全てを諦めた公爵令息の開き直り

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第2章

84話 母君の体調

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……僕は、回想を終え。
そのロレンツォ殿下と相対し、彼に率直に聞いてみる事にした。

「その……ご不快でしょうが、殿下。救世の巫子達が貴国へ出向くにあたり……その、殿下の事、お母上の事、お調べさせて頂きました。5年前の第2王子派閥粛清の件、それにお母上もご家族が巻き込まれ…冷遇されるに至った事。殿下がそれでご苦労なされた事も。そして、お母上が1年程前からご体調を崩されて、それが未だに続いてらっしゃるのですよね?」

意を決して尋ねる僕に、いつも強気だったロレンツォ殿下の瞳が揺らいだのが見えた。
いくら悪ぶって見せても、横暴に振舞ってみせても、中身は僕と歳一つしか変わらないのだ。
それが、今強く実感出来た。

「……えぇ、そうです。だいぶ起き上がれる様にはなってきた様ですが、未だにベッドを離れられない日も多い。日に日に弱っている気もします。出来るなら、ずっと傍で支えたいのですが、そうすれば、エウリルス王国との次代の懸け橋にと買って出た私の留学生活も止めねばなりません。そうなると、結局また立場が揺らぎ、私だけでなく母の苦しみが増す事になると思うと……」

ロレンツォ殿下はそこまで言うと、ぐっと押し黙ってしまった。
殿下は本当にギリギリの所を渡って来たのだな、と思う。

「その…どういった病気なのかは、分かりますか?」
「いえ、長年の心労によるものだろうという事くらいしか…。」
「まさかとは思いますが……毒…という事はないですよね?」

僕は自身が前回、毒殺されそうになった事を思い返し、念の為尋ねてみた。
僕の問いに対し、ロレンツォ殿下はゆっくりと首を横に振った。

「いえ、それはないと思います。私が王太子派に入ってから、母も王妃様に影ながらに支えて頂いている様ですし。」
「旧第2王子派閥の増長…などは、大丈夫なのですか?」
「……すみません、あまり内情をお話ししきれないのですが、そういった事が無い様に、父王は粛清を断行なされたのです。もし、残党が残っていても、表立った動きは出来る状況には無い。とだけお伝えしておきましょう。まぁ、私がその睨みを利かせている一人でもありますし。」

そう言って嗤う殿下の顔は、少し、仄暗い顔をしていた…。
やっぱり、こういう所がロレンツォ殿下らしいな。
逆に少し安心するよ。
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