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第89話【リノの願いと万能な治癒魔法】
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「お互いを傷つける言葉はそのくらいで止めにしませんか?」
ふたりの間に不穏な空気が漂っていたため、一度仕切り直しをするために介入をさせて貰った。
「リノさんの言い分もよく分かりますし、ロギスさんの考えも理解出来ます。
では、どうすれば解決するかを考えてみませんか?」
僕の言葉にふたりが黙り込む。
「ナオキ様の治療を受けてみるのが一番の解決策だと思いますわ」
その時、リノの側にいたナナリーがそう結論づけた。
「私の生まれつきのアザが綺麗に消えたのですからリノのソバカスも簡単に消してくれると信じてますわ」
ナナリーの言葉に皆が僕の方を見た。
「『絶対』と言う言葉はあまり言いたくありませんが、治したいとの願いが強くあれば良い方向に向かうものだと信じて治療をさせて貰っています。
もし、宜しければ僕に治療をさせて貰えませんか?」
僕はコンプレックスに囚われているリノに真剣な表情で頭を下げた。
「そんな、頭を上げてください。
治療をお願いする方が頭を下げるのならば分かりますが、治療を施す方が頭を下げてお願いするなんて……」
「それがナオキなんだから仕方ないと思うわ。
自分の前に困っている人や悲しんでいる人が居たら無差別に手を差し伸べたくなるみたいなの。
まあ、女性限定なのが残念なところなんでしょうけどね」
ふたりのやり取りを横で聞いていたリリスがため息をひとつついてそう言った。
「俺も出来れば受けてみて欲しいと思う」
ロギスもナナリーの意見に賛同してナオキの治療を受けるように促す。
「先日も俺が担当していた少女を治療して貰ったが彼の治癒魔法は俺達の技術とかどうとかでは理解出来ない領域にあって張り合うのが馬鹿らしくなるくらいだ。
だが、彼が本気で患者のために治療をするならば治せないものは無いだろうと思う。
正直言って悔しいけどな」
ロギスはそう言うと椅子から立ち上がってソファに向かい、深く腰を下ろして腕を組んでじっと僕達を見ながら黙り込んだ。
「どうされますか?」
僕の言葉に考え込んでいたリノは顔を上げてはっきりと言った。
「治療をお願いします」
「分かりました。
では、そのままで良いので気持ちを落ち着けて深呼吸をしてください。
目は瞑られていても良いですし、僕を見ていても良いですよ」
「大丈夫。ナオキ様の治療は痛みを伴う事は無いですから。
安心して身を委ねていたら良いですよ」
緊張で固くなっているリノの肩に手を置いてナナリーが優しい言葉をかけた。
「うん。大丈夫……。
ありがとう」
「では、始めますね」
僕はそうリノに告げるといつものように魔力溜まりのある胸に手を添えた。
「――完全治癒」
いつものように魔力の注入が始まりリノは開いていた目をそっと閉じた。
「なんだか、身体が火照ってきた感じがします。
じわじわと今まで感じた事の無い感覚が広がってますけどそれで良いのですよね?」
「リノ、大丈夫。
その感覚が収まる時にあなたの願いはきっと叶うはずだからそのままその感覚に身を委ねていてね」
肩に手を置いたままのナナリーがリノにアドバイスをする。
本来ならばリリスが受け持つ役目だが、今回ばかりはナナリーの方が適任だった。
「そろそろ治療が終わりますが、もう少しだけ目を瞑ったままでいてください。
顔に多少の違和感があるかもしれませんが僕を信じて任せてください」
僕はそうリノに伝えると祈りを込めて治療を完了させた。
「おおっ!?」
「凄い……」
「これは……」
皆が驚きの声をあげるのも無理はなかった。
「ナオキ。ちょっとこれはやりすぎなんじゃないの?」
リノの姿を見たリリスが大きくため息をついて僕にそう告げた。
「皆さん、一体どうしたのですか?
