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第32話 祝典祭の二日目
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フィーの脅しにビクつきながらも無事に一日目は終了した。あの女性客が来てからは一時間に十人程度と閑古鳥が鳴くほど暇ではないが、それほど忙しいとも言えない客数だった。
「あ、リアさん。昨日はお疲れ様でした。思っていたよりもお客が少なくて驚きましたよ」
ギルドに顔を出した私を見つけたフィーがそう言いながら傍に来て一枚の書類を渡してくる。
「何ですか、これ?」
私はそう問い返しながらもその書類を読んでみることに。そこにはカロリーナからの指示が書かれており、何時にどこへ行くようにといった内容だった。
「これ、持ち場を離れて向かえという指示書ですよね? ここを離れても大丈夫なのですか?」
「それが、カロリーナ様の指示なら問題ないです。多分ですけど、その指示書に書かれているところって大物商品を扱っている店ばかりだと思いますよ」
「ああ、なるほど。そういうことね」
いくらギルドに持ち込めばカード化して貰えるといっても、それ以前にギルドまで運ぶ手段のない者にとっては無理な相談をしているに等しい。だが時間限定とはいえ、その店に私が出向いていれば話は変わってくる。私が店を訪れる前に購入まで済ませた人に限りその場でカード化して貰えるとしたら……。まあ、爆売れ間違いないだろう。
「まあ、行くのは構わないけど私は店の場所を知らないわよ」
「私がついて行くので大丈夫ですよ。大手のお店ばかりですし商業ギルドの受付をやっていれば皆知っているのが当たり前レベルのお店ですから」
フィーはそう言うと「ちょっとギルドでの仕事の引継ぎをしてきますね」と、どこかに消えて行く。
「行動が早い娘よね。まあ、助かるけど……」
やがて、ギルドが開く時間になると朝から大勢の客が押し寄せてくる。こんな朝一番に来るなんて驚きだわ。
「――カード化のご依頼ですか? 対象の品物はどちらでしょうか? 効果は商業ギルドが保証していますのでご安心ください――」
なかなか列が途切れないくらいにお客が来るので毎回復元を試させるわけにもいかず、カロリーナの許可をとってカード化効果の全責任は商業ギルドにあるとしてもらった。そうでもしなければ初めての客が多く、不安の声が聞こえて来たからだ。
「あ、リアさん。もう少ししたら移動をしないと指定の時間に間に合いませんよ」
会計を手伝ってくれていたフィーが急にそんなことを言い出す。だが、まだ客足は途絶える気配はない。
「どうする? 今並んでいる人までやってそれ以降は断るとかかな?」
「仕方ないですね。私が列切りをしますので、なるはやで片づけてくださいね」
フィーはそう言って私の窓口に並ぶ人の最後尾に走って行く。とにかく早く済ませないと駄目そうね。
「はい、次の方……」
それから、私は説明もそこそこに並んでいた客の荷物をカード化すると魔道具を鞄に詰めてからフィーと一緒に指定の場所に走る。少々無理をしたので時間はかなり押し迫っていた。
「うわぁ。やっぱり無理しすぎたかな? 昼ごはんを食べる時間もないじゃないの」
私とフィーは祭りで人が多く行き交う大通りを、人波を縫うように急いで目的の店へ向かう。その過程であたりから漂う美味しそうな匂いに釣られそうになりながらもフィーの背中を睨みつけながら進んだのだった。
「なんとか間に合いましたね」
「お昼ご飯を食べる暇はなさそうだけどね」
ちょうどお昼どきで私のお腹がぐうと鳴る。なにか食べるものが欲しいな。
「十分……。いや、五分でいいから何か食べない? お腹が空きすぎて、このままだと仕事に支障が出るわよ」
店に入ってしまえば確実にそのまま仕事を押し付けられるに決まっている。今の私のお腹を満たす事は何を置いても重要なことだ。
「しかたありませんね。私が先に入って説明と準備をしておきますからリアさんは五分したら入って来てくださいね」
本当に五分しかくれないのか……。その事実に苦笑いをしながらも私は建物の前にある広場のベンチに座り急いで鞄からサンドイッチを取り出した。もちろんカード化してあるものを。
「解放――」
私はいつものようにカードを復元してさっそくサンドイッチを頬張った。ベーコンと卵と葉物野菜が挟まれた所謂BLTサンドというやつだ。
「はー。美味しい」
たった五分しかないのだ。ゆっくり味を堪能している暇はないのは分かっているが、それでも食事は優雅に美味しく食べたいものだ。私は約束の五分ぎりぎりまで食事を堪能してから修羅の時間が待っているであろう地獄の扉をゆっくりと開いたのだった。
「あ、リアさん。こっちですよ」
お店に足を踏み入れた私の姿をフィーが目ざとく見つけて声をかけてくる。彼女も昼食を摂っていないはずなのに何故あんなに元気なのだろうか?
「はーい。今、行きますよ」
私はフィーに向けて軽く手をあげて返事をすると彼女の方へ向けて歩き出す。しかし、彼女の横にずらりと並ぶ人々に列に気が付いた私の頬が引き攣るのが分かる。
「うわぁ。これ、何人いるんだろ?」
呟くように言いながらフィーの傍に辿りつくと彼女からとんでもないことが言い渡された。
「今日の最大予約人数は三百人と聞いています。それ以上はお断りをさせて頂いているので安心してくださいね」
「安心できるかぁ!」と叫びたい気持ちをぐっと堪えながら私は最初の依頼者の前に立つのだった。今日、無事に帰れるのかな?
