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第8話 魔法の先生達
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「ここで魔法の勉強をするんだ!」
土曜日の朝、僕は鈴木さんに連れられて街はずれにある施設へとやって来た。
そこは真新しい建物で春野魔法研究センターと小さな看板が掛けられている。
「ここは新しく設立された民間の魔法研究施設なんですが、咲良さんの訓練をする為に特別に貸して貰えることになったんです」
「え!? 僕の為に!?」
何それ!? てっきり学校で習うと思ってたから場所を移動しただけでも驚いたのに、特別に貸して貰えたとかどういう事!?
「咲良さんの才能は非常に希少ですからね。ただ特異な才能の持ち主の場合、代わりに体調を崩しやすかったりする子もいるんですよ。この施設は最新の研究施設ですので、咲良さんの健康診断や何かあった時の為にすぐに治療が出来る医療施設も兼ねているんですよ」
おおう、何かただの英才教育とかそういうレベルじゃなくなってきた感じがするよ。
「まったく、初孫にはしゃぐにしても限度があるでしょうに」
「鈴木さん、今何か言いました?」
「いえ、私は何も」
気のせいか。何か言った気がしたんだけど。
「ではこちらに。既に先生達は集まっていますから」
鈴木さんに案内されて中に入った瞬間、ふわっと体が浮くような違和感を感じた。
「今……何か?」
「おや気づかれましたか? 今のは空間魔法ですよ」
「空間魔法!?」
「ええ、ここは研究施設ですからね。外部から侵入者を防いだり、また研究内容を盗み見られない様に、空間魔法で外からの干渉を妨害しているんです」
「何それ凄い!!」
うわー! 魔法ってそんな事にも使うんだ! なんかスパイ映画みたいだ!
「魔法は便利な反面、犯罪に使われる事も多いですからね。だから魔法犯罪対策の警備員も多いんですよ」
「おおー、そうなんですね!」
魔法犯罪対策! 聞くだけでワクワクしてくるね!
魔法エージェントと魔法スパイが日常の裏で大激闘を繰り広げていそうだよ!
「先生方はこちらの部屋にいらっしゃいます。先生方、咲良さんをお連れしました」
鈴木さんに促されて部屋に入ると、そこには何人もの大人達の姿があった。
その人達は年齢も性別もバラバラで、一見すると先生に見えない人もいる。
「咲良さん、ご挨拶を」
「あっ、はい。柚木咲良です! よろしくお願いします!」
「「「「「……」」」」」
鈴木さんに促されて挨拶をしたものの、先生達は何故か無言だった。
何か間違えたのかなと思ったんだけど、先生達の様子がおかしい。
先生達は僕じゃなく別の方向を見ているみたいで、その視線は真ん中に居るお爺さん先生に向けられていた。
「……っ!」
ただそのお爺さん先生は、何故か目頭を押さえて天を仰いでいる。
どうしたのかな?
「お……春野先生、ご挨拶を」
「む、う、うむ!」
鈴木さんが声を変えると、春野と呼ばれたお爺さん先生が慌てて顔を上げる。
「儂の名はお……春野藤吉じゃ、主に自然魔法を教える事になる」
春野先生は和服を来たお爺さんで、髭もビシッっと整ってるから漫画なんかに出る厳つい学園長キャラみたいだ。
春野先生が名乗り終えると、他の先生達も自己紹介を始める。
「私は杜若治郎と言います。咲良さんにはエネルギー魔法を教える事になります」
杜若先生は物腰の柔らかいおじさんキャラって感じだね。
土曜日なのに一人スーツを着てるのも真面目そうだ。
「あたしは蘭菱可憐よ。可憐って呼んで。私が教えるのは身体強化魔法ね。魔法の性質上、ただ魔法を教えるだけじゃなく、体の動かし方も一緒に教えるから勉強のし過ぎで頭が疲れた時には息抜きにもなるわよ!」
可憐先生はいかにも体育教師って感じの人だ。
さすがにジャージって訳じゃないけど、動きやすそうな格好をしている。
その分スタイルが良く分かる格好になってるんだけど……うん、流石大人です。
眼福眼福。
「わたくしが回復魔法をお教えする楓凪継代です。よろしくお願いいたします」
楓凪先生は清楚な雰囲気の和風美人で……凄かった。
可憐先生も大人のボディと思ったけど、楓凪先生はケタが違う。
いうなればアマチュアと世界王者並みの違いだ。
清楚な雰囲気が逆にアダルティな空気を醸し出していて、大人の授業を期待してしまいそうになるよ。
……まぁ今の僕は女の子だから、大人もへったくれもないんだけどね。
……男に戻る方法、真剣に探そうかな。
「僕の名前は杉盛清秋。呪術魔法を教えます」
杉盛先生は一転して若々しい感じの先生だ。
というかかなり若い見た目だから、未成年でも通じるんじゃないかな?