私の顔、どうなったのですか?」
リノは周りの人達が驚くばかりで治ったとも駄目だったとも言わないので不安になって僕に問いかけた。
「リリス、彼女に鏡を渡してあげてくれないか?
こういうのは自分の目で確認しないと信じられないだろうからね」
僕は安堵感からひとつ息を吐くとリリスに手鏡を持ってきて貰った。
「どうぞ。自分の目で確かめてください」
僕はリリスから預かった手鏡をリノに渡してそう告げた。
リノは恐る恐る手鏡を使い、自分の顔を確認する。
そこには、見る度に苦しくなる程に化粧で荒れて黒く変色した大量のソバカスは全て消え、若くて瑞々しい肌が写っていた。
「これが私の顔? 本当に?」
リノはその現実を受け止めきれずに手鏡を持った手の反対側の手で自分の顔を触ってみる。
「触れる。ちゃんと手も鏡に写ってる。
死ぬほど悩んだ。自分の顔を見るのが嫌で鏡を見なくなった私の顔が……」
リノはそこまで呟くと、突然大きな声をあげながら泣き出した。
「うわぁぁぁん! 私、わたし……」
泣きじゃくるリノの後ろからナナリーが抱きしめて「良かったね」と繰り返す。
全てをじっと見ていたロギスもホッとした表情で息を吐いた。
「これで、ナオキの治癒魔法は怪我や病気以外にも先天性のアザやソバカスまで治せる上に、荒れた肌まで治す事が出来るのが証明された訳だけどその事はこの場だけで一般には広めないでください」
リリスは突然そう宣言して、理由を続けた。
「ナオキの治癒魔法は領都で大勢の患者を治療してきたから、骨折から部位欠損まで治療出来る事は周知されているのだけど、先天性のアザとかの治療はまだあまり知られていないわ。
その上で肌の修復まで話が広まったらそれを目当てに軽度の患者が押し寄せてきて私達が重点的に治療したい重症患者の治療に支障が出るのは間違いないわ。
だから、この場の人達だけの話にしておいて欲しいの」
リリスの言葉にその場にいた全員が頷くとリリスは「ありがとうございます」とお礼を言った。
ふたりの間に不穏な空気が漂っていたため、一度仕切り直しをするために介入をさせて貰った。
「リノさんの言い分もよく分かりますし、ロギスさんの考えも理解出来ます。
では、どうすれば解決するかを考えてみませんか?」
僕の言葉にふたりが黙り込む。
「ナオキ様の治療を受けてみるのが一番の解決策だと思いますわ」
その時、リノの側にいたナナリーがそう結論づけた。
「私の生まれつきのアザが綺麗に消えたのですからリノのソバカスも簡単に消してくれると信じてますわ」
ナナリーの言葉に皆が僕の方を見た。
「『絶対』と言う言葉はあまり言いたくありませんが、治したいとの願いが強くあれば良い方向に向かうものだと信じて治療をさせて貰っています。
もし、宜しければ僕に治療をさせて貰えませんか?」
僕はコンプレックスに囚われているリノに真剣な表情で頭を下げた。
「そんな、頭を上げてください。
治療をお願いする方が頭を下げるのならば分かりますが、治療を施す方が頭を下げてお願いするなんて……」
「それがナオキなんだから仕方ないと思うわ。
自分の前に困っている人や悲しんでいる人が居たら無差別に手を差し伸べたくなるみたいなの。
まあ、女性限定なのが残念なところなんでしょうけどね」
ふたりのやり取りを横で聞いていたリリスがため息をひとつついてそう言った。
「俺も出来れば受けてみて欲しいと思う」
ロギスもナナリーの意見に賛同してナオキの治療を受けるように促す。
「先日も俺が担当していた少女を治療して貰ったが彼の治癒魔法は俺達の技術とかどうとかでは理解出来ない領域にあって張り合うのが馬鹿らしくなるくらいだ。
だが、彼が本気で患者のために治療をするならば治せないものは無いだろうと思う。
正直言って悔しいけどな」
ロギスはそう言うと椅子から立ち上がってソファに向かい、深く腰を下ろして腕を組んでじっと僕達を見ながら黙り込んだ。