「あ、リアさん。昨日はお疲れ様でした。思っていたよりもお客が少なくて驚きましたよ」
ギルドに顔を出した私を見つけたフィーがそう言いながら傍に来て一枚の書類を渡してくる。
「何ですか、これ?」
私はそう問い返しながらもその書類を読んでみることに。そこにはカロリーナからの指示が書かれており、何時にどこへ行くようにといった内容だった。
「これ、持ち場を離れて向かえという指示書ですよね? ここを離れても大丈夫なのですか?」
「それが、カロリーナ様の指示なら問題ないです。多分ですけど、その指示書に書かれているところって大物商品を扱っている店ばかりだと思いますよ」
「ああ、なるほど。そういうことね」
いくらギルドに持ち込めばカード化して貰えるといっても、それ以前にギルドまで運ぶ手段のない者にとっては無理な相談をしているに等しい。だが時間限定とはいえ、その店に私が出向いていれば話は変わってくる。私が店を訪れる前に購入まで済ませた人に限りその場でカード化して貰えるとしたら……。まあ、爆売れ間違いないだろう。
「まあ、行くのは構わないけど私は店の場所を知らないわよ」
「私がついて行くので大丈夫ですよ。大手のお店ばかりですし商業ギルドの受付をやっていれば皆知っているのが当たり前レベルのお店ですから」
フィーはそう言うと「ちょっとギルドでの仕事の引継ぎをしてきますね」と、どこかに消えて行く。
「行動が早い娘よね。まあ、助かるけど……」
やがて、ギルドが開く時間になると朝から大勢の客が押し寄せてくる。こんな朝一番に来るなんて驚きだわ。
「――カード化のご依頼ですか? 対象の品物はどちらでしょうか? 効果は商業ギルドが保証していますのでご安心ください――」
なかなか列が途切れないくらいにお客が来るので毎回復元を試させるわけにもいかず、カロリーナの許可をとってカード化効果の全責任は商業ギルドにあるとしてもらった。そうでもしなければ初めての客が多く、不安の声が聞こえて来たからだ。
「あ、リアさん。もう少ししたら移動をしないと指定の時間に間に合いませんよ」
会計を手伝ってくれていたフィーが急にそんなことを言い出す。だが、まだ客足は途絶える気配はない。
「どうする? 今並んでいる人までやってそれ以降は断るとかかな?」
「仕方ないですね。私が列切りをしますので、なるはやで片づけてくださいね」
フィーはそう言って私の窓口に並ぶ人の最後尾に走って行く。とにかく早く済ませないと駄目そうね。
「はい、次の方……」
それから、私は説明もそこそこに並んでいた客の荷物をカード化すると魔道具を鞄に詰めてからフィーと一緒に指定の場所に走る。少々無理をしたので時間はかなり押し迫っていた。
「うわぁ。やっぱり無理しすぎたかな? 昼ごはんを食べる時間もないじゃないの」
私とフィーは祭りで人が多く行き交う大通りを、人波を縫うように急いで目的の店へ向かう。その過程であたりから漂う美味しそうな匂いに釣られそうになりながらもフィーの背中を睨みつけながら進んだのだった。
「なんとか間に合いましたね」
「お昼ご飯を食べる暇はなさそうだけどね」
ちょうどお昼どきで私のお腹がぐうと鳴る。なにか食べるものが欲しいな。
「十分……。いや、五分でいいから何か食べない? お腹が空きすぎて、このままだと仕事に支障が出るわよ」
店に入ってしまえば確実にそのまま仕事を押し付けられるに決まっている。今の私のお腹を満たす事は何を置いても重要なことだ。
「しかたありませんね。私が先に入って説明と準備をしておきますからリアさんは五分したら入って来てくださいね」
本当に五分しかくれないのか……。その事実に苦笑いをしながらも私は建物の前にある広場のベンチに座り急いで鞄からサンドイッチを取り出した。もちろんカード化してあるものを。
「解放――」
私はいつものようにカードを復元してさっそくサンドイッチを頬張った。ベーコンと卵と葉物野菜が挟まれた所謂BLTサンドというやつだ。
「はー。美味しい」
たった五分しかないのだ。ゆっくり味を堪能している暇はないのは分かっているが、それでも食事は優雅に美味しく食べたいものだ。私は約束の五分ぎりぎりまで食事を堪能してから修羅の時間が待っているであろう地獄の扉をゆっくりと開いたのだった。
「あ、リアさん。こっちですよ」
お店に足を踏み入れた私の姿をフィーが目ざとく見つけて声をかけてくる。彼女も昼食を摂っていないはずなのに何故あんなに元気なのだろうか?
「はーい。今、行きますよ」
私はフィーに向けて軽く手をあげて返事をすると彼女の方へ向けて歩き出す。しかし、彼女の横にずらりと並ぶ人々に列に気が付いた私の頬が引き攣るのが分かる。
「うわぁ。これ、何人いるんだろ?」
呟くように言いながらフィーの傍に辿りつくと彼女からとんでもないことが言い渡された。
「今日の最大予約人数は三百人と聞いています。それ以上はお断りをさせて頂いているので安心してくださいね」
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