ほかほか

ねこ侍

文字の大きさ
30 / 53

第24話 あたし、イモリの黒焼き好きなのよ

しおりを挟む
「ふぅ~食べた食べた。」と腹をさする俺。

「バナナ鹿肉って美味しいねー」とにこにこしているランジェ。

 夕飯には俺がリクエストした事もあって、バナナ鹿肉のサンドイッチも出してくれた。ランジェは自分の顔より大きなそのサンドイッチをあっさりと平らげていた。他にはクスクスわかめのサラダと養殖コカトリスの胸肉のシチュー。どちらも本当に美味だった。

「そういえば、噴水広場に占い師がやけにたくさんいましたね」と俺はナージャに話しかける。

「ああ、あれね」
 
 ふうと煙を吐き出し、さも興味が無さそうにナージャが話す。
 今レーベルでは占いが空前の大ブームになっているらしい。

 はい、と数冊の雑誌を渡すナージャ。
 レーベルで発行されている女性向け雑誌らしい。

 見るとポーズこそ違えど、どの雑誌の表紙にも同じ人物が載っている。

 一冊目の表紙には、「今大注目の占い師! 『人生変えたくない?』でおなじみのミエール・ミライ氏、大特集!大満足の136P特集記事!!」とある。

 いやいや、特集しすぎだろ……

 二冊目の表紙には、「的中率99%!驚きの『往復びんた占い』とは!?」とある。

 とは!?、じゃねぇ。もう全てわかってしまったよ。
 絶対に占ってもらいたくない。俺はすべての雑誌をテーブルに置いた。

 その有名な占い師ミエール・ミライがレーベルに今来ているらしく、それに便乗してか一気に大量の占い師が増えたのだそうだ。

「本当下らないわよね」というナージャの両頬は、心なしか腫れている気がする……
 いや、ここはツッコまない方が良さそうだ。

 さて、お腹もいっぱいになった事だし。

 ふぅ。

 そろそろ聞かなければならないな。
 いつまでも問題を先延ばしには出来そうにない。

 とても嫌な予感しかしないのだが、意を決して俺はナージャに尋ねた。

「で、ダズは一体どうしたの?」

「ウホウホッ」

 ダズは何かに興奮しているのかそこら中を走り回っている。
 かと思えばピタッと止まって、「やらないか?」と意味不明な事を壁に話しかけている。

 「ねえねえ。僕、喋るゴリラって初めて見るよ」と眼を輝かせるランジェ。

 違うよ。彼はゴリラの獣人だよと優しく諭す。

 「えぇ!でも人の要素ほとんど無いよ」

 うん。それは否定できない。

「見ての通りなんだけどね。少し前から様子がおかしいのよ……」

 ナージャはとても疲れている様だ。

 何でも俺がペクトロ村へと出発した次の日から、朝早くに家をでて、昼過ぎに帰ってくることが度々あったという。そして戻ってくる度にダズは少しずつおかしくなり、今ではこの有様なのだそうだ。

「どこに行ってたかは話さないのよ」

 心配そうに顔を曇らすナージャ。

 ダズは「ゴリラ。ウケるww」と鏡に向かって笑っている。
 それ自分だぞ。

 カランカランカラン。

 その時、酒場のドアが勢いよく開いた。

「こんばんはー。ダズさんいますか?」

 入ってきたのはリザードマンの男だ。どちらかと言うと、トカゲと言うよりはイモリかヤモリに近い外見をしている。きょろきょろと良く動く大きな眼は、顔の横側についており、なかなか愛嬌のある顔だ。
 男は俺達に気づくと、もう一度尋ねた。

「植物研究所から来たんですが、ダズさんはいますか?」

 ずい、とナージャが一歩前に出る。

「植物研究所の人が、うちの人に何か御用?」

「あ。それは本人にしか言えませんので……」

 男の目は忙しなく、きょろきょろと動いている。非常に怪しいな。

「本人ならあそこよ」

 ナージャはそう言って、カウンターの奥を指し示す。

「ラリゴー♪ ラリゴー♪ 姿見せるのよー♪」と楽しそうに歌いながら、ダズはゴミ箱をあさっている。何を探しているんだろうか。

 それを見て「あちゃー」と呟く植物研究所の男。

「『あちゃー』って、それどういう意味? 何か知っているなら教えてくれる?」

 穏やかな口調とは裏腹に、ナージャの尻尾はムチの様にしなり、近くのテーブルをバシィッ!!と叩いた。頑丈そうな厚みのある木のテーブルは、あっけなく真ん中から二つにへし折れた。

 怖ぇ。

「しゅ、守秘義務がっ、ありましてっ」

 男は必死の抵抗を続ける。
 左右の目は尋常じゃない位、きょろきょろと動いている。 

 ナージャがツカツカと男に近寄り、グッと胸倉をつかみ顔を近づける。

「さっさと教えなさい。焼かれたいの? あたし『イモリの黒焼き』好きなのよ」

 ナージャの口元からは青い炎が漏れ出ている。
 あかん。ナージャは本気の目をしている。

 男の抵抗はここまでだった。

「ひぃぃ!わかりました!!」

 せきを切った様に男はペラペラと喋り出した。



 話を聞くと、ダズは三か月程前から週に一、二回のペースで植物研究所に通っていたのだそうだ。それと言うのも、植物研究所がギルドに出していた依頼【猛毒バナナの試食 保険適用外】をダズが受けた為だ。

「依頼を受けて下さったのは、ダズさんだけでした」と男は感謝していた。だろうな。

 しかし、猛毒バナナの試食という名目だが、実際には自然界に自生している、猛毒バナナの毒性を弱めるための品種改良の研究を行っており、ダズはその毒性の弱まったバナナを試食していたらしい。

 もっともダズは毒に強い耐性を持っていたらしく、「うまいウホ、うまいウホ」と喜んで食べていた様だ。

 一方、猛毒バナナを栽培している隣の部屋では、同じ様に幻覚バナナの栽培を行っていた。
 こちらは植物研究所のオリジナルだ。名前の通り幻覚を引き起こす作用があり、まだ研究を始めたばかりで食べられる段階には至っていなかったらしい。用途としては魔獣などの駆除や捕獲に使われる予定だという。

 ただ最近になって、栽培している幻覚バナナの実の数が日に日に減っていく事に、職員の一人が気づいたそうだ。

 まだ開発途中とはいえ幻覚作用を持つ食べ物だ。植物研究所内は大騒ぎになったという。
 よくよく調べてみると、防犯水晶(防犯カメラみたいなものか?)に、ほっかむりをしたダズが、幻覚バナナの栽培部屋にこっそりと忍び込み、幻覚バナナを美味しそうに食べる姿が映っていたという。

 研究所内の猛毒バナナや幻覚バナナは、単体ではそれほどの効果は無い。しかし、その二種類を同時に摂取した場合、どんな相互作用が発生するかは未知数の為、慌ててダズの様子を確認しに来たのだという。
 男の説明は以上だった。

「はぁー」

 男の話を聞き終わると同時に、みんな一斉に大きなため息をつくのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

迷宮遊戯

ヘロー天気
ファンタジー
ダンジョンマスターに選ばれた魂が生前の渇望を満たすべく、迷宮構築のシステムを使って街づくりに没頭する。 「別に地下迷宮である必要はないのでは?」

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...