でも呪術の先生か。燐瑚ちゃんと被っちゃうね。
あっ、でも燐瑚ちゃんにばかり教わるのも悪いし、そういう意味じゃちゃんとした先生に習うのは悪い事じゃないのかな。
「俺は朱鷺松静稀。空間魔法を教えるぜ! よろしくな!」
そして最後に挨拶をしてきた朱鷺松先生は、ある意味杉盛先生以上に先生っぽくなかった。
杉盛先生に比べたらちゃんと大人の男なんだけど、何と言うか空気が大人っぽくない。
中学生のノリのまま体だけ大人になったような、そんなチャラさを感じた。っていうか大丈夫なのかなこの人?
「あー、空間魔法は他の魔法に比べて使い手が少ないんですよ。使いこなすのも難しいので、高度な空間魔法を教える事の出来る人となると、素行は二の次になってしまいましてね……」
と、鈴木さんが言い訳めいた補足を口にする。
「おいおい、俺が不良みたいな言い方じゃないか。これでも空間魔法界隈じゃ結構有名なんだぜ!」
んー、素行は悪いけど腕利きのちょい悪オヤジって感じなのかな?
ともあれ、これで先生達全員との挨拶は終わった。
「ではまずは儂から自然魔法を教える。ついて来なさい」
「はい!」
春野先生についていくと、施設の中庭に出た。
「おお、結構広い」
中庭といっても、学校の運動場くらいの広さがあるから、これを先生と二人で使うのは贅沢だなぁ。
「よいか、自然魔法が扱う事の出来る力は幅広い。火、水、風、土、光、闇といった分かりやすいものから始まり、この世界にあるあらゆるものが自然魔法の影響を受けるのじゃ」
この世界にあるあらゆるものが影響を受けるって、かなり幅広くない!?
「一見他の魔法の領分に見える現象でも、自然魔法と影響の深い部分は多い。世の多くの職業に自然魔法が深く関係しておるのだ……ちゃんと儂の言っておることが理解できておるか? 分からなんだら聞くのだぞ?」
「大丈夫です! ちゃんと分かります!」
途中で確認してくれるあたり、見た目は怖いけど良い人っぽいな。
さっきの先生達の態度を見る感じ、この人が先生達のリーダーというか長老的な立場なんだろうか?
案外教育委員会の偉い人だったりして。
「とまぁ長々と話をしているだけではつまらんだろう。ここはひとつ、高位の自然魔法を披露してやろう」
「高位の自然魔法!?」
「うむ、本来なら一流大学で学ぶような高等魔法だぞ」
「おおーっ!!」
初日は普通の授業と思っていたから、まさか高等魔法を教えて貰えるとは思ってもいなかったよ!
「よく見ておるのだぞ! これが高等魔法、雷追魔法『春雷』じゃ!」
春野先生が手をかざすと、一瞬で手のひらに凄い魔力が集まっていく。
そして次の瞬間、まばゆい雷が天に向かって放たれた。
「おおーーっ!?」
凄い! 魔法だ! いや自分も使えるけど、なんていうかこれはほんとに魔法! って感じの魔法だ!
