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第24話 あたし、イモリの黒焼き好きなのよ
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「ふぅ~食べた食べた。」と腹をさする俺。
「バナナ鹿肉って美味しいねー」とにこにこしているランジェ。
夕飯には俺がリクエストした事もあって、バナナ鹿肉のサンドイッチも出してくれた。ランジェは自分の顔より大きなそのサンドイッチをあっさりと平らげていた。他にはクスクスわかめのサラダと養殖コカトリスの胸肉のシチュー。どちらも本当に美味だった。
「そういえば、噴水広場に占い師がやけにたくさんいましたね」と俺はナージャに話しかける。
「ああ、あれね」
ふうと煙を吐き出し、さも興味が無さそうにナージャが話す。
今レーベルでは占いが空前の大ブームになっているらしい。
はい、と数冊の雑誌を渡すナージャ。
レーベルで発行されている女性向け雑誌らしい。
見るとポーズこそ違えど、どの雑誌の表紙にも同じ人物が載っている。
一冊目の表紙には、「今大注目の占い師! 『人生変えたくない?』でおなじみのミエール・ミライ氏、大特集!大満足の136P特集記事!!」とある。
いやいや、特集しすぎだろ……
二冊目の表紙には、「的中率99%!驚きの『往復びんた占い』とは!?」とある。
とは!?、じゃねぇ。もう全てわかってしまったよ。
絶対に占ってもらいたくない。俺はすべての雑誌をテーブルに置いた。
その有名な占い師ミエール・ミライがレーベルに今来ているらしく、それに便乗してか一気に大量の占い師が増えたのだそうだ。
「本当下らないわよね」というナージャの両頬は、心なしか腫れている気がする……
いや、ここはツッコまない方が良さそうだ。
さて、お腹もいっぱいになった事だし。
ふぅ。
そろそろ聞かなければならないな。
いつまでも問題を先延ばしには出来そうにない。
とても嫌な予感しかしないのだが、意を決して俺はナージャに尋ねた。
「で、ダズは一体どうしたの?」
「ウホウホッ」
ダズは何かに興奮しているのかそこら中を走り回っている。
かと思えばピタッと止まって、「やらないか?」と意味不明な事を壁に話しかけている。
「ねえねえ。僕、喋るゴリラって初めて見るよ」と眼を輝かせるランジェ。
違うよ。彼はゴリラの獣人だよと優しく諭す。
「えぇ!でも人の要素ほとんど無いよ」
うん。それは否定できない。
「見ての通りなんだけどね。少し前から様子がおかしいのよ……」
ナージャはとても疲れている様だ。
何でも俺がペクトロ村へと出発した次の日から、朝早くに家をでて、昼過ぎに帰ってくることが度々あったという。そして戻ってくる度にダズは少しずつおかしくなり、今ではこの有様なのだそうだ。
「どこに行ってたかは話さないのよ」
心配そうに顔を曇らすナージャ。
ダズは「ゴリラ。ウケるww」と鏡に向かって笑っている。
それ自分だぞ。
カランカランカラン。
その時、酒場のドアが勢いよく開いた。
「こんばんはー。ダズさんいますか?」
入ってきたのはリザードマンの男だ。どちらかと言うと、トカゲと言うよりはイモリかヤモリに近い外見をしている。きょろきょろと良く動く大きな眼は、顔の横側についており、なかなか愛嬌のある顔だ。
男は俺達に気づくと、もう一度尋ねた。
「植物研究所から来たんですが、ダズさんはいますか?」
ずい、とナージャが一歩前に出る。
「植物研究所の人が、うちの人に何か御用?」
「あ。それは本人にしか言えませんので……」
男の目は忙しなく、きょろきょろと動いている。非常に怪しいな。
「本人ならあそこよ」
ナージャはそう言って、カウンターの奥を指し示す。
「ラリゴー♪ ラリゴー♪ 姿見せるのよー♪」と楽しそうに歌いながら、ダズはゴミ箱をあさっている。何を探しているんだろうか。
それを見て「あちゃー」と呟く植物研究所の男。
「『あちゃー』って、それどういう意味? 何か知っているなら教えてくれる?」
穏やかな口調とは裏腹に、ナージャの尻尾はムチの様にしなり、近くのテーブルをバシィッ!!と叩いた。頑丈そうな厚みのある木のテーブルは、あっけなく真ん中から二つにへし折れた。
