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第1話 激闘の果てに
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「妖魔」
古の時代より、人々から恐れられ忌み嫌われていた異形の存在達。
ある者は、稲妻を自在に操り、
ある者は、大空を自由に駆け、
ある者は、その怪力で山をも砕いたという。
ここは地球の地下深くに存在する、妖魔帝国の心臓部、大王の間。
先程まで妖魔帝国の命運をかけた戦闘が行われていた場所である。
床には何千という無数の妖魔達が倒れ伏している。
辺りはしんと静まり返り、物音ひとつしない。
大王の間にある見事な装飾を施された柱の数々は、大半が折れ、崩れ落ち、この場所で行われた戦闘の激しさを物語っている。
奥に鎮座している巨大な玉座の横には、その玉座に座るに相応しい巨躯が天を仰ぐ様に倒れている。
その妖魔は、四本の禍々しい腕を持ち、カラスの濡れ羽の様に艶やかに光る巨大な翼を持つ。
巨大な体躯には無数のアザが浮かび、頭から生えていたであろう八本の角はその全てが折られている。
下あごから上向きに生えていた、鋭く強靭な二本の牙も今は無い。
彼こそが強大な力にて、千年もの長きに渡り、妖魔帝国を統べてきた妖魔大王である。
今、この場所には既に一切の生命が存在しないかの様に思われた。
と、妖魔大王の額にある第三の目がうっすらと開く。
そして、右…………左…………と、非常にゆっくりとした速度で周りの確認を始める。
しばらく周りを確認すると、その巨体からは想像も出来ない小さなささやく様な声で、妖魔大王が呟く。
「……あいつら……帰ったか?」
修学旅行で見回りに来た先生に、寝たふりをする生徒の様である。
「……そうみたいッス」
どこからともなく返事が返って来る。
これまた蚊が鳴く様な小さい声である。
「そうか」
それを聞いて妖魔大王はゆっくりと慎重に上体を起こし始める。
「ふう。いたたた」
横にある玉座の手すりにつかまりつつ、なんとか立ち上がる妖魔大王。
そのまま中腰の姿勢で玉座の前まで移動をする。
「あー。よいしょっと」
ドスンと玉座に座る妖魔大王。
やがて床に倒れていた者達も、もぞもぞと次第に動き始めた。
「ひどい目にあったな……」
「うわー血が」
「痛かったねー」
全員死んだフリをしていたようだ。
その光景を見て妖魔大王はホッと安堵すると、懐から古い手鏡を取り出す。
数百年前に亡くなった母の形見であったが、戦闘の影響なのか、鏡の部分にはいくつもヒビが入っている。
右隅にわずかに残っている、あまり割れていない部分で、何とか自分の顔を確認する。
三つの目全てに、丸い青あざが綺麗についている。
そして牙が二本とも折れている事に初めて気づく。
「うう。牙は保険がきかないのに……」
「大王様。角も折れてるッス」
「ええっ! うそっ!?」
慌てて手鏡で自分の頭を確認する。
「本当だ……」
鏡で確認しただけでは納得が出来ず、頭を触って確認する妖魔大王。
「あいつら絶対わざとッス。八本全部折れるなんてありえないッス」
そう言いながら、先程から妖魔大王と会話をしていた人物がゆっくりと起き上がってきた。
漆黒の鎧に身を包んだ、妖魔帝国三大幹部の一人「暗黒騎士」である。
しかし今では元の鎧の形が分からなくなるくらいにボコボコにされている。
「お前もだいぶひどいな」
「大王様ほどじゃ無いッス」
暗黒騎士は玉座の側までよろよろと歩いてくると、「失礼するッス」と倒れる様に床に座りこむ。
既に体力は限界だった様だ。
膝をかかえて体育座りをしている。
「しかし魔法少女ってあんなに強いのか? たった三人なのにえげつない強さだな」
「ぱねぇッス。正直、俺引いたッス」
暗黒騎士は根元から折れた愛用の魔剣エネギリウスを眺める。
折られたのではない。
折れたのだ。
魔法少女の肩口に魔剣を振り下ろしたら、当たった瞬間にポキンと根元から折れたのだ。
「何よ」
と言って拳を握る、赤の魔法少女「綾酉 きらら」の顔が最後に残っている記憶である。
「あ! こんなとこにあったッス」
暗黒騎士が座っている、すぐそばに折れた魔剣の刀身が落ちていた。
「探してたんスよ」
暗黒騎士は折れた魔剣の切断面を合わせている。
「どうだ? いけそうか」
「多分接着剤でいけるッス」
「無理じゃね?」
二人が会話をしていると、赤い物体がゴロゴロと転がって来た。
「奴ら、魔法少女を名乗っておる癖に、物理攻撃ばっかりだったぞい」
三大幹部の一人「だるま男爵」だ。
名前の通り手足が無く、だるまそのものである。
両目とも目が入っていないはずなのだが、ちょうど目に当たる部分が陥没していて、目が入っている様に見える。
黄の魔法少女「戌山崎 しずか」にロッドで殴られた跡である。
「もっと伝統工芸を大事にせんといかんぞい……」
だるま男爵は右に左にゴロゴロと転がっている。
