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第39話 子爵家の三男
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朝一番だったこともあり、その日のうちに男爵家に辿り着いた俺はセシリアと共にドンスタン男爵と話し合いの場を設けた。予想外だったのはその場にセシリアの相手候補である子爵家三男が同席していたことだった。
「お初にお目にかかります。ルドリアス子爵家三男のロナンドと申します。貴方が賢者の称号をお持ちのグラン殿ですね」
ロナンドと名乗った男、金色の髪にさわやかな笑みを浮かべた見た目は好青年に見える。だが、俺とは初対面のはずなのに、すぐに挨拶をしてくるとはあざといところもあるようだ。
「これは丁寧な挨拶を。ロナンド殿はいつこちらに?」
「今日の昼に領地より到着致しました。長旅でしたのでドンスタン男爵様のご厚意により先ほどまで休ませていただいたところです。ところで、貴殿の後ろにおられる方がセシリア嬢で間違いありませんか?」
ロナンドは俺への挨拶は終わったとして後ろに控えていたセシリアに目を向けて声をかける。
「はい。ドンスタン男爵家長女のセシリアでございます」
名を呼ばれたセシリアは貴族家の者として礼節をもった挨拶を返す。
「話は男爵様から聞いているかと思うが、改めて話をしたいと思う。申し訳ありませんが、これは貴族家同士の話ですので賢者グラン殿には席を外して頂きたい」
子爵家当主が直接訪れている訳でもないのに、この態度。しかも相続権のない、たかが三男ごときが言ってくれる。だが、ここで俺が何を言ってもドンスタン男爵を困らせるだけ。ひいてはセシリアの立場も悪くするだけだろうから、ここは一旦引き下がるとしよう。
「構わない。だが、その話し合いが終わった後で俺から皆に話があることだけ伝えておこう」
俺はそう告げると、セシリアの元にハベルを残してから、メイド長のアメリーが案内する別室にて待機をすることになった。
「どうぞ。紅茶になります」
俺がソファに座ると、アメリーが温かい紅茶を淹れてくれる。彼女もメイド長の立場でありながら彼らの話し合いの場からは外されたようだった。
「少しお話をしても宜しいでしょうか?」
「構わない。俺も聞きたい事があったから丁度いい。今回の縁談の件だな?」
アメリーは俺に話し合いの意思があることを受け取って頷くと、目の前のソファへと座ってから口を開く。
「今回の婚姻話はいささか急速過ぎる気がします。確かにセシリアお嬢様は結婚適齢期でありながら婚約者がおりません。その原因の一つとして男爵家の懐事情にあることはグラン様もご存じのとおりです」
「娘しか居ない男爵家はどうあれ家を守るためには婿を取るしか道はない。だが、万年赤字の領地を欲しがる貴族はいない。そんな時に急に降ってわいたような縁談の話。何か裏があるのか?」
「これは、私が旦那様の書斎を掃除していた時に聞いた話です。信じて頂けるかは分かりませんがグラン様にはお話したいと思います」
「男爵家の者でない俺に話しても良いことなのか?」
「正直、私にも判断がつきません。ですが、セシリアお嬢様が信頼されておられるグラン様ならばその判断が出来ると思っております」
「わかった。話してみるがいい。心配するな、悪いようにはしないさ」
俺はそうアメリアに告げると彼女の淹れてくれた紅茶を一口流し込み、真剣な表情で話を待った。
◇◇◇
「その日はいつもどおりに屋敷の掃除をしていたのですが、ちょうど旦那様の書斎前を通っていた時に部屋の中から大きな声が聞こえたのです」
「――なんだ、この手紙は? 家の負債を肩代わりしてやるから娘を寄こせだと? ふざけるな!」
「旦那様はずいぶんと興奮されている様子で何度も机を叩く音が聞こえていました。これは聞いてはいけない内容だと思った私はすぐにその場から離れました。その後、旦那様がセシリアお嬢様を呼び戻すために屋敷を出たときを見計らって書斎の掃除をしようとしたところ一通の手紙が置かれており、見てはいけないと知りつつ読んでしまいました」
「それで、何と書かれていたんだ?」
「北の領地、ノーズ地方に新たに元勇者であったゼオン侯爵が赴任してきたこと。今まで代官が治めていたことにより見逃されていた赤字経営が新たな統治者の出現により厳格にされる可能性がある。今のままだと男爵家はその領地を取り上げられてしまうとのこと。それを回避するには他の貴族家から援助を受ける他はない……と書かれていました」
「なるほどな。領内のトップが変わったタイミングで揺さぶりをかけて傘下にする手立てか。悪質だな」
