女性限定の『触れて治癒する』治療方法に批判が殺到して廃業を考えたが結果が凄すぎて思ったよりも受け入れて貰えた

夢幻の翼

文字の大きさ
38 / 159

第38話【リリスの里帰り①】

しおりを挟む
 今回の斡旋ギルドからの依頼でかなりの報酬を貰った僕達はしばらく診療所を休んで一度リリスの実家のあるカルカルへ行く事を決めた。

 リリスは領都の斡旋ギルド経由で退職届を提出したのでカルカルのギルド職員にはまだ挨拶も済ませていなかった事がずっと引っかかっていたらしい。

「あー、ギルドのみんな怒ってるだろうなぁ。
 研修に行ってくると言って仕事を振り分けてもらったのに数日後には規定違反をして退職処分になりましたと連絡が来たらびっくりするしかないよね」

 カルカル行きの馬車が出る前日、ギルドの元同僚や上司にお詫びのお土産を山ほど買い漁ったリリスの荷物を収納魔法アイテムボックスに押し込んだ僕は前回の教訓から護衛を頼んでいた。

 前回はミリーナさん達が居たから撃退出来たが、今回はそうはいかないのでしっかりと準備をしておいたのだ。

「今日から数日間、護衛をお願いします」

「こちらこそ宜しくな」

 馬車のスピードはそれほど早いものではないが、やはり歩くにはキツいので馬車の荷台に2人、御者席に1人乗ってもらっていた。

「へー。それじゃあリリスさんは元々カルカルの出身なんですね」

 破損すると困るものや高額なものは収納魔法アイテムボックスに入れてあるので積荷は余裕があり、僕達2人と護衛の男女2人が幌つきの荷台に乗りあわせて世間話をしていた。

「ええ、そうよ。
 斡旋ギルドで第一受付の受付嬢を担っていたわ。
 まあ、色々とあって辞めちゃったけどね」

「えー!勿体ない。
 斡旋ギルドの受付嬢って凄く倍率高いでしょ?
 事務処理能力が高いのは当然としてギルドの顔としても美人でないと採用されないって聞いた事があるけど本当なの?」

 傭兵の女性、メイナがリリスに問いかける。

「うーん。採用試験では事務処理能力のテストはあったけど容姿で採用を決めているかどうかは分からないわ。
 でも、一応新規採用の年齢制限はあるみたいだけどね」

「やっぱりそうよね。
 あーあ、あんな華やかな職場なんて私には縁のない場所よね。
 まあ、依頼を出しに行くのがせいぜいだわ」

 メイナが大袈裟に手をあげてため息をつくと横に控えていた男性、バグルが「ただ黙って立っているだけなら何とかなるかもしれないが脳筋のお前じゃあまあ無理だな。諦めろ」とツッコミを入れた。

「だれが脳筋ですって!?」

 メイナとバグルの掛け合いが暫く続いたが御者席にいたリーダーの男性、マドルクが「お前達いい加減にしろ!」とたしなめて掛け合いは終了した。

「いや、お見苦しいところを見せました。
 コイツらは腕は良いがまだまだ若いから感情の制御が甘いんだ。
 いいか? 俺達は今、護衛の任務を請け負ってる最中だ。
 四六時中ピリピリしてろとは言わないが周囲の索敵を怠るんじやないぞ」

「「はい。すみません」」

 リーダーに注意され、素直に謝ったふたりはそれぞれの役割を再確認して護衛にあたってくれた。

 そのおかげで道中でのトラブルも無く最短の日数でカルカルに到着する予定だった。

 順調な旅の最後の夜、不寝番をしていたバグルが怪しげな光を見つけマドルクを起こした。

「何か居ますぜ……。
 盗賊っぽくはないが正体がよく分からねぇから念の為に全員起きていた方が良いかもしれねぇ」

 バグルは僕達の側で休んでいたメイナを起こすと僕達ふたりと御者の男性を起こすように伝えた。

「すみません。起きてもらえますか?」

 メイナの声に僕達は目を覚まし、何かあったのかと周囲を見回す。

 ガサガサ。

 暗闇の茂みで何かが動く。

「誰だ!」

 バグルが茂みに向かって叫び何かが飛び出して来ても対応できるように剣を構える。

 だが、音の聞こえた茂みからは何も出てくる気配は無かった。

「風のせいか?気のせいか?
 それとも小動物なのか?」

 バグルは気を緩めず、だが無闇に茂みを調べる事もせずにじっと待った。

「特に何も居ないと思われるが、念の為に茂みに向けて槍を刺しておくとするか」

 バグルがそう言いながら馬車に置いてあった槍を取りに戻った時、茂みが動き声がした。

「待ってください!」

 その声に全員が振り向くと、そこには小さな子供を背負った若い女性が茂みから這い出してくる途中だった。

   *   *   *

「ーーー何でそんな所に?」

 盗賊などの危険が迫っている訳では無くなった僕達は目が冴えた事もあり、火をおこして温かい飲み物を準備した。

 女性はマヤと名乗り、子供をマリと呼んだ。

「すみません。あなた方が普通の旅人か盗賊か分からなかったので思わず茂みに隠れて息を潜めていたのです」

 マヤは僕達から提供された飲み物を少し口にしながら自分達が隠れていた理由を話す。

「それは分かりましたが、それよりも何故こんなところを小さな娘さんと歩いていたのですか?
 他に連れ立った人も見られないですし、若い女性と子供だけで行くには危険すぎる旅だと思いますが……」

 僕は率直に思った事をマヤに聞いた。

「それは、この子を連れて領都サナールへ行きたかったからです」

「領都へ? 僕達は領都から来てカルカルへ向かう途中なのですが領都へはどんな理由で向かわれてるか聞いても良いですか?」

 僕はこんな若い女性と子供だけで数日間もかかる道のりを馬車も装備も持たないで向かう事に違和感を覚えて深く事情を聞くことにした。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...