異世界カードSHOP『リアのカード工房』本日開店です 〜女神に貰ったカード化スキルは皆を笑顔にさせるギフトでした〜

夢幻の翼

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第29話 商業ギルドからの依頼

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 冒険者ギルドで営業活動をした次の日は予想通り大混雑を極めた。客足が減っていたので断っていたフィーたちも急遽応援に来てもらい滞りなく接客は出来たように思う。だけど、分かっていたことだが食料品関係が圧倒的に足りなくて急遽パンとスープだけでもとお願いして届けて貰ったのだ。

「今日は久しぶりに忙しかったですね」

 閉店後にフィーがそう言って笑う。

「わざわざ冒険者ギルドまで営業に行ったからね。これでお客が増えなかったらどうしようかと思っていましたよ」

 売上を数えながら私がそう返した時、フィーが思い出したように私に告げる。

「あ、そういえばギルドマスターから指名依頼がありましたよ。明日の朝にでもギルドに顔を出してくださいね」

「指名依頼ですか? どういった内容なのですか?」

「私も詳しくは聞いていませんが、ギルドに登録している商人からの依頼のようです。まだ、実績の少ないリアさんに大きな仕事をさせて知名度をあげ、借入金の返済を進めたいのでしょう」

 フィーの話から前にカロリーナが言っていた荷物のカード化についてであろうと予測をするが、実際に行ってみなければ分からないと思い私はフィーに明日の朝に顔を出すと伝えたのだった。まあ、借入金がある限り問答無用のような気もするけどね。

 ――リンリン

 翌朝、自分の店がまだ開店していない時間帯に私は商業ギルドに顔を出した。とりあえずカロリーナから話を聞くことに。朝が早いというのにカロリーナは既にギルドに出勤してきており直ぐに面会することが出来たのだ。

「おはようございます。リアさん」

 彼女は朝から仕事が立て込んでいると言って私を応接室ではなくて、ギルドマスターの執務室で話をすることになる。

「おはようございます。フィーさんから聞きましたけど、私に依頼があるそうですね。どういった内容なのですか?」

 私の問いかけに彼女は書類の処理をしている手を止めて私の方を見る。

「前に一度話したことがあったと思うのだけれど、大量の荷物運搬を運ぶ必要が出て来たの。だけど、大量の荷物を運ぶだけの馬車と御者が確保出来なくてね。そこで、リアさんの出番となったわけ」

 つまりは、その大量の荷物とやらを復元条件を付けたカード化して欲しいとの依頼ですね。わかります。

「なるほど。確かに、私のスキルを使えば相当量の荷物も馬車一台どころか馬一頭とその乗り手が居れば済みますからね。ただ、どこまで運ぶつもりか知りませんが帰りは殆ど荷物を運べないと思ってくださいね。あ、もちろん私は一緒に行きませんからね」

 当然である。私が居ないと意味がないやり方は全く考えていない。そもそも、開店したばかりのお店を放置して別の町まで行ってくるなんて冗談ではない。断固拒否をさせてもらうつもりだ。

「それは十分に理解しているつもりよ。リアさんを相手側に向かわせることは考えていないわ」

 カロリーナはそう言って今回の詳細を教えてくれる。その内容は大方の予想通りで往復の物資輸送で儲けるつもりではなく、担当する商会と受け取る相手側に恩を売るのが目的らしかった。

「品物は? どれくらいの量があるの? いつまでに必要?」

 自分が行かなくても良いと言質をとった私はすぐに仕事の段取りをとるべく彼女にそう問いかける。私だって自分のお店があるのだから、いくらギルドマスターからの指名依頼だと言われても何時でもどうぞとはいかないのだ。

「出来るだけ早くと言われているから、今日のお店が閉店してから来て貰えるかしら? それまでにギルド裏手に運びたい荷物とひも付してもらいたい人物を準備しておくわ」

 カロリーナは私にそう伝えると再び書類に目を落とす。よほど忙しいのだろうが、何かあったのだろうか?

