不遇の花嫁は偽りの聖女を暴く──運命を切り開く契約結婚

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── 不遇の王女、政略結婚を命じられる ──

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 月の光さえ届きづらい辺境の小国、アストリア王国。国土は荒涼とした山岳地帯が多く、農作物の収穫も乏しい。王都と呼ばれる場所こそあるが、大国と比べれば城壁は低く、街道は人影まばら。闇が降りた後には夜盗が横行することも珍しくない。そんな地に生まれ、王女でありながら、王女らしい晴れやかな日々とは無縁に育ったのがセレスティアだった。

 彼女は幼い頃から宮廷に居ながらも、まるで居場所がないかのように扱われてきた。生まれてすぐに母を亡くしたことが災いしたのか、あるいは国に古くから伝わる“聖なる血筋”を母が受け継いでいたせいか──理由は明確でないが、父王はことさらセレスティアを避けるように振る舞い、周囲にも冷たい態度をとるよう促していた。それは、あまりに異様な光景だった。通常なら王女は国の宝として大切に育てられるものだが、セレスティアが歩く先で冷笑の囁きが聞こえ、侍女たちは距離を取り、家臣たちも畏怖よりむしろ厄介者を見るような瞳を向ける。

 そんな扱いに慣れてしまったセレスティアだったが、まだ幼かった彼女はそれでも笑顔を失わなかった。なぜなら、母が残してくれたわずかな思い出と、母の侍女を務めていた老女が唯一の心の支えとなり、「きっとあなたには大切な役目があるのよ」といつも優しく励ましてくれたからだ。

 しかし、その老女も彼女が十歳を迎える前に病気で亡くなってしまう。以来、セレスティアは宮廷内で実質的に孤立することになった。父王との会話は義務的な行事の場面以外ほとんどなく、同世代の王子や王女(異母兄弟たち)は、セレスティアをよそ者扱いして自分たちの輪に加えようとはしない。いつしかセレスティアは、城の片隅でひっそりと書物を読み、ささやかな日常を過ごすことだけが心のよりどころとなっていった。

 城の廊下を歩けば、使用人たちが道をあける。そして目が合えば、皆一様に微妙な表情を浮かべて頭を下げる。セレスティアはそんな冷淡な礼儀を受けるたびに、「私は本当にこの国の王女なのだろうか」と違和感を抱かずにいられなかった。それでも、彼女はどこかで諦観するようになっていた。父王から愛される期待は、遠い昔の子ども時代に捨ててしまったのだ。

 その日、セレスティアは久々に父王のいる謁見の間へ呼び出された。時折ある王族の集まりか、あるいは国の行事の打ち合わせか──そう思いながら向かったが、そこに集められていたのは彼女を含めて数名の家臣と、王の信頼厚い重臣、そしてふたりの異母妹たちだけだった。

 王座に深く腰かけた父王・グレンディオス三世は、血色のよい頬をさらに染めるように赤い衣を纏っていた。傍らには酒杯が置かれ、王の視線はまるで獲物を値踏みするかのように冷たかった。

 呼吸を整えながら、セレスティアはできるかぎりの礼儀正しさを保って父に頭を下げる。周囲の家臣たちも儀礼的に一礼をしたところで、王は少し苛立った様子を隠さずに言った。

「セレスティア。おまえ、もう年頃だな」

 どこか嘲るような響きが混じる声。その一言に、セレスティアの胸はひやりとする。まさか、何かしらの叱責か罰か──そんな嫌な予感が脳裏をかすめた。

「はい、父上……」

 萎縮しかけた声を、なんとか震わせずに返す。すると、王は杯を一口飲み干して、唇を歪めた。

「シュヴァルツ公国から縁談が来ている。公子ラウルはまだ若いが、この国の公女を迎えたいそうだ」

 セレスティアの心臓が強く打つ。シュヴァルツ公国──その名は広大な領土と圧倒的な軍事力を持つ大国として、この辺境のアストリアとは比べ物にならないほどの影響力を誇っている。そんな国から縁談が来るということは、すなわち政略結婚だ。

