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第69話「決別」
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3人のグラスがカチンと音を立ててきれいな音を立てた。これからはヴァンパイアの時間。ヴァンパイア同士の宴が始まることをそれは告げた。
「二人共潰れるまで飲まないでくださいよ」
楓が念の為二人に注意して二人は少年のように「「はーい」」と声を揃えて言った。察しの良い楓はその返事を真に受けることはなかった。その証拠に前回同様にわんこそばの早食いのように二人の目の前には次から次へと波波に赤い液体が注がれたグラスが置かれて、それを口に運んでいるのを楓は見ていたからだ。
「ジャンセンも見てないで飲めよ。そんなとこで突っ立っててもつまんないだろ」
鬼竜は注がれたグラスをジャンセンの目の前に置いた。
「それじゃあ、お言葉に甘えて」
◇
時は楓や竜太がルーロを去ったあとの事、男は闘技場で倒れているキースを抱えて地下世界アガルタの最東端の国バスティニアのALPHAのアジトに来ていた。
「キースのおっちゃんやられたでぇ~」
のんきに鼻歌でも歌うように男が扉を足で蹴って部屋の中に入ると中にはテーブルに4人の白い隊服を身にまとったヴァンパイアが座っていた。
その中でマスクで口元を隠しているヴァンパイアがその男の方を見た。外見的にも一番マトモそうな外見をしている。
「西園寺お前は静かに部屋にも入れないのか?」
「だって、キースが死んでしまうかもしれんのよ? そんな悠長なことしてられへんわ。逆に冷静なお前たちは怖いわ。仲間の命をなんだと思ってるん?」
「弱いから負けるだけだ」
西園寺は呆れたように「はいはい」と頷いてからマスクをした男に「神原はどこ?」と問うとマスクをした男は西園寺が入ってきたドアの反対方向にあるドアを指さした。
「ああ、実験室か。てか、ケニーのやつ姿が見えないと思ったらまたタトゥー入れとんか? あいつ暇さえあれば体いじりやがってただのドMやろ。まあええわ、そんなことより桐ケ谷さっさと神原呼んでくれや」
マスクをした桐ヶ谷と呼ばれたヴァンパイアは西園寺の代わりにドアをノックする。桐ケ谷の指がドアに触れた瞬間ドアが勢いよく開いて一人の骨ばった体をして身長の高い桐ケ谷の胸元ほどの身長で白衣を着ている男が出てきた。
「神原、実験体がほしいって言うとったやろ。これもう死にそうやから自由に使ってええで。ヴァンパイアとしては上物や」
西園寺は「ほらよ」と神原と呼ばれた細くて小さい男にキースを雑に渡した。
男は自分の体より大きいキースを肩に担ぐと2,3歩ほどよろついてなんとかバランスを保ってから言った。
「あ、あ、ありがとうございます。大切に使わせていただきます」
キースを抱えて後方に倒れそうなほどにのけぞっていたがなんとか西園寺に頭を下げるだけの筋力を使って上半身を倒し礼を言った。
「ほんでぇ神原ぁ。強化薬の方は成功したんか?」
西園寺はまるで期待していないように神原に言った。神原は肩に担いだキースを扉の向こうの部屋の机の上に下ろすと改めて首を横に振って答えた。
「いえ、この通りです。皆さんの分は完成していますがまだ成功率は低く量産できておりません」
部屋の中を覗いて西園寺はため息を吐いた。
西園寺の目の前に広がっているのは人一人分が入れるほどのカプセルに何体ものヴァンパイアが頭上からぶら下がっている酸素マスクを付けて眠っている。その中の殆どが体が半分溶けて気化し始めて湯気のようなものが体から立っている死体や体が解けてしまって元のヴァンパイアとしての形を留めていないものばかりだった。
「気が遠くなるなぁ全く。あの混血と俺ら覗いてどいつもこいつも適合できないやつばっかりや…。おお、そうやった! 忘れとったわ」
一度うなだれた西園寺が何かを思い出したようで再び顔を上げた。
「みんな聞いてくれやキースが良い素材スカウトしたんよぉ。俺らと混血を覗いて初の適合者になるかもしれんでぇ」
