女性限定の『触れて治癒する』治療方法に批判が殺到して廃業を考えたが結果が凄すぎて思ったよりも受け入れて貰えた

夢幻の翼

文字の大きさ
32 / 159

第32話【斡旋ギルドからの治療依頼①】

しおりを挟む
 無料の診療が功を奏したのか、少しずつ診療所の認知度が上がっていったようで、コンスタントに患者は訪れていた。

 当初は批判も多かった胸を触る治療ーー正確には心臓の位置に手を添える……であるが、それもリリスのしっかりとした事前説明と治療結果の完璧さで次第に受け入れられてきていた。

 そんなある日の事。

「すみません、リリスさん。
 ナオキ様はいらっしゃいますでしょうか?」

 診療所を開ける準備をしていたリリスに後ろから声がかかった。

 彼女が振り向くとそこには見覚えのあるサナール斡旋ギルド受付嬢の姿があった。

「えっと、ユリナさん……でしたっけ?」

「名前を覚えていてくれたのですね。
 ギルドに研修生として来てくれてた時に挨拶したのと一度だけ一緒に受付業務をしただけだったのに……」

「まあ、記憶力はある方ですので……。
 ところでナオキ治癒士にどんな用事がおありでしょうか?
 もうすぐ今日の診療時間になりますのであなたの診療であれば受付をしますが他の依頼等ならば急ぎでなければお昼の休憩時間か診療時間後にお願いしたいのですが……」

「あっそうですよね。
 斡旋ギルドを通しての治療依頼ですので受けて頂けるかの確認に来たのですが詳細を説明する時間が無さそうですので診療時間終了後に再度伺うようにします。
 では、夕の鐘が鳴る頃に面談の予定をお願いしますね」

 ユリナはそう伝えるとギルドの方へと歩いて行った。

   *   *   *

「斡旋ギルドを通しての治療依頼だって?」

 リリスはユリナが話していた内容をナオキに伝えて今日の診療後に打ち合わせをしたいと言っていた事を告げた。

「どんな内容なんだろうな?
 わざわざギルドを通してとなるとそれなりに身分のある人からの依頼なんだろうな」

「うわっ 面倒そうね。
 無理そうだったら断るのもアリだと思うわよ。
 特にナオキの治療方法はアレだから治療する相手が貴族の愛娘とかだったら父親が激怒してもおかしくないでしょうしね」

 リリスがイタズラっぽく笑みを浮かべながら僕を怖がらせる。

「おいおい、怖い事言うなよ。
 その辺は事前説明をしっかりとしておけば回避出来るんじゃないか?」

「分からないわよ。貴族様の考える事って……。
 一度は了承していても目の前で気に食わない事があったらその場でくつがえす事なんて良く聞く話よ。
 特に相手が平民ならばね」

「その話が本当ならば断るか、どうしてもやらざるを得ないならば伯爵様の関係者を立会人として貸して貰わないといけないかもしれないな」

 僕はリリスの話を聞けば聞くほどフラグが立ちまくっているんじゃないかと不安になる。

「まあ、憶測おくそくでものを言っても始まらないから、結局は詳細を聞くしかないのよね」

 リリスはそう締めて「そろそろ診療所を開けるわよ」と言い僕を置いて待合室の方へと向かっていった。

   *   *   *

「怪我は完治してますのでもう大丈夫ですよ。
 それではお大事に気をつけてお帰りくださいね」

 その日は打ち合わせの予定が入ったので少しばかり早めに診療を終えた僕達は一息ついて紅茶を飲みながらユリナが来るのを待っていた。

「そろそろ来るかな?」

 僕が外に目線を向けると同時に夕の鐘が聞こえてきた。

 ーーーからんからんからん。

 その音と共に診療所のドアをノックする音が聞こえ、続けて僕を呼ぶ声が聞こえた。

「はーい!いま開けますね」

 飲みかけの紅茶をテーブルへ置いてリリスが玄関のドアへと向かう。

「サナール斡旋ギルドのユリナです。
 朝の件の詳細を伝えに参りました」

 ユリナはそう言うと肩がけのかばんから数枚の書類を取り出した。

「まあ、そんな所で立ち話も何ですからこちらでゆっくりとお話を聞くことにしましょう。
 リリス、すまないが彼女の紅茶を追加してくれないか?」

「ええ、いいわよ。少し待ってね」

 リリスはそう言うと台所へと紅茶の準備に向かう。

「話は彼女も一緒に伺いたいと思いますので少しお待ちくださいね」

「はい。ありがとうございます」

 数分後、ユリナの紅茶を持ったリリスが部屋に戻り、彼女の前にそっと置いた。

「どうぞ。熱いので気をつけてくださいね」

 リリスはそう言うと、自分は僕の隣へと移動してソファに座った。

「ーーーそれで、依頼と言うのはどういった内容なんでしょうか?」

 僕が単刀直入に尋ねる。

「はい。まずはこちらの依頼書を見て頂けると助かります」

 ユリナが詳細の書かれた書類を提示するのを見て、リリスがそれを静止する。

「ちょっと待って。
 まだ、引き受けるかどうかの返事をしていないのに詳細の書かれた書類を読む訳にはいかないわ。
 その前に依頼者と患者の情報を概略でいいから教えて貰えるかしら」

 その行動にユリナが小さく「ちっ」と舌打ちをした。

 状況の理解出来ない僕が小さくリリスに説明を求める。

「ギルドの依頼ってね。
 依頼者に対する守秘義務があるのよ。
 だからまず依頼の大まかな概要を斡旋する者に説明して了承を得て、仮契約をしてから詳細の開示をするの。
 今回のようにいきなり詳細を見せると言うのは強制的に引き受けざるを得ない状況を作り上げる裏のやり方なのよ」

 リリスはユリナの方を『キッ』と睨みながら僕に説明をしてくれた。

「やっぱり通じませんでしたか。
 リリスさんは場所は違えど元ギルドの受付嬢をされていたので気がつく可能性はあるとは思ってましたがあっさり止められてしまいましたね。
 だますような手段をとった事申し訳ありませんでした」

 ユリナはそう言うとあっさり事実と認め、素直に謝罪した。

「どうしてそんな手段を?」

 僕がユリナに問うと彼女は事の発端から話をしてくれた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...