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馬車の外から専属護衛騎士のエディ・オース卿の声がする。
「まもなく到着いたします」
ルルーシアはギュッと目をきつく閉じてから大きく息を吸った。
「行ってくるわね、キャロ」
「はい、お嬢様。頑張ってくださいませ」
エディに手を取ってもらいながら馬車を降りると、アマデウス皇太子が走ってきた。
その後ろに皇太子側近候補であり同じクラスに通うアラン・フェリシア侯爵令息が続く。
「ルル! おはよう。やっと一緒に通えるね!」
ルルーシアは妃教育で身につけた満面の笑みを貼り付ける。
「おはようございます、アマデウス皇太子殿下。お久しぶりにお顔を拝見し、恐悦至極に存じます」
「あ……ああ、本当に久しぶりだね。ルルの優秀さは講師たちから聞いたよ。父上も母上も大変喜んでおられた。さすが僕の愛する婚約者だと今朝も自慢してきたところさ」
「まあ、畏れ多いことでございます」
「ルル? どうしたの? なんだか……君らしくないっていうか……侯爵家で何かあった?」
「いいえ、何もございませんわ。殿下、そろそろ教室に向かいませんと遅れてしまいます」
「あ……ああそうだね。そうだ、ルル。今日のお昼は一緒にどうだい? 上位貴族専用テラスを予約しておくよ。昼休みになったら迎えに行くから、教室で待っていて欲しい」
「畏まりました。お気使い感謝いたします」
不安そうな顔でまだ話しかけようとしているアマデウスにアランが声を掛ける。
「殿下、そろそろ」
「うん、わかった。では昼休みにね、ルル」
少し離れた場所で控えていたアリア・ロックス侯爵令嬢が駆け寄ってきた。
「おはよう、ルル。朝から大変だったわね」
「おはよう。そうでも無いわ、相変わらずお気遣いいただいて申し訳ないほどよ。本当なら昨日の方と一緒の方が楽しいのでしょうけれど」
「そんなこと考えちゃダメ。それで? お父様はなんと?」
「婚約撤回は無理だそうよ。もともとが政略だもの。お父様にもとても悲しそうな顔をさせてしまって……」
暗い顔になったルルーシアの背中をポンと叩き、アリアは明るい声を出した。
「私たち貴族の令嬢なんて政略の駒だものね。どうせなら残された時間を目いっぱい楽しみましょう?」
「ええ、そうね。あと10か月しか子供でいられないのだもの」
2人は急ぎ足で校舎に向かった。
皇太子妃教育ですでに全ての単位を修得しているルルーシアにとって、授業は簡単な復習のようなものだったが、それでもひとりきりではないということが嬉しくて仕方がない。
ほぼ覚え込んだ貴族年鑑に掲載されていた顔と名前を思い出しながら、ひとりひとりの特徴を脳裏に刻んでいく。
『あ……あの方だわ。でもあの方の顔には覚えがないのよね。どちらのご家門かしら』
昨日婚約者であるアマデウスと仲よく寄り添って本を覗き込んでいた令嬢の横顔を見ていた時、教師がその令嬢に発言を求めた。
「サマンサ・フロレンシア、今の問題はどの公式を使うのが効率的だと思いますか?」
先生に名指しされたサマンサが立ち上がってスラスラと答える。
『素晴らしい回答ね。とても優秀な方なのだわ。線形回帰モデルではなく時系列モデルを選ぶなんて農作物の生産予想としてはとても現実的だもの』
「良い回答ですね。現実的な予想公式ですが、何年遡りますか?」
サマンサが迷いなく答える。
「短期予想なら3年、長期なら10年は必要かと思います」
「はい、大変よく勉強しています。では次に……」
教師は満足そうに頷いて教科書に目を移した。
「まもなく到着いたします」
ルルーシアはギュッと目をきつく閉じてから大きく息を吸った。
「行ってくるわね、キャロ」
「はい、お嬢様。頑張ってくださいませ」
エディに手を取ってもらいながら馬車を降りると、アマデウス皇太子が走ってきた。
その後ろに皇太子側近候補であり同じクラスに通うアラン・フェリシア侯爵令息が続く。
「ルル! おはよう。やっと一緒に通えるね!」
ルルーシアは妃教育で身につけた満面の笑みを貼り付ける。
「おはようございます、アマデウス皇太子殿下。お久しぶりにお顔を拝見し、恐悦至極に存じます」
「あ……ああ、本当に久しぶりだね。ルルの優秀さは講師たちから聞いたよ。父上も母上も大変喜んでおられた。さすが僕の愛する婚約者だと今朝も自慢してきたところさ」
「まあ、畏れ多いことでございます」
「ルル? どうしたの? なんだか……君らしくないっていうか……侯爵家で何かあった?」
「いいえ、何もございませんわ。殿下、そろそろ教室に向かいませんと遅れてしまいます」
「あ……ああそうだね。そうだ、ルル。今日のお昼は一緒にどうだい? 上位貴族専用テラスを予約しておくよ。昼休みになったら迎えに行くから、教室で待っていて欲しい」
「畏まりました。お気使い感謝いたします」
不安そうな顔でまだ話しかけようとしているアマデウスにアランが声を掛ける。
「殿下、そろそろ」
「うん、わかった。では昼休みにね、ルル」
少し離れた場所で控えていたアリア・ロックス侯爵令嬢が駆け寄ってきた。
「おはよう、ルル。朝から大変だったわね」
「おはよう。そうでも無いわ、相変わらずお気遣いいただいて申し訳ないほどよ。本当なら昨日の方と一緒の方が楽しいのでしょうけれど」
「そんなこと考えちゃダメ。それで? お父様はなんと?」
「婚約撤回は無理だそうよ。もともとが政略だもの。お父様にもとても悲しそうな顔をさせてしまって……」
暗い顔になったルルーシアの背中をポンと叩き、アリアは明るい声を出した。
「私たち貴族の令嬢なんて政略の駒だものね。どうせなら残された時間を目いっぱい楽しみましょう?」
「ええ、そうね。あと10か月しか子供でいられないのだもの」
2人は急ぎ足で校舎に向かった。
皇太子妃教育ですでに全ての単位を修得しているルルーシアにとって、授業は簡単な復習のようなものだったが、それでもひとりきりではないということが嬉しくて仕方がない。
ほぼ覚え込んだ貴族年鑑に掲載されていた顔と名前を思い出しながら、ひとりひとりの特徴を脳裏に刻んでいく。
『あ……あの方だわ。でもあの方の顔には覚えがないのよね。どちらのご家門かしら』
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