推しに“男”だと勘違いされたけど、雑草根性で執着されてます!【全33話完結予定】

ホタカ

文字の大きさ
3 / 33

第3話 団長にご飯を届けたら、“ついで”に任務も渡されました

しおりを挟む

騎士団の朝は早い。

王都の警備も兼ねた見回り業務が日も昇る前から始まるからだ。

因みに朝の鍛錬が終わったら、夕方まで教会や貧困地区へのボランティア活動兼見回りが続く。

因みに、アキが助けられたのはこの見回りのお陰である。



「ーーーはーい、皆さん、おかわりは一杯ずつですからねー」

カンカンと鍋を叩き、今日も食欲旺盛な騎士団員達に目を配りながら、アキは忙しく配膳していた。

さすが身体が資本の騎士団員。今日も今日とて彼等の胃袋を満たすのは骨が折れる。


「アキさんおかわり!」
「あっ、ヴォルトさん2回おかわりしたでしょ!」
「え~、ちょっと残ってるじゃないっすか」
「これは団長のご飯です。」


団長来ないのにぃ?
目尻を下げ、子犬が泣くような表情で「くれ」と言われれば、ついあげたく……だめ、作り直すの面倒くさいんだから。


「夕飯は少し多めに作りますから我慢して下さい」
「え~。アキさんのご飯食べたかったのに」


しょぼんと肩を落として食器を片付けるヴォルト。

うーん、これが現実世界ならヴォルトは子犬系イケメン男子で人気があったでしょうに…。

小説では一切登場してこなかったヴォルト。しかし、今やアキの中では主人公ばりに印象が強くなっていた。


「アキさんの料理は美味しいですから。ヴォルトの気持ちも分かります」
「え、ほんとですか?ジュードさん」


にこやかに笑いながらやって来たのは、この騎士団の副団長であり、サブキャラとしてよく小説に登場していたジュード・エルセインだ。
紫の艶やかな長い髪を一つに結び、メガネをかけた姿は、副官というより参謀っぽく見える。


「アキさんが来てから、騎士団の食費がかさみます」
「………あっ、すみません」


どうやら褒められたのではなく、怒られていたようだ。
何?次回からマズいご飯でも作れと?


「とりあえず、団長のご飯を頂けませんか?」
「あ、はい」


彼の性格は小説でもよく知っている。
一見優しげに見える笑顔でズバズバと無神経な言葉を本人に突き刺してくるのだ。

いくら分かっていようが、小言は聞きたくないとばかりにアキはさっさとアレンの食事を盛り付けジュードに渡す。
渡し終わったところで、ジュードの背後から団員が話しかけてきた。


「副団長、ちょっと良いですか?」
「?はい」
「南西のヒプリ地区の件です。報告書を纏めたくて」
「ああ…。例の件ですね。分かりました」


すぐに会話が終わり、団員が踵を返したところでジュードが再びアキを見る。

そして、「という事で、私の代わりにこの食事を持って行って下さいね」と言ってさっさと行ってしまった。


「……えー…?」


心の声が思わず出たところで今更拒否権はない。

本来なら推しに会える絶好のチャンスなのだが、今のアキは少しだけテンションが下がる。


(だって、私は可愛い系女子じゃないしね)


どうせなら、脇役でも良いから可愛い女子に転生したかった、と心から思うアキなのであった。


◇◇




「団長、昼食をお持ちしました」


ノックの後、扉をそっと開けると、部屋の奥ではアレンが黙々と書類に目を通していた。
目元にかかった紅の髪と、相変わらず整った美貌。

ーーーそして一切こちらを見ない無関心スタイル。
今日も通常運転お疲れ様です。

アキは静かにワゴンを押して、執務机と少し離れたテーブルに昼食を並べていった。

まさか自分が推しに手作りご飯を差し出す日が来るなんて……と思いながら、お皿の角度にまで気を遣って並べていく。

並べるついでにコッソリと盗み見れば。
…凛々しく整った顔立ち、燃えるような瞳。そして、白の軍服が良く似合う。


(あー……尊………)


つい、ボーっと見つめてしまう。


すると、パチリとこちらを向いたアレン。
アキは思わず「ヒュッ」と変な声を出して、その場に直立した。


「……ついでだ」
「へ?」


予想とは違う言葉に、つい間抜けな声を上げたところで、
アレンが机の引き出しから一通の封書と小さな巻物を取り出した。


「この手紙を届けてくれ。場所は地図に書いてある」
「……え?」
「君、雑用係だろ」


「さっさと行け」とビシッと突きつけられた封書と巻物(地図)を呆然と受け取る。


ーーーそんなこったろうと思ったわ。


(ミアになりたい……)


アキは内心泣きながら、推しから手渡された手紙と共に部屋から出る。


悔しいから、手渡される時にちょっと手を握ってやりました。暫くは手を洗わないと決めました。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