 ちらりと横目で見れば、ふたりの異母妹が視線を交わして、ほっと胸を撫で下ろしたようにも見えた。恐らく彼女たちにも打診があったが、決め手にはならなかったのだろう。

「……私が、その縁談を……」

 セレスティアは戸惑いながら口を開く。王は頷きながら続ける。

「隣国の力を得るには、まず何よりも安定した婚姻関係が必要だ。おまえに断る権利はない」

 王の言葉は重々しく、しかし情け容赦など微塵も感じられない。セレスティアは頬をかすかに引きつらせた。もちろん、王の命に背くなど許されるわけもないが、それでも受け入れるにはあまりに唐突だ。

 一方で、家臣のひとりが小声で囁く。「なにせ、セレスティア様なら……」と、まるで“諦めのよさそうな姫”というニュアンスが聞こえてくる。その言葉に胸が締め付けられるが、同時にそれが現実であることをセレスティアは知っていた。

 静寂が降りた謁見の間で、父王は明確な回答を求めているようだった。セレスティアは弱々しくも、はっきりとした声で返事をする。

「……承知いたしました、父上。喜んでお受けいたします」

 もちろん本心で“喜んで”などと言えるはずもないが、王女としての立場上、反論はできない。王はそれを聞くと、まるで厄介ごとを一つ片付けたかのように軽く息を吐いた。

「そうか。ならば早々に支度を整えろ。相手方には既におまえを嫁がせると伝えてあるのだ」

 それだけを言い残すと、王は再び酒杯に唇をつけ、興味を失ったように視線を逸らした。やがて侍従たちが王を取り囲み、謁見は形だけで終わりを告げた。

 部屋を出ると、すぐに妹たちの姿が目に入った。艶やかな金髪を持つ第一王女リリスと、茶色の巻き毛が愛らしい第二王女フローリアは、どこか安堵の表情を浮かべている。

「よかったわね、お姉さま。大国の花嫁になれるなんて、光栄なことじゃなくて?」

 リリスは皮肉のこもった口調で言い、フローリアも同意するようにくすりと笑った。

「公子ラウル様がどんな方か知らないけれど、少なくとも大国へ行けば、ここより扱いは良くなるかもしれないんじゃない?」

 明らかに嘲笑混じりの口ぶりだったが、セレスティアはうつむきがちに微笑んだ。返す言葉も見当たらない。

「……そうだといいわね」

 静かな声でそう呟く。ふたりの妹は満足そうに視線を交わし、踵を返して華やかな衣装が揺れるまま遠ざかっていった。

 結局、宮廷でのセレスティアの立場は、昔から何も変わっていない。周囲から期待されるのは、国のために差し出される存在としての役割だけ。愛されることや認められることなど、既に諦めて久しい。

 それでも彼女の胸には、一つの灯火が揺らめいていた。かつて亡き母の侍女が「あなたにはきっと特別な意味があるのよ」と言い残した言葉だ。母を看取ったその侍女は、セレスティアが幼少期に不思議な力を垣間見せたことがあると匂わせていた。だが、あれは幻だったのかもしれない。父王を含め誰もが、セレスティアの“特別さ”には目を向けないまま、存在しないものとして扱ってきた。

 その日の夕刻、セレスティアは自室に戻ると深いため息をついた。布張りの小さな椅子に腰を下ろして、ぼんやりと窓の外を見る。小国とはいえ、王城の塔からは遠くの山々まで見渡せる。荒涼とした灰色の山並みが夕日を受けてわずかに赤紫に染まっているのが見えた。

 「シュヴァルツ公国……」

 声に出してみるが、異国の響きは実感を伴わない。どれだけ遠いのか、どんな人々がいるのかすらも把握していない。ましてや公子ラウルとは名前以外、何も知らない。

 宮廷から聞こえてくる噂話によれば、その国の公子は非常に有能でありながら、どこか冷たい雰囲気を持った人物だという。加えて、彼の傍らには“聖女”と称えられる女性がいつも寄り添っている──そんな断片的な話もセレスティアの耳に入っていた。

 (……本当に私でいいのだろうか)

 不意に胸がざわめく。政略結婚であれば、アストリアの王女として多少の品位や教養が求められるはず。だが、この国ではまともに教育も受けさせてもらえず、侍女もつかず、孤独に過ごしてきたセレスティアだ。わずかに自習で学んだ知識はあれど、他国の王族に胸を張って誇れるほどではないかもしれない。

 それでも、決められた道を拒むことは許されない。アストリアは多くの問題を抱えている。過去数年、隣国との小競り合いが増え、国力は更に疲弊していると聞く。もし大国シュヴァルツ公国が同盟の証として援助を申し出てくれれば、民も救われるかもしれない。そう考えると、自分がここで嫌だと言い張っても、それこそ誰の得にもならない。

