30 / 63
30 ウサギ王の苦悩
しおりを挟む
「キャラメリアがどうしてもと頼むから時間はとったが、その方たちは何者ぞ?」
この世界に来て初めて見た生き物であるウサギの皇太子をそのまま老けさせたような顔をした王様が鼻をひくひくと動かしながら、不機嫌そうに口を開いた。
僕が返事をしようとしたら、アヤナミが僕の袖をすっと引いた。
「お前がこの国の王か?」
「なんじゃと?無礼者が」
「無礼はそちの方だ。我を誰と心得るか!」
ウサギ王はアヤナミの迫力に押されてタジタジだ。
「おお、この姿ではわからぬか?やはり所詮はその程度。神の気配も感じぬか」
「神……神と申すか」
アヤナミはフッと息を吐いて王の前に進み出た。
彼の金色の目が怪しく光ると、アヤナミは竜神の姿になっていた。
ウサギ王が玉座から転がり落ちて震えている。
ふと周りを見ると、その場にいる全員が同じような顔で震えていた。
「りゅ……りゅう……竜神様!」
声には出していないが、全員がははぁぁぁ~と言ったような気がしたのは、日本人である僕だけかもしれない。
なぜか竜と化したアヤナミの腰辺りにぶら下がっているあの石の入った革袋が印籠に見えた。
アヤナミは少し低めの良く通る声で言った。
「生贄の儀式を続けると聞いたが、それは誠か?」
ウサギ王は土下座の態勢で答えた。
「はい! はい! 勿論でございます! どうぞそれでお気を鎮めて下さいませ」
「タワケ!!!! 下らぬことをまだ続けると申すか!」
「へぇっ?下らぬとは……」
「下らぬから下らぬと言うのじゃ! そも生贄など誰が望んだことか」
「えっっっ! 違うのですか?」
「お前……誰かの入知恵を真に受けたか?金輪際そのようなことはするな!」
「しかしそれでは我が国の繫栄が……」
「お前たちの国の繫栄はお前が努力することだろうが! 娘を差し出しておのれは何も努力せず安泰を手にしようなどと!」
ウサギ王は無駄に命を奪ってきた自分の娘を思ったのか、単にアヤナミが怖かったのか泣き出してしまった。
「泣くとは……もうよい。生贄は絶対に止めよ。そもそもあの池の役割を忘れたお前たちなど滅びるしかないほどの愚かさだが、今回だけ王女の気丈さに免じて許して遣わそう。あの池の周りを不可侵の森にせよ。木を植えて深い森にするのだ。森が龍脈を守り、お前たちの国を災いから遠ざける」
ウサギ王は泣きながらコクコクと何度も頷いた。
その時、ドアの外から布を裂くような悲鳴が聞こえた。
この世界に来て初めて見た生き物であるウサギの皇太子をそのまま老けさせたような顔をした王様が鼻をひくひくと動かしながら、不機嫌そうに口を開いた。
僕が返事をしようとしたら、アヤナミが僕の袖をすっと引いた。
「お前がこの国の王か?」
「なんじゃと?無礼者が」
「無礼はそちの方だ。我を誰と心得るか!」
ウサギ王はアヤナミの迫力に押されてタジタジだ。
「おお、この姿ではわからぬか?やはり所詮はその程度。神の気配も感じぬか」
「神……神と申すか」
アヤナミはフッと息を吐いて王の前に進み出た。
彼の金色の目が怪しく光ると、アヤナミは竜神の姿になっていた。
ウサギ王が玉座から転がり落ちて震えている。
ふと周りを見ると、その場にいる全員が同じような顔で震えていた。
「りゅ……りゅう……竜神様!」
声には出していないが、全員がははぁぁぁ~と言ったような気がしたのは、日本人である僕だけかもしれない。
なぜか竜と化したアヤナミの腰辺りにぶら下がっているあの石の入った革袋が印籠に見えた。
アヤナミは少し低めの良く通る声で言った。
「生贄の儀式を続けると聞いたが、それは誠か?」
ウサギ王は土下座の態勢で答えた。
「はい! はい! 勿論でございます! どうぞそれでお気を鎮めて下さいませ」
「タワケ!!!! 下らぬことをまだ続けると申すか!」
「へぇっ?下らぬとは……」
「下らぬから下らぬと言うのじゃ! そも生贄など誰が望んだことか」
「えっっっ! 違うのですか?」
「お前……誰かの入知恵を真に受けたか?金輪際そのようなことはするな!」
「しかしそれでは我が国の繫栄が……」
「お前たちの国の繫栄はお前が努力することだろうが! 娘を差し出しておのれは何も努力せず安泰を手にしようなどと!」
ウサギ王は無駄に命を奪ってきた自分の娘を思ったのか、単にアヤナミが怖かったのか泣き出してしまった。
「泣くとは……もうよい。生贄は絶対に止めよ。そもそもあの池の役割を忘れたお前たちなど滅びるしかないほどの愚かさだが、今回だけ王女の気丈さに免じて許して遣わそう。あの池の周りを不可侵の森にせよ。木を植えて深い森にするのだ。森が龍脈を守り、お前たちの国を災いから遠ざける」
ウサギ王は泣きながらコクコクと何度も頷いた。
その時、ドアの外から布を裂くような悲鳴が聞こえた。
1
あなたにおすすめの小説
ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい
空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。
孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。
竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。
火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜?
いやいや、ないでしょ……。
【お知らせ】2018/2/27 完結しました。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡
サクラ近衛将監
ファンタジー
女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。
シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。
シルヴィの将来や如何に?
毎週木曜日午後10時に投稿予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる