魔法世界の幼女に転生した僕は拗らせ百合少女達に溺愛されています!?

十一屋 翠

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最終話 僕らの明日

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「それでは、咲良の勝利を祝って……」

「春野先生、咲良さん達のです!」

 春野先生がお酒の入った手に乾杯の音頭を取ろうとすると、すかさず鈴木さんの指摘が入る。

「……咲良達の勝利を祝って乾杯!!」

「「「「「「「「「かんぱーい!」」」」」」」」」

 大会が終わった後、僕達はカレン先生達に誘われて近くのお店へ祝賀会にやってきた。
 ただ、そのお店が……

「なんか凄い豪華なお店なんだけど……!」

 そう、先生たちに連れて行かれたお店は、門からお店まで送迎車で移動するという広大な敷地を持っていたんだ。
 そして車を降りると、従業員さん達がずらりと並んでお出迎え。
 はい、どう考えても回らない皿レベルじゃない高級店です。

「可憐先生、ホントに良かったんですか? なんか凄く高そうなお店ですけど」

 さすがに不安になった僕は可憐先生に尋ねる。

「ん? あー、はいはい。大丈夫よ。今日はスポンサーもご機嫌だしね」

 スポンサー?
 どういう意味と聞こうと思ったんだけど、先生達は既に出来上がっていて、とても聞ける雰囲気じゃなかった。

「はっはっはっはっ! 観たか鈴木! 咲良の実力は確かだっただろう!」

 春野先生もさっそく酔っぱらってる。
 ついさっき乾杯したばかりなんだけどなぁ。
「はいはい見ましたよ。咲良さんだけでなく、チームメイトの方達も見事な活躍でしたね」

「うむ。さすがは噛呪院(かじゅいん)の娘と蓮羅燕(はすらえん)の娘よな。咲良の仲間に相応しい実力じゃった」

 んん? 蓮羅燕って何? 噛呪院は燐瑚(りんご)ちゃんの家だけど、もしかして魅環(みかん)ちゃんの事を言ってるのかな?
 でも魅環ちゃんの苗字は蓮愿(れんげん)だった筈だけど?

「それにしても予想以上だったわ! まさか優勝しちゃうなんてね!」

 と酔っぱらった可憐先生が、僕達を丸ごと抱え込むように抱きしめる。
 おおっと、大変結構な感触が!

「……咲良ちゃん、今エッチな事考えてなかった?」

「具体的には脂肪に関して……」

「ソンナコトナイヨ」

 何で二人共そんなに勘が鋭いの!?

「くっ、私もあと5年経てば!」

「私もあと7年くらいあれば……」

 二人共小学一年生でそこまで思いつめなくても……

「ですがそうですね。中学年くらいなら勝てるだろうと思っていたのですが、まさか中学生に勝つとは予想外でした」

 なんて馬鹿やってると、杜若先生達が大会の話題で盛り上がっていた。

「複数の属性を魔力の枯渇の心配なく使えるとこんなに強いんですねぇ。参考になりましたよ」

「といってもこいつはお嬢の全属性あってこその戦略だし、俺達じゃ役立てそうにはないけどな!」

 参考にならなくてすみません。

「でも確かに今回の試合は自分の才能に寄っかかって戦ってたなぁ」

 真面目に実力を磨いて戦っていた人達を考えると、ちょっと後ろめたい。

「いいえ、それは違いますよ」

 そう断言したのは継代先生だった。
 継代先生はただでさえ色っぽいのに、お酒が入ってさらにエロ、いや色っぽさマシマシだ。

「ガード」

「ガード」

 二人共なんで継代先生の前に立ちふさがるの?

「あらまぁ可愛らしい。それはそれとして咲良さん。貴女は自分の才能で勝ったと思っているようですが、それは間違いです。世の中には才能があってもそれを活かせない人、才能に胡坐をかいて自分を鍛える事を怠る人がたくさんいるのですよ」

「分かります。とても分かります」

  何故か魅環ちゃんが何度も頷いている。

「咲良さんは確かに人並溢れた才能を持っています。ですが、それでも一年生が中学生に勝つのはありえない事なんですよ」

「そうだな。一部初見殺しな場面もあったが、肉体硬化で身を守ったところなんかは、日ごろからの練習の賜物だ。普通一年生であんなとっさに身体強化が出来る子供はいないぜ」

「そうですね。私と初めて会った時も咲良ちゃんは肉体硬化の練習をしていました。それからもずっと肉体硬化の練習を続けていましたし」

「さっすが私の弟子よねー! 先生の言う事をしっかり聞く良い子だわー! ほーら良い子良い子!!」

「むがっ!?」

酔っぱらった可憐先生が僕を抱きしめ、その胸に顔をうずめさせる。
と言うか息が! 息が出来ません!

「こ! こらー! 咲良ちゃんから離れなさーい!」

「胸で溺れさせるなんてなんて羨ましい! 私にやらし、いえやらせてください!」

 燐瑚(りんご)ちゃんと魅環(みかん)ちゃんが強引に引き剥がした事で、僕はようやく息が出来るようになる。

「ぶはぁっ!!」

 あ、危なかった。あのままだったら本当に幸せ死するところだったよ。

「なぁーに? 貴方達もやって欲しいの? よしきたー!」

「きゃーっ! そんな事言ってなーい!」

「た、助けむぷっ!?」

 あっ、今度は二人が捕まった。

「けどあれだな。まさかここまでやれるとは思っても居なかったぜ。こりゃあこれからが楽しみだよな!」

「だね。今後は魔法の種類を増やすことを重点的にしてもいいかもしれない」

 と、先生達が今後の訓練内容について相談を始める。

「あれ? 魔法の精度は良いんですか?」

「咲良さんは魔法の精度も十分に練られているし、これなら暴発の心配はないね。念のためたまに抜き打ちで覚えた魔法の精度テストをすれば問題ないと思うよ」

 おおっ、つまり今後は今まで以上にバンバン色んな種類の魔法を覚える事が出来るんだ!

「た、助けてぇ~」

 僕が今後の訓練についての期待を高めていたら、燐瑚(りんご)ちゃんの力ない悲鳴が聞こえてくる。
 いけない、そろそろ助けないと……

「って、可憐先生! 魅環(みかん)ちゃんがぐったりしてる!?」

 なんという事だろう。運悪く可憐先生の谷間に収納された 魅環(みかん)ちゃんがぐったりとしたまま動かなくなっていたんだ。

「やべぇ! おいお前等助けるぞ!」

「は、はい!!」

 などと言うトラブルを起こしながら、祝賀会は続けられ、一時間を越えた所でお開きとなった。

「今日はありがとうございました」

 というのも僕達が未成年だから、暗くなる前に帰らないといけないって鈴木さんが気を聞かせてくれたんだよね。

「今日はお疲れ様でした。咲良さん、燐瑚さん、魅環さん。帰りは気を付けてくださいね」

「「「はーい」」」

「よーし、それじゃあ二次会に行くわよ-!」

「「「「「「おーっ!!」」」」」」

 そして向こうでは可憐先生達が二次会に向かうようだ。

「まったく、今日は誰のお祝いだと思っているんでしょうね。では私はあの人達の世話があるのでこれで失礼します」

「鈴木さんもお気をつけてー!」

 鈴木さん達が去ると、とたんに静かになった。

「楽しかったねー咲良ちゃん!」

「こんな賑やかな食事は生まれて初めてです。これも咲良ちゃんのお陰です!」

 と思ったけど、全然賑やかだったよ。

「二人とも今日は僕に付き合ってくれてありがとう」

「ううん、気にしないで」

「そうです。私達は咲良ちゃんの役に立ちたいから参加したんです」

 二人にそう言ってもらえると、嬉しいけど申し訳なくもある。

「でも僕が参加するって言ったから巻き込んじゃった訳だしね」

 今回は僕が動いたから、付き合いの良い二人が手伝ってくれた訳で、二人にはわざわざ参加する理由もなかったわけだからね。
 終わってみれば結構疲れたし、今後は二人の負担にならない為にも個人部門で参加した方がいいかもなぁ。

「それは違うよ! 私は咲良ちゃんと一緒に何かするのが楽しいんだよ!」

「わ、私もそうです! 咲良ちゃんと思いっきり体を動かせて楽しかったです!」

 そう思っていたら、二人から強く反論されてしまった。

「「だから次にどこか行くときは私を誘って!!」」

 二人は絶対について行くぞという強い意思を見せてくる。

「うん、ありがとう二人とも」

「「どういたしまして」」

 二人共、本当に付き合いがいいんだから。
 けど、やっぱり嬉しいな。

「さーて、それじゃあ私も次の大会に向けて新しい魔法を教えてもらわないと! 咲良ちゃんの足手まといになる訳にはいかないもんね!」

「ええ、私もです。これまで以上に体も魔法も鍛えないと」

「噛呪院(かじゅいん)家に伝わるエッグい魔法で咲良ちゃんに近づく不埒者を酷い目に遭わせてあげる」

「お兄ちゃんを実験台、いえ練習台に使って技の精度を高めてないとですね!」

 二人の口からかなり物騒な単語が出てきたけど、聞かなかったことにしておこう。
 うん、僕は何も聞かなかったぞ。

 お喋りを楽しみながら帰り道を歩いていると、お互いの家に繋がる分かれ道にたどり着く。

「じゃあまた明日ー!」

「また学校で」

「うん、また明日ー!」

 手を振って二人と別れた僕は、今日の大会を思い返す。

「それにしても今日は楽しかったなぁ」

 魔法っていう不思議な力を使って、マンガみたいな戦いが出来るなんて思ってもみなかったよ。

「しかも圧倒的に不利な上級生相手に戦って勝つなんて、我ながらビックリだ!」

 思い出すだけで胸がわくわくしてくる。

「……まだ日が沈むまで時間があるよな」

 どうにも興奮が抑えきれなくなった僕は、学校に向かう。
 目的は魔法の練習の為だ。
 公園で魔法の練習をすると叱られるからね。
 そこらへん、この世界だと、魔法の練習の為に休みの日でも運動場は自由に使って良いのがありがたい。

「よーし、それじゃあ……」

「「「魔法の練習だー!」」」

 運動場に三つの声が重ねる。

「「「……あれ?」」」

 ふと声のした方向に顔を向ければ、見覚えのある顔が二つ。

「燐瑚(りんご)ちゃんに魅環(みかん)ちゃん!?」

「「咲良ちゃん!?」」

「「「何で!?」」」

 三人そろって全く同じセリフが口をです。

「ええと、僕は魔法の練習をしようかなって」

「わ、私も……」

「私もです」

「「「……」」」

 まさか全員同じ理由で学校に来たとは思わず、思わず無言になってしまう。

「「「……ふ、ふふ」」」

 そして小さな笑い声が漏れ出す。

「「「あははははははっ!!」」」

 堪えきれず笑い声が大きくなる。

「なーんだ、二人もだったんだ」

「咲良ちゃんもでしょ」

「まさか全員同じとは驚きました」

 どうやら興奮冷めやらぬは僕だけじゃなかったみたいだ。

「よーし、それじゃあ皆で練習しよっか!」

「うん!」

「はい!」

 そうして僕達は日が暮れて心配した親に怒られるまで魔法の練習を続けた。
 次はもっと魔法を上手く扱いたいと願いながら明日も、そして明後日も。

 この世界に来た理由はまだ分からないけど、今が楽しいと思えるのだから来た価値はあったと思っている。
 だから、これからも僕は魔法を楽しく学んでいこう。
 ただひたすらに今を楽しむ為に!
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