「これからが本番じゃぞ」
「え?」
「むん!」
春野先生が魔力を込めると、なんと空に放たれた雷が突然軌道を変えて直角に曲がったんだ。
「ええ!?」
「更に!」
雷は更に何度も軌道を変え、ジグザグに走ったり円を描くように小刻みに軌道を変えると言ったアクロバティックな動きを見せた。
「凄い凄い!!」
「はっはっはっ! この程度で驚いていてはいかんぞ。次は儂秘伝の……」
あまりに凄い光景に大はしゃぎしていると、春野先生も興が乗って来たのか雷を消して次の魔法の準備を始める……んだけど。
「何をやっているんですかぁーーーーーーっ!!」
さぁ魔法を発動させるぞってタイミングで、鈴木さんが凄い勢いで駆け込んできた。
「おお? どうしたのだ鈴木よ?」
「どうしたのだ? じゃありませんよ! 何高等攻撃魔法なんて教えているんですか!」
「いや教えてはおらんぞ。ただ披露していただけじゃ」
「もっと他に見せる魔法があるでしょうが!!」
どうやら今の魔法は見せちゃいけない魔法だったみたいだ。
まぁ攻撃魔法って言ってたしなぁ。
「けど雷魔法カッコ良かったなあ」
やっぱ派手な魔法はカッコいいよね。
空にドカーンってさ!
「確か魔力をこう集めて……」
僕は春野先生がやっていたのを思い出しながら、雷が放たれる光景をイメージして空に手をかざし叫ぶ。
「『春雷』!!」
なーんてそう簡単に高等魔法が使えたら苦労は……
ドゴーン!!
「あっ、出た」
僕の手の先から放たれたデッカイ雷の柱が空に向かって飛んでいく。
うわぁ、マジで出ちゃったよ……
なんかおもちゃの銃で遊んでたら、本当に弾が発射された気分だ。
ただこれ、マズかったりしないかな。だって攻撃魔法だし。
「「……」」
案の定、春野先生と鈴木さんがこっちをみて呆然とした顔になっていた。
「ええと……なんか出来ちゃいましたね」
ヤバイな、勝手に攻撃魔法使っちゃ駄目って怒られる流れだよねコレ?
けれど、先生達の反応はちょっと違った物だった。
「「何で使えるの?」」
「え?」
「いやいやいや、なんで子供が杖も使わずに高等魔法を使えるんじゃ!?」
「おかしいですよ! いくら咲良さんが才能に溢れているとしても、そもそも子供の魔力量では高等魔法を使う事は出来ない筈です!」
「え? そうなんですか?」
「うむ、流石は儂のまモフォッ!?」
「は・る・の・せ・ん・せ・い?」
何かを言いかけた春野先生の口を鈴木さんが強引に塞ぐ。
今、流石は儂のって言ってたけど、儂の何だろう? 儂の……儂の考案した魔法とか?
実は春野先生は凄い魔法使い研究家だったとか?
「ともあれ、もしかしたら咲良さんの才能は我々の予想をはるかに超えている可能性がありますね。これは一度精密な検査を行った方が良さそうです。幸い、ここの施設には各種検査設備がありますから。すぐに検査をしましょう!」
「は、はぁ」
怒られなかったのは良かったけど、魔法の勉強は後回しになりそうだなぁ。
「では咲良さん、係の者を呼びますので検査をしてきてください。魔法の勉強は午後からにしましょう」
良かった! ちゃんと魔法の勉強ができるんだ!
