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第102話【閑話 ナナリーの助手奮闘録②】
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「ふわぁ……おはようございます」
次の日の朝、私が少し寝坊をして食堂に来た時にはふたりは朝食をほぼ食べ終わろうとしていた。
「もう少し早く起きた方が良いわよ」
リリスの言葉に「ごめんなさい。仕事内容の確認をしていたら寝るのが遅くなって寝坊をしてしまいました」と慌てて謝った。
「熱心なのは良いけど時間の遅刻は相手に与える印象の中でも一番初めに与える悪い印象になるから気をつけてね」
「はい。ごめんなさい」
しゅんとなる私にナオキが「まあ、患者さんの約束に遅れた訳じゃ無いんだから」とフォローをしてくれた。
「私は今から斡旋ギルドへ向かうから、あなたは朝食後にナオキと一緒に薬師ギルドへ行ってロギスさんに案内をして貰ってね。
何か不測の事態があれば連絡をお願いね」
食事を終えたリリスはそう言うと椅子から立ち上がりカバンを持って「じゃあ行ってくるわね」と宿を出たのを確認すると私は慌てて朝食を食べてからナオキ様と一緒に薬師ギルドへと向かった。
「――おはようございます」
薬師ギルドのドアを開けると独特の薬草の香りが店舗に広がる。
「おう、来たか。
ナオキ治癒士とナナリー嬢。
話はアーリー様から聞いているから詳しい説明は要らない。
じゃあ予定どおり2件ほど訪問するからな」
ギルドではロギスが準備をして待っていた。
「宜しくお願いしますロギスさん」
私が挨拶をするとロギスは「ああ、宜しく頼む」と返してくる。
「それじゃあ向かいますか。
案内を宜しくお願いしますね」
ナオキがロギスに先導を頼むとカバンを持ったロギスが頷いてギルドのドアを開けた。
「――この家です。
患者は私の担当で8歳の少女、症状は背中に傷を負った為に下半身が動かない重症だ。
もはや薬で治療出来るレベルではなく本人も両親も諦めている状態だ」
「僕の事はどこまで話されていますか?」
ナオキがロギスに確認する。
「領都から来た腕の良い魔術士が診てくれると言ってある。
すまないが、この街では治癒士では知名度が低くて理解出来ないので魔術士と言ってあるんだ」
「そうですか。魔法で治す行為が魔術士の範囲ならばそれも仕方ないかもしれませんね」
ナオキとロギスの会話を聞きながら私はロギスの対応に少しの不満を覚えていた。
(いくら知名度が無い職業だとしてもナオキ様の治癒士を魔術士として説明するのは違うの思うんだけどな、まあナオキ様が不満を言われないからこの場では黙っておくけど……。
っと、いけない。 患者さんの家に入るのに不機嫌な顔を見せては駄目ね。
冷静にならなくちゃ)
私は深呼吸をひとつするとふたりの後について患者の家に入った。
中に入ると患者の両親と思われる二人が出迎えてくれ、ロギスと言葉を交わしていた。
「どうぞ、こちらになります」
父親の案内で患者の部屋に案内された私達はベッドに上半身を起こした少女に出会う。
「ナナリー、治療の説明と同意書の準備を頼むよ」
ナオキの言葉に私は頷いてカバンから同意書を取り出す。
「では、治療に関する説明をさせて頂きます……」
私はリリスから教えられた通りの説明を本人及び両親に対して行うが、3人からは『とても信じられない』との雰囲気がありありと見て取れた。
「本当に大丈夫なんでしょうか?」
その後、母親がそう聞いたのは私やナオキでは無くロギスに対してだった。
「そう思われるのは無理もないですが彼の治療は次元の違う神がかったものです。
私では治してあげられなかった怪我ですが彼ならばきっと上手くいくと私が保証します」
「分かりました。
ロギスさんがそこまで言われるのならばお願いします」
ロギスの言葉にようやく頷き同意書にサインをしてくれた。
「ありがとうございます。
では治療を始めますのでお嬢さんは横になられて頂けますか?」
知名度の無い自分達の言葉は信用に難しい事を実感しながら私は手順にそって少女のサポートをする。
「では、ナオキ様。
治療をお願いします」
少女の準備が出来た事を確認した私がナオキに治療を促すと彼はひとつ頷くと少女の前に立ち、手をかざして魔法を唱えた。
(えっ? 直接触らないの?)
