Lost at sea〜不器用御曹司の密かな蜜愛〜

白山小梅

文字の大きさ
57 / 83
8 想い人〜四日目〜

3-2

しおりを挟む
「宗吾には兄がいるんだが、この兄は幼い頃からずっと医者になりたいと言って、家を継ぐ気が全くなかったんだ。それで自然と宗吾が次期社長にという空気になり、つい申し込まれる縁談を受けては喧嘩ばかりだったよ」

 突然会話が始まり、とりあえず頷きながら話に耳を傾ける。

「いきなり何を話しているだって思ったかな?」

 そう言うと社長は六花にウインクをしてみせる。宗吾からは想像もつかない姿に、目を見開いてしまう。

「父さん!」
「あぁ、すまんすまん。だがちゃんと説明しないと伝わるものも伝わらないぞ。そこがお前の悪いところなんだ」

 六花は思わず頷いて宗吾をチラッと見たが、彼はバツが悪そうに黙ってお茶を飲んでいた。

「ただある時にね、仕事に集中したいからお見合いは全て断って欲しい言われたんだ。しかもその理由が"愛する人たちを守るため"だって言うじゃないか。まさかそういう人が宗吾にいると思わなかったから、私たちは驚いたし、正直戸惑ったよ」

 そう言うと、社長は宗吾を見ながらニッコリと微笑む。宗吾は社長を睨みつけたが、六花の視線を感じて慌てて顔を背ける。

「そ、そんな話を家族に漏らすわけないじゃないか! というか、今日は余計な話はいいからーー」
「そうそう。お前は昔からそうなんだよ。自分のことは話さそうとしないからね。だから最初は"愛する人"なんて嘘だと思ったくらいさ。でも……その後いろいろな事実を知らされて、ようやく本気なんだとわかったよ」

 お見合いを断るために契約結婚の話をしたのだから、きっと一緒に暮らした後の話に違いない。それならばお父様の言う愛する人というのは、本当に私のことなのだろうか。

 もしそうならば、"守る"とはどういうことだろう。あれ以降、宗吾とは会っていないし、お互いの状況を知らないのにどう守るというのか謎だった。

 すると社長は六花の方に向き直り、微笑みかける。

「宗吾はどこか空気を読んでしまうところがあってね。感情表現が不器用で面倒臭いんだよ。今日だって私に背中を押してくれってわざわざ会いに来たくらいだし」
「父さん!」
「はいはい、わかったよ。余計なことは言うなっていうんだろう?」

 このぶっきらぼうな話し方、なんだか出会った頃の宗吾を思い出すーー六花はついクスッと笑った。

 きっと家族に見せるこの姿こそが、宗吾の本当の姿なのだろう。そう思うと、昔から私の前では素の宗吾を見せていてくれたのかもしれないと思うと、何故かすごく嬉しくなった。

「六花さんには相当迷惑をかけたんじゃないかな。いろいろわかりにくくて大変だろうと思うよ」
「いえ、そんなことはないです! ちょっと遠回し過ぎるところもありますが……それも彼らしさだと思うので」

 そんな宗吾だったからこそ、二人の関係は始まった。確かにわかりにくいけど、それが親しい人に見せる姿だと知れば、彼が可愛いくて愛おしい存在になる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺と結婚してくれ〜若き御曹司の真実の愛

ラヴ KAZU
恋愛
村藤潤一郎 潤一郎は村藤コーポレーションの社長を就任したばかりの二十五歳。 大学卒業後、海外に留学した。 過去の恋愛にトラウマを抱えていた。 そんな時、気になる女性社員と巡り会う。 八神あやか 村藤コーポレーション社員の四十歳。 過去の恋愛にトラウマを抱えて、男性の言葉を信じられない。 恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。 そんな時、バッグを取られ、怪我をして潤一郎のマンションでお世話になる羽目に...... 八神あやかは元恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。そんな矢先あやかの勤める村藤コーポレーション社長村藤潤一郎と巡り会う。ある日あやかはバッグを取られ、怪我をする。あやかを放っておけない潤一郎は自分のマンションへ誘った。あやかは優しい潤一郎に惹かれて行くが、会社が倒産の危機にあり、合併先のお嬢さんと婚約すると知る。潤一郎はあやかへの愛を貫こうとするが、あやかは潤一郎の前から姿を消すのであった。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

契約書は婚姻届

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「契約続行はお嬢さんと私の結婚が、条件です」 突然、降って湧いた結婚の話。 しかも、父親の工場と引き替えに。 「この条件がのめない場合は当初の予定通り、契約は打ち切りということで」 突きつけられる契約書という名の婚姻届。 父親の工場を救えるのは自分ひとり。 「わかりました。 あなたと結婚します」 はじまった契約結婚生活があまー……いはずがない!? 若園朋香、26歳 ごくごく普通の、町工場の社長の娘 × 押部尚一郎、36歳 日本屈指の医療グループ、オシベの御曹司 さらに 自分もグループ会社のひとつの社長 さらに ドイツ人ハーフの金髪碧眼銀縁眼鏡 そして 極度の溺愛体質?? ****** 表紙は瀬木尚史@相沢蒼依さん(Twitter@tonaoto4)から。

睡蓮

樫野 珠代
恋愛
入社して3か月、いきなり異動を命じられたなぎさ。 そこにいたのは、出来れば会いたくなかった、会うなんて二度とないはずだった人。 どうしてこんな形の再会なの?

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

この溺愛は契約外です~恋焦がれた外科医から愛し愛されるまで~

水羽 凛
恋愛
不幸な境遇を生きる健気な女性花名は母親の治療費と引き換えに外科医である純正の身の回りの世話をすることになる。恋心を隠せない花名に純正は……。

とろける程の甘美な溺愛に心乱されて~契約結婚でつむぐ本当の愛~

けいこ
恋愛
「絶対に後悔させない。今夜だけは俺に全てを委ねて」 燃えるような一夜に、私は、身も心も蕩けてしまった。 だけど、大学を卒業した記念に『最後の思い出』を作ろうなんて、あなたにとって、相手は誰でも良かったんだよね? 私には、大好きな人との最初で最後の一夜だったのに… そして、あなたは海の向こうへと旅立った。 それから3年の時が過ぎ、私は再びあなたに出会う。 忘れたくても忘れられなかった人と。 持ちかけられた契約結婚に戸惑いながらも、私はあなたにどんどん甘やかされてゆく… 姉や友人とぶつかりながらも、本当の愛がどこにあるのかを見つけたいと願う。 自分に全く自信の無いこんな私にも、幸せは待っていてくれますか? ホテル リベルテ 鳳条グループ 御曹司 鳳条 龍聖 25歳 × 外車販売「AYAI」受付 桜木 琴音 25歳

【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜

椿かもめ
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。 【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】 ☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆ ※ベリーズカフェでも掲載中 ※推敲、校正前のものです。ご注意下さい

処理中です...