僕の魂は君と出会うためだけに存在していたんだ

志波 連

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51 時空移転

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 物凄い突風で体が持っていかれそうになる。
 腕で目を庇いながら振り返ると、目の前の景色が歪に歪んで見えた。
 
「トオル! 剣を握れ!」

 クサナギさんの声に僕は腰に差していた新オオクニヌシを抜いた。

「離すなよ! 両手で持っても構わないから絶対に離すな」

 クサナギさんが的確なアドバイスを飛ばしてくる。
 なるほど、このために彼は僕の石に入ったのか。

「あの隙間が見えるか?亀裂のようになっているだろう。あれが時空の隙間だ。あそこにあいつを誘いこむ。ここで戦えばこの時空が壊れてしまう」

「二人は?」

「奴はサーフェスの剣がクサナギだということに気づいたはずだ。サーフェスが囮となって誘いこむからアヤナミと後を追え」

「はい!」

 もう僕に選択肢は無いようだ。
 腹をくくるしかない……そう思った刹那、アヤナミが僕の名を叫んだ。

「後ろだ! トオル! 避けろ」

 僕は右に思い切り飛んで畳の上を転がった。
 剣を握りしめているので、気をつけないと自分で自分を切ってしまう。

「行くぞ!」

 景色を切り裂いている真っ黒な隙間に目をやると、サーフェスがヤマトタケルと鍔迫り合いをしながら吸い込まれていくのが見えた。
 ヤマトタケルはクサナギそっくりの剣を振り回している。
 クサナギが二本ある?

『君のお祖父様は凄いな。クサナギのレプリカまで用意していたんだな。わざと工房におびき寄せて奪わせたのだろう』

『わざと?お祖父様は無事なの?』

『……わからない。でも君のお祖父様はそれほど弱い人じゃないさ』

『うん……』

「飛べ!」

 アヤナミの鋭い声に反応した僕は、あの空間に入りたいと強く念じて畳を蹴った。
 体が途轍もない速さで吸い込まれていくような感覚だ。
 サーフェスとヤマトタケルの姿が消え、アヤナミと僕の体も消えた。

 闇だ。
 これが漆黒という奴か……などと考えているといきなり腕を掴まれた。
 反射的に掴まれた手を振り解こうとしたら、耳元でアヤナミの声はした。

「俺だ。三つ目に入ったぞ」

 三つ目?そう思いながら目を凝らすと、針でついたような白い点が見える。
 その点は見る見るうちに大きくなり、よく見るとそれは異空間への入口だと分かる。
 ウサギ国から帰るときに通った道と同じだと気づき、少しだけホッとする。
 そうだ、三つ目って言ったな。
 あれか?

「出るときに少しだけ衝撃がある。着地に気をつけろ」

 クサナギさんの声が響いた。
 初回は見事なほど無様な着地だったことを思い出し、僕は身構えた。

「……相変わらずどんくさい奴だな」

 草原に顔から突っ込んでもがいている僕を見下ろしながら、クサナギが笑った。

「サーフェスは?」

「うまく逃げているはずだ。追うぞ」

「うん」

 僕は慌てて起き上がり、飛び上がったアヤナミに続いた。
 上空から様子を伺うが、生命体は見当たらない。

「ここはどこだろう」

 僕の質問には応えず、アヤナミが口の前で人差し指を立てた。
 アヤナミはホバリングしながら辺りの気配を探っている。
 僕も目だけ動かしてサーフェスの姿を探した。

「上だ!」

 クサナギさんの声に驚きすぎて心臓が破裂しそうになる。
 金属がぶつかり合う音と一緒に、サーフェスとヤマトタケルが落ちてきた。
 アヤナミは迎え撃つように身構えた。
 僕も真似をしたが……。

『トオル君、地上に降りるんだ。そして身を隠せ』

 クサナギさんが脳内に指示を飛ばす。
 僕は戸惑ったが、指示に従った。
 着地点から一番近い茂みに身を隠し、上空を見上げた。
 アヤナミが大刀を繰り出し、二人の間に割って入ろうとしている。
 残像が見えるほどの速さだ。
 サーフェスは防戦に徹し、隙をついてアヤナミが切りかかる。
 絶妙なコンビネーションだ。
 まるで熟練の剣舞を見ているような感じ。

『兄上!』

 悲鳴のようなクサナギさんの声。
 ひらひらとまるで花弁のようにサーフェスが落下した。
 上空ではアヤナミがヤマトタケルを食い止めている。
 僕は夢中でサーフェスが落ちた場所に走った。
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