異世界探索記録

土方かなこ

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1章

一本のナイフ

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 僕にナイフを投げた男が凄まじい勢いでこちらに駆けてくる

ヒヒンと鳴き、ホワイトが不安そうにこちらをみつめる


「そこから動いちゃだめだよ、ホワイト」

正直今出来ることは、なるべくあの男をルチオ達から離すことだ

それさえも怪しいわけだが

「ほらほら お前も来いよっ
ブルってちゃ勝利の女神は微笑まねぇぜっ」

ついこの間まで高校生だった人間がどうしてナイフで人を刺せようか

しかしやらなきゃこちらがやられる

相手から視線をはずさず、地面に刺さったナイフを引き抜く

武器を渡されたってこんなもの、何の意味もない
しかしここが夢の世界でないならば、あの男に刺されればそこで死んでしまうのだ

ナイフをぐっと握りしめ、足に力をこめる
せめて抵抗しなくてはっ

「さてさて、お坊っちゃまのお手並み拝見っ」 

ジルは大きく振りかぶり、思いきりこちらにナイフを突き刺そうとする

本気で殺す気だ

「っう」

キンっと音をたてて、ナイフ同士がぶつかる

「おらっ  みぎっ  ひだりっ みぎっ
おいおいどうしたぁ?
もっと抵抗してくれないとギャラリーだって帰っちまうぜっ」

すると周囲からは汚ない罵声が響く

左右に受け身をとらされ、こめかみに汗がにじむ
一太刀一太刀に明確な殺意がのっているため、緊張で手の震えが止まらない

このままじゃ殺されるのはジルのタイミング次第になってしまう

なによりガイアの顔が脳裏に浮かぶ
せっかく出会えたのに…

手の震えを押さえるためにナイフを両手で持ち、強くは握りしめる

視線は相真っ直ぐに手の心臓を見据え、そこに向かって渾身の力で突き立てる

そこにはもう迷いがなかった


ドスっ

「っぅあ?」

「俺様もう飽きちまったぜ」


「っ少年っ!!」

う、わ 不味い
ジルが背後にいて、そして

「っうあぁぁ  っがっ」

背中に突き刺された短剣が、今度は勢いよく引き抜かれた

周囲からはヒューっと口笛やら歓声やらが沸き起こる

そのままサクラは地面に倒れこむ
背中から溢れ出す血の感触に眉をひそめる

「っぅぅ」

「魔方陣が効かないからってレアもんだって決めつけちまうのは早かったなぁ

ま、死ぬ前に一皮剥けて良かったんじゃねえの?」 

ガハハと笑い視線をホワイトに視線を向ける
ザッと血の気がひく音がした

っそれは、やめて!

「やめろっ やめてください」

「お前のせいなんだぜ 全部」

シャキンと音をたてて腰に下げた剣を抜く

「売りもんにしようと思ったが、やめだ

俺様は今よっきゅーふまんなんだよ

それもこれもみーんなお前さんの せ・い・な・のっ!」

ヒヒーンっとわななく声がした
全身がブルブルとふるえる

グシャリと音がして何かが地面に打ち付けられた

「さあて
あと二人と2頭どうしてやろうか」


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