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第129話【奇跡の蘇生の代償】
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少しの間、抱き合った僕達はリリスの声で集まってきた人達に大丈夫だから少し待つように伝えてから離れた。
その時、ふとお互い上半身裸であることに気がつき慌てて服を整えてからドアを開けた。
「リリスさま、また声が聞こえましたが大丈夫でしたか?」
侍女がそう言って部屋に入るとそこに僕が立っていたので腰を抜かさんばかりに驚き思わず叫んでいた。
「ナオキさま!? ナオキさまが!!」
侍女の叫び声にまた人が集まって来たが、皆ナオキの姿を見ると驚きの表情を見せた。
「――女神様の祝福のおかげです」
驚く皆にリリスはそう答えた。
「ナオキ殿が生き返ったとは本当か!?」
奥の部屋から女王陛下がスカートを捲りあげながら飛び出して来た。
「陛下! はしたのうございます!」
さらにその後ろから宰相らしき初老の男性が駆けてくる。
「おお! なんと言う奇跡!」
女王陛下はそう叫ぶと僕にまっすぐに駆け寄りいきなり僕を抱きしめた。
「陛下ぁ!?」
初老の男性が後ろから悲鳴のような声で叫んだ。
「――いや、すまなかった。
ナオキ殿が亡くなったと聞いた時、どう恩返しをすれば良いか分からず宰相のダランと話し合っていた所だったのだ」
ダランと呼ばれた男性が女王陛下の肩に触れて僕から離れるように言うと女王陛下は渋々と僕から離れていった。
「それで、どうやったのだ?
完全に心臓は止まっていたのであろう?」
女王陛下の質問にリリスはありのままを話す訳にはいかず詳細をぼかしながら説明をした。
「――そうか、女神様の気まぐれか。ナオキ殿の今までの功績を見届けてくださっていたのだろう。
それで、体調の方はどうなのだ?」
「はい。起き上がっても大丈夫なくらいには回復しているようです」
「そうか、それは良かった。
何日でも良い、完全に回復するまで城に滞在しても良いからな」
女王陛下はそう言うと侍女達に何かあれば報告するようにと指示を出してからダランと執務室へと戻っていった。
その後、食事が運ばれて来てリリスと食べると女王陛下の言葉に甘えて回復に努めたが、今回の身体に与えたダメージは相当なものだったようで結局一週間ほど回復にかかってしまった。
「そろそろ大丈夫かな」
身体の違和感がほとんど無くなった事を感じた僕はリリスに手伝ってもらい、治癒魔法が使えるかのテストをする事にした。
「じゃあいくよ。
――完全治癒」
もう何度となく日課のように繰り返していたリリスへの治癒魔法を唱えた僕は愕然としていた。
「どうしたの?」
いつまでも始まらない魔力の注入にリリスが僕に聞いてくる。
「始まらないんだ……」
「え?」
「魔法は発動したみたいなんだけど魔力の注入が始まらないんだ」
僕はリリスに充てがっていた手のひらを見つめながら呟いた。
「能力が消えた?」
「そんな!? そんな事って……」
リリスが慌てた様子で僕の手を握りしめる。
「これが蘇生の代償なのか?」
今まで普通に出来ていた事が出来なくなる――まるで自分を否定されたような感覚に僕はふらふらとベッドへ倒れ込んだ。
「ナオキ……。
ま、まだ完全に回復していないだけよ。
そうよ、きっとそう。もう少し休めばきっと……」
リリスは僕にかける言葉を選びながら最悪のシナリオを考えないようにする。
「うん、わかってる。
それだけ今回の蘇生はイレギュラーな案件だったって事なんだよな……。
それは良く理解しているつもりなんだけど、いざ現実になるとかなり辛いものだね」
「女神様もナオキに今はゆっくり休みなさいと言ってるのよ。
それに……」
リリスはそう言うとベッドに倒れ込んだ僕の横に寝そべり優しく微笑みながら続けた。
「ねえ、このままカルカルへ帰らない?