「どうされますか?」
僕の言葉に考え込んでいたリノは顔を上げてはっきりと言った。
「治療をお願いします」
「分かりました。
では、そのままで良いので気持ちを落ち着けて深呼吸をしてください。
目は瞑られていても良いですし、僕を見ていても良いですよ」
「大丈夫。ナオキ様の治療は痛みを伴う事は無いですから。
安心して身を委ねていたら良いですよ」
緊張で固くなっているリノの肩に手を置いてナナリーが優しい言葉をかけた。
「うん。大丈夫……。
ありがとう」
「では、始めますね」
僕はそうリノに告げるといつものように魔力溜まりのある胸に手を添えた。
「――完全治癒」
いつものように魔力の注入が始まりリノは開いていた目をそっと閉じた。
「なんだか、身体が火照ってきた感じがします。
じわじわと今まで感じた事の無い感覚が広がってますけどそれで良いのですよね?」
「リノ、大丈夫。
その感覚が収まる時にあなたの願いはきっと叶うはずだからそのままその感覚に身を委ねていてね」
肩に手を置いたままのナナリーがリノにアドバイスをする。
本来ならばリリスが受け持つ役目だが、今回ばかりはナナリーの方が適任だった。
「そろそろ治療が終わりますが、もう少しだけ目を瞑ったままでいてください。
顔に多少の違和感があるかもしれませんが僕を信じて任せてください」
僕はそうリノに伝えると祈りを込めて治療を完了させた。
「おおっ!?」
「凄い……」
「これは……」
皆が驚きの声をあげるのも無理はなかった。
「ナオキ。ちょっとこれはやりすぎなんじゃないの?」
リノの姿を見たリリスが大きくため息をついて僕にそう告げた。
「皆さん、一体どうしたのですか?
私の顔、どうなったのですか?」
リノは周りの人達が驚くばかりで治ったとも駄目だったとも言わないので不安になって僕に問いかけた。
「リリス、彼女に鏡を渡してあげてくれないか?
こういうのは自分の目で確認しないと信じられないだろうからね」
僕は安堵感からひとつ息を吐くとリリスに手鏡を持ってきて貰った。
「どうぞ。自分の目で確かめてください」
僕はリリスから預かった手鏡をリノに渡してそう告げた。
リノは恐る恐る手鏡を使い、自分の顔を確認する。
そこには、見る度に苦しくなる程に化粧で荒れて黒く変色した大量のソバカスは全て消え、若くて瑞々しい肌が写っていた。
「これが私の顔? 本当に?」
リノはその現実を受け止めきれずに手鏡を持った手の反対側の手で自分の顔を触ってみる。
「触れる。ちゃんと手も鏡に写ってる。
死ぬほど悩んだ。自分の顔を見るのが嫌で鏡を見なくなった私の顔が……」
リノはそこまで呟くと、突然大きな声をあげながら泣き出した。
「うわぁぁぁん! 私、わたし……」
泣きじゃくるリノの後ろからナナリーが抱きしめて「良かったね」と繰り返す。
全てをじっと見ていたロギスもホッとした表情で息を吐いた。
「これで、ナオキの治癒魔法は怪我や病気以外にも先天性のアザやソバカスまで治せる上に、荒れた肌まで治す事が出来るのが証明された訳だけどその事はこの場だけで一般には広めないでください」
リリスは突然そう宣言して、理由を続けた。
「ナオキの治癒魔法は領都で大勢の患者を治療してきたから、骨折から部位欠損まで治療出来る事は周知されているのだけど、先天性のアザとかの治療はまだあまり知られていないわ。
その上で肌の修復まで話が広まったらそれを目当てに軽度の患者が押し寄せてきて私達が重点的に治療したい重症患者の治療に支障が出るのは間違いないわ。
だから、この場の人達だけの話にしておいて欲しいの」
リリスの言葉にその場にいた全員が頷くとリリスは「ありがとうございます」とお礼を言った。
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