラドの一員になった。
モラドでは立華というガキとよく任務をこなすようになった。
立華のことはどうでもいいけどその立華を介してモラドでは多くの人間やヴァンパイアと出会ってきた。そこで会う人間やヴァンパイアは私が今まで出会ってきた2種とはまるで違う存在だった。
それは互いが互いを受け入れて全く違う生物として生まれたのにもかかわず、まるで家族のように接していることだった。
周りの皆は私みたいな性格の悪い新入りに優しくしてくれる。そんな優しさを裏切るように私は自分の過去のことを誰にも一切話したことがなかった。いや、こんな惨めな過去を持っているなんて知られるのが恥ずかしかったからかもしれない。だから、モラドの皆に重い話はしたくなかった。
だから、皆が寝静まった深夜になると一人になりたかった。周りの人間、ヴァンパイアとの関係はすごく良いと思ってる。でも、良いからこそ本音で話せない自分がどこかにいて自分を偽っているように感じていた。
深夜に一人でいると、ふと仲間に裏切られたらどうしよう。と、そんなことを考えてしまう。
今の生活がたった一つの出来事で雪崩のように今まで積み上げてきたものが手元から消えてなくなることだってありえる。
自分が信用していても母親が私を殺そうとしたようにそんな日がいずれ来るんじゃないかって。いや、そんな事あるはずがない…。なんて、一人でくだらない悩みを抱えて堂々巡りしていた。
いつものように私が深夜に外に出ていると私の元へやってくるヴァンパイアがいた。
でも、その一人のヴァンパイアが私の心を開いてくれた。
彼は混血のヴァンパイアでモラドが必死に守り抜こうとしている存在だった。
初めは「こんなもやしが?」と思ったけど彼と話していくうちに何故かもっと自分を出して話してもいいかもしれないと思うようになった。きっと、彼の丁寧に寄り添うような性格が私にそうさせたのかも知れない。
少し調子に乗ってしまったような気がしたけど私は、生まれてはじめて自分の過去の出来事や生い立ちについて他人に話した。初めて、自分の欠点をさらけ出した。
絶対に引くだろうし、こんな話誰も訊きたくない。はじめはそう思った。でも、彼は違った。むしろ、私のことを「すごい」という単純な言葉で表したけど、その言葉はその単語が意味する物以外の内容を含んでいるように思わせるほど彼の反応は正直だった。
彼に自分の事を話して初めてわかった。自分が自分でいることを。そして、過去という自分を含めて自分という存在を受け入れたいって。
だから、彼は私にとって特別な存在になった。
決して、彼を辛い目には合わせたりしない。絶対守り切るって。
だから無事でいて。楓!
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