 ──私にできることが、これしかないのなら。

 セレスティアはそっと目を閉じる。心の中でほんのわずかな涙が滲むのを感じながら、それでも微笑むように唇を結んだ。母が残した“かすかな光”は、遠い記憶の奥底で微かに輝いている。

 (私は王女だ。たとえ誰にも愛されなくても、この国に生まれた責任がある)

 そう、自分に言い聞かせると、不思議と小さな勇気が湧いてきた。時間は残酷だが、それでも次の朝は必ず来る。明日になれば、旅支度や嫁入りの用意を進めるよう、侍従が訪ねてくるだろう。

 「行くしかないよね……」

 誰にともなく呟いた言葉は静かに部屋の石壁に吸い込まれた。もう逃げ場はない。ならば、自らの意志で歩み出すしかないのだ。

 翌日、セレスティアは隅の小部屋から引きずり出した古い木箱を開けた。そこには母の形見である小さなペンダントが仕舞われている。銀の鎖の先には、淡い緑色の石がはめ込まれていて、ささやかに光を反射している。幼い頃はこの石に触れると、母のぬくもりを思い出したものだ。

 父王からは、「葬式の日に身につけるような不吉な装身具」と嫌われ、まともに身につけることも許されなかった。だが、今ならもう父が目くじらを立てることもないだろう。むしろ、シュヴァルツ公国へ嫁いでしまえば、誰に何を言われる筋合いもなくなるかもしれない。

 ぎこちなくペンダントを首にかける。胸元に触れるひんやりとした感触に、セレスティアは少しだけ安心した。まるで母がすぐ隣にいて、優しく背中を押してくれているような気さえする。

 その日の昼過ぎには、侍従が「早々に隣国への使者が動き出すので、ご出立の日時も決まります」と告げに来た。まるで彼女の意思などお構いなしに物事は進められていく。宮廷の廊下を行き交う兵士や使用人たちも、セレスティアに向ける目はどこか哀れみを含んでいる。

 「これであの姫様もいなくなるのか……」

 「まあ、この国の役に立つなら、それでいいんじゃないか」

 そんな囁きが背後から漏れるたび、セレスティアはぐっと唇を噛んだ。自分の幸せより、国の未来を優先するというのは、王女として当然かもしれない。それでも、それを当然と受け止めるほど心は強くできていない。

 やがて夕刻、父王グレンディオス三世から“正式に嫁いでくるように”という玉音が下されるとの報せが届く。つまり、セレスティアにためらう余地は微塵も与えられないということだ。それでも彼女は自室で、ほんの数分だけでも深呼吸をして、気持ちを整理しようと試みた。

 「さようなら、アストリア……」

 あまりにも早すぎる別れの言葉。まだ旅立ってはいないのに、もう帰る場所がないことを悟っている自分がいる。

 ふと、数冊だけ持ち運びやすい本をまとめた。幼い頃から読みふけっていた歴史書や地理書、そして詩集。暇さえあれば文字に没頭することで孤独を紛らわしてきたセレスティアにとって、本だけが最後の味方だった。

 (もしかしたら、シュヴァルツ公国ではもっと豊かな図書館があるかもしれない)

 そんな小さな期待が脳裏をよぎる。もしそうなら、そこで学ぶことができれば、少しは役に立つ人間になれるかもしれない。何もできない王女ではなく、何かの形で国や人の力になれるのなら──。

 震える手で本を鞄に詰め込みながら、セレスティアはほんのわずかな未来の光を見つめる。

 翌朝、城の大広間では家臣たちが忙しなく動いていた。セレスティアが隣国へ嫁ぐのはそう遠くない日と決まり、彼女が旅立つための段取りを組み始めているのだ。大国とはいえ、辺境アストリアからシュヴァルツ公国への道のりは険しく、馬車や護衛、物資の準備は数日かけて整える必要がある。

 それでも父王は一度もセレスティアと顔を合わせようとしなかった。最後の言葉すら交わすつもりはないのだろう。婚礼の日取りや祝宴の計画などは、重臣たちの間で話が進められ、セレスティアの意思は無関係に組み込まれていく。

 その日の午前中、セレスティアは王宮の礼拝堂へと足を運んだ。そこは母が生前たびたび祈りを捧げていた場所でもある。窓から差し込む細い陽光が、静かな空気をかすかに揺らしている。