「あちゃー。男爵もなかなかのやられっぷりッスね」
「いきなり目を狙ってくるとは思わなかったぞい」
「正義って一体何なんだろうな」
遠い目をする妖魔大王達であった。
古の時代より、人々から恐れられ忌み嫌われていた異形の存在達。
ある者は、稲妻を自在に操り、
ある者は、大空を自由に駆け、
ある者は、その怪力で山をも砕いたという。
ここは地球の地下深くに存在する、妖魔帝国の心臓部、大王の間。
先程まで妖魔帝国の命運をかけた戦闘が行われていた場所である。
床には何千という無数の妖魔達が倒れ伏している。
辺りはしんと静まり返り、物音ひとつしない。
大王の間にある見事な装飾を施された柱の数々は、大半が折れ、崩れ落ち、この場所で行われた戦闘の激しさを物語っている。
奥に鎮座している巨大な玉座の横には、その玉座に座るに相応しい巨躯が天を仰ぐ様に倒れている。
その妖魔は、四本の禍々しい腕を持ち、カラスの濡れ羽の様に艶やかに光る巨大な翼を持つ。
巨大な体躯には無数のアザが浮かび、頭から生えていたであろう八本の角はその全てが折られている。
下あごから上向きに生えていた、鋭く強靭な二本の牙も今は無い。
彼こそが強大な力にて、千年もの長きに渡り、妖魔帝国を統べてきた妖魔大王である。
今、この場所には既に一切の生命が存在しないかの様に思われた。
と、妖魔大王の額にある第三の目がうっすらと開く。
そして、右…………左…………と、非常にゆっくりとした速度で周りの確認を始める。
しばらく周りを確認すると、その巨体からは想像も出来ない小さなささやく様な声で、妖魔大王が呟く。
「……あいつら……帰ったか?」
修学旅行で見回りに来た先生に、寝たふりをする生徒の様である。
「……そうみたいッス」
どこからともなく返事が返って来る。
これまた蚊が鳴く様な小さい声である。
「そうか」
それを聞いて妖魔大王はゆっくりと慎重に上体を起こし始める。
「ふう。いたたた」
横にある玉座の手すりにつかまりつつ、なんとか立ち上がる妖魔大王。
そのまま中腰の姿勢で玉座の前まで移動をする。
「あー。よいしょっと」
ドスンと玉座に座る妖魔大王。
やがて床に倒れていた者達も、もぞもぞと次第に動き始めた。
「ひどい目にあったな……」
「うわー血が」
「痛かったねー」
全員死んだフリをしていたようだ。
その光景を見て妖魔大王はホッと安堵すると、懐から古い手鏡を取り出す。
数百年前に亡くなった母の形見であったが、戦闘の影響なのか、鏡の部分にはいくつもヒビが入っている。
右隅にわずかに残っている、あまり割れていない部分で、何とか自分の顔を確認する。
三つの目全てに、丸い青あざが綺麗についている。
そして牙が二本とも折れている事に初めて気づく。
「うう。牙は保険がきかないのに……」
「大王様。角も折れてるッス」
「ええっ! うそっ!?」
慌てて手鏡で自分の頭を確認する。
「本当だ……」
鏡で確認しただけでは納得が出来ず、頭を触って確認する妖魔大王。
「あいつら絶対わざとッス。八本全部折れるなんてありえないッス」
そう言いながら、先程から妖魔大王と会話をしていた人物がゆっくりと起き上がってきた。
漆黒の鎧に身を包んだ、妖魔帝国三大幹部の一人「暗黒騎士」である。
しかし今では元の鎧の形が分からなくなるくらいにボコボコにされている。
「お前もだいぶひどいな」
「大王様ほどじゃ無いッス」
暗黒騎士は玉座の側までよろよろと歩いてくると、「失礼するッス」と倒れる様に床に座りこむ。
既に体力は限界だった様だ。
膝をかかえて体育座りをしている。
「しかし魔法少女ってあんなに強いのか? たった三人なのにえげつない強さだな」
「ぱねぇッス。正直、俺引いたッス」
暗黒騎士は根元から折れた愛用の魔剣エネギリウスを眺める。
折られたのではない。
折れたのだ。
魔法少女の肩口に魔剣を振り下ろしたら、当たった瞬間にポキンと根元から折れたのだ。
「何よ」
と言って拳を握る、赤の魔法少女「綾酉 きらら」の顔が最後に残っている記憶である。
「あ! こんなとこにあったッス」
暗黒騎士が座っている、すぐそばに折れた魔剣の刀身が落ちていた。
「探してたんスよ」
暗黒騎士は折れた魔剣の切断面を合わせている。
「どうだ? いけそうか」
「多分接着剤でいけるッス」
「無理じゃね?」
二人が会話をしていると、赤い物体がゴロゴロと転がって来た。
「奴ら、魔法少女を名乗っておる癖に、物理攻撃ばっかりだったぞい」
三大幹部の一人「だるま男爵」だ。
名前の通り手足が無く、だるまそのものである。
両目とも目が入っていないはずなのだが、ちょうど目に当たる部分が陥没していて、目が入っている様に見える。
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だるま男爵は右に左にゴロゴロと転がっている。
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