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あなたの隣で一緒に歩いて行きたい。

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ん~「おはようございます、雄二さん」
「又あなたの所に行けませんでした。」ゆっくりと老婆が体を起こして目を覚ました。
「私、する事が遅いからなかなか雄二さんに追いつけませんね。」
彼女の毎日の日課、3年前に亡くなったご主人の溝畑 雄二さんへの朝の挨拶。
ピンポン!「おはようおばあちゃん良子だよ!」戸が開くと目の前に制服を着た女の子が立っていた。
「朝ごはん、食べよう。」「お母さんから煮物と焼き魚持ってけて。」タッパからお皿に盛り付け「味噌汁貰うね。」 
 「いっもありがとうね、私一人でも大丈夫なのに。」「おばあちゃんこれは、私の細やかな楽しみなんだから。」彼女は、満面の笑みで答えた。
「時間大丈夫?」「あ!行かなきゃおばあちゃん又来るね!」鞄と玄関先に合った大きな袋「ゴミ出しとくね!」「行ってきます!」
「いってらしゃい!気をつけてね。」元気に行く良子を見送り後片付けをする。
「良子ちゃんおはよう今から学校?」隣に住む叔母さんが声を掛けてきた。
「おはようございます。」「行ってきます!
」元気良く挨拶をした。
 「さて良子もちゃんも行ったし、洗濯でもしょうかね。」ゆっくりと体を動かした。
彼女の日常は、掃除、洗濯近所のスーパーへ買い物。
 散歩がてらの雄二さんと行くのが唯一の楽しみだった。
「今日も暑いですね。」日に日に日射しが暑くなる初夏彼女は、雄二さんの事を思い出しながら「今日は何にしましょうか?」いっも雄二さんに聞いていた。
彼は、少し前を歩き無愛想に「何でも良い」それしか答え無かった。
「では、お店で決めましょうか!」とニコニコと彼女は答えた。
スーパーでは、顔馴染みの人が声を掛けてきてきた「おはようございます今日は、あじが安いけどどんな料理が有ります?」 30代ぐらいの女性が話し掛けてきて晩御飯の相談をしてきた。
    「そぅね~南蛮酢けにしょうかしら」何気無い話が彼女には、嬉しかった。
買い物を終えて家路に着くと暑さもピークに達してた。
「はぁ、はぁ、よっこらしょ暑いですね。」誰かに言うことでもない独り言その時「アラ! 蝶々さん?」と彼女が追いかけたその時に、後ろを車が走り去りました。
「何?何があったの?」彼女は間一髪、車の接触を回避できた。
 それから、蝶々は、毎日の様に現れました。
 「おばあちゃん、おはよう❗」 良子が朝ごはんを食べに来た。
「良子ちゃんおはよう。」満面の笑顔で彼女を迎え入れた。
「おばあちゃんご機嫌だね何かいい事あったの?」不思議そうに彼女を眺めた。
「変かな?いっもと同じなのにそう見える?」
「変じゃないて。凄く良いから驚いた。」彼女も満面の笑みで朝食の用意をした。
「最近、お友達が出来たの。」嬉しそうに話を聞いて欲しそうに良子の側に来た。
「小さくて無口なお友達」と言った祖母を見て良子はゾットした。
昨晩に見た祖父の夢が頭に過った。
無口な祖父とは余り話しをしたことがなかったのに私に一生懸命「ごめん良子。」の繰り返しだった。
「どうして?」と聞いても「ごめん。」謝るばかりだった何故か嫌な予感がしたのを思い出した。
「蝶々さんなんだけど、私が後を追いかけ木の下に入ったら雨が降ってきたのよ!」嬉しそうな祖母の顔を見て確信した、その蝶々は祖父だろうと…
「私も会ってみたいな。」良子は、薄ら笑いをして祖母の話しを聞き流していた。
「今日のゴミこれだけ?出しとくね。」袋を持つと「行ってきます。」良子は後ろ髪を引かれる思いを我慢して学校へ行った。
「さてと、私もお出掛けしましょうか」さえお祖母さんは出掛ける用意をした。
「今日も蝶々さんに出会るかしら?」楽しそうに玄関の鍵を閉めいっもの買い物に出掛けた。
彼女と蝶々は、結構有名でいろんな人から声を掛けられる。
「おはようございます、今日はまだ蝶々さん来てないんですか?」彼女嬉しそうに「今日は、私が早すぎたんでまだお見栄に成ってないんですよ。」こんなに出掛けるのが楽しくなったのは、雄二さんが生きていた頃をなっかしく思い出した。
 良子は、どうしても祖母の事が気がかりで学校をさぼり戻っていた「今の時間なら買い物かも?」途中でコースを変え店に向かう坂道で蝶々が横切った。
 「おじいちゃん‼」 驚いた、自分の感が当たって欲しくは無かった「お願い連れて行かないで‼」涙が止まらない位に溢れて「おばあちゃんと離れたくない。」「すまない良子これ以上だと婆さんを苦しませてしまう。」祖父の涙を初めて見た「連れて行くのを引き伸ばせば苦しくなるだけだ安らかに眠らせてやってくれ!」そう言って祖父は頭を下げて泣いた。
 自分が病気の時でも一切弱音を吐かずに治療に専念してた祖父が祖母の為に涙を流し頼み込むなんて信じられなかった。
「あれ?良子ちゃんどうした…」言葉をいい終わるまもなく祖母は、ゆっくりと倒れて行った「さえ‼」「おばあちゃん‼」2人の声が重なりながら良子は祖母に駆け寄った。

 祖母は脳梗塞で意識が戻らないままこの世を去り祖母の遺品の中に私への手紙が入っていた。「良子ちゃんへおばあちゃんはちょっと界外に行ってきます。行くのが難しい所だから帰っては来れないけど連絡はしてね。」
 「一方通行だけどいっでも、どこでも連絡取れるから涙を流さずに空に向かって話してね。」 
「耳が良いから小さい声でも聞こえるから心配しないで今までありがとうとても楽しかったわ」いっから病気だったの解らなかった「おばあちゃん覚悟してたのかな?」「おばあちゃん‼いっでも相談に乗ってね‼」溢れる涙を堪えながら大きな声でてを降った。
「良子ごめんな、おまえの大好きな婆さんを連れて行くのを許してくれ。」「!おじいちゃんおばあちゃんに会えたの?」まるで現実に話しをしているような感覚これは夢!
「おばあちゃんを天国にちゃんと連れてってよ」「一人でさっさと行っちゃから。」祖父はゆっくりと微笑みながら「その為に練習をしたのだからな。」あの蝶はその為「今度はゆっくりゆっくり一緒に行くよ。」「そうだね急ぐことないもんね。」自然と涙が流れる「婆さんの事いろいろありがとう。」「うんんとても楽しかったよ!」うっすらと浮かぶ祖父の姿はもう見ることはないだろう「もう合うことは無いだろうがこっちに早く来るなよ!」「行かないわよもしかしたらおじいちゃんがこっちに来て私の孫かひ孫成ってたりして!」二人?して笑っていた。「じゃな、人生を楽しめよ。」うっすらと消えて行く祖父を見て「ありがとう、ずっと見守っくれて。」目を覚ました私の目に涙が流れて行った。
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