神剣少女は魔石を産み出す少年を愛でる

うっちー(羽智 遊紀)

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35話 マテウスとの会談

 森の安らぎ亭での騒動から一週間が過ぎた。その一週間でマテウスによって捕らえられたアンダース一家のアジトは強襲されて壊滅し、活動範囲だったスラム街での犯罪率が激減した。また、同時に癒着していた役人や兵士達も一気に洗い出され、大きな混乱はあったものの街の住民達からは好評を持って迎えいれられていた。
 アジトを強襲したさらに二日後。ヘレーナがマテウスから呼び出しを受ける。報奨金の話だと思いながらマテウスの屋敷に来たヘレーナだったが応接室に通されると、そこから醸し出される空気にそれだけでないことに気付く。

「ふーん。良い感じの屋敷じゃないか。それに、この紅茶も良い味をしている。この芳醇な香りはフルーツを混ぜているのかい? 苦みも渋みもなくてディモでも美味しく飲めそうだね」

 紅茶と茶菓子を持ってきた老執事に感想を伝えたヘレーナ。率直な感想であり、今後の販売で強みとして売っていく内容を的確に述べられた老執事は軽く目を見開きながら答える。

「恐縮でございます。産地から販売用サンプルとして取り寄せた品ですがお気に召したようでなによりです。元々、有名な茶葉ですが、さらにフルーツの香りが出るように工夫をしており、匂いがキツくならないように少しだけ香るように調合しております。それにしても、お客様は素晴らしい審美眼をお持ちでございますね。すぐに主人が参りますのでしばらくおくつろぎください」
「ああ。ユックリでいいよ。でも、帰りにこの紅茶と茶菓子はお土産で欲しいね」
「かしこまりました。用意しておきます」

 一礼して部屋から出て行く老執事を目線だけで追っていたが興味が失せたのか、茶菓子を一口で飲み込むように食べ、そして紅茶を一気に流し込んだ。

「匂いは分かるけど、やっぱり味は何一つしないね。ディモが喜びそうだから紅茶と茶菓子は持って帰らないと。それにしてもマテウスは早く来ないかね。そろそろ本気で飽きてきたよ」
「申し訳ありません。遅くなりました」

 足を組み直したり、剣を取り出したりしながらヘレーナが暇を潰しつぶしていると、汗を拭きながらマテウスが入って来た。そして、彼の背後には小さな布袋を盆の上に乗せた男性も一緒に入って来ると静かに壁際に立った。

「丁度、暇になったところだよ。美味しい紅茶と茶菓子はすぐに無くなったからね。帰りにお土産として用意をしてくなかったら、暴れてるところだよ。ディモの好みそうな逸品の紅茶だったから許してやるよ。心の底からディモに感謝するんだね」
「はっはっは。そうですね。ディモ君には何度でも感謝しましょう。毎日しても足りませんでしょうが。紅茶は別の産地から取り寄せた物もありますので、お帰りの際にお渡しさせてもらいます。おい。紅茶は三種類追加で用意するように。茶菓子も日持ちのするのを中心にだぞ」
「かしこまりました」


 背後に控えていた男性が一礼して布袋をテーブルに置くと準備のために出て行く。足音が遠ざかるのを確認してから、マテウスは布袋をヘレーナに渡してきた。興味なさげに布袋の口を開けながら中の金額を確認すると、そこには金貨は三〇枚が入っており、その他にも銀貨や銅貨が大量に入っていた。

「随分と奮発してくれたじゃないか」
「当然です。頭痛の種だったアンダース一家を壊滅まで追い込め、腐りきっていた文官や兵士のあぶり出しもできました。そして、アメーリエさんがよろず屋を継いでくれる。お陰で領地経営が誰にも邪魔されずにスムーズにスタートが出来そうです。ですので、これは次期領主としてお礼が入っていると思ってください」
「金貨は報奨金で布袋が口止め料かい?」
「はっはっは。口止め料とはとんでもない。今回の報酬とは話とは全く関係ありませんが、その布袋は一〇〇〇年前には使われていたマジックボックスです。そしてディモ君の食材入れに向いているでしょう。中は一定の気温がキープ出来る上に、ちょっとした小屋くらいの収納量がありますからね。もちろん、今回の私の失態であるアメーリエさんが困った件や、アンダース一家の暴走を黙って貰えると助かりますが、それは強制ではありませんよ。あくまでも友好の証です」
「はっ! そうかい。元々、この話を広めるつもりはなかったけど、そこまで気を使ってくれるなら有り難く頂こうかね。ディモが喜ぶなら拒否する理由はないからね」

 出てきた硬貨達ではなく、布袋自体に視線を向けながらヘレーナがマテウスに感想を述べる。布袋が魔道具であることを一瞬で見抜いた観察眼に尊敬の眼差しを向けながら、マテウスがヘレーナに理由を説明する。
 それだけが理由ではないと分かっているヘレーナがさらに突っ込むと、涼しい顔でマテウスが話を続けた。

「そうしてもらえると助かります。あと、ディモ君が持っていたレシピ本ですが、ディモ君のお母さんが作ったのですよね? 『お母さんのレシピっと!』と叫んでいましたから」
「ああ。そうらしいね。なぜか母親の話をするけど、彼女の昔話はしたがらないから詳しくは分からないね」
「ひょっとして、ディモ君の母親は王都で活躍していた料理人かもしれませんよ」
「へー。その話を詳しく聞こうじゃないか」

 質問に答えたヘレーナだったが、それについてのマテウスの言葉に興味深そうな顔になると前のめりになりながら手を組むと、続きを話すように促したうながした
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