ほかほか

ねこ侍

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第7話 あらやだ。恥ずかしい。

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 ようやく長い沈黙から立ち直った俺達3人は、スキルについて話し合っていた。

 俺が持っていた5つのスキルは、ダズもミミも今まで聞いた事が無いと言う。

 特に【ほかほか】のスキルは別格で、類似したスキルも魔法も無いようだ。

「レア中のレアです~」
「オンリーワンだなっ。ウホッ」

 う・る・さ・い。

 励ましのつもりだろうか。

 ちっとも嬉しくねぇーーーっ。

 いやいや、八つ当たりなのはわかってるよ。

 俺は自分の事を特別だと、物語の主人公か何かだと勘違いしていたみたいだ。

 だってだって。

 異世界に転移したんだよ。
 そりゃあ少しは期待するさ。

 それなのに見た目は美少年にならないし、
 スキルはハズレばっかりだし、あんまりじゃないか。

 でも現実には、この世界では転移や転生は確率こそ低いが、起こり得る事象と認知され、さほど特別な事ではない。
 俺は偶然この世界に転移して、偶然そのままの姿で、偶然スキルが5つもあって、偶然その全てが当たりじゃなかっだけだ。


 って、そんな偶然があるかーっ。


 なんか怒るのも馬鹿馬鹿しくなってきた。


「転移者や転生者が最初から所持しているスキルって、この世界に来る前の事象が少なからず影響を与えてるって話ですよ~」


 ほぅ。そう言われ、転移する前の事を思い返してみる。

 朝は何時に起きて、何食ったっけ?
 昨日の事なのに……歳って怖い。

 ただ朝からすごく暑い日だったのは覚えている。

 午前中はなかなか動く気になれずに、確か昼過ぎからハロワに行って……


――芋を煮る工場。あなたにぴったり――

 あっ! 思い出した!

 あいつか! あのハロワのばばぁのせいか!

 よくも貴重なスキル枠の1つを【ほかほか】にしやがったな!
 ふつふつと、また怒りが沸き上がってきた。

 それに気づいたのか、記憶の中のばばぁがにやりと微笑んだ気がする。

 おのれっ! そこを動くなよっ!


 怒りに震える俺を見てダズが話しかける。


「思い当たる節があるウホ?」

「はぁはぁっ……まぁね……」


 しかし思えばこんなに興奮したりドキドキしたりするのは久しぶりだ。昨晩は号泣しちゃったし。

 元の世界では、毎日仕事に追われ、家に帰って飯食って風呂入って寝て。そして朝が来たらまた会社に行って……。
 会社を辞めてからも行き先がハロワに変わっただけだ。

 恋人も趣味と呼べるべきものも無く、ただ何となくその日を生きていた気がする。

 でも他の奴等もみんな、そんなもんなんだろうなと思っていた。


 …………

 よし。


 もう、うじうじするのは止めよう。

 せっかく異世界に来たんだ。
 生まれ変わった気になって、この世界を生き抜いてやろうじゃないか。

 密かに決意をする俺。

 そうと決まったらまずは仕事探しだな。

「とりあえず冒険者登録って出来る?」

 ものは試しに聞いてみる。
 このスキルじゃ断られる可能性もあると思ったのだ。

「全然OKです~。と言うかもう登録しちゃいました~」

 あら。そうなの。

「ちなみにヨースケさんの冒険者レベルは1ですよ~」

 まぁ。そんなもんだろう。
 これから少しずつあげていけばいいんだ。
 目指せレベル99だ!


「ちなみにダズさんはレベル458です~」


 んんっ!?
 信じられない数字が聞こえてきた。

 レベル458だとっ?この横で食べ終えたバナナの皮をペロペロしているゴリラがっ!

 これは聞いておかなければなるまい。

「レベルの上限っていくつなの?」

「ん~。上限はわかりませんが~、確か勇者エランドール様がレベル1200オーバーで歴代1位のはずです~」

 おふぅ。くらくらしてきた。

「で、これがギルドカードです~」

 そういうと、いつの間に準備していたのか金属で出来たプレートを渡された。名刺よりちょっと大きいくらいだろうか。厚みはおそらく1ミリもないが、力を入れても曲がる気配が無い。

 何で出来てるんだ。これ?

 ギルドカードの表には「ヨースケ」と名前が入っている。
 名前の横にはLv1とある。

 あらやだ。恥ずかしい。

 名前の下にはスキル名が5つ縦に並んでいて、
 これは本当に、とっても恥ずかしい。

 左上には俺の顔が載っている。
 てっきり写真だと思い、いつの間に撮ったのだと尋ねると
 念写の要領で直接プリントしてあるのだと言う。

 ほえー。すごいなぁ。

「そうそう。ギルドカードの冒険者レベルの欄は、成長を感知すると自動で更新されますからね~」

 それもすごいな~と思いつつ、スキルの欄は?と尋ねると、
 それはちょっと難しいです~。と言われた。

 感知の仕組みは良くわからないが、まだまだ改良の余地があるのだそうだ。

 裏面を見ると、この辺りの地図が記載されている様だ。
 何となく指先で触ってみると、指の動きにあわせて地図が動いたので非常に驚いた。

「最新機能なんですよ~」
「ウホッ。いいな~」

 ダズのギルドカードにはこの機能はついていないらしく、羨ましがっている。

「後でギルドカード持ってくるウホッ。」

 どうやら更新してもらうつもりらしい。

 この地図はダブルタップする事で、拡大や縮小をする機能まで備わっていた。

 ほとんどスマホだな……

 ただ画面は液晶ではないし、表の面と同じく単なる金属に見える。そして非常に薄く軽く、中に機械が入っている訳でも無い様だ。
 ひょっとして地球の技術ではないかと思ったのだが。

 しかしこの技術は異世界の物には違いが無いらしく、最近になってギルドカードに導入されたらしい。

 複数の異世界の技術や知識が伝達されている為だろうが、この世界では、驚くようなすごい技術を突然目にしたりする。

 それは何となくだが、進化としては不自然な、歪な発展を遂げているような気がした。





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