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11話 朝のくつろぎの時
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朝になったディモの寝室に光が差し込む。気持ちよさそうに眠っているディモの横で剣が輝き始める。光が収まった後には人型に戻ったヘレーナの姿があり、服装はイメージで変えられるようで寝間着姿であった。動けるようになったヘレーナは幸せそうに眠っているディモに抱き着くと、幸せそうな顔になるのだった。
「……。お姉ちゃん。お姉ちゃん!」
「んん! あと八時間……」
「起きて! あと八時間も寝れないよ! そして放して! そんなにくっつかれたら動けない!」
「ん? ああ。おはよう。ディモの身体は温かいて柔らかいね。だからお休み……」
「『だから』の意味が分からないよ! 起きてよ! 朝ご飯を食べようよ!」
ディモの声にやっと目が覚めたヘレーナは諦めたように目を開ける。身動きが取れないディモは困った表情をしており、その表情も可愛いと思いながら二度寝しようと再び目を閉じようとしたが、腕の中からスルリと抜けられると逃げられてしまった。
「ああ! 至上の温もりが……」
「顔を洗って! ご飯の用意をしておくから!」
残念そうに呟くヘレーナにディモが笑いながら応える。布団でもぞもぞとしているヘレーナを見ながら、ディモは寝室を出てキッチンに向かう。キッチンは旅立つ前に綺麗にしていたのですぐにでも使える状態だった。
「用意していたお肉が残ってるから、それを使って朝ご飯を作ろう! お姉ちゃんは朝からたくさん食べそうだもんね。喜んでくれるかな?」
ディモは背負い袋から塩漬けしにしてた肉を取り出して塩抜きを始める。その間に乾燥ポテトを使ってスープを大量に作り、旅用に準備していたパンを温めて柔らかくしてテーブルに並べる。さらに肉は野菜と一緒に調理をして皿の上に山盛りにした。ディモだけなら三食分はありそうな量を作っていると、欠伸をしながらヘレーナが食堂に入ってくる。
「いい匂いががするね。ディモが作ってくれたのかい?」
「そうだよ。丁度、出来上がったところだから席について! 飲み物はコーヒーでいいよね」
「酒は?」
「朝からお酒は飲まないよね? 冗談が好きなんだからお姉ちゃんは。晩御飯の時には用意するね」
「それは楽しみだね。まずはディモが作ってくれた朝食を食べようか」
何気ない発言にヘレーナの顔が破顔する。今日は夜まで一緒であるとのディモの宣言に大喜びをしているとは気付かず、朝食が食べられるのを喜んでいると思うディモだった。喜んで朝食を食べているヘレーナを嬉しそうに見ながらディモはコーヒーを飲んでいた。大量に作った朝食は無くなりかけており、そのほとんどをヘレーナが食べていた。
「それにしてもディモの作った料理は美味しいね。この腕なら王宮の料理長にもなれるね」
「それは言い過ぎだよ。お姉ちゃん。でも、お母さんが残してくれたレシピを参考に作ってるから、それだけ美味しそうに食べてもらえるとお母さんも喜んでくれると思う。頑張って作って良かったよ」
ディモがコーヒーを息を吹きかけ冷ましながら呟くとヘレーナの顔が歪む。そして悲しそうな顔で絞り出すように謝罪した。
「ごめんよ。つらい事を思い出させたかい?」
「え? 大丈夫だよ! だってお姉ちゃんがいるからね! 一人だったら簡単にしか作らないから、お母さんのレシピは使わないんだよ。だから、いっぱい食べてくれるお姉ちゃんがいて本当に嬉しいよ! えっ? ど、どうしたの? 鼻血を出して! た、大変! ど、どうしよう……」
「だ、大丈夫だよ! これくらいな問題ないよ。すぐに回復魔法を使うから(あまりの可愛さに鼻血が出るほど興奮したじゃないか!)」
満面の笑みを浮かべながら答えた天使笑顔を見て、興奮のあまり鼻血を出したヘレーナを心配したディモだったが、ヘレーナは何でもないと答えると回復魔法を唱えて鼻血を止め、残っている朝食を勢いよく平らげるのだった。
◇□◇□◇□
「今日の予定はなにかあったかい? なければディモと一緒に二度寝をしたいけど?」
「今日は教会に行くよ。神父様がお姉ちゃんに会いたがっているから。二度寝なんてしないでよ?」
「でも、ディモは筋肉痛だろ? 本当は動くのも辛いはずだけど?」
「っ! な、なんで分かるの?」
ヘレーナの言葉にディモは言葉が詰まる。確かに朝起きた時点で全身が筋肉痛で悲鳴を上げていた。隣に寝ていた人型になったヘレーナが抱きついているのに気づいて、驚きのあまり痛みを忘れて動けたが、それ以降は筋肉痛に苛まれながらも、ヘレーナに気付かれないようにしていたつもりだった。
「そりゃあ。お姉ちゃんだからね! ただ、その筋肉痛は私がディモの身体を使って戦ったから、動かしてない筋肉が悲鳴を上げているんだよ。それを回復魔法で癒したら成長がないから、そのままにしといておくれ。本当は寝た方が成長しやすいんだけどね。神父の所に行くんだろ?」
「うん。確かに最初は筋肉痛がツラかったけど、今はずいぶんとマシだよ……。痛ぃ! 酷いよお姉ちゃん!」
「はっはっは。ごめんよ。痛いのを我慢しているディモ見たらついね」