私が疑問に思っているとナオキは「状態確認《スキャン》」と唱え患者の状態を確認してから「では、治療を始めます。
完全治癒《ヒール》」といつものように手を添えてから魔法を唱えた。
魔法発動後、魔力注入が始まると少女の身体から淡い光が発せられる。
それを心配そうに見つめる両親に気がついた私は「大丈夫ですよ。私も彼に治療して貰った事があるのですが痛みなどは無く、気がついたら治ってましたよ」と言いながら微笑みかけた。
やがて少女の治療が終わり、ナオキがゆっくりと手を離して微笑みながら少女に問う。
「ゆっくりと足を動かしてみてください」
少女は恐る恐る言われたとおりに足に力を入れて動かしてみる。
「動く……。
わたしの足が動かせたわ。
もう、2度と動かす事は叶わないと諦めていたのに……。
ううっ……うわぁーーん」
少女は込み上げてくる感情を堪えきれずに声をあげて泣いた。
* * *
「――本当にありがとうございました」
治療を終えた私達をお礼と共に見送ってくれた3人の表情は皆明るかった。
ナオキ様はいつもの事と言わんばかりに笑みを浮かべて感謝の言葉を受けるだけで、同行したロギスさんが涙目で頭を下げていたのが印象的だった。
「ナオキ様、お疲れ様でした。
今日はもう一件治療の予定が入ってますけど一度休憩してからにしますか?」
「そうだね。昼食をとってから次にしようか」
「はい!」
――その後、もうひとりの患者も治療を完了させてその日の訪問治療は終わった。
次の日の朝、私が少し寝坊をして食堂に来た時にはふたりは朝食をほぼ食べ終わろうとしていた。
「もう少し早く起きた方が良いわよ」
リリスの言葉に「ごめんなさい。仕事内容の確認をしていたら寝るのが遅くなって寝坊をしてしまいました」と慌てて謝った。
「熱心なのは良いけど時間の遅刻は相手に与える印象の中でも一番初めに与える悪い印象になるから気をつけてね」
「はい。ごめんなさい」
しゅんとなる私にナオキが「まあ、患者さんの約束に遅れた訳じゃ無いんだから」とフォローをしてくれた。
「私は今から斡旋ギルドへ向かうから、あなたは朝食後にナオキと一緒に薬師ギルドへ行ってロギスさんに案内をして貰ってね。
何か不測の事態があれば連絡をお願いね」
食事を終えたリリスはそう言うと椅子から立ち上がりカバンを持って「じゃあ行ってくるわね」と宿を出たのを確認すると私は慌てて朝食を食べてからナオキ様と一緒に薬師ギルドへと向かった。
「――おはようございます」
薬師ギルドのドアを開けると独特の薬草の香りが店舗に広がる。
「おう、来たか。
ナオキ治癒士とナナリー嬢。
話はアーリー様から聞いているから詳しい説明は要らない。
じゃあ予定どおり2件ほど訪問するからな」
ギルドではロギスが準備をして待っていた。
「宜しくお願いしますロギスさん」
私が挨拶をするとロギスは「ああ、宜しく頼む」と返してくる。
「それじゃあ向かいますか。
案内を宜しくお願いしますね」
ナオキがロギスに先導を頼むとカバンを持ったロギスが頷いてギルドのドアを開けた。
「――この家です。
患者は私の担当で8歳の少女、症状は背中に傷を負った為に下半身が動かない重症だ。
もはや薬で治療出来るレベルではなく本人も両親も諦めている状態だ」
「僕の事はどこまで話されていますか?」
ナオキがロギスに確認する。
「領都から来た腕の良い魔術士が診てくれると言ってある。
すまないが、この街では治癒士では知名度が低くて理解出来ないので魔術士と言ってあるんだ」
「そうですか。魔法で治す行為が魔術士の範囲ならばそれも仕方ないかもしれませんね」
