122 / 159
第122話【国王との面会に必要なこと】
しおりを挟む
次の日、僕達は斡旋ギルドのマスターへ面会希望を出した。
ここでも伯爵のお墨付きが役に立ち少しばかり待っただけで面会の許可を貰うことが出来た。
「――君が噂の治癒士かい?」
先に通された応接室に背の高い壮年の男性が入ってくるなり僕を見てそう言った。
「噂のかどうかは分かりませんが、治癒士をしているナオキと言います。
この度は急な訪問にもかかわらず面会をしてくれてありがとうございます」
僕が挨拶をして頭を下げるとその男性も自己紹介を始めた。
「王都斡旋ギルドの長をしているガイルだ。
それで今日はどんな用件だ?
これでも忙しい身だから手短に頼むぞ」
ガイルはそう言うと僕達の前なソファに座った。
「僕はアーロンド伯爵様の領内でそれなりの数の人々を治療してきました。
伯爵領内では薬師ギルドとの兼ね合いで僕の出来る事はやりきりましたのでもっと多くの僕を必要としているであろう王都に来てみたのです。
しかし、僕は王都ではほとんど無名ですので国王様に面会して王都で治療をする許可を頂きたいと考え、どうしたら国王様と面会が出来るか考えた結果、多少なりとも融通のきく斡旋ギルドから面会の許可をお願いして貰えないかと思い、お願いにあがった次第です」
「うーむ。確かに君は伯爵領内でそれなりの成果を出している事はギルド便経由で聞き及んでいるが国王様ともなるとそう簡単に会えるものではないぞ」
「王都の斡旋ギルドマスターでも難しい事ですか?」
ガイルは腕を組んで「うーむ」と唸りながら考えを巡らせる。
「何かメリットはあるか?」
「え?」
「俺が君を国王様と面会させる労力と時間に見合うものを君は差し出せるか? と聞いているんだ」
「そうですね。
僕は治癒士なので人を治療する事しか出来ません。
あ、いえ先日馬の治療も出来ましたので、もしかしたら他の生き物でも治療が出来るかもしれません」
「治療……か。この王都には優秀な薬師や他ではあまり居ない魔術士も何人かはギルドに所属している。少しばかり治療が得意でも王都では通用しないぞ」
ガイルは腕を組んだまま、厳しい表情で僕の答えを待つ。
「そうですね。
少しばかりでは難しいでしょうけど僕はこれでも『女神の加護を受けし者』として世の中に恩返しをしています。
その能力が必要な時はあなたに協力しましょう」
「いや、だがら王都には治療の出来る者が……」
「彼らには出来ない範囲(部位欠損修復等)の治療が僕には出来ます。但し、女性限定という制約はありますが……」
ガイルの言葉を食い気味にすぐさま反論する僕にまた「うーむ」と唸ると『パンッ』と膝を叩き、「そこまで言うならば見せてもらおうか」とソファから立ち上がった。
「――ついてこい。
今の時間ならば書庫に居るだろう」
ガイルはそう言うと応接室から出て建物の奥へと僕達を連れていく。
――コンコン。
「俺だ。入るぞ」
ガイルはドア越しに声をかけてから部屋へと入る。
「ここだ。入っていいぞ」
ガイルの言葉に僕は頷きリリスと共に部屋へ入るとまだ10代前半くらいの若い女性がテーブルに本を積み上げて書類の整理をしていた。
「サラサ。ちょっといいか?」
ガイルはサラサと呼んだ女性に確認をすると彼女はガイルと僕達を見てコクリと頷く。
それを見たガイルは僕を見て説明をしてくれた。
「彼女の名前はサラサと言う。俺の娘の子供、つまり俺の孫娘だ。
サラサは生まれつき声を出す事が出来ない。
この子が産まれた時に産声をあげなかったので初めは生きているのか死んでいるのか分からなかったそうだ。
だが、心臓は動いているし泣こうとする仕草はあったので生きていると喜んだものだ。