「分かりました!」
「それはそれとして、春野先生には勝手に高等魔法を見せた事でお話があります」
ただ、春野先生はそれだけでは済まないみたいだった。
「え? でも儂が直接教えた訳じゃないし……」
「魔法を学び始めた子供にこんな危険な魔法を見せる事が問題なんですよ! 攻撃魔法に過剰に興味を持ったらどうするんですか!」
などというやり取りと共に春野先生は鈴木さんに引きずられ建物の奥へと連行されていった。
「……今日は自然魔法の勉強は中止かなぁ」
まぁ高等魔法を覚えれたからいっか。
土曜日の朝、僕は鈴木さんに連れられて街はずれにある施設へとやって来た。
そこは真新しい建物で春野魔法研究センターと小さな看板が掛けられている。
「ここは新しく設立された民間の魔法研究施設なんですが、咲良さんの訓練をする為に特別に貸して貰えることになったんです」
「え!? 僕の為に!?」
何それ!? てっきり学校で習うと思ってたから場所を移動しただけでも驚いたのに、特別に貸して貰えたとかどういう事!?
「咲良さんの才能は非常に希少ですからね。ただ特異な才能の持ち主の場合、代わりに体調を崩しやすかったりする子もいるんですよ。この施設は最新の研究施設ですので、咲良さんの健康診断や何かあった時の為にすぐに治療が出来る医療施設も兼ねているんですよ」
おおう、何かただの英才教育とかそういうレベルじゃなくなってきた感じがするよ。
「まったく、初孫にはしゃぐにしても限度があるでしょうに」
「鈴木さん、今何か言いました?」
「いえ、私は何も」
気のせいか。何か言った気がしたんだけど。
「ではこちらに。既に先生達は集まっていますから」
鈴木さんに案内されて中に入った瞬間、ふわっと体が浮くような違和感を感じた。
「今……何か?」
「おや気づかれましたか? 今のは空間魔法ですよ」
「空間魔法!?」
「ええ、ここは研究施設ですからね。外部から侵入者を防いだり、また研究内容を盗み見られない様に、空間魔法で外からの干渉を妨害しているんです」
「何それ凄い!!」
うわー! 魔法ってそんな事にも使うんだ! なんかスパイ映画みたいだ!
「魔法は便利な反面、犯罪に使われる事も多いですからね。だから魔法犯罪対策の警備員も多いんですよ」
「おおー、そうなんですね!」
魔法犯罪対策! 聞くだけでワクワクしてくるね!
魔法エージェントと魔法スパイが日常の裏で大激闘を繰り広げていそうだよ!
「先生方はこちらの部屋にいらっしゃいます。先生方、咲良さんをお連れしました」
鈴木さんに促されて部屋に入ると、そこには何人もの大人達の姿があった。
その人達は年齢も性別もバラバラで、一見すると先生に見えない人もいる。
「咲良さん、ご挨拶を」
「あっ、はい。柚木咲良です! よろしくお願いします!」
「「「「「……」」」」」
鈴木さんに促されて挨拶をしたものの、先生達は何故か無言だった。
何か間違えたのかなと思ったんだけど、先生達の様子がおかしい。
先生達は僕じゃなく別の方向を見ているみたいで、その視線は真ん中に居るお爺さん先生に向けられていた。
「……っ!」
ただそのお爺さん先生は、何故か目頭を押さえて天を仰いでいる。
どうしたのかな?
「お……春野先生、ご挨拶を」
「む、う、うむ!」
鈴木さんが声を変えると、春野と呼ばれたお爺さん先生が慌てて顔を上げる。
「儂の名はお……春野藤吉じゃ、主に自然魔法を教える事になる」
春野先生は和服を来たお爺さんで、髭もビシッっと整ってるから漫画なんかに出る厳つい学園長キャラみたいだ。
春野先生が名乗り終えると、他の先生達も自己紹介を始める。
「私は杜若治郎と言います。咲良さんにはエネルギー魔法を教える事になります」
杜若先生は物腰の柔らかいおじさんキャラって感じだね。
土曜日なのに一人スーツを着てるのも真面目そうだ。
「あたしは蘭菱可憐よ。可憐って呼んで。私が教えるのは身体強化魔法ね。魔法の性質上、ただ魔法を教えるだけじゃなく、体の動かし方も一緒に教えるから勉強のし過ぎで頭が疲れた時には息抜きにもなるわよ!」
可憐先生はいかにも体育教師って感じの人だ。
さすがにジャージって訳じゃないけど、動きやすそうな格好をしている。
その分スタイルが良く分かる格好になってるんだけど……うん、流石大人です。
眼福眼福。
「わたくしが回復魔法をお教えする楓凪継代です。よろしくお願いいたします」
楓凪先生は清楚な雰囲気の和風美人で……凄かった。
可憐先生も大人のボディと思ったけど、楓凪先生はケタが違う。
いうなればアマチュアと世界王者並みの違いだ。
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……まぁ今の僕は女の子だから、大人もへったくれもないんだけどね。
……男に戻る方法、真剣に探そうかな。
「僕の名前は杉盛清秋。呪術魔法を教えます」
杉盛先生は一転して若々しい感じの先生だ。
というかかなり若い見た目だから、未成年でも通じるんじゃないかな?
