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少し頬を紅潮させて席に座ったサマンサが、ルルーシアの視線に気付き驚いた顔をする。
ルルーシアは慌てて目礼を返し、視線を外した。
「ルル! ランチに行こう!」
昼休みになるとすぐにアマデウスがやってきた。
アマデウスは王家特有の少し癖のある銀髪と濃いブルーの瞳でとても目立つ存在だ。
常に後ろに控えているアラン・フェリシア侯爵令息の優れた容姿と黒髪黒瞳も、多くの女生徒達の視線を集めるので、二人が行動するととにかく目立つ。
「はい、すぐに参ります」
ルルーシアはアリアに目配せをして準備を急いだ。
教室を出ると、扉から少し離れた壁際で、顔を寄せ合って話しているアマデウスとサマンサの姿が目に飛び込み、ルルーシアは急いで視線を伏せて気付かない振りをした。
「今日は拙いんだ。夜は来客があって出られない」
「そう……残念だけれど仕方がないわね」
聞くともなしに聞こえてくる会話に、ルルーシアの胃は鉛を飲み込んだように重たくなる。
ルルーシアが立っていることに気づいたサマンサはすっとアマデウスから離れた。
「あっ! ルル、行こうか」
何事もなかったようにアマデウスがルルーシアに腕を差し出す。
ほんの少しその腕を見つめた後、にっこりとほほ笑んで手を添えるルルーシア。
その姿を後ろから見ていたアリアは、不敬罪で捕まってもおかしくないほど憎々しい視線を皇太子の背中に投げていた。
「アリア嬢、何か誤解をしていないか?」
後ろを歩くアランがアリアに囁いた。
「誤解? 昨日といい今日といい、何なの? 学園中で噂になっているじゃない。ルルの耳に入らないわけ無いでしょう? あんたが止めないでどうするのよ!」
「噂? ああ、殿下がフロレンシア嬢と恋仲というあれか? バカバカしい。殿下はルルーシア嬢にぞっこんだ。間違いない」
「はいはい、そうですか。では昨日の夜はどちらにしけ込まれたのかしらね? 今日はお断りになったご様子だけれど、毎日毎日乳繰り合わないと死ぬ病気なの?」
「おい! それは言い過ぎだ! 不敬だぞ」
「フンッ!」
後ろの険悪な雰囲気など気にもせず、アマデウスは大好きなルルーシアとの初めての学園ランチに浮かれていた。
「ルル、学園の食堂にはいろいろなメニューがあるんだよ。僕はいつもスペシャルを注文するのだけれど、友人の話によるとレディースセットというのもなかなか旨いらしい」
「レディースセットでございますか? ということはご友人は女子生徒ですわね?」
いつも控えめなルルーシアにしてはかなり突っ込んだつもりの発言だ。
「うん、聞いたのはルルと同じクラスのサマンサだ。彼女とは良く話をするんだよね。趣味が同じで話が合うんだ。今度紹介するね、ルルもきっと気に入ると思うよ」
「さ……左様でございますか。それは楽しみですわ」
「ああ、いい機会だから今日一緒にランチする? うん、それが良い。ねえアラン、サマンサを呼んできてくれないか。ルルに紹介しておきたいんだ」
アランが目を見開き、アリアがゴフッと咽た。
「いや……殿下。今日はルルーシア嬢にとって初めての学園ランチですので……」
「そう? まあそうだね。ルルは初めてだものね。紹介はまた今度にしよう。どうせ毎日一緒にランチするでしょう?」
「毎日一緒に……そうですわね……殿下は今まではどのように?」
「僕はアランと一緒に食堂に行っていたよ。空いてる席に座って食べていた」
「では今後もそのようになさってはいかがですか? 学園でないとなかなかできない経験でございましょう?」
「まあそうだけど……やっとルルが登校できるようになったんだもの。一緒に食べたいな」
「ありがとうございます。でもどうぞご無理なさらず」
「無理? そんなものするわけ無いだろ? 僕は君と一緒にいたいんだ」
アランが手配していた上位貴族テラスのテーブルに落ち着いた4人は、当たり障りのない会話をしながらランチを楽しんだ。