「分かりました。では、閉店後に伺いますね」

 カロリーナの忙しい姿は少し気になったが、私も店の開店時間が迫って来ていたので慌ててギルドを飛び出して開店準備を急いだのだった。

「――ありがとうございました。またのご利用よろしくお願いします」

 冒険者ギルドでの宣伝が功を称したのと、一度楽を経験した者は苦労をすることに戻れないと言われるように普通より少しだけ多くのお金を払うだけで得られるものの効果は凄まじかったようで、その日も冒険者からの問い合わせは増え続けていた。

「それにしても冒険者の方は沢山買って行かれますよね。食事に関しても一人で十食も二十食も買う強者も居るようですし」

「ははっ。まあ、野営時の食事準備って結構面倒だからねぇ。そもそも料理が出来ない人もいるんだし、パーティー内での持ち回りとかは嫌がられるうえ女性ばかりに押し付けていると更に喧嘩にも発展するからなぁ」

 ようやく客の流れが落ち着いた時、一息ついたフィーに私がそう返す。すると、思い出したようにフィーがギルドに寄せられている依頼について話を聞かせてくれる。

「最近はその特需にあやかって自分の店の商品もこの店に置いてくれるように頼んで欲しいとギルドにも相談が寄せられているようですよ。私は最近、こちらの手伝いが多いので直接言われたわけではありませんが……」

「そうなのですね。私も最初にお願いしたお店以外との取引は時間がとれないので止めていますから」

 そんな話の中でふと思い出したことをフィーに尋ねてみた。

「そういえば、ギルマスのカロリーナさんがめちゃくちゃ忙しそうだったけど何かあるの?」

「ああ、そういえばリアさんってこの町に来てまだ一年経っていませんでしたね。実は来月には町全体で行う祝典祭があるんです。その祭りに出店する出店の申請書類の確認やいろいろな調整をするのに謀殺されているのです。まあ、毎年のことなんで私たちギルドの職員はこの時期の風物詩のように捉えていますけどね」

 なるほど。それで、彼女はあんなに忙しそうにしていたのか……。しかし、祝典祭か。儲けの匂いがぷんぷんしてくるわね。

 その日の閉店後、私はカロリーナとの約束のために商業ギルドに顔を出した。まあ、元々隣なのだから特に大変なことではない。

「待っていましたよ」

 私が指定されていた裏手に回ると彼女と担当の職員、そして見知らぬ男性が私を待っていてくれた。

「待たせました?」

 私はそう返しながら、そこにずらりと並べられている馬車を見てため息をつく。少なくとも十台以上あるぞこれ。もしかしなくてもこれ全部カードにする必要があるんだろうな。

「これ、全部ですか?」

 ここに用意されているからには全部なのは明らかだが、念の為にカロリーナに問いかけてみた。

「そうね。ここにある馬車に積み込まれた荷物全てをお願いするわ」

「……高いですよ?」

 私がジト目で彼女にそう言うと微笑みながら「構いませんよ」と返してくる。これは少しばかり借金を減らすチャンスかもしれない。

「――それで、どういった形をお望みですか?」

 私の言っている意味は『この荷物をどう分けてカード化するか?』を聞いているのだ。十数台に渡る荷車に積み込まれた荷物を全て別々にカード化するのはあまりにも非効率的だ。そもそも荷のリストと照らし合わせながら作業するとなると徹夜をしても終わるかどうか分からない。そんなブラック労働は御免こうむるよ。

「そうね。逆に私が問いたいのはリアさんのスキルでどれだけ大きなものをカードに出来るのか? それが知りたいわ」

 そういえば限界チャレンジはしてなかったな。多分だけど馬車の荷車ひとつくらいは大丈夫だと思うけど……。

「ちょっと試してみますね。圧縮――」

 私はそう言って馬車の荷車に手をやり、スキルを発動させる。これで出来なかったら個別にやるしかないだろうと考えていたが、そんなことは杞憂に終わり私の手にはカード化された荷物を積んだ荷車カードが握られていた。

「とりあえず、荷車一台は大丈夫そうですね。あ、でもこのままだと向こうで復元した際に荷車を運ぶ馬がいないことになりますね。やっぱり個別にカード化しないと駄目かぁ」

 私がそう言って苦笑いをしながらカードを復元しようとした時、それを見ていた男性が驚いた声でそれを止めた。

「いやいや。これで全く問題ありませんよ。残りの荷物も同じようにお願いします」

「え? でも、馬は生きているからカードに出来ませんよ?」

「存じております。今回は、この荷車ごと買い取ってもらいますから問題ありません」

 なるほど。確かに荷車ごとの引き渡しで、向こうにいる馬を連れて来れば移動は出来る。それで先方と話がついているのなら私がとやかく言う問題ではない。

「分かりました。では、残りもすぐに処理をしますね。その後で私の店に来てください。カードとあなたをひも付しますので……」

 私はそう言って次々と荷車をカードにしていったのだった。全て個別に……って言われなくて本当に良かったと思う。
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