しかし、やはり不憫《ふびん》に思った俺は今の立場を使って色々な伝手をあたりこの子の治療を試したが誰一人治せる者は居なかった。
声が出せないために今はギルドの事務として働いてもらっているがいつかとの思いはあった。
もし、君がサラサを治療出来たならば君の要望を全力で支援する事を約束するがどうだ、やってみるか?」
ガイルは期待と諦めの狭間で僕に難題を持ちかける。
「もちろん治療させて貰いますよ。大丈夫です、同様の患者を治した経験もありますし、これでも女神様の祝福を授かりし者の一員です。
必ず治療を成功させて見せますよ」
僕はそう言うとリリスにいつもの誓約書をガイルに提示と説明を頼んだ。
「――ここに書かれている内容は間違い無いのか?」
誓約書の内容を読んだガイルが僕に確認を求めてくる。
内容が身体に触れる治療である為に確認される事は多かったので別段慌てる事もなく冷静に「はい」と答えた。
「そうか、報告どおりだな」
ガイルはそう言うとその誓約書をサラサに渡して内容の確認をさせる。
「サラサ、いいな?」
サラサは誓約書にサインをするとリリスに手渡し僕の前に立った。
「出来るだけ身体の力を抜いて欲しいのでベッドに横になるか、椅子でもゆったりとしたソファに座って貰えると治療がスムーズにいくのですがそういった場所はありませんか?」
「横になれる場所だな?
ならばギルドの宿直室を使えば良いだろう。
この奥の部屋になるからついてくるがいい」
ガイルが先に部屋から出るとサラサがその後をついて行った。
「――これでいいか?」
連れて来られた部屋には2つのベッドがあるだけの簡易部屋だった。
「――結構ですので治療を始めたいと思います。
始めに、誓約書にもあったように胸部に触れますが服の上からで大丈夫ですので横になられてリラックスをしていてください」
後ろからくるガイルの無言の圧力を感じながら僕は彼女の胸に手を重ねると治癒魔法をゆっくりと唱えた。
ここでも伯爵のお墨付きが役に立ち少しばかり待っただけで面会の許可を貰うことが出来た。
「――君が噂の治癒士かい?」
先に通された応接室に背の高い壮年の男性が入ってくるなり僕を見てそう言った。
「噂のかどうかは分かりませんが、治癒士をしているナオキと言います。
この度は急な訪問にもかかわらず面会をしてくれてありがとうございます」
僕が挨拶をして頭を下げるとその男性も自己紹介を始めた。
「王都斡旋ギルドの長をしているガイルだ。
それで今日はどんな用件だ?
これでも忙しい身だから手短に頼むぞ」
ガイルはそう言うと僕達の前なソファに座った。
「僕はアーロンド伯爵様の領内でそれなりの数の人々を治療してきました。
伯爵領内では薬師ギルドとの兼ね合いで僕の出来る事はやりきりましたのでもっと多くの僕を必要としているであろう王都に来てみたのです。
しかし、僕は王都ではほとんど無名ですので国王様に面会して王都で治療をする許可を頂きたいと考え、どうしたら国王様と面会が出来るか考えた結果、多少なりとも融通のきく斡旋ギルドから面会の許可をお願いして貰えないかと思い、お願いにあがった次第です」
「うーむ。確かに君は伯爵領内でそれなりの成果を出している事はギルド便経由で聞き及んでいるが国王様ともなるとそう簡単に会えるものではないぞ」
「王都の斡旋ギルドマスターでも難しい事ですか?」
ガイルは腕を組んで「うーむ」と唸りながら考えを巡らせる。
「何かメリットはあるか?」
「え?」
「俺が君を国王様と面会させる労力と時間に見合うものを君は差し出せるか? と聞いているんだ」
「そうですね。
僕は治癒士なので人を治療する事しか出来ません。
あ、いえ先日馬の治療も出来ましたので、もしかしたら他の生き物でも治療が出来るかもしれません」