でも呪術の先生か。燐瑚ちゃんと被っちゃうね。
あっ、でも燐瑚ちゃんにばかり教わるのも悪いし、そういう意味じゃちゃんとした先生に習うのは悪い事じゃないのかな。
「俺は朱鷺松静稀。空間魔法を教えるぜ! よろしくな!」
そして最後に挨拶をしてきた朱鷺松先生は、ある意味杉盛先生以上に先生っぽくなかった。
杉盛先生に比べたらちゃんと大人の男なんだけど、何と言うか空気が大人っぽくない。
中学生のノリのまま体だけ大人になったような、そんなチャラさを感じた。っていうか大丈夫なのかなこの人?
「あー、空間魔法は他の魔法に比べて使い手が少ないんですよ。使いこなすのも難しいので、高度な空間魔法を教える事の出来る人となると、素行は二の次になってしまいましてね……」
と、鈴木さんが言い訳めいた補足を口にする。
「おいおい、俺が不良みたいな言い方じゃないか。これでも空間魔法界隈じゃ結構有名なんだぜ!」
んー、素行は悪いけど腕利きのちょい悪オヤジって感じなのかな?
ともあれ、これで先生達全員との挨拶は終わった。
「ではまずは儂から自然魔法を教える。ついて来なさい」
「はい!」
春野先生についていくと、施設の中庭に出た。
「おお、結構広い」
中庭といっても、学校の運動場くらいの広さがあるから、これを先生と二人で使うのは贅沢だなぁ。
「よいか、自然魔法が扱う事の出来る力は幅広い。火、水、風、土、光、闇といった分かりやすいものから始まり、この世界にあるあらゆるものが自然魔法の影響を受けるのじゃ」
この世界にあるあらゆるものが影響を受けるって、かなり幅広くない!?
「一見他の魔法の領分に見える現象でも、自然魔法と影響の深い部分は多い。世の多くの職業に自然魔法が深く関係しておるのだ……ちゃんと儂の言っておることが理解できておるか? 分からなんだら聞くのだぞ?」
「大丈夫です! ちゃんと分かります!」
途中で確認してくれるあたり、見た目は怖いけど良い人っぽいな。
さっきの先生達の態度を見る感じ、この人が先生達のリーダーというか長老的な立場なんだろうか?
案外教育委員会の偉い人だったりして。
「とまぁ長々と話をしているだけではつまらんだろう。ここはひとつ、高位の自然魔法を披露してやろう」
「高位の自然魔法!?」
「うむ、本来なら一流大学で学ぶような高等魔法だぞ」
「おおーっ!!」
初日は普通の授業と思っていたから、まさか高等魔法を教えて貰えるとは思ってもいなかったよ!
「よく見ておるのだぞ! これが高等魔法、雷追魔法『春雷』じゃ!」
春野先生が手をかざすと、一瞬で手のひらに凄い魔力が集まっていく。
そして次の瞬間、まばゆい雷が天に向かって放たれた。
「おおーーっ!?」
凄い! 魔法だ! いや自分も使えるけど、なんていうかこれはほんとに魔法! って感じの魔法だ!