怖ぇ。
「しゅ、守秘義務がっ、ありましてっ」
男は必死の抵抗を続ける。
左右の目は尋常じゃない位、きょろきょろと動いている。
ナージャがツカツカと男に近寄り、グッと胸倉をつかみ顔を近づける。
「さっさと教えなさい。焼かれたいの? あたし『イモリの黒焼き』好きなのよ」
ナージャの口元からは青い炎が漏れ出ている。
あかん。ナージャは本気の目をしている。
男の抵抗はここまでだった。
「ひぃぃ!わかりました!!」
せきを切った様に男はペラペラと喋り出した。
◆
話を聞くと、ダズは三か月程前から週に一、二回のペースで植物研究所に通っていたのだそうだ。それと言うのも、植物研究所がギルドに出していた依頼【猛毒バナナの試食 保険適用外】をダズが受けた為だ。
「依頼を受けて下さったのは、ダズさんだけでした」と男は感謝していた。だろうな。
しかし、猛毒バナナの試食という名目だが、実際には自然界に自生している、猛毒バナナの毒性を弱めるための品種改良の研究を行っており、ダズはその毒性の弱まったバナナを試食していたらしい。
もっともダズは毒に強い耐性を持っていたらしく、「うまいウホ、うまいウホ」と喜んで食べていた様だ。
一方、猛毒バナナを栽培している隣の部屋では、同じ様に幻覚バナナの栽培を行っていた。
こちらは植物研究所のオリジナルだ。名前の通り幻覚を引き起こす作用があり、まだ研究を始めたばかりで食べられる段階には至っていなかったらしい。用途としては魔獣などの駆除や捕獲に使われる予定だという。
ただ最近になって、栽培している幻覚バナナの実の数が日に日に減っていく事に、職員の一人が気づいたそうだ。
まだ開発途中とはいえ幻覚作用を持つ食べ物だ。植物研究所内は大騒ぎになったという。
よくよく調べてみると、防犯水晶(防犯カメラみたいなものか?)に、ほっかむりをしたダズが、幻覚バナナの栽培部屋にこっそりと忍び込み、幻覚バナナを美味しそうに食べる姿が映っていたという。
研究所内の猛毒バナナや幻覚バナナは、単体ではそれほどの効果は無い。しかし、その二種類を同時に摂取した場合、どんな相互作用が発生するかは未知数の為、慌ててダズの様子を確認しに来たのだという。
男の説明は以上だった。
「はぁー」
男の話を聞き終わると同時に、みんな一斉に大きなため息をつくのだった。
「バナナ鹿肉って美味しいねー」とにこにこしているランジェ。
夕飯には俺がリクエストした事もあって、バナナ鹿肉のサンドイッチも出してくれた。ランジェは自分の顔より大きなそのサンドイッチをあっさりと平らげていた。他にはクスクスわかめのサラダと養殖コカトリスの胸肉のシチュー。どちらも本当に美味だった。
「そういえば、噴水広場に占い師がやけにたくさんいましたね」と俺はナージャに話しかける。
「ああ、あれね」
ふうと煙を吐き出し、さも興味が無さそうにナージャが話す。
今レーベルでは占いが空前の大ブームになっているらしい。
はい、と数冊の雑誌を渡すナージャ。
レーベルで発行されている女性向け雑誌らしい。
見るとポーズこそ違えど、どの雑誌の表紙にも同じ人物が載っている。
一冊目の表紙には、「今大注目の占い師! 『人生変えたくない?』でおなじみのミエール・ミライ氏、大特集!大満足の136P特集記事!!」とある。
いやいや、特集しすぎだろ……
二冊目の表紙には、「的中率99%!驚きの『往復びんた占い』とは!?」とある。
とは!?、じゃねぇ。もう全てわかってしまったよ。
絶対に占ってもらいたくない。俺はすべての雑誌をテーブルに置いた。
その有名な占い師ミエール・ミライがレーベルに今来ているらしく、それに便乗してか一気に大量の占い師が増えたのだそうだ。
「本当下らないわよね」というナージャの両頬は、心なしか腫れている気がする……
いや、ここはツッコまない方が良さそうだ。
さて、お腹もいっぱいになった事だし。
ふぅ。
そろそろ聞かなければならないな。
いつまでも問題を先延ばしには出来そうにない。
とても嫌な予感しかしないのだが、意を決して俺はナージャに尋ねた。
「で、ダズは一体どうしたの?」
「ウホウホッ」
