女性限定の『触れて治癒する』治療方法に批判が殺到して廃業を考えたが結果が凄すぎて思ったよりも受け入れて貰えた

夢幻の翼

文字の大きさ
149 / 159

第149話【ケーキに魅了された女達】

しおりを挟む
「凄くおいしい!!
 これが噂の有名店の味!
 カルカルにもお店を出してくれたらいいのにね」

「だから職人が居ないって言ってるじゃないの」

「それは分かってるけど……なんとかならないかなぁ」

 ほとんどの女の子達は初めて食べるショートケーキに驚きと感動を交互に出しながら美味しく食べる。

「ああ、もう無くなった……」

 食べれば当然なくなるのが当たり前なのだが彼女達は非常に残念そうにそう呟きあっていた。

「これをまた食べるとなると領都へ行かなければいけない……。
 けどケーキを食べたいがためだけに領都まで行くのは時間的にもお金的にも難しいわよね。どうしたものか……」

 彼女達はあまりに美味しかったケーキに魅了されてなんとかもう一度満足するまで食べてみたいと領都へ行く方法を考えだした。

「そうだ良いことを思いついた!
 今年の研修は領都本部を見学したいと言って順番に行けるようにラーズギルマスに提案書を出すのはどうかな?
 仕事を前面に出せば上手く行けば無理やり長期の休暇を取らなくても交通費付で領都まで行けるかもしれないわ」

「それ良いかも! いつもラーズギルマスは私達に勉強しろと言ってるし、視察研修ならば稟議が通るかもしれないわね」

 女子達は『それはいい案だわ』と発案者を褒めるが、リリスの一言で固まってしまう事になる。

「あー、そのやり方は私が前にやってそのまま退職した苦い思い出がラーズギルマスにはあるから通用するか分からないわよ。
 それに、もし稟議が通っても行けるのは中堅のひとりか多くてもふたりまでだと思うわね。
 そして、もし上手く行けたとしても帰ってきてからの報告書地獄と行けなかったメンバーからのやっかみが凄い事になりそうね」

 リリスの鋭い分析にその場にいた女の子達は「はあ、やっぱり無理か」とため息をついた。

「まあ、そんなに落ち込まなくても……。
 なかなか無いかもしれないけれど、もしまた私達が領都に行く事があったら代理購入を頼まれてあげるから元気をだしてよ」

「本当!! 絶対だよ!
 それで次はいつ行くの?」

 リリスの話に一斉に食いつく元同僚達に若干引きながら「そんなにすぐには行かないわよ!」とすぐさま突っ込んだ。

「ごちそうさまでした。
 本当に美味しかったわ」

 元同僚達の感謝の言葉に笑顔で応えたリリスは紅茶を飲みながら自分が居なかった時の事やこれからの事を話してすごした。

「――それでこれからどうするつもりなの?」

「とりあえず新しい屋敷を建てるまでギルドの保養施設を間借りする形になるみたいね。
 聞いてるだけだけど約半年から一年ってところらしいわ」

「あー、あそこかぁ。
 あそこは部屋数も多いし広いから快適にすごせるわよね。
 ねえ、一応あそこってギルドの施設じゃない?
 私達が遊びに行ってもいいのかな?」

「急にじゃなければ大丈夫だと思うけど、それこそラーズギルマスに確認したほうが良いかもしれないわね。
 私達はあまり気にしないけどナオキは貴族の一員になったからその辺の立場的なものがどうかよね」

「あっ! そうかぁ。
 リリスの旦那さんは貴族様になったんだっけ?
 それってリリスも貴族になったの?」

「一応、貴族の妻とはなるそうだけど彼は名誉爵位の貴族だからあくまで本人のみの称号なの。
 だから、立場的には私は平民のままとなるの。
 だから彼と一緒に行動する時は貴族の妻で、ひとりで行動する時は平民と同等になる結構面倒な立場ね」

「へぇ、そうなんだね。
 じゃあ、名誉爵位ってどんな仕事をするの?
 私は初めて聞く爵位だからよく知らないのよね」

「私も説明を受けただけだからはっきりとは分からないんだけど、領地経営をしない貴族で生きている間は生涯貴族給与という生活費が支給されるから仕事は好きに決めていいみたいなの。
 儲けてもいいし、地域に還元する事をしてもいい。
 極端な事を言えば拠点をカルカルにもって国中を視察と言う名の旅をしてもいいみたいね。
 もちろんそんな事はしないけどね」

 リリスはそう言うと僕の側に来て小さな声で聞いてきた。

「ナオキ的にはどうしたい?」

「――そうだな」

 僕は前から考えていた事を返す。

「前から思ってたんだけどカルカルに帰ったら一度、僕がこの世界に来た神木の場所へ行ってみたいと思ってたんだ。
 別にそこへ行っても女神様に会える訳でも元の世界に帰る訳でも無いんだけど、僕にとってのこの世界の原点だからそこで女神様に祈りと感謝を言いたいと思ってるんだ」

 僕の言葉にリリスは表情を曇らせて「本当に居なくならない?」と僕の腕を握りしめた。

「ああ、元の世界へ帰るとかは絶対に無いから安心していいよ。
 だって、こっちの世界に来るときに女神様に「元の世界の身体はもう無いから諦めてね」と言われたんだからね。
 それに、もし帰るとしてもリリスを置いて帰るなんて選択肢はあり得ないからね」

「そう……よね。
 絶対、絶対、絶対に約束してね。
 もし、破ったら一生許さないから……」

「あー、なんだか暑くなってきたわねー」

「そうね。特にこの辺りから凄い熱量が漂ってきてるみたいねー」

「いいなぁ。私も早くいい人見つけないと嫁に行き遅れちゃう」

 小さな声で話していたはずだったがいつの間にか声が大きくなっていたようで、まわりの女の子達から熱い冷やかしの言葉攻めにあった僕達は顔を赤くして冷や汗をかいていた。

「――今日はお土産を本当にありがとうね」

「とっても美味しかったわ。またお願いね」

 楽しいお茶会となったお土産披露会は無事に終わり、帰ろうとした矢先にラーズギルマスから呼び止められた。

「お、やっと話が終わったか。
 なあ、さっきのケーキは領都の甘味屋のやつだろう?
 もうひとつ無いか?」

「どうしたんですか?
 まさかひとつじゃ足りなかったんですか?」

 リリスはジト目でラーズを見る。

「いや、俺は食べてないが家で待っている妻と娘に持って帰ってやりたくてな。
 ひとつだと喧嘩になるのが目に見えてるからなんとかならないかなと思ってな」

「そういう事でしたら……。
 でも、貸しひとつですよ。
 また何かあったら力を貸してくださいね」

 リリスは僕からもうひとつケーキを受け取ってからラーズへ渡した。

「すまない。 恩に着るぞ」

 ラーズはそう言うと「すまないが俺はもう帰るから何かあればサブマスへ頼んでくれ」と言い残してギルドを後にした。

「ラーズギルマスも愛妻家であり愛娘も大切にしているんだね。
 でも、リリスも相当に優しいね。今のケーキ最後のひとつだったんだけど……」

 それを聞いたリリスは「ま、まあね。これも今後の投資と思えば安いものよね」と顔を引きつらせながら強がった。

 それを見た僕は(本当はもうひとつあるけど今度リリスが落ち込んだ時にでもそっと出すことにしよう)とほくそ笑んでいた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...