向こうなら知り合いもたくさん居るし、ナオキの能力が完全に戻らなくても邪険にする人も居ないし、いざとなれば私がまた斡旋ギルドで働いてあなたを養ってあげるわ」
「リリス、ありがとう。
そうだな。それもいいかもしれないけれど僕にも何か出来る事を探すよ。
養われるだけは性に合わないからね」
僕がそう答えるとリリスは笑ってベッドから起き上がり「少しは落ち着いたみたいね。紅茶を淹れるから一緒に飲みましょう」とテーブルのポットに手をかけた。
* * *
「――少し話があるのだが身体の調子はどうだ?」
さらに数日が過ぎ、ようやく身体を巡る魔力を自分で感じられるようになった日、女王陛下が部屋を訪れてそう言った。
「どうされました?」
「あれからあのメイドの尋問をしたのだが少々厄介な事になっていてな。
あのときリリス殿から聞いた話を元にこちらもあらゆる手を尽くして情報を集めたのだが、どうやら今王都で民衆から支持を受けている占い師が黒幕であろうと判明したのだよ」
「やはりそうですか……。
しかし、なぜ急に女王陛下を襲うなどの暴挙に走ったのでしょうか?」
「うむ。あやつも我らと同じく神の祝福を受けし者なのだが少し未来が予測出来る能力と相手の言葉や表情から話し相手の考えている事を予測して相手の信用を得る能力を所持しているらしく、それによって自らの考えを実行させる手足となる信仰者を洗脳して今回の暴挙に走ったらしい」
「洗脳!? となるとあのメイドも……」
「まあ、そう言う事だな。
ただ、あやつに関しては既に城の牢屋にとらえておる。
女王に対する殺害未遂の黒幕としてな」
「えっ!? もうそんな事になってるんですか?」
(あの事件かあってからまだ10日程しか経っていないのだが、それで犯人を特定して拘束まで出来たのは女王陛下の特殊能力のせいなのか?)
僕は驚いて女王陛下に事の顛末を聞くと「ん? まあ少し長くなるがナオキ殿達にも無関係ではないので説明が必要であろう」と言い順を追って話してくれた。
その時、ふとお互い上半身裸であることに気がつき慌てて服を整えてからドアを開けた。
「リリスさま、また声が聞こえましたが大丈夫でしたか?」
侍女がそう言って部屋に入るとそこに僕が立っていたので腰を抜かさんばかりに驚き思わず叫んでいた。
「ナオキさま!? ナオキさまが!!」
侍女の叫び声にまた人が集まって来たが、皆ナオキの姿を見ると驚きの表情を見せた。
「――女神様の祝福のおかげです」
驚く皆にリリスはそう答えた。
「ナオキ殿が生き返ったとは本当か!?」
奥の部屋から女王陛下がスカートを捲りあげながら飛び出して来た。
「陛下! はしたのうございます!」
さらにその後ろから宰相らしき初老の男性が駆けてくる。
「おお! なんと言う奇跡!」
女王陛下はそう叫ぶと僕にまっすぐに駆け寄りいきなり僕を抱きしめた。
「陛下ぁ!?」
初老の男性が後ろから悲鳴のような声で叫んだ。
「――いや、すまなかった。
ナオキ殿が亡くなったと聞いた時、どう恩返しをすれば良いか分からず宰相のダランと話し合っていた所だったのだ」
ダランと呼ばれた男性が女王陛下の肩に触れて僕から離れるように言うと女王陛下は渋々と僕から離れていった。
「それで、どうやったのだ?