神原は媚びるように手をこねながら西園寺を見上げる。
「あの、スカウトというのは?」
「元人間のヴァンパイアや。しかも、ヴァンパイアの適性も最高レベルと見た。キースのおっちゃんはちゃんと体張ってこうやって仕事しとんや。立派なもんやで全く」
西園寺は指を鳴らして神原を指差した。
「まっててやぁ。キースが満月の夜に迎えに行くって約束したんやそれが今夜。だから俺が代わりに連れて来たるわ。だから、薬もう一個死んでも作っとけよ」
神原は怯えるように両手を体にピタリと付けて深々とお辞儀をした。
「は、はい。必ず作ってみせます」
西園寺の大きな声を聞きつけて扉の向こうの闇から声が聞こえた。声だけで姿は見えない。その声は男性にしては高いように思えるし女性にしては低いように感じる声音だった。
「それって僕の部下になる子なの?」
それはのんきに間延びしたような声だった。
「ケニー。お前の部下なんかにしたら体中気色悪い入れ墨だらけにされてまうやろが。ワイの部下につけたる」
闇の中から聞こえたケニーと呼ばれたヴァンパイアは「あっそ」と吐き捨てて扉を蹴って締めた。バタンと大きな音が部屋に広がる。
「何やねんアイツ。コミュ障か!」
「そいつは確かモラドのヴァンパイアなんだろ? もしスパイだったらいくら西園寺でもレオ様に消されるぞ」と桐ヶ谷は言った。
「ダイジョブよ。キースは人を見る目だけはある。それだけが取り柄のおっちゃんやん。アイツが連れてきたやつみんな立派にここで育っとる。間違いないわ。それに…」
西園寺は途中まで言いかけるとポケットに手を入れてから言った。
「もし抵抗するようだったらいつも通り処分したらええやん」
◇
「鬼竜さんもジャンセンさんも酔いつぶれちゃったね」
いびきを立てて机に突っ伏している鬼竜とジャンセンを見て楓は苦笑いした。
「竜太はお酒強いね。鬼竜さんと同じぐらい飲んでたのにケロッとしてる」
竜太は手に持っていたグラスに入っている液体を一気に飲み干して静かにテーブルの上に置いた。
「俺も飲みすぎたわちょっと風に当たらないか?」
二人は眠っている鬼竜とジャンセンを置いて店を出た。店の外は昼夜問わずコンクリートの静謐な空間が広がっている。
竜太は人差し指を上に向けて地上を指差した。
二人は地上に向かうはしごを登ってマンホールの蓋を開けると無風だった地下とは違って肌を優しく撫でるようなそよ風が吹いている。気がつけば季節はもう秋だった。夏の湿った空気から冬の準備をするように心地よさと冬の予感を感じさせる気温だった。
そして、空には満点の星空とくっきりとまん丸の形をしている月が空に空いた白い穴のように姿を見せていた。
竜太はそっと歩きだし、楓はその後に続く。それを横目で確認した竜太はポケットに手を突っ込んで自分の歩を進める足を確認するように視線を落として言った。
「研究施設で二人で特訓したときさヴァンパイアの力の根源は恐怖だって言ったじゃん?」
楓は頷く。そして、竜太は満点に広がる星空を見上げる。
「俺の恐怖は死だった。俺は死が怖い。弟の死を間近で見たのもそうだし自分が人間の時、一度殺されかけたこともそうだ。それどころかヴァンパイアになってからも何度も殺されかけた。その度に俺の中で抑えようのないほど大きな恐怖が俺を飲み込むんだよ。ダメなんだな。人間の時に死の恐怖を経験するとそれがこびりついて取れない」
空を見上げながら語る竜太の顔は澄んだように凛としている。しかし、手は小さく震えているのを楓は見ていた。
「でも、お前は死なない。おまけにチートみてぇな強さまで手に入れてる」
「そんな事無いよ。僕だってまだ自分の力をつかこなせてない。死なないけど死を味わう恐怖は体験してきた」
竜太はそれでも首を横に振る。
「いいや。例えお前がその力を扱えなくても死ぬことはないだろ? 暴走したってどんなに強い相手と戦ったって死ぬことはない」
そう問いかける竜太に楓は頷くが楓は思わず竜太に問うた。
「竜太急にどうしたの? あんまり普段こういうこと話さないよね」
しかし、竜太は楓の質問に答えるつもりはなく自分の意見をそのまま楓にぶつけた。