ダズは何かに興奮しているのかそこら中を走り回っている。
かと思えばピタッと止まって、「やらないか?」と意味不明な事を壁に話しかけている。
「ねえねえ。僕、喋るゴリラって初めて見るよ」と眼を輝かせるランジェ。
違うよ。彼はゴリラの獣人だよと優しく諭す。
「えぇ!でも人の要素ほとんど無いよ」
うん。それは否定できない。
「見ての通りなんだけどね。少し前から様子がおかしいのよ……」
ナージャはとても疲れている様だ。
何でも俺がペクトロ村へと出発した次の日から、朝早くに家をでて、昼過ぎに帰ってくることが度々あったという。そして戻ってくる度にダズは少しずつおかしくなり、今ではこの有様なのだそうだ。
「どこに行ってたかは話さないのよ」
心配そうに顔を曇らすナージャ。
ダズは「ゴリラ。ウケるww」と鏡に向かって笑っている。
それ自分だぞ。
カランカランカラン。
その時、酒場のドアが勢いよく開いた。
「こんばんはー。ダズさんいますか?」
入ってきたのはリザードマンの男だ。どちらかと言うと、トカゲと言うよりはイモリかヤモリに近い外見をしている。きょろきょろと良く動く大きな眼は、顔の横側についており、なかなか愛嬌のある顔だ。
男は俺達に気づくと、もう一度尋ねた。
「植物研究所から来たんですが、ダズさんはいますか?」
ずい、とナージャが一歩前に出る。
「植物研究所の人が、うちの人に何か御用?」
「あ。それは本人にしか言えませんので……」
男の目は忙しなく、きょろきょろと動いている。非常に怪しいな。
「本人ならあそこよ」
ナージャはそう言って、カウンターの奥を指し示す。
「ラリゴー♪ ラリゴー♪ 姿見せるのよー♪」と楽しそうに歌いながら、ダズはゴミ箱をあさっている。何を探しているんだろうか。
それを見て「あちゃー」と呟く植物研究所の男。
「『あちゃー』って、それどういう意味? 何か知っているなら教えてくれる?」
穏やかな口調とは裏腹に、ナージャの尻尾はムチの様にしなり、近くのテーブルをバシィッ!!と叩いた。頑丈そうな厚みのある木のテーブルは、あっけなく真ん中から二つにへし折れた。
怖ぇ。
「しゅ、守秘義務がっ、ありましてっ」
男は必死の抵抗を続ける。
左右の目は尋常じゃない位、きょろきょろと動いている。
ナージャがツカツカと男に近寄り、グッと胸倉をつかみ顔を近づける。
「さっさと教えなさい。焼かれたいの? あたし『イモリの黒焼き』好きなのよ」
ナージャの口元からは青い炎が漏れ出ている。
あかん。ナージャは本気の目をしている。
男の抵抗はここまでだった。
「ひぃぃ!わかりました!!」
せきを切った様に男はペラペラと喋り出した。
◆
話を聞くと、ダズは三か月程前から週に一、二回のペースで植物研究所に通っていたのだそうだ。それと言うのも、植物研究所がギルドに出していた依頼【猛毒バナナの試食 保険適用外】をダズが受けた為だ。
「依頼を受けて下さったのは、ダズさんだけでした」と男は感謝していた。だろうな。
しかし、猛毒バナナの試食という名目だが、実際には自然界に自生している、猛毒バナナの毒性を弱めるための品種改良の研究を行っており、ダズはその毒性の弱まったバナナを試食していたらしい。
もっともダズは毒に強い耐性を持っていたらしく、「うまいウホ、うまいウホ」と喜んで食べていた様だ。
一方、猛毒バナナを栽培している隣の部屋では、同じ様に幻覚バナナの栽培を行っていた。
こちらは植物研究所のオリジナルだ。名前の通り幻覚を引き起こす作用があり、まだ研究を始めたばかりで食べられる段階には至っていなかったらしい。用途としては魔獣などの駆除や捕獲に使われる予定だという。
ただ最近になって、栽培している幻覚バナナの実の数が日に日に減っていく事に、職員の一人が気づいたそうだ。
まだ開発途中とはいえ幻覚作用を持つ食べ物だ。植物研究所内は大騒ぎになったという。
よくよく調べてみると、防犯水晶(防犯カメラみたいなものか?)に、ほっかむりをしたダズが、幻覚バナナの栽培部屋にこっそりと忍び込み、幻覚バナナを美味しそうに食べる姿が映っていたという。
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