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粛清
しおりを挟むキャシーは赤い車を加速させた。
アスファルトの凹凸に車が軋む。
道路脇の雑草が、車からの風で大きく揺れた。
キャシーは車の窓を閉めた。
遠くで人が走っている。
いや、赤い車に気づき、逃げているのだ。
急に加速したことに驚いたバーバラだったが、近視の彼女にもようやく獲物が見えてきた。
「キャシー、あれはウォーカーじゃないの? ならば、一気にやってちょうだい!」
バーバラはキャシーの返事を聞く前に、決定を下した。
「ええ、そのつもりよ。これはそのための車ですからね」
キャシーは掌に汗を感じた。
待ちに待った瞬間がきたのだ。
キャシーはこの瞬間をどれだけ待っただろう。
恐怖とは違う震えがキャシーの背中に走った。
まわりを山に囲まれた道路は一本道になっている。
ほかに逃げ場はない。
ウォーカーは懸命に逃げていた。
しかし、その努力は無情にも報われそうになかった。
赤い車はどんどん近づいていく。
あと百メートル。
五十メートル。
三十メートル。
恐怖でひきつったウォーカーの顔が、目の前に迫ってきた。
ウォーカーがぶつかる瞬間、キャシーは恍惚の表情をしていた。
笑みさえ浮かべている。
まるで、楽しいドライブのように。
ウォーカーはボンネットに乗り上げ、斬り刻まれ、そして屋根を越えていった。
キャシーとバーバラはカフェでコーヒーを飲んでいた。
二人とも笑顔で話している。
バーバラが言った。
「ここはとても空気の美味しいところね。こんないいところがあるなら、もっと早く来れば良かったわ」
「そうなの。あの山を見て。緑が素晴らしいわ」
キャシーは少し離れた、円錐形の山を指差して言った。
空は青く澄んでいる。
低い雲が緩やかに流れていた。
「あら、あれは何の鳥かしら?」
バーバラは手をひさしにして、はるか高く飛んでいる鳥に目を凝らした。
「あれはたぶん、何かの猛禽類よ。 きっとどこかで獲物を見つけたんだわ、ふふふ」
キャシーは幸せを感じていた。
こんなに幸せな気分になったのは、いつの日以来だろう。
でも、それはどうでもいい。
今という瞬間が大事なのだ。
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さて|黄昏《たそがれ》は、一日のうち日没直後、雲のない西の空に夕焼けの名残りの「赤さ」が残る時間帯のことを言う。「|黄昏時《たそがれどき)」。 「黄昏れる《たそがれる》」という動詞形もある。
「たそがれ」は、江戸時代になるまでは「たそかれ」といい、「たそかれどき」の略でよく知られていた。夕暮れの人の顔の識別がつかない暗さになると誰かれとなく、「そこにいるのは誰ですか」「誰そ彼(誰ですかあなたは)」とたずねる頃合いという意味で日常会話でよく使われた。
今回の私の小説のテーマはこの黄昏である。
この風習は広く日本で行われている。
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と、現在のように「たそかれ」で時間帯を表す用例が現れる。
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漢語「|黄昏《コウコン》」は日没後のまだ完全に暗くなっていない時刻を指す。「初昏」とも呼んでいた。十二時辰では「戌時」(午後7時から9時)に相当する。
「たそがれ」の動詞化の用法。日暮れの薄暗くなり始めるころを指して「空が黄昏れる」や、人生の盛りを過ぎ衰えるさまを表現して「黄昏た人」などのように使用されることがある。
この物語はフィクションです。登場人物、団体等実際に同じであっても一切関係ありません。
それでは、小説「黄昏夫婦」をお楽しみ下さい。
読者の皆様の何かにお役に立てれば幸いです。
作家 蔵屋日唱
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