「治療……か。この王都には優秀な薬師や他ではあまり居ない魔術士も何人かはギルドに所属している。少しばかり治療が得意でも王都では通用しないぞ」
ガイルは腕を組んだまま、厳しい表情で僕の答えを待つ。
「そうですね。
少しばかりでは難しいでしょうけど僕はこれでも『女神の加護を受けし者』として世の中に恩返しをしています。
その能力が必要な時はあなたに協力しましょう」
「いや、だがら王都には治療の出来る者が……」
「彼らには出来ない範囲(部位欠損修復等)の治療が僕には出来ます。但し、女性限定という制約はありますが……」
ガイルの言葉を食い気味にすぐさま反論する僕にまた「うーむ」と唸ると『パンッ』と膝を叩き、「そこまで言うならば見せてもらおうか」とソファから立ち上がった。
「――ついてこい。
今の時間ならば書庫に居るだろう」
ガイルはそう言うと応接室から出て建物の奥へと僕達を連れていく。
――コンコン。
「俺だ。入るぞ」
ガイルはドア越しに声をかけてから部屋へと入る。
「ここだ。入っていいぞ」
ガイルの言葉に僕は頷きリリスと共に部屋へ入るとまだ10代前半くらいの若い女性がテーブルに本を積み上げて書類の整理をしていた。
「サラサ。ちょっといいか?」
ガイルはサラサと呼んだ女性に確認をすると彼女はガイルと僕達を見てコクリと頷く。
それを見たガイルは僕を見て説明をしてくれた。
「彼女の名前はサラサと言う。俺の娘の子供、つまり俺の孫娘だ。
サラサは生まれつき声を出す事が出来ない。
この子が産まれた時に産声をあげなかったので初めは生きているのか死んでいるのか分からなかったそうだ。
だが、心臓は動いているし泣こうとする仕草はあったので生きていると喜んだものだ。
しかし、やはり不憫《ふびん》に思った俺は今の立場を使って色々な伝手をあたりこの子の治療を試したが誰一人治せる者は居なかった。
声が出せないために今はギルドの事務として働いてもらっているがいつかとの思いはあった。
もし、君がサラサを治療出来たならば君の要望を全力で支援する事を約束するがどうだ、やってみるか?」
ガイルは期待と諦めの狭間で僕に難題を持ちかける。
「もちろん治療させて貰いますよ。大丈夫です、同様の患者を治した経験もありますし、これでも女神様の祝福を授かりし者の一員です。
必ず治療を成功させて見せますよ」
僕はそう言うとリリスにいつもの誓約書をガイルに提示と説明を頼んだ。
「――ここに書かれている内容は間違い無いのか?」
誓約書の内容を読んだガイルが僕に確認を求めてくる。
内容が身体に触れる治療である為に確認される事は多かったので別段慌てる事もなく冷静に「はい」と答えた。
「そうか、報告どおりだな」
ガイルはそう言うとその誓約書をサラサに渡して内容の確認をさせる。
「サラサ、いいな?」
サラサは誓約書にサインをするとリリスに手渡し僕の前に立った。
「出来るだけ身体の力を抜いて欲しいのでベッドに横になるか、椅子でもゆったりとしたソファに座って貰えると治療がスムーズにいくのですがそういった場所はありませんか?」
「横になれる場所だな?
ならばギルドの宿直室を使えば良いだろう。
この奥の部屋になるからついてくるがいい」
ガイルが先に部屋から出るとサラサがその後をついて行った。
「――これでいいか?」
連れて来られた部屋には2つのベッドがあるだけの簡易部屋だった。
「――結構ですので治療を始めたいと思います。
始めに、誓約書にもあったように胸部に触れますが服の上からで大丈夫ですので横になられてリラックスをしていてください」
後ろからくるガイルの無言の圧力を感じながら僕は彼女の胸に手を重ねると治癒魔法をゆっくりと唱えた。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる