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しおりを挟む「おお、皆無事だったか!よかった……」
その姿を見て、この依頼を受けて本当に良かったと思った。
牧場に帰り着くと、シャールさんの声に従いジャジ牛たちは素直に柵の中へ入っていった。
「本当に、本当にありがとう、冒険者の皆さん!」
小屋の広間に入ると、シャールさんが俺達一人一人に感謝の言葉を繰り返す。彼が落ち着くと、ようやく報酬の話となったわけだが、
「三人共、良かったらゴールデンミルクの売り先に当てがあるんだがどうだ?おそらくかなり高く買ってくれると思うぞ」
「「「本当ですか?」」」
「あ、ああ……」
俺の提案に食いつく三人の勢いに思わず仰け反る。少し前に知り合った料理長の言葉を思い出した。彼なら信頼出来る。
「現物支給ということは、シャールさんもそこまで現金がないという事だろう。半数を現金で、もう半数分は現物で貰い売りに行かないか?もし王都まで持っていくのが面倒なら…」
「「「そうします!」」」
「そ、そうか……」
俺が話し終わる前に、食い気味に同意された。彼らには一人二樽、俺が四樽運べばいいだろう。現金化したら総額を四人で割ると決まった。今後の話が終わると、いつの間にかシャールさんが鍋とコップを四つ持ってきて、暖炉で温め始めた。すると、濃厚なミルクの香りが漂い始め広間に充満する。思わず目をつぶり鼻をひくひくさせ香りに集中すると、涎が口の中に溢れ腹が鳴った。
「お恥ずかしい……」
「はっはっはっ、先ずは皆さん、一息ついて下さい。搾りたてのゴールデンホットミルクです。召し上がって下さい」
「こ、これが、ゴールデンミルク……」
「「「ありがとうございます!」」」
確かに普通の牛乳よりかなり黄色味が強い。まるで前世で飲んだミルクセーキのような色だ。温められたことにより香りも強い。
脂肪分が高いため少しトロミがあるようにみえる。
俺が感動し、コップの中をじっくりと見ている最中、三人は直ぐに手に取り飲み始めていた。
「甘~い!」
「濃厚だ~!」
「美味しい~!」
一口飲んだ彼らは満面の笑みで、感想を述べた。それをシャールさんは満足そうに微笑んでいる。さて俺も冷める前に、
「こ、これは……」
鼻から抜ける強いミルクの香り、濃厚で甘みのある味わい、ねっとりと舌を包んだかと思えば、サッと喉へと消えていく。ああ、口の中が幸せだ。そして温められたミルクが順番に身体の中を伝っていくのがわかる。喉を伝い胃に溜まると、全身にその熱がじんわりと広がっていく。そして驚くことに、魔力がみなぎってきた。
「あれ!?」
「うん!?」
「二人も感じたか」
「どうしたんだよ?」
魔法がまだ使えないレオだけが、俺達の反応を不思議そうに見ていた。
「シャールさん、ゴールデンミルクは魔力を回復する効果があるんですか?」
思わず俺はシャールさんに尋ねた。その答えを息を呑んで待つノアとルイ。
「私も毎日飲んでますが、そんな効果はないと思いますよ。あ!もしかして森の中で食べた物の影響かもしれません。それがなにかはわかりませんが……」
なるほど、確かにシャールさんは搾りたてと言っていた。そして普段はこんな効果も無い。なら、その考えが一番可能性が高そうだ。頭の悪い俺は、あまり深く考えないことにする。今はこの味を堪能したい。
「皆さん、今日はもう日が暮れます。帰られるのは明日になさっては?」
「依頼も達成しましたし、連泊など迷惑では?」
「正直こんなに人と話すのは久しぶりで楽しいのです。ご用事がなければぜひ泊まっていってください。夕食ではゴールデンミルクを使った色々な料理も召し上がって頂ければと」
「「「お世話になります」」」
「ははは……それじゃ、俺も遠慮なく」
即答する三人に苦笑いだ。しかし俺も色々な料理と聞いて直ぐにシャールさんの厚意に甘えることを決めていたのは内緒だ。
広間で休んでいると待望の夕食の時間となり、シャールさんに呼ばれ食卓へ四人で向かい、テーブルに並べられた料理を見た。焼きたての大麦パンからは香ばしい匂いが立ち上り、バターとハチミツの小瓶が食欲をそそる。中央の大鍋からは、湯気と共に濃厚な香りが漂う。色とりどりの野菜が煮込まれたシチューだ。そして、切り出されたばかりらしいチーズの塊。全てがシンプルながらも、心が温まるような光景だ。
三人は、少しは遠慮がちにしながらも、目を輝かせている。彼らも、こういう温かい手料理は久しぶりなのかもしれない。
「いただきます」
「「「いただきます」」」
「沢山食べて下さい」
俺の挨拶すると皆も挨拶し、それぞれの皿に手を伸ばす。俺も大麦パンを千切り、盛られたシチューを掬った。
シチューは、見た目通りに具沢山だった。柔らかく煮込まれた根菜やキノコ、そして鶏肉。一口含むと、豊かな野菜の甘みと肉の旨みが口いっぱいに広がる。そして、その全てを優しく包み込んでいるのが、あのゴールデンミルクの濃厚なコクだ。
「う、美味い……!」
思わず声が漏れた。これは、単なるシチューではない。ミルクの自然な甘みと、素材の味を最大限に引き出すような、上品な味わいだった。一口、また一口とスプーンを進める手が止まらない。
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