聖獣の卵を保護するため、騎士団長と契約結婚いたします。仮の妻なのに、なぜか大切にされすぎていて、溺愛されていると勘違いしてしまいそうです

石河 翠
恋愛
騎士団の食堂で働くエリカは、自宅の庭で聖獣の卵を発見する。 聖獣が大好きなエリカは保護を希望するが、領主に卵を預けるようにと言われてしまった。卵の保護主は、魔力や財力、社会的な地位が重要視されるというのだ。 やけになったエリカは場末の酒場で酔っ払ったあげく、通りすがりの騎士団長に契約結婚してほしいと唐突に泣きつく。すると意外にもその場で承諾されてしまった。 女っ気のない堅物な騎士団長だったはずが、妻となったエリカへの態度は甘く優しいもので、彼女は思わずときめいてしまい……。 素直でまっすぐ一生懸命なヒロインと、実はヒロインにずっと片思いしていた真面目な騎士団長の恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID749781)をお借りしております。

記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】

かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。 名前も年齢も住んでた町も覚えてません。 ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。 プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。 小説家になろう様にも公開してます。

脅迫して意中の相手と一夜を共にしたところ、逆にとっ捕まった挙げ句に逃げられなくなりました。

石河 翠
恋愛
失恋した女騎士のミリセントは、不眠症に陥っていた。 ある日彼女は、お気に入りの毛布によく似た大型犬を見かけ、偶然隠れ家的酒場を発見する。お目当てのわんこには出会えないものの、話の合う店長との時間は、彼女の心を少しずつ癒していく。 そんなある日、ミリセントは酒場からの帰り道、元カレから復縁を求められる。きっぱりと断るものの、引き下がらない元カレ。大好きな店長さんを巻き込むわけにはいかないと、ミリセントは覚悟を決める。実は店長さんにはとある秘密があって……。 真っ直ぐでちょっと思い込みの激しいヒロインと、わんこ系と見せかけて実は用意周到で腹黒なヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真のID:4274932)をお借りしております。

王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~

石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。 食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。 そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。 しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。 何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。 扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。

冷徹と噂の辺境伯令嬢ですが、幼なじみ騎士の溺愛が重すぎます

藤原遊
恋愛
冷徹と噂される辺境伯令嬢リシェル。 彼女の隣には、幼い頃から護衛として仕えてきた幼なじみの騎士カイがいた。 直系の“身代わり”として鍛えられたはずの彼は、誰よりも彼女を想い、ただ一途に追い続けてきた。 だが政略婚約、旧婚約者の再来、そして魔物の大規模侵攻――。 責務と愛情、嫉妬と罪悪感が交錯する中で、二人の絆は試される。 「縛られるんじゃない。俺が望んでここにいることを選んでいるんだ」 これは、冷徹と呼ばれた令嬢と、影と呼ばれた騎士が、互いを選び抜く物語。

【完結】ペンギンの着ぐるみ姿で召喚されたら、可愛いもの好きな氷の王子様に溺愛されてます。

櫻野くるみ
恋愛
笠原由美は、総務部で働くごく普通の会社員だった。 ある日、会社のゆるキャラ、ペンギンのペンタンの着ぐるみが納品され、たまたま小柄な由美が試着したタイミングで棚が倒れ、下敷きになってしまう。 気付けば豪華な広間。 着飾る人々の中、ペンタンの着ぐるみ姿の由美。 どうやら、ペンギンの着ぐるみを着たまま、異世界に召喚されてしまったらしい。 え?この状況って、シュール過ぎない? 戸惑う由美だが、更に自分が王子の結婚相手として召喚されたことを知る。 現れた王子はイケメンだったが、冷たい雰囲気で、氷の王子様と呼ばれているらしい。 そんな怖そうな人の相手なんて無理!と思う由美だったが、王子はペンタンを着ている由美を見るなりメロメロになり!? 実は可愛いものに目がない王子様に溺愛されてしまうお話です。 完結しました。

【完結】身分を隠して恋文相談屋をしていたら、子犬系騎士様が毎日通ってくるんですが?

エス
恋愛
前世で日本の文房具好き書店員だった記憶を持つ伯爵令嬢ミリアンヌは、父との約束で、絶対に身分を明かさないことを条件に、変装してオリジナル文具を扱うお店《ことのは堂》を開店することに。  文具の販売はもちろん、手紙の代筆や添削を通して、ささやかながら誰かの想いを届ける手助けをしていた。  そんなある日、イケメン騎士レイが突然来店し、ミリアンヌにいきなり愛の告白!? 聞けば、以前ミリアンヌが代筆したラブレターに感動し、本当の筆者である彼女を探して、告白しに来たのだとか。  もちろんキッパリ断りましたが、それ以来、彼は毎日ミリアンヌ宛ての恋文を抱えてやって来るようになりまして。 「あなた宛の恋文の、添削お願いします!」  ......って言われましても、ねぇ?  レイの一途なアプローチに振り回されつつも、大好きな文房具に囲まれ、店主としての仕事を楽しむ日々。  お客様の相談にのったり、前世の知識を活かして、この世界にはない文房具を開発したり。  気づけば店は、騎士達から、果ては王城の使者までが買いに来る人気店に。お願いだから、身バレだけは勘弁してほしい!!  しかしついに、ミリアンヌの正体を知る者が、店にやって来て......!?  恋文から始まる、秘密だらけの恋とお仕事。果たしてその結末は!? ※ほかサイトで投稿していたものを、少し修正して投稿しています。

異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない

紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。 完結済み。全19話。 毎日00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

処理中です...