「これからが本番じゃぞ」
「え?」
「むん!」
春野先生が魔力を込めると、なんと空に放たれた雷が突然軌道を変えて直角に曲がったんだ。
「ええ!?」
「更に!」
雷は更に何度も軌道を変え、ジグザグに走ったり円を描くように小刻みに軌道を変えると言ったアクロバティックな動きを見せた。
「凄い凄い!!」
「はっはっはっ! この程度で驚いていてはいかんぞ。次は儂秘伝の……」
あまりに凄い光景に大はしゃぎしていると、春野先生も興が乗って来たのか雷を消して次の魔法の準備を始める……んだけど。
「何をやっているんですかぁーーーーーーっ!!」
さぁ魔法を発動させるぞってタイミングで、鈴木さんが凄い勢いで駆け込んできた。
「おお? どうしたのだ鈴木よ?」
「どうしたのだ? じゃありませんよ! 何高等攻撃魔法なんて教えているんですか!」
「いや教えてはおらんぞ。ただ披露していただけじゃ」
「もっと他に見せる魔法があるでしょうが!!」
どうやら今の魔法は見せちゃいけない魔法だったみたいだ。
まぁ攻撃魔法って言ってたしなぁ。
「けど雷魔法カッコ良かったなあ」
やっぱ派手な魔法はカッコいいよね。
空にドカーンってさ!
「確か魔力をこう集めて……」
僕は春野先生がやっていたのを思い出しながら、雷が放たれる光景をイメージして空に手をかざし叫ぶ。
「『春雷』!!」
なーんてそう簡単に高等魔法が使えたら苦労は……
ドゴーン!!
「あっ、出た」
僕の手の先から放たれたデッカイ雷の柱が空に向かって飛んでいく。
うわぁ、マジで出ちゃったよ……
なんかおもちゃの銃で遊んでたら、本当に弾が発射された気分だ。
ただこれ、マズかったりしないかな。だって攻撃魔法だし。
「「……」」
案の定、春野先生と鈴木さんがこっちをみて呆然とした顔になっていた。
「ええと……なんか出来ちゃいましたね」
ヤバイな、勝手に攻撃魔法使っちゃ駄目って怒られる流れだよねコレ?
けれど、先生達の反応はちょっと違った物だった。
「「何で使えるの?」」
「え?」
「いやいやいや、なんで子供が杖も使わずに高等魔法を使えるんじゃ!?」
「おかしいですよ! いくら咲良さんが才能に溢れているとしても、そもそも子供の魔力量では高等魔法を使う事は出来ない筈です!」
「え? そうなんですか?」
「うむ、流石は儂のまモフォッ!?」
「は・る・の・せ・ん・せ・い?」
何かを言いかけた春野先生の口を鈴木さんが強引に塞ぐ。
今、流石は儂のって言ってたけど、儂の何だろう? 儂の……儂の考案した魔法とか?
実は春野先生は凄い魔法使い研究家だったとか?
「ともあれ、もしかしたら咲良さんの才能は我々の予想をはるかに超えている可能性がありますね。これは一度精密な検査を行った方が良さそうです。幸い、ここの施設には各種検査設備がありますから。すぐに検査をしましょう!」
「は、はぁ」
怒られなかったのは良かったけど、魔法の勉強は後回しになりそうだなぁ。
「では咲良さん、係の者を呼びますので検査をしてきてください。魔法の勉強は午後からにしましょう」
良かった! ちゃんと魔法の勉強ができるんだ!
「分かりました!」
「それはそれとして、春野先生には勝手に高等魔法を見せた事でお話があります」
ただ、春野先生はそれだけでは済まないみたいだった。
「え? でも儂が直接教えた訳じゃないし……」
「魔法を学び始めた子供にこんな危険な魔法を見せる事が問題なんですよ! 攻撃魔法に過剰に興味を持ったらどうするんですか!」
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