ナオキとロギスの会話を聞きながら私はロギスの対応に少しの不満を覚えていた。
(いくら知名度が無い職業だとしてもナオキ様の治癒士を魔術士として説明するのは違うの思うんだけどな、まあナオキ様が不満を言われないからこの場では黙っておくけど……。
っと、いけない。 患者さんの家に入るのに不機嫌な顔を見せては駄目ね。
冷静にならなくちゃ)
私は深呼吸をひとつするとふたりの後について患者の家に入った。
中に入ると患者の両親と思われる二人が出迎えてくれ、ロギスと言葉を交わしていた。
「どうぞ、こちらになります」
父親の案内で患者の部屋に案内された私達はベッドに上半身を起こした少女に出会う。
「ナナリー、治療の説明と同意書の準備を頼むよ」
ナオキの言葉に私は頷いてカバンから同意書を取り出す。
「では、治療に関する説明をさせて頂きます……」
私はリリスから教えられた通りの説明を本人及び両親に対して行うが、3人からは『とても信じられない』との雰囲気がありありと見て取れた。
「本当に大丈夫なんでしょうか?」
その後、母親がそう聞いたのは私やナオキでは無くロギスに対してだった。
「そう思われるのは無理もないですが彼の治療は次元の違う神がかったものです。
私では治してあげられなかった怪我ですが彼ならばきっと上手くいくと私が保証します」
「分かりました。
ロギスさんがそこまで言われるのならばお願いします」
ロギスの言葉にようやく頷き同意書にサインをしてくれた。
「ありがとうございます。
では治療を始めますのでお嬢さんは横になられて頂けますか?」
知名度の無い自分達の言葉は信用に難しい事を実感しながら私は手順にそって少女のサポートをする。
「では、ナオキ様。
治療をお願いします」
少女の準備が出来た事を確認した私がナオキに治療を促すと彼はひとつ頷くと少女の前に立ち、手をかざして魔法を唱えた。
(えっ? 直接触らないの?)
私が疑問に思っているとナオキは「状態確認《スキャン》」と唱え患者の状態を確認してから「では、治療を始めます。
完全治癒《ヒール》」といつものように手を添えてから魔法を唱えた。
魔法発動後、魔力注入が始まると少女の身体から淡い光が発せられる。
それを心配そうに見つめる両親に気がついた私は「大丈夫ですよ。私も彼に治療して貰った事があるのですが痛みなどは無く、気がついたら治ってましたよ」と言いながら微笑みかけた。
やがて少女の治療が終わり、ナオキがゆっくりと手を離して微笑みながら少女に問う。
「ゆっくりと足を動かしてみてください」
少女は恐る恐る言われたとおりに足に力を入れて動かしてみる。
「動く……。
わたしの足が動かせたわ。
もう、2度と動かす事は叶わないと諦めていたのに……。
ううっ……うわぁーーん」
少女は込み上げてくる感情を堪えきれずに声をあげて泣いた。
* * *
「――本当にありがとうございました」
治療を終えた私達をお礼と共に見送ってくれた3人の表情は皆明るかった。
ナオキ様はいつもの事と言わんばかりに笑みを浮かべて感謝の言葉を受けるだけで、同行したロギスさんが涙目で頭を下げていたのが印象的だった。
「ナオキ様、お疲れ様でした。
今日はもう一件治療の予定が入ってますけど一度休憩してからにしますか?」
「そうだね。昼食をとってから次にしようか」
「はい!」
――その後、もうひとりの患者も治療を完了させてその日の訪問治療は終わった。
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