我慢しながら筋肉痛が問題ないと伝えたディモに、ヘレーナが指先で筋肉痛になっているところを突く。あまりの痛さにびっくりしながら悲鳴を上げるディモにヘレーナは笑い声を上げるのだった。
「……。お姉ちゃん。お姉ちゃん!」
「んん! あと八時間……」
「起きて! あと八時間も寝れないよ! そして放して! そんなにくっつかれたら動けない!」
「ん? ああ。おはよう。ディモの身体は温かいて柔らかいね。だからお休み……」
「『だから』の意味が分からないよ! 起きてよ! 朝ご飯を食べようよ!」
ディモの声にやっと目が覚めたヘレーナは諦めたように目を開ける。身動きが取れないディモは困った表情をしており、その表情も可愛いと思いながら二度寝しようと再び目を閉じようとしたが、腕の中からスルリと抜けられると逃げられてしまった。
「ああ! 至上の温もりが……」
「顔を洗って! ご飯の用意をしておくから!」
残念そうに呟くヘレーナにディモが笑いながら応える。布団でもぞもぞとしているヘレーナを見ながら、ディモは寝室を出てキッチンに向かう。キッチンは旅立つ前に綺麗にしていたのですぐにでも使える状態だった。
「用意していたお肉が残ってるから、それを使って朝ご飯を作ろう! お姉ちゃんは朝からたくさん食べそうだもんね。喜んでくれるかな?」
ディモは背負い袋から塩漬けしにしてた肉を取り出して塩抜きを始める。その間に乾燥ポテトを使ってスープを大量に作り、旅用に準備していたパンを温めて柔らかくしてテーブルに並べる。さらに肉は野菜と一緒に調理をして皿の上に山盛りにした。ディモだけなら三食分はありそうな量を作っていると、欠伸をしながらヘレーナが食堂に入ってくる。
「いい匂いががするね。ディモが作ってくれたのかい?」
「そうだよ。丁度、出来上がったところだから席について! 飲み物はコーヒーでいいよね」
「酒は?」
「朝からお酒は飲まないよね? 冗談が好きなんだからお姉ちゃんは。晩御飯の時には用意するね」
「それは楽しみだね。まずはディモが作ってくれた朝食を食べようか」
何気ない発言にヘレーナの顔が破顔する。今日は夜まで一緒であるとのディモの宣言に大喜びをしているとは気付かず、朝食が食べられるのを喜んでいると思うディモだった。喜んで朝食を食べているヘレーナを嬉しそうに見ながらディモはコーヒーを飲んでいた。大量に作った朝食は無くなりかけており、そのほとんどをヘレーナが食べていた。
「それにしてもディモの作った料理は美味しいね。この腕なら王宮の料理長にもなれるね」
「それは言い過ぎだよ。お姉ちゃん。でも、お母さんが残してくれたレシピを参考に作ってるから、それだけ美味しそうに食べてもらえるとお母さんも喜んでくれると思う。頑張って作って良かったよ」
ディモがコーヒーを息を吹きかけ冷ましながら呟くとヘレーナの顔が歪む。そして悲しそうな顔で絞り出すように謝罪した。
「ごめんよ。つらい事を思い出させたかい?」
「え? 大丈夫だよ! だってお姉ちゃんがいるからね! 一人だったら簡単にしか作らないから、お母さんのレシピは使わないんだよ。だから、いっぱい食べてくれるお姉ちゃんがいて本当に嬉しいよ! えっ? ど、どうしたの? 鼻血を出して! た、大変! ど、どうしよう……」
「だ、大丈夫だよ! これくらいな問題ないよ。すぐに回復魔法を使うから(あまりの可愛さに鼻血が出るほど興奮したじゃないか!)」
満面の笑みを浮かべながら答えた天使笑顔を見て、興奮のあまり鼻血を出したヘレーナを心配したディモだったが、ヘレーナは何でもないと答えると回復魔法を唱えて鼻血を止め、残っている朝食を勢いよく平らげるのだった。
◇□◇□◇□
「今日の予定はなにかあったかい? なければディモと一緒に二度寝をしたいけど?」
「今日は教会に行くよ。神父様がお姉ちゃんに会いたがっているから。二度寝なんてしないでよ?」
「でも、ディモは筋肉痛だろ? 本当は動くのも辛いはずだけど?」
「っ! な、なんで分かるの?」
ヘレーナの言葉にディモは言葉が詰まる。確かに朝起きた時点で全身が筋肉痛で悲鳴を上げていた。隣に寝ていた人型になったヘレーナが抱きついているのに気づいて、驚きのあまり痛みを忘れて動けたが、それ以降は筋肉痛に苛まれながらも、ヘレーナに気付かれないようにしていたつもりだった。
「そりゃあ。お姉ちゃんだからね! ただ、その筋肉痛は私がディモの身体を使って戦ったから、動かしてない筋肉が悲鳴を上げているんだよ。それを回復魔法で癒したら成長がないから、そのままにしといておくれ。本当は寝た方が成長しやすいんだけどね。神父の所に行くんだろ?」
「うん。確かに最初は筋肉痛がツラかったけど、今はずいぶんとマシだよ……。痛ぃ! 酷いよお姉ちゃん!」
「はっはっは。ごめんよ。痛いのを我慢しているディモ見たらついね」
我慢しながら筋肉痛が問題ないと伝えたディモに、ヘレーナが指先で筋肉痛になっているところを突く。あまりの痛さにびっくりしながら悲鳴を上げるディモにヘレーナは笑い声を上げるのだった。
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