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13話 道具屋でも買い物
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「ふっふふーん♪ 私はお姉ちゃんー。ディモのお姉ちゃんー♪」
教会からの帰り道。ヘレーナは超ご機嫌でスキップしながら歩いていた。筋肉痛が取れたディモだったが、そのスピードに一苦労しながら付いていっていた。二人は旅の準備をするために村の商店街に向かっており、神父から資金提供を受けたディモは金額の多さに驚いていた。
「まさか神父様から金貨を五枚ももらえるなんて。しっかりと役割を果たさないとダメだよね! ねえ。お姉ちゃん」
「ふふっ。金貨五枚で大喜びしているディモも可愛い。でも、これからの旅を考えると、これだけじゃあ心許ないね。私が倒した魔物を換金しておこうか? ディモ。魔物の肉や魔石を買い取ってくれる場所に連れてっておくれ。はっ! 二人で一緒に買い物? 初めての共同作業? どうしよう? ドキドキするね」
「なに言ってるの! もう一緒に戦ってるよ? あと、道具屋さんはマイクさんのおじいちゃんがやっているんだよ。あっ! この店だよ。お姉ちゃん! 止まって! 勢いよすぎだよ!」
二人で買い物する話で、さらにテンションが上がりスキップのスピードが上がったヘレーナを慌てて止めると店の中に入った。いつもと様子が違う店内にディモが戸惑う。普段は日の光で商品が傷まないように窓を閉めている店内だが、今は魔道具による照明が灯されており商品も一目瞭然で分かるようになっていた。
「いらっしゃい! おぉ! ディモじゃないか。待ってたんだよ」
「えっ? ま、待ってた? 僕をですか?」
「ああ。そうだよ。不思議か? まあ、今までの対応を考えたらそうじゃろうな」
いつも邪険に扱われていたディモにとって、明るい店内に爽やかな接客。にこやかに話しかけてくる店主。どれをとっても違和感しかなかった。それはマイクの祖父も思っていたようで、苦笑しながら説明を始める。
「今までは先祖からの引き継ぎに従い、神剣様が復活した際に討伐された魔物の買い取りで困られないように金を貯めて来たんじゃ。そう、来たるべき時に備えていたのだよ。そして、その来たるべき時がやってきた。だからもう金を貯める必要もない。マイクの阿呆には引き継ぎが足りなかったが、神父様が教育してくださるからな」
「じゃあ、魔物と魔石を買い取ってもらおうか? 大量にあるけど買い取ってくれるんだろ?」
「もちろんです。ヘレーナ様。そのために我ら一族は蓄財を続けていたのですから」
道具屋の店主はヘレーナの問いかけに嬉しそうにしながら、収納された魔物や魔石を査定していくのだった。次々に取り出される魔物と魔石。あまりの数に店主が驚きながらも最後まで鑑定を行い、一度奥に入ると小さな革袋を持って戻ってきた。受け取ったディモが中身を確認すると、その金貨の多さに驚く。
「うわぁ。物凄い金額だね。お姉ちゃん」
「当然だよ。ディモ。これだけ完璧な姿で血抜きもされている。魔石も綺麗に取り出している。今までなら全部で金貨五枚と買い叩いていたが、これからはその必要もない。金貨十五枚で買い取らせてもらったよ」
「き、きんかじゅうごまい……。ちなみに今日出てきた僕の魔石の値段は……」
おずおずとした感じで魔石を取り出したディモから受け取った店主は目を光らせる。真剣な表情で鑑定した後にレジから金貨を取り出して手渡してきた。
「ディモ。いい仕事をするようになったな。これなら金貨三枚で買い取ろう。ちなみに今までなら銀貨三枚で買い取りだな」
「今までどれだけディモから金をむしり取ってたんだい!」
「その通りです。ヘレーナ様。それが我ら一族の使命でしたので。稼いだ資金で他の封印石にも支店を出しております。これからは正規の金額で買い取りをしますので、そちらでも魔物の買い取りをして頂けると助かります。それと、これは今後の旅の資金です」
店主から渡された金額にディモは驚きの表情をしていたが、ヘレーナは当然とばかりに受け取る。そして店の中を見渡しすと買い物を始めた。新しい外套に帽子、旅用の靴に服や下着に生活用の魔石各種。さらにテントや寝袋も購入する。大量に積み上げられていく商品にディモの顔が引き攣っているとヘレーナが不満そうに言い放った。
「これくらいで我慢しておくかね。あまり満載にすると他が買い物できないからね。支払いは?」
「金貨一〇枚ですが、八枚で構いませんよ」
「安いね。他の封印石にある店の品揃えも期待するよ」
ヘレーナと店主のやり取りを呆然と見ていたディモだったが、そんな姿もヘレーナにとっては可愛く映ったようで微笑ましそうに眺めていた。そして、その他の商店街でも大量の食材などを買い込んだヘレーナは楽しそうにしながらディモと歩いていた。