 木製の古い祭壇の前に膝をつき、目を閉じたセレスティアはそっと胸元のペンダントに触れる。まるで母の温もりを思い出すように、幼き日の記憶がよみがえった。母の手を引かれながら、祭壇の前で見よう見まねの祈りを捧げていた幼い自分。そのとき母は穏やかに笑い、優しい声音でこう言っていた。

 ──「あなたは必ず、誰かの光になれるわ」

 子ども心に、その言葉がうれしかった。けれど現実は、誰かの光どころか、誰からも必要とされていないとしか思えない日々が続いている。自分は本当に母の言うようになれるのだろうか。

 「……母上、私はどうすればいいのでしょう」

 誰に聞かせるでもない問いが、礼拝堂の静寂に溶ける。返事はない。それでも、セレスティアのまぶたの裏には、母が微笑む面影が淡く浮かんだ。それだけで十分だ。もう決めた。私は王女として、この国が望むのであれば隣国へ嫁ぐ。そこから先、どんな扱いを受けたとしても、絶対に挫けずに自分の役割を果たそう。

 すう、と小さく息を吸ってから、セレスティアは目を開ける。決意を新たにした瞳は静かな光を宿していた。どんなに不遇だろうと、自分を卑下してはいられない。たとえ何も約束された未来がなくとも、少なくとも生きている限りは、自らの足で立ち、前を向いて歩み続ける。

 礼拝堂を出ると、城の廊下には朝とは違う空気が漂っていた。遠くで人々がばたばたと駆け回り、誰かが大声で指示を飛ばしている。聞けば、王が「さっさと支度を整えろ」と急かしているとのこと。どうやら、セレスティアは数日後にもシュヴァルツ公国へ向けて旅立つことになりそうだ。

 「本当に、急に決まるのですね……」

 つぶやいた言葉は、自分に言い聞かせるようでもあった。だが、不思議と恐怖よりも冷静さを感じる。ずっと嫌われ、冷遇されてきたこの国の王宮から出られるということが、かすかな安堵を誘っているのかもしれない。

 たとえ不安だらけでも、前に進むしかない。その先にいる“公子ラウル”という人は、一体どのような人物なのだろう。冷酷な男だという噂も耳にしたが、噂がすべて真実とは限らない。人の本質は、会ってみなければわからないだろう。

 いずれにしても、セレスティアにはもう時間がない。退路を断たれた今、残るのは意志を曲げずに未来へ踏み出すことだけ。自分で選んだ道ではないかもしれないが、その道をどう歩むかは自分次第だ。

 (この決断が、いつか私にとっても、そしてこの国にとっても良い結果になるといいのだけれど……)

 そう祈るように思いながら、彼女は急ぎ足で廊下を進む。旅立ちの準備は多岐にわたる。けれど、誰もその大変さを彼女に労わりの言葉としてかけようとはしない。

 それでも、何度も立ち止まってきた人生の中で、セレスティアは自分の弱さに負けることなく歩んできた。今もその延長線上に過ぎないのだ。もし、どこかにほんのわずかでも自分を必要とする存在があるのなら、いつかきっとそこへ行き着けるはず。

 そうして胸に決意を抱えたまま、セレスティアは閉ざされた城の扉を開け放つ準備を進める。遠ざかるアストリアの光景を目に焼き付けることができる日は、もうすぐそこまで来ていた。彼女がこの地を去るとき、振り返りたくなるような思い出はわずかしかないかもしれない。だが、大きな未来への一歩を踏み出すことができる──そう信じれば、きっと救われる気がしていた。

 こうして、アストリア王国の“不遇の王女”セレスティアは、運命に背を押されるようにシュヴァルツ公国への政略結婚を受け入れる。誰からの祝福も得られず、ひっそりと過ごしてきた日々とは、もうすぐ決別しなければならない。けれど彼女は、これまで培ったわずかな自尊心と、見えない明日を照らすかすかな信念を握りしめて、歩みを止めることはなかった。

 不遇な人生を歩んできた王女の瞳には、微かな光が宿りつつある。それが彼女自身の人生をどんな結末へ導くのかはまだわからない。けれど、セレスティアは確かに孤独を噛み締めながらも、前を向いているのだ。これは、彼女が自分の意思を探し求め、運命と対峙しようとする物語の始まりである。
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