「あの時言ったよな? 楓の恐怖は死だって。言葉だけ並べれば俺と楓の恐怖は同じく死死という同じ意味だ。でも、同じ死でも楓の恐怖は自分の死じゃない。他人の死だ。俺はルーロで楓が力を発芽した時にヴァンパイアの力は恐怖と関連があると確信した。志木崎もそう言ってたしな。その証拠にルーロでお前が暴走した時観客の死がトリガーになっていたんだ。じゃあ、なぜ他人の死が楓の力を発芽させるトリガーになるか教えてやろうか?」
竜太は楓に答えさせる隙間を与えないほどすぐに回答を言った。
「自分が死なないからだ。当然だよな不死身なんだから。自分の死よりも他人の死の方が怖いんだ。だから、どんな戦い方をしてもどんな強敵と戦っても負けたとしても死ぬことはない。その証拠にお前と俺が幹人と一緒に初めてALPHAの連中と戦った時を覚えてるか?」
楓は頷いた。それは質問に対する反応でもあったが同時に竜太の様子を伺っているようなそんな慎重さを感じさせる。そして、竜太が発する言葉は唇を震わせて感情を抑え込んでいるように見えた。
「お前は俺らに見つからないようにこっそりと戦ってたよな。でも、俺は見たんだお前がわざと自分の心臓を刺されたことを利用して相手を倒していたのを。そんな真似ができるのは死ぬことができない命を粗末に扱えるお前だけなんだ。だから、自分の死に対する恐怖が薄れちまってる。武闘会でもそうだった。1回戦でお前は不死身じゃなかったら何度も死んだはずだった。粘り強いとか言ってるけどそれは全て命を粗末にして死ぬことをためらわなかったからだ」
「ちょ、ちょっと待ってよ竜太。確かに僕はそういう戦い方をしてた。でも、どうしたの急にそんなこと言って」
竜太は鼻から息を吸った。それは自分に湧き上がる熱を冷却するかのようでもあった。そして、死んだようにシンとした夜に冷たい風が吹いて二人の髪を揺らした。それは急に冬が訪れたようなそんな冷たい空気を含んでいた。
「俺はモラドを抜ける。そして、ALPHAに行く」
「二人共潰れるまで飲まないでくださいよ」
楓が念の為二人に注意して二人は少年のように「「はーい」」と声を揃えて言った。察しの良い楓はその返事を真に受けることはなかった。その証拠に前回同様にわんこそばの早食いのように二人の目の前には次から次へと波波に赤い液体が注がれたグラスが置かれて、それを口に運んでいるのを楓は見ていたからだ。
「ジャンセンも見てないで飲めよ。そんなとこで突っ立っててもつまんないだろ」
鬼竜は注がれたグラスをジャンセンの目の前に置いた。
「それじゃあ、お言葉に甘えて」
◇
時は楓や竜太がルーロを去ったあとの事、男は闘技場で倒れているキースを抱えて地下世界アガルタの最東端の国バスティニアのALPHAのアジトに来ていた。
「キースのおっちゃんやられたでぇ~」
のんきに鼻歌でも歌うように男が扉を足で蹴って部屋の中に入ると中にはテーブルに4人の白い隊服を身にまとったヴァンパイアが座っていた。
その中でマスクで口元を隠しているヴァンパイアがその男の方を見た。外見的にも一番マトモそうな外見をしている。
「西園寺お前は静かに部屋にも入れないのか?」
「だって、キースが死んでしまうかもしれんのよ? そんな悠長なことしてられへんわ。逆に冷静なお前たちは怖いわ。仲間の命をなんだと思ってるん?」
「弱いから負けるだけだ」
西園寺は呆れたように「はいはい」と頷いてからマスクをした男に「神原はどこ?」と問うとマスクをした男は西園寺が入ってきたドアの反対方向にあるドアを指さした。
「ああ、実験室か。てか、ケニーのやつ姿が見えないと思ったらまたタトゥー入れとんか? あいつ暇さえあれば体いじりやがってただのドMやろ。まあええわ、そんなことより桐ケ谷さっさと神原呼んでくれや」
マスクをした桐ヶ谷と呼ばれたヴァンパイアは西園寺の代わりにドアをノックする。桐ケ谷の指がドアに触れた瞬間ドアが勢いよく開いて一人の骨ばった体をして身長の高い桐ケ谷の胸元ほどの身長で白衣を着ている男が出てきた。
「神原、実験体がほしいって言うとったやろ。これもう死にそうやから自由に使ってええで。ヴァンパイアとしては上物や」