俺はアメリーからの話を聞き終わると目を閉じて考え込む。恐らくだが、セシリアは婚姻に難色を示すだろうが、男爵本人がどう判断するかは微妙だな。アメリーが聞いた声からすると突っぱねる可能性が高いが、子爵家の準備した内容が男爵の予想を上回れば万が一ということもある。
「――やはり、強引にでも同席した方が良かったか?」
そう呟いた時、突然屋敷の何処かで大きな爆発音が響いた。
「なんだ!?」
俺はすぐに立ち上がると音の発生場所を探るために探索魔法を展開し、特定した場所に驚く。
「屋敷の外部からの音だと思っていたが、こいつはさっきの部屋じゃないか!」
俺は叫ぶと同時に部屋を飛び出し、セシリア達の居る部屋へと飛び込んだのだった。
「お初にお目にかかります。ルドリアス子爵家三男のロナンドと申します。貴方が賢者の称号をお持ちのグラン殿ですね」
ロナンドと名乗った男、金色の髪にさわやかな笑みを浮かべた見た目は好青年に見える。だが、俺とは初対面のはずなのに、すぐに挨拶をしてくるとはあざといところもあるようだ。
「これは丁寧な挨拶を。ロナンド殿はいつこちらに?」
「今日の昼に領地より到着致しました。長旅でしたのでドンスタン男爵様のご厚意により先ほどまで休ませていただいたところです。ところで、貴殿の後ろにおられる方がセシリア嬢で間違いありませんか?」
ロナンドは俺への挨拶は終わったとして後ろに控えていたセシリアに目を向けて声をかける。
「はい。ドンスタン男爵家長女のセシリアでございます」
名を呼ばれたセシリアは貴族家の者として礼節をもった挨拶を返す。
「話は男爵様から聞いているかと思うが、改めて話をしたいと思う。申し訳ありませんが、これは貴族家同士の話ですので賢者グラン殿には席を外して頂きたい」
子爵家当主が直接訪れている訳でもないのに、この態度。しかも相続権のない、たかが三男ごときが言ってくれる。だが、ここで俺が何を言ってもドンスタン男爵を困らせるだけ。ひいてはセシリアの立場も悪くするだけだろうから、ここは一旦引き下がるとしよう。
「構わない。だが、その話し合いが終わった後で俺から皆に話があることだけ伝えておこう」
俺はそう告げると、セシリアの元にハベルを残してから、メイド長のアメリーが案内する別室にて待機をすることになった。
「どうぞ。紅茶になります」
俺がソファに座ると、アメリーが温かい紅茶を淹れてくれる。彼女もメイド長の立場でありながら彼らの話し合いの場からは外されたようだった。
「少しお話をしても宜しいでしょうか?」
「構わない。俺も聞きたい事があったから丁度いい。今回の縁談の件だな?」
アメリーは俺に話し合いの意思があることを受け取って頷くと、目の前のソファへと座ってから口を開く。
「今回の婚姻話はいささか急速過ぎる気がします。確かにセシリアお嬢様は結婚適齢期でありながら婚約者がおりません。その原因の一つとして男爵家の懐事情にあることはグラン様もご存じのとおりです」
「娘しか居ない男爵家はどうあれ家を守るためには婿を取るしか道はない。だが、万年赤字の領地を欲しがる貴族はいない。そんな時に急に降ってわいたような縁談の話。何か裏があるのか?」
「これは、私が旦那様の書斎を掃除していた時に聞いた話です。信じて頂けるかは分かりませんがグラン様にはお話したいと思います」
「男爵家の者でない俺に話しても良いことなのか?」
「正直、私にも判断がつきません。ですが、セシリアお嬢様が信頼されておられるグラン様ならばその判断が出来ると思っております」
「わかった。話してみるがいい。心配するな、悪いようにはしないさ」
俺はそうアメリアに告げると彼女の淹れてくれた紅茶を一口流し込み、真剣な表情で話を待った。
◇◇◇
「その日はいつもどおりに屋敷の掃除をしていたのですが、ちょうど旦那様の書斎前を通っていた時に部屋の中から大きな声が聞こえたのです」
「――なんだ、この手紙は? 家の負債を肩代わりしてやるから娘を寄こせだと? ふざけるな!」
「旦那様はずいぶんと興奮されている様子で何度も机を叩く音が聞こえていました。これは聞いてはいけない内容だと思った私はすぐにその場から離れました。その後、旦那様がセシリアお嬢様を呼び戻すために屋敷を出たときを見計らって書斎の掃除をしようとしたところ一通の手紙が置かれており、見てはいけないと知りつつ読んでしまいました」
「それで、何と書かれていたんだ?」
「北の領地、ノーズ地方に新たに元勇者であったゼオン侯爵が赴任してきたこと。今まで代官が治めていたことにより見逃されていた赤字経営が新たな統治者の出現により厳格にされる可能性がある。今のままだと男爵家はその領地を取り上げられてしまうとのこと。それを回避するには他の貴族家から援助を受ける他はない……と書かれていました」
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