どうぞご勝手になさってくださいまし

志波 連

文字の大きさ
46 / 77

46

しおりを挟む
 側近試験は無事に終わり、予定通りカレンがトップ合格した。 
 2位と3位の2人も異例の補欠合格として、王宮の文官として採用されることになったのは王弟の進言によるものだ。
 カレン・ウィンダムが王太子の側近として配属されてくる日、アマデウスとルルーシア、そして三人の側近達が揃って出迎えた。

「採用おめでとう、カレン・ウィンダム伯爵令嬢。今日から頑張ってくれたまえ」

「はい、精一杯つとめさせていただきます」

 アマデウスから言葉を賜ったカレン・ウィンダムはオレンジがかった茶色の髪で、顎のラインで切揃えられている。
 特徴的な髪色は、父親の祖国であるメレント国ではよく見かける色で、似たような縁色の眼鏡をかけておしゃれ好きな女性にみえた。

「ではカレンはこの机を使ってちょうだい。まずやってほしいのは過去5年分の農作物収穫量の取りまとめよ」

「うん、わかった」

 ずっと何も言わなかったルルーシアがカレンに声を掛けた。

「あなたのお部屋は? みんなは官舎よね?」

 カレンが思わせぶりにチラッとアマデウスを見てから答える。

「はい、同じ官舎に部屋をいただいております。隣がアリアの部屋ですわ」

「そう。同じ職場で同じ官舎ならみんなずっと一緒なのね」

 アリアがルルーシアを見てニコッと笑った。

「出勤も退勤も一緒にする予定です。私たちは3階で、アランとマリオは2階ですわ」

 ルルーシアが頷いた。

「では殿下、私も仕事に参ります」

「ああ、今日も頑張ろうね、ルル。休憩はいつものように3時でいいかな?」

「ええ。その頃には届いていると思います。今日も私の執務室でよろしいですか?」

「うん、時間になったら伺うよ」

 ルルーシアたちが退出すると、カレンがアリアに聞いた。

「お茶の時間は一緒に過ごすの?」

「そうよ。情報交換もできるし、なによりルルーシア様の差し入れが素晴らしいのよ」

「へぇ……」

 特に大きな問題が発生することもなく、王太子夫妻はロマニア国との会談の準備を進めていった。
 ちょこちょこと宰相が面倒な会議予定を入れてくるが、カレンはアリアの予想を上回る有能さを見せ、予定通り仕事をこなしている。
 過去の議事録を取り纏め終えたカレンが、ふと目を上げてアマデウスに声を掛けた。

「会議後の晩さん会はどのように?」

「晩さん会の担当はルルだよ。進捗はどうなのだろう」

 アリアが答える。

「順調だと聞いておりますが、そろそろ詳細を説明するようにあちらの側近に伝えておきましょう。カレン伝言をお願いできる?」

 カレンが頷いて部屋を出た。
 アマデウスが席を立って窓辺で伸びをする。

「たまには体を動かさないとなんだか重たいような……ん? あれは? ルルかな」

 アマデウスがアリアの方を見ないまま言う。
 席を立って窓辺に来たアリアが、感情のこもらない声を出した。

「ああ、本当だ。ルルですね」

「一緒にいるのは誰だ?」

「あれは確か、キリウス殿下の宮に滞在されている劇作家でキース・レイダー様とおっしゃる方です」

 アマデウスがイラついた声を出す。

「なぜそんな男がルルとふたりでいるんだ。それに距離が近いじゃないか」
しおりを挟む
感想 972

あなたにおすすめの小説

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。

ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。 ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。 対面した婚約者は、 「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」 ……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。 「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」 今の私はあなたを愛していません。 気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。 ☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。 ☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)

選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】 5歳の時、母が亡くなった。 原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。 そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。 これからは姉と呼ぶようにと言われた。 そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。 母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。 私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。 たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。 でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。 でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ…… 今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。 でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。 私は耐えられなかった。 もうすべてに……… 病が治る見込みだってないのに。 なんて滑稽なのだろう。 もういや…… 誰からも愛されないのも 誰からも必要とされないのも 治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。 気付けば私は家の外に出ていた。 元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。 特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。 私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。 これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています

猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。 しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。 本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。 盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。

〈完結〉伯爵令嬢リンシアは勝手に幸せになることにした

ごろごろみかん。
恋愛
前世の記憶を取り戻した伯爵令嬢のリンシア。 自分の婚約者は、最近現れた聖女様につききっきりである。 そんなある日、彼女は見てしまう。 婚約者に詰め寄る聖女の姿を。 「いつになったら婚約破棄するの!?」 「もうすぐだよ。リンシアの有責で婚約は破棄される」 なんと、リンシアは聖女への嫌がらせ(やってない)で婚約破棄されるらしい。 それを目撃したリンシアは、決意する。 「婚約破棄される前に、こちらから破棄してしてさしあげるわ」 もう泣いていた過去の自分はいない。 前世の記憶を取り戻したリンシアは強い。吹っ切れた彼女は、魔法道具を作ったり、文官を目指したりと、勝手に幸せになることにした。 ☆ご心配なく、婚約者様。の修正版です。詳しくは近況ボードをご確認くださいm(_ _)m ☆10万文字前後完結予定です

旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。

アズやっこ
恋愛
私は旦那様を愛していました。 今日は三年目の結婚記念日。帰らない旦那様をそれでも待ち続けました。 私は旦那様を愛していました。それでも旦那様は私を愛してくれないのですね。 これはお別れではありません。役目が終わったので交代するだけです。役立たずの妻で申し訳ありませんでした。

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

処理中です...