ルルーシアは慌てて目礼を返し、視線を外した。
「ルル! ランチに行こう!」
昼休みになるとすぐにアマデウスがやってきた。
アマデウスは王家特有の少し癖のある銀髪と濃いブルーの瞳でとても目立つ存在だ。
常に後ろに控えているアラン・フェリシア侯爵令息の優れた容姿と黒髪黒瞳も、多くの女生徒達の視線を集めるので、二人が行動するととにかく目立つ。
「はい、すぐに参ります」
ルルーシアはアリアに目配せをして準備を急いだ。
教室を出ると、扉から少し離れた壁際で、顔を寄せ合って話しているアマデウスとサマンサの姿が目に飛び込み、ルルーシアは急いで視線を伏せて気付かない振りをした。
「今日は拙いんだ。夜は来客があって出られない」
「そう……残念だけれど仕方がないわね」
聞くともなしに聞こえてくる会話に、ルルーシアの胃は鉛を飲み込んだように重たくなる。
ルルーシアが立っていることに気づいたサマンサはすっとアマデウスから離れた。
「あっ! ルル、行こうか」
何事もなかったようにアマデウスがルルーシアに腕を差し出す。
ほんの少しその腕を見つめた後、にっこりとほほ笑んで手を添えるルルーシア。
その姿を後ろから見ていたアリアは、不敬罪で捕まってもおかしくないほど憎々しい視線を皇太子の背中に投げていた。
「アリア嬢、何か誤解をしていないか?」
後ろを歩くアランがアリアに囁いた。
「誤解? 昨日といい今日といい、何なの? 学園中で噂になっているじゃない。ルルの耳に入らないわけ無いでしょう? あんたが止めないでどうするのよ!」
「噂? ああ、殿下がフロレンシア嬢と恋仲というあれか? バカバカしい。殿下はルルーシア嬢にぞっこんだ。間違いない」
「はいはい、そうですか。では昨日の夜はどちらにしけ込まれたのかしらね? 今日はお断りになったご様子だけれど、毎日毎日乳繰り合わないと死ぬ病気なの?」
「おい! それは言い過ぎだ! 不敬だぞ」
「フンッ!」
後ろの険悪な雰囲気など気にもせず、アマデウスは大好きなルルーシアとの初めての学園ランチに浮かれていた。
「ルル、学園の食堂にはいろいろなメニューがあるんだよ。僕はいつもスペシャルを注文するのだけれど、友人の話によるとレディースセットというのもなかなか旨いらしい」
「レディースセットでございますか? ということはご友人は女子生徒ですわね?」
いつも控えめなルルーシアにしてはかなり突っ込んだつもりの発言だ。
「うん、聞いたのはルルと同じクラスのサマンサだ。彼女とは良く話をするんだよね。趣味が同じで話が合うんだ。今度紹介するね、ルルもきっと気に入ると思うよ」
「さ……左様でございますか。それは楽しみですわ」
「ああ、いい機会だから今日一緒にランチする? うん、それが良い。ねえアラン、サマンサを呼んできてくれないか。ルルに紹介しておきたいんだ」
アランが目を見開き、アリアがゴフッと咽た。
「いや……殿下。今日はルルーシア嬢にとって初めての学園ランチですので……」
「そう? まあそうだね。ルルは初めてだものね。紹介はまた今度にしよう。どうせ毎日一緒にランチするでしょう?」
「毎日一緒に……そうですわね……殿下は今まではどのように?」
「僕はアランと一緒に食堂に行っていたよ。空いてる席に座って食べていた」
「では今後もそのようになさってはいかがですか? 学園でないとなかなかできない経験でございましょう?」
「まあそうだけど……やっとルルが登校できるようになったんだもの。一緒に食べたいな」
「ありがとうございます。でもどうぞご無理なさらず」
「無理? そんなものするわけ無いだろ? 僕は君と一緒にいたいんだ」
アランが手配していた上位貴族テラスのテーブルに落ち着いた4人は、当たり障りのない会話をしながらランチを楽しんだ。
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