「ね、ねえ。お姉ちゃん? 収納魔法は?」
「ああ。そろそろ量が限界なんだよね。家まではディモが持ってくれるかい? 身体を鍛えるためにも必要な修行と思ってくれたらいいよ」
「わ、分かったよ! 僕頑張るよ!」
大荷物をフラフラとしながら持っているディモが苦しそうに問い掛けたが、ヘレーナから修行であると伝えられると気合いを入れ荷物を持ち直すのだった。
教会からの帰り道。ヘレーナは超ご機嫌でスキップしながら歩いていた。筋肉痛が取れたディモだったが、そのスピードに一苦労しながら付いていっていた。二人は旅の準備をするために村の商店街に向かっており、神父から資金提供を受けたディモは金額の多さに驚いていた。
「まさか神父様から金貨を五枚ももらえるなんて。しっかりと役割を果たさないとダメだよね! ねえ。お姉ちゃん」
「ふふっ。金貨五枚で大喜びしているディモも可愛い。でも、これからの旅を考えると、これだけじゃあ心許ないね。私が倒した魔物を換金しておこうか? ディモ。魔物の肉や魔石を買い取ってくれる場所に連れてっておくれ。はっ! 二人で一緒に買い物? 初めての共同作業? どうしよう? ドキドキするね」
「なに言ってるの! もう一緒に戦ってるよ? あと、道具屋さんはマイクさんのおじいちゃんがやっているんだよ。あっ! この店だよ。お姉ちゃん! 止まって! 勢いよすぎだよ!」
二人で買い物する話で、さらにテンションが上がりスキップのスピードが上がったヘレーナを慌てて止めると店の中に入った。いつもと様子が違う店内にディモが戸惑う。普段は日の光で商品が傷まないように窓を閉めている店内だが、今は魔道具による照明が灯されており商品も一目瞭然で分かるようになっていた。
「いらっしゃい! おぉ! ディモじゃないか。待ってたんだよ」
「えっ? ま、待ってた? 僕をですか?」
「ああ。そうだよ。不思議か? まあ、今までの対応を考えたらそうじゃろうな」
いつも邪険に扱われていたディモにとって、明るい店内に爽やかな接客。にこやかに話しかけてくる店主。どれをとっても違和感しかなかった。それはマイクの祖父も思っていたようで、苦笑しながら説明を始める。
「今までは先祖からの引き継ぎに従い、神剣様が復活した際に討伐された魔物の買い取りで困られないように金を貯めて来たんじゃ。そう、来たるべき時に備えていたのだよ。そして、その来たるべき時がやってきた。だからもう金を貯める必要もない。マイクの阿呆には引き継ぎが足りなかったが、神父様が教育してくださるからな」
「じゃあ、魔物と魔石を買い取ってもらおうか? 大量にあるけど買い取ってくれるんだろ?」
「もちろんです。ヘレーナ様。そのために我ら一族は蓄財を続けていたのですから」
道具屋の店主はヘレーナの問いかけに嬉しそうにしながら、収納された魔物や魔石を査定していくのだった。次々に取り出される魔物と魔石。あまりの数に店主が驚きながらも最後まで鑑定を行い、一度奥に入ると小さな革袋を持って戻ってきた。受け取ったディモが中身を確認すると、その金貨の多さに驚く。
「うわぁ。物凄い金額だね。お姉ちゃん」
「当然だよ。ディモ。これだけ完璧な姿で血抜きもされている。魔石も綺麗に取り出している。今までなら全部で金貨五枚と買い叩いていたが、これからはその必要もない。金貨十五枚で買い取らせてもらったよ」
「き、きんかじゅうごまい……。ちなみに今日出てきた僕の魔石の値段は……」
おずおずとした感じで魔石を取り出したディモから受け取った店主は目を光らせる。真剣な表情で鑑定した後にレジから金貨を取り出して手渡してきた。
「ディモ。いい仕事をするようになったな。これなら金貨三枚で買い取ろう。ちなみに今までなら銀貨三枚で買い取りだな」
「今までどれだけディモから金をむしり取ってたんだい!」
「その通りです。ヘレーナ様。それが我ら一族の使命でしたので。稼いだ資金で他の封印石にも支店を出しております。これからは正規の金額で買い取りをしますので、そちらでも魔物の買い取りをして頂けると助かります。それと、これは今後の旅の資金です」
店主から渡された金額にディモは驚きの表情をしていたが、ヘレーナは当然とばかりに受け取る。そして店の中を見渡しすと買い物を始めた。新しい外套に帽子、旅用の靴に服や下着に生活用の魔石各種。さらにテントや寝袋も購入する。大量に積み上げられていく商品にディモの顔が引き攣っているとヘレーナが不満そうに言い放った。
「これくらいで我慢しておくかね。あまり満載にすると他が買い物できないからね。支払いは?」
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「安いね。他の封印石にある店の品揃えも期待するよ」
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