完全に心臓は止まっていたのであろう?」
女王陛下の質問にリリスはありのままを話す訳にはいかず詳細をぼかしながら説明をした。
「――そうか、女神様の気まぐれか。ナオキ殿の今までの功績を見届けてくださっていたのだろう。
それで、体調の方はどうなのだ?」
「はい。起き上がっても大丈夫なくらいには回復しているようです」
「そうか、それは良かった。
何日でも良い、完全に回復するまで城に滞在しても良いからな」
女王陛下はそう言うと侍女達に何かあれば報告するようにと指示を出してからダランと執務室へと戻っていった。
その後、食事が運ばれて来てリリスと食べると女王陛下の言葉に甘えて回復に努めたが、今回の身体に与えたダメージは相当なものだったようで結局一週間ほど回復にかかってしまった。
「そろそろ大丈夫かな」
身体の違和感がほとんど無くなった事を感じた僕はリリスに手伝ってもらい、治癒魔法が使えるかのテストをする事にした。
「じゃあいくよ。
――完全治癒」
もう何度となく日課のように繰り返していたリリスへの治癒魔法を唱えた僕は愕然としていた。
「どうしたの?」
いつまでも始まらない魔力の注入にリリスが僕に聞いてくる。
「始まらないんだ……」
「え?」
「魔法は発動したみたいなんだけど魔力の注入が始まらないんだ」
僕はリリスに充てがっていた手のひらを見つめながら呟いた。
「能力が消えた?」
「そんな!? そんな事って……」
リリスが慌てた様子で僕の手を握りしめる。
「これが蘇生の代償なのか?」
今まで普通に出来ていた事が出来なくなる――まるで自分を否定されたような感覚に僕はふらふらとベッドへ倒れ込んだ。
「ナオキ……。
ま、まだ完全に回復していないだけよ。
そうよ、きっとそう。もう少し休めばきっと……」
リリスは僕にかける言葉を選びながら最悪のシナリオを考えないようにする。
「うん、わかってる。
それだけ今回の蘇生はイレギュラーな案件だったって事なんだよな……。
それは良く理解しているつもりなんだけど、いざ現実になるとかなり辛いものだね」
「女神様もナオキに今はゆっくり休みなさいと言ってるのよ。
それに……」
リリスはそう言うとベッドに倒れ込んだ僕の横に寝そべり優しく微笑みながら続けた。
「ねえ、このままカルカルへ帰らない?
向こうなら知り合いもたくさん居るし、ナオキの能力が完全に戻らなくても邪険にする人も居ないし、いざとなれば私がまた斡旋ギルドで働いてあなたを養ってあげるわ」
「リリス、ありがとう。
そうだな。それもいいかもしれないけれど僕にも何か出来る事を探すよ。
養われるだけは性に合わないからね」
僕がそう答えるとリリスは笑ってベッドから起き上がり「少しは落ち着いたみたいね。紅茶を淹れるから一緒に飲みましょう」とテーブルのポットに手をかけた。
* * *
「――少し話があるのだが身体の調子はどうだ?」
さらに数日が過ぎ、ようやく身体を巡る魔力を自分で感じられるようになった日、女王陛下が部屋を訪れてそう言った。
「どうされました?」
「あれからあのメイドの尋問をしたのだが少々厄介な事になっていてな。
あのときリリス殿から聞いた話を元にこちらもあらゆる手を尽くして情報を集めたのだが、どうやら今王都で民衆から支持を受けている占い師が黒幕であろうと判明したのだよ」
「やはりそうですか……。
しかし、なぜ急に女王陛下を襲うなどの暴挙に走ったのでしょうか?」
「うむ。あやつも我らと同じく神の祝福を受けし者なのだが少し未来が予測出来る能力と相手の言葉や表情から話し相手の考えている事を予測して相手の信用を得る能力を所持しているらしく、それによって自らの考えを実行させる手足となる信仰者を洗脳して今回の暴挙に走ったらしい」
「洗脳!? となるとあのメイドも……」
「まあ、そう言う事だな。
ただ、あやつに関しては既に城の牢屋にとらえておる。
女王に対する殺害未遂の黒幕としてな」
「えっ!? もうそんな事になってるんですか?」
(あの事件かあってからまだ10日程しか経っていないのだが、それで犯人を特定して拘束まで出来たのは女王陛下の特殊能力のせいなのか?)
僕は驚いて女王陛下に事の顛末を聞くと「ん? まあ少し長くなるがナオキ殿達にも無関係ではないので説明が必要であろう」と言い順を追って話してくれた。
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