女性限定の『触れて治癒する』治療方法に批判が殺到して廃業を考えたが結果が凄すぎて思ったよりも受け入れて貰えた

夢幻の翼

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第105話【魔宝石の価値】

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「この魔宝石は専門の職人を斡旋ギルドで紹介して貰って作ったんだ」

「魔宝石を作った?」

「うん。
 もともと魔宝石はただの魔石だという事は知ってるかな?
 魔石自体はそれほど特別な石じゃなくて鉱山から採れる鉱石のひとつなんだけど……」

「もちろん知ってるわよ。
 正確な作り方は専門の技術者でないと分からないけど、たしか『魔石に魔術士が魔法を埋め込んで作る』と聞いた事があるわ。
 合っているかは見たことが無いから分からないけど……」

「さすがリリスだね。
 そこまで知っているならば答えは簡単でしょ?
 商業ギルドで魔石を買って斡旋ギルドで加工の技術者を紹介して貰って僕が魔法を埋め込んだんだ。
 上手く行くかは賭けだったけど『魔石の色が変わったから成功だ』と言われたから安心したよ」

 僕はそう言いながらネックレスを手にしてリリスの首に手を回して付けてあげた。

「ああ、良かった。
 真紅の宝石になったから君に似合うかどうかが心配だったんだ。
 うん。とてもよく似合っている、綺麗だよ」

 ネックレスをかけてもらったリリスは頬を赤らめながら鏡の前に立ち、その魔宝石の美しさに見惚れていた。

「綺麗ね……。
 でも、こんな宝石を首からぶら下げて歩いていたら悪党ホイホイにならないか心配だわ」

「しまった。それは考えていなかったよ。
 日頃は服の中に入れておくのが良いかもしれないね」

 僕は頭を掻きながら反省の弁を述べる。

「ふふっ。そうするわね。
 ところでナオキの魔法ならば『治癒魔法』よね?
 それで、この魔宝石にはどんな効果がついたの?」

 リリスは僕からのプレゼントに舞い上がっていて、深くは考えずに聞いてきた。

「ああ、調べて貰ったら『継続治癒』の効果が付与されたと教えて貰ったよ。
 僕が付与したかったものとはかけ離れていた効果だったけど『このサイズの魔石だとこれが限界』だって言われたから今回は諦めたんだ。
 いつかもっと良いものをプレゼント出来るように頑張るからね」

 僕の説明にリリスは魔宝石を握りしめたまま固まっていた。

「ナオキ……。
 いま『継続治癒の付与』って言わなかった?」

 リリスは魔宝石を見つめ固まったまま僕に聞く。

「言ったよ?
 でも継続治癒ってそれほど凄いものじゃないよね?
 せいぜい『動いていても疲れにくくなる』とか『転んで擦りむいても直ぐに治る』とか『風邪をひかなくなる』くらいの効果しかないんだよ?」

 僕がなんでもない事のように話すとリリスが直ぐに反論をした。

「それって普通じゃないからね。
 だいたい、魔法を付与すると言っても『火』の魔法を付与した魔宝石があると野営時に火起こしの必要が無くなるとか『水』の魔法を付与した魔宝石だとバケツに水を汲む必要が無くなるくらいの恩恵しか無いでしょ?
 その程度の事に高額の対価を払う価値が無いから、実際は『黒い魔石を綺麗に輝く魔宝石にする為に付与している』のが現実でしょ?
 それを、実用レベルの付与をしておいて『たいした事ない』とか言わないで欲しいわね」

「そう言えば、付与職人が鑑定して驚いた顔をしていたような気もするな。
 そうか、あれはそう言う意味だったのか……」

 僕がリリスの分析に感心していると彼女はため息をついてトドメの言葉を言った。

「まあ、現状このネックレスは間違いなく『国宝級』でしょうね」

「え? この程度で!?」

 驚く僕にリリスは呆れた顔でコクリと頷くと「それが普通なのよ」と教えてくれた。

「ま、まあでもせっかく用意したんだから受け取ってくれると嬉しいな」

「もちろんよ。
 ナオキが私のために作ってくれたネックレスを受け取らない訳にはいかないでしょ?」

「はは、そう言ってもらえると作った『かい』があると言うものだよ」

 僕は安堵のため息をつくと「じゃあ早めに休んで明日に備えようか」と早々にベッドに入った。

   *   *   *

 ――次の日の朝。僕達はほぼ同時に目を覚ましてなんとなくお互い照れながら着替えて朝食に向かった。

「おはよう。良く眠れたかい?」

「ええ、思ったよりもぐっすりと眠れたと思うわ」

 そんな言葉を掛け合っていると朝食が運ばれて来たのでこれからの予定を話しながらゆっくりと食事を進めた。

「おはようございます」

 完全にふたりの世界に入り込んでいた僕達を現実の世界に引き戻したのは少しよそよそしい感じのナナリーだった。

「すみません。
 声をかけない方が良かったかも知れないですけど、リリスさんの依頼が完了したので今日から案内所に戻るようにと言われたので挨拶をしておかないといけないと思って……。
 あの、教会に行かれるのですか?」

 どうやら周りが見えていなかった僕達は少しばかり声の大きさが大きかったらしく、側に来ていたナナリーには全部聞こえていたらしかった。

「あ、ごめんなさい。少しばかりうるさかったかしらね。
 ええ、この後に行ってみようと思ってるの。
 あなたは行った事はあるのかしら?」

「昔、母親について行った事はありますけど最近は無いですね。
 でも綺麗な建物ですよね」

「そうだね。僕も建物は見たことあるけど中には入った事が無いからちょっと楽しみかな。
 ああ、それよりも長い間リリスの代わりに助手を務めてくれてありがとう。
 本当に助かったよ」

「あなたの仕事ぶりはナオキから聞いてるわ。
 私からもお礼を言わせてね。ありがとう。
 今回は別のひとの教育だったけどあなたも少しやれば直ぐにギルドの受付嬢くらいこなせるようになるわ。頑張ってね」

「はい。その時はリリスさんにお願いしたいですね」

「タイミングが合えば考えておくわ」

「あ、もうこんな時間。
 じゃあ私は案内所に行きますので……また案内所にも寄ってくださいね」

 ナナリーはそう言うと慌てて宿を出て行った。

「いい娘だよね。頑張って夢を叶えられるといいね」

 僕はそう言うと残っていた朝食を食べ進めた。
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