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わたしは美香、高校二年の女の子。このあいだフードコートでお昼ご飯を食べていたら、「カシャ!」って言うシッター音が聞こえたから、音のする方を振り向いたら、男の人がわたしの方に携帯を向けて立っていた。
「何、してるんですか」って聞いたら、
「綺麗な女の子がいるから盗撮したんだ」ですって!
「はっ?」
まあ、「綺麗な女の子がいるから」までは許せる、事実だし、でも「盗撮したんだ」はアウトでしょう。
わたしは思わず立ち上がって、その人を指さしながら、
「この人、おかしいです!」って、大声で叫んでいた。
みんなの視線がわたしに集中するのが分かった。でもそいつは、わたしに向かってバイバイするように片手を振ると、微笑みながら、
「じゃあ、またね」と言って、悠然と、泰然自若として、余裕しゃくしゃくで去って行った。
後に残されたわたしは、恥ずかしいったらありゃしない。だってわたしの方がおかしな人みたいじゃない。
わたしは指さした片手を上げたまま、ゆっくりと、目立たないように、(こんな言葉があるのか分からないけど)忍び腰で、椅子に座りなおした。
それにしても悔しいのは、あの余裕しゃくしゃくの態度。あの顔をクシャクシャにしてやりたい。(あっ、ダジャレじゃないよ、念のため)
でもまあ、あんなことをやっていれば、いずれ神の鉄槌が下るであろうと、高をくくっていたんだけど、神様、ありがとうございます、そのチャンスは意外に早くやって来た。
翌日、学校からの帰り道で、あいつを見かけたんだ。黄色いパーカーに紺のジーンズ、きのうと同じ服を着ている。後ろ姿だけだったけど、間違いない。
「捕まえた!」
わたしは後ろから駆け寄ってそいつの手首を掴んでやった。
「ああ、君か」と、しかしその盗撮男はわたしを振り向くと、相変わらず悠然と、泰然自若、余裕しゃくしゃくの態度で言った。
「ああ、君か、じゃないでしょう。自分のやってることが分かってるの。盗撮なんて犯罪だよ、犯罪」
「ああ、そのこと。実は南野高校に今度転校することになって、学校の近くを見学してたんだ。そしたら南野高校の制服を着ている子がいたから、つまり君のことだけど、それで記念に一枚撮らせてもらったって言うわけ」
「うちの高校に?」
これってあれじゃない、学園ドラマとかによく出てくるやつ。少し前に出会った相手が自分のクラスに転校してくるって言う展開。そんなことあるわけないじゃないって、鼻で笑いながら、それでも面白いからついつい見ちゃうんだけど、それが我が身に降りかかってきているって言うこと?『降り懸かるキノコは拂はねばならぬ』と言うわけで、
「でも盗撮はだめでしょう、盗撮は」と、馬鹿みたいに繰り返したんだけど、そいつはやはり余裕しゃくしゃくの態度で、
「それに学校側の説明では、昼休みに外に出るのは原則禁止で、お昼ご飯は食堂で食べるか、教室で食べるかだって言ってたけど、君はあのフードコートでひとりで食事してただろ。だから、それもあって記念に撮らせてもらった」
そりゃあ、まあ、人生いろいろあるわいな。わたしには友達もいないし、みんながワイワイガヤガヤ楽しそうに話しながら食べてる横で、ひっそり一人でお昼ご飯食べてるなんて、みじめじゃない。・・・って、えっ? わたし、返り討ちにあってる?
「そんなことよりいつまで手を繋いでいるつもり? みんなが僕たちのことを見て行くよ」
「きゃあ!」
わたしはその子の手首を掴んだままだったことに、そのとき初めて気がついて、慌てて手を離した。
「何、してるんですか」って聞いたら、
「綺麗な女の子がいるから盗撮したんだ」ですって!
「はっ?」
まあ、「綺麗な女の子がいるから」までは許せる、事実だし、でも「盗撮したんだ」はアウトでしょう。
わたしは思わず立ち上がって、その人を指さしながら、
「この人、おかしいです!」って、大声で叫んでいた。
みんなの視線がわたしに集中するのが分かった。でもそいつは、わたしに向かってバイバイするように片手を振ると、微笑みながら、
「じゃあ、またね」と言って、悠然と、泰然自若として、余裕しゃくしゃくで去って行った。
後に残されたわたしは、恥ずかしいったらありゃしない。だってわたしの方がおかしな人みたいじゃない。
わたしは指さした片手を上げたまま、ゆっくりと、目立たないように、(こんな言葉があるのか分からないけど)忍び腰で、椅子に座りなおした。
それにしても悔しいのは、あの余裕しゃくしゃくの態度。あの顔をクシャクシャにしてやりたい。(あっ、ダジャレじゃないよ、念のため)
でもまあ、あんなことをやっていれば、いずれ神の鉄槌が下るであろうと、高をくくっていたんだけど、神様、ありがとうございます、そのチャンスは意外に早くやって来た。
翌日、学校からの帰り道で、あいつを見かけたんだ。黄色いパーカーに紺のジーンズ、きのうと同じ服を着ている。後ろ姿だけだったけど、間違いない。
「捕まえた!」
わたしは後ろから駆け寄ってそいつの手首を掴んでやった。
「ああ、君か」と、しかしその盗撮男はわたしを振り向くと、相変わらず悠然と、泰然自若、余裕しゃくしゃくの態度で言った。
「ああ、君か、じゃないでしょう。自分のやってることが分かってるの。盗撮なんて犯罪だよ、犯罪」
「ああ、そのこと。実は南野高校に今度転校することになって、学校の近くを見学してたんだ。そしたら南野高校の制服を着ている子がいたから、つまり君のことだけど、それで記念に一枚撮らせてもらったって言うわけ」
「うちの高校に?」
これってあれじゃない、学園ドラマとかによく出てくるやつ。少し前に出会った相手が自分のクラスに転校してくるって言う展開。そんなことあるわけないじゃないって、鼻で笑いながら、それでも面白いからついつい見ちゃうんだけど、それが我が身に降りかかってきているって言うこと?『降り懸かるキノコは拂はねばならぬ』と言うわけで、
「でも盗撮はだめでしょう、盗撮は」と、馬鹿みたいに繰り返したんだけど、そいつはやはり余裕しゃくしゃくの態度で、
「それに学校側の説明では、昼休みに外に出るのは原則禁止で、お昼ご飯は食堂で食べるか、教室で食べるかだって言ってたけど、君はあのフードコートでひとりで食事してただろ。だから、それもあって記念に撮らせてもらった」
そりゃあ、まあ、人生いろいろあるわいな。わたしには友達もいないし、みんながワイワイガヤガヤ楽しそうに話しながら食べてる横で、ひっそり一人でお昼ご飯食べてるなんて、みじめじゃない。・・・って、えっ? わたし、返り討ちにあってる?
「そんなことよりいつまで手を繋いでいるつもり? みんなが僕たちのことを見て行くよ」
「きゃあ!」
わたしはその子の手首を掴んだままだったことに、そのとき初めて気がついて、慌てて手を離した。
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