推しに“男”だと勘違いされたけど、雑草根性で執着されてます!【全33話完結予定】

ホタカ

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第9話 “女嫌い”な推しに気付かれた…かもしれない

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最近、推しの姿がよく目に入る……気がする。


アキは箒を握りながら、ちらりと廊下の奥を見やった。

本人は気付かれてないと思っているのか?
伺うようにこちらを見ては眉を寄せる姿が、先日ピカピカに磨き上げた窓に反射してくっきり見えていた。


(帝国一の騎士団長が詰めが甘い……じゃなくて)


推しが自分に興味を持ってくれる事は嬉しいのだが、あの表情を見る限り嫌な予感しかない。

ほこり一つ残さぬよう床も棚も丁寧に磨きながら、アキは考えた。
見回りでも仕事中でもないのに、何故わざわざ男扱いの私を見に来るのか。


(ーーーまさか)


スッとアキの背中に冷たいものが伝った。
……あの目。あの表情。あれは、何かに気付いた顔だ。
まさか……私を、「女」と認識したのでは?

と同時に、今更重要な事を思い出した。


(……ヤバい)


咄嗟に、足早にその場を走り去った。
アレンの視界から消える為である。

嫌に響く心臓を抑え、食堂に向かうアキ。
バタン!と扉を閉めたところでようやくしゃがみ込んだ。


「……はぁぁ~。忘れてた……。“女嫌い”だったのを」


大きくため息と共に、呟く。

ーーーアレンハルト・ハザルは、極度の女嫌いだ。
小説には、過去に散々女性達から追い回され挙句ストーカー行為をされた結果トラウマになったとある。
だからこそ、自分をゴリゴリ追いかけない『小動物系可愛い女子』が好きなのではないか?

そんな重要な事を……今の今まで忘れていたなんて。


「……え?いや、やっぱり今まで男だと思われてたって事じゃん」


ふとその事実に気付くアキ。
この駐屯地に来てから2週間は経とうとしている。

それなのに、ようやく……いや、何故このタイミングで女だと気付いたのか?

男だと思われても腹立たしいが、女だと認識されてもマズい。
いや、でも女だと気付かれた上で無関心より…マシなのかも?


(いや、それより今は……この場所から離れたくはない)

こんなに居心地が良くて衣食住が保証されている職場は早々見つからない。これは、推し活とはまた別の話だ。生活が掛かっている。


(……目に入らないようにしよう)


なるべく推しの視界に入らず、でも居場所は死守。
それが今の私にできる、最善にして唯一の、防衛戦略だった。



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