二度捨てられた白魔女王女は、もうのんびりワンコと暮らすことにしました ~え? ワンコが王子とか聞いてません~

吉高 花

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呪いという魔術5

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 しかし何日もかけて、知らなかったとはいえマルガレーテがそれこそ命を削って解き続けた結果が全体に比べたらほんの少し……。

 いったいどれほど強力な魔術だというのだろうか。

「マルガレーテも最初に私の呪いを解いてほぼ全魔力を使い果たした後だったからねえ。動けるようになったとはいえ、そんなに早く元の完全な状態には戻らない上にずっとクラウスがマルガレーテの魔力を奪い続けていたということだ。親子してマルガレーテには迷惑をかけてしまってすまない。これからは気をつけないといけないな。ところで先生、クラウスの呪いを解くにはどれほどの白の魔力が必要なのだろうね?」

 王妃様がイグナーツ先生に聞いた。
 
「王妃様にかけられていた魔術も途方もないものでしたが、クラウス様にかけられているものも同等かそれ以上のものだと思われます。しかもクラウス様への馴染み方が普通ではありません。これを分離して消すというのは……いかにマルガレーテ様が希有な魔力をお持ちだとしても、正直非常に厳しいかと」

 イグナーツ先生は難しい顔をして言った。

「私にかけられた呪いを消した時、マルガレーテは死にかけたからな……」

 王妃様が暗い顔をして言うと、イグナーツ先生はさらに暗い顔をして言った。
 
「前にも申し上げましたが王妃様への魔術も消えたわけではありません。魔術の核までは消えていないのです。つまりは魔術がかけられた当初の状態に戻っただけ。しかしそのために必要な魔力はマルガレーテ様が持てる最大に近い量かと」

「王妃様の呪いは、消えてはいないのですか」

 マルガレーテは驚いて聞いた。

「私が診たところ、魔術の核がまだ王妃様の中に存在してます。少しずつ体を蝕むように効果を発揮する魔術のようなので、また何年かしたら最近までと同じ状態になる可能性は高いですね」

「でもその時はまた私が消すことはできますよね?」

「残念ながらこの国にいる限り、今回のようにたとえその指輪をしていても、常にマルガレーテ様は魔力を削られ続けることになるでしょう。つまりは、魔力が最大になることはもうないかと。この国は、あまりにも悪い魔術にあふれています」

 そう言ってイグナーツ先生は、また失礼、と言ってマルガレーテに手をかざしたのだった。

「今まではマルガレーテ様の魔力を作る量とこの指輪が放出出来る魔力の量とでは、若干放出する量の方が大きかったようです。しかし先ほどさらに制限をしましたから、これからは少しずつでも魔力は戻っていくと思います。しかし……最大になるには長い年月が必要になるでしょう」

「いっそ指輪で魔力の流出を止めるか」

 王妃様が言った。しかし。

「魔力を止めることが、魔術師にとって窒息するようなことだということは王妃様もご存じでしょう。それに……マルガレーテ様が本来持てる魔力の量はとても大きいのです……とても……ああ、すごいですねこれは……だからこそその量を作り出し満杯にするのには時間がかかります。なのに今は……ほとんど使い果たしている」

「一番効率的に調整してどれくらいかかる」
「この場所でならばおそらくは年単位。それもクラウス様を遠ざけた状態で」
「キュウン」

 クラウス様が悲しげに鳴いた。

「もっと早く魔力を戻す方法はないのか。正直年単位でクラウスをこのままには出来ない。しかしクラウスを戻すにも今はマルガレーテに頼る意外に何も案が浮かばない」
「唯一白の魔術師として生き残っているマルガレーテ様が今この状態ですので……。たとえ国中のルルベ草を買い占めたとしても、一年でいけるかどうか」
「ルルベ草を買い占めればいいのか?」
「たとえばの話ですよ。それにそんなことは普通に買えても国家予算並みの資金が必要になりますし、そもそも本当に言われているほどの在庫がこの国にあるのかもわからないのですから、現実的には不可能かと。それよりもこの魔術をかけた人物を特定して解かせるか殺すかした方が早いでしょう」

「そんなこと出来るならやってるんだわ! 見つけてたらとっくに八つ裂きにしているんだよ!」

 王妃様が明らかに怒りの形相で両手の指をワキワキさせていた。
 きっと王妃様も自分にかけられた魔術の元を調査したに違いない。そしておそらく、わからなかったのだ。

「ルルベ草とはなんですか?」

 マルガレーテは聞いた。なにしろ母国レイテでは聞いたことがない草の名前だったから。

 王妃様が答えてくれた。

「魔力の補給に良い草だ。少しの量でたくさん魔力が湧くからとても重宝されているのだが、残念ながら栽培方法が確立されていなくてね。たまたま生えているのを発見したものを摘むくらいしか収集できない。おかげで乾燥させて効果が減ったものでも法外な値段がついて少量流通しているくらいでなかなか手に入らないんだ」

「まあ、とても貴重な草なのですね」

「生える所が限定的で、移植してもまず枯れてしまうのです。とても栽培して増やすということがしにくいのに手に入れたい魔術師が山ほどいるものですからすぐに盗掘されてしまう。その上その土地を巡って権力者同士で争うものだから、やはり一般には出回らないのです」

 悲しげに言うイグナーツ先生。
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