西園寺は「ほらよ」と神原と呼ばれた細くて小さい男にキースを雑に渡した。
男は自分の体より大きいキースを肩に担ぐと2,3歩ほどよろついてなんとかバランスを保ってから言った。
「あ、あ、ありがとうございます。大切に使わせていただきます」
キースを抱えて後方に倒れそうなほどにのけぞっていたがなんとか西園寺に頭を下げるだけの筋力を使って上半身を倒し礼を言った。
「ほんでぇ神原ぁ。強化薬の方は成功したんか?」
西園寺はまるで期待していないように神原に言った。神原は肩に担いだキースを扉の向こうの部屋の机の上に下ろすと改めて首を横に振って答えた。
「いえ、この通りです。皆さんの分は完成していますがまだ成功率は低く量産できておりません」
部屋の中を覗いて西園寺はため息を吐いた。
西園寺の目の前に広がっているのは人一人分が入れるほどのカプセルに何体ものヴァンパイアが頭上からぶら下がっている酸素マスクを付けて眠っている。その中の殆どが体が半分溶けて気化し始めて湯気のようなものが体から立っている死体や体が解けてしまって元のヴァンパイアとしての形を留めていないものばかりだった。
「気が遠くなるなぁ全く。あの混血と俺ら覗いてどいつもこいつも適合できないやつばっかりや…。おお、そうやった! 忘れとったわ」
一度うなだれた西園寺が何かを思い出したようで再び顔を上げた。
「みんな聞いてくれやキースが良い素材スカウトしたんよぉ。俺らと混血を覗いて初の適合者になるかもしれんでぇ」
神原は媚びるように手をこねながら西園寺を見上げる。
「あの、スカウトというのは?」
「元人間のヴァンパイアや。しかも、ヴァンパイアの適性も最高レベルと見た。キースのおっちゃんはちゃんと体張ってこうやって仕事しとんや。立派なもんやで全く」
西園寺は指を鳴らして神原を指差した。
「まっててやぁ。キースが満月の夜に迎えに行くって約束したんやそれが今夜。だから俺が代わりに連れて来たるわ。だから、薬もう一個死んでも作っとけよ」
神原は怯えるように両手を体にピタリと付けて深々とお辞儀をした。
「は、はい。必ず作ってみせます」
西園寺の大きな声を聞きつけて扉の向こうの闇から声が聞こえた。声だけで姿は見えない。その声は男性にしては高いように思えるし女性にしては低いように感じる声音だった。
「それって僕の部下になる子なの?」
それはのんきに間延びしたような声だった。
「ケニー。お前の部下なんかにしたら体中気色悪い入れ墨だらけにされてまうやろが。ワイの部下につけたる」
闇の中から聞こえたケニーと呼ばれたヴァンパイアは「あっそ」と吐き捨てて扉を蹴って締めた。バタンと大きな音が部屋に広がる。
「何やねんアイツ。コミュ障か!」
「そいつは確かモラドのヴァンパイアなんだろ? もしスパイだったらいくら西園寺でもレオ様に消されるぞ」と桐ヶ谷は言った。
「ダイジョブよ。キースは人を見る目だけはある。それだけが取り柄のおっちゃんやん。アイツが連れてきたやつみんな立派にここで育っとる。間違いないわ。それに…」
西園寺は途中まで言いかけるとポケットに手を入れてから言った。
「もし抵抗するようだったらいつも通り処分したらええやん」
◇
「鬼竜さんもジャンセンさんも酔いつぶれちゃったね」
いびきを立てて机に突っ伏している鬼竜とジャンセンを見て楓は苦笑いした。
「竜太はお酒強いね。鬼竜さんと同じぐらい飲んでたのにケロッとしてる」
竜太は手に持っていたグラスに入っている液体を一気に飲み干して静かにテーブルの上に置いた。
「俺も飲みすぎたわちょっと風に当たらないか?」
二人は眠っている鬼竜とジャンセンを置いて店を出た。店の外は昼夜問わずコンクリートの静謐な空間が広がっている。
竜太は人差し指を上に向けて地上を指差した。
二人は地上に向かうはしごを登ってマンホールの蓋を開けると無風だった地下とは違って肌を優しく撫でるようなそよ風が吹いている。気がつけば季節はもう秋だった。夏の湿った空気から冬の準備をするように心地よさと冬の予感を感じさせる気温だった。
そして、空には満点の星空とくっきりとまん丸の形をしている月が空に空いた白い穴のように姿を見せていた。
竜太はそっと歩きだし、楓はその後に続く。それを横目で確認した竜太はポケットに手を突っ込んで自分の歩を進める足を確認するように視線を落として言った。
「研究施設で二人で特訓したときさヴァンパイアの力の根源は恐怖だって言ったじゃん?」
楓は頷く。そして、竜太は満点に広がる星空を見上げる。
「俺の恐怖は死だった。俺は死が怖い。弟の死を間近で見たのもそうだし自分が人間の時、一度殺されかけたこともそうだ。それどころかヴァンパイアになってからも何度も殺されかけた。その度に俺の中で抑えようのないほど大きな恐怖が俺を飲み込むんだよ。ダメなんだな。人間の時に死の恐怖を経験するとそれがこびりついて取れない」
空を見上げながら語る竜太の顔は澄んだように凛としている。しかし、手は小さく震えているのを楓は見ていた。
「でも、お前は死なない。おまけにチートみてぇな強さまで手に入れてる」
「そんな事無いよ。僕だってまだ自分の力をつかこなせてない。死なないけど死を味わう恐怖は体験してきた」
竜太はそれでも首を横に振る。
「いいや。例えお前がその力を扱えなくても死ぬことはないだろ? 暴走したってどんなに強い相手と戦ったって死ぬことはない」
そう問いかける竜太に楓は頷くが楓は思わず竜太に問うた。
「竜太急にどうしたの? あんまり普段こういうこと話さないよね」
しかし、竜太は楓の質問に答えるつもりはなく自分の意見をそのまま楓にぶつけた。
「あの時言ったよな? 楓の恐怖は死だって。言葉だけ並べれば俺と楓の恐怖は同じく死死という同じ意味だ。でも、同じ死でも楓の恐怖は自分の死じゃない。他人の死だ。俺はルーロで楓が力を発芽した時にヴァンパイアの力は恐怖と関連があると確信した。志木崎もそう言ってたしな。その証拠にルーロでお前が暴走した時観客の死がトリガーになっていたんだ。じゃあ、なぜ他人の死が楓の力を発芽させるトリガーになるか教えてやろうか?」
竜太は楓に答えさせる隙間を与えないほどすぐに回答を言った。
「自分が死なないからだ。当然だよな不死身なんだから。自分の死よりも他人の死の方が怖いんだ。だから、どんな戦い方をしてもどんな強敵と戦っても負けたとしても死ぬことはない。その証拠にお前と俺が幹人と一緒に初めてALPHAの連中と戦った時を覚えてるか?」
楓は頷いた。それは質問に対する反応でもあったが同時に竜太の様子を伺っているようなそんな慎重さを感じさせる。そして、竜太が発する言葉は唇を震わせて感情を抑え込んでいるように見えた。
「お前は俺らに見つからないようにこっそりと戦ってたよな。でも、俺は見たんだお前がわざと自分の心臓を刺されたことを利用して相手を倒していたのを。そんな真似ができるのは死ぬことができない命を粗末に扱えるお前だけなんだ。だから、自分の死に対する恐怖が薄れちまってる。武闘会でもそうだった。1回戦でお前は不死身じゃなかったら何度も死んだはずだった。粘り強いとか言ってるけどそれは全て命を粗末にして死ぬことをためらわなかったからだ」
「ちょ、ちょっと待ってよ竜太。確かに僕はそういう戦い方をしてた。でも、どうしたの急にそんなこと言って」
竜太は鼻から息を吸った。それは自分に湧き上がる熱を冷却するかのようでもあった。そして、死んだようにシンとした夜に冷たい風が吹いて二人の髪を揺らした。それは急に冬が訪れたようなそんな冷たい空気を含んでいた。
「俺はモラドを抜ける。そして、ALPHAに行く」
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※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
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※カクヨム、なろうでも公開しています
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