一人悲しく明ける夜

nawk

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第十話

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「芹菜…。」
私の腕の中にいる芹菜は、ずっと震えている。
そして、ずっと口が、「ごめんね。」と動いている。
「私、紗奈にひどいことしちゃった…。だから、もう会えないと思って…。」
でも、私は芹菜を許すつもりだよ。
「だって、親友でしょ、私。」
「でも、親友でも何も許せるわけじゃないでしょ?私もね、紗奈に許していないことがあるんだ。」
芹菜が、私に何か許していないことがあるのだろうか。
とても深刻そうな顔をしている。
そんな目でこっちをみないで…私は、私は芹菜が大好きだから。

「私の過去、知ったでしょ?私の両親、離婚してさ。お母さん、どっか行っちゃって。竜馬のお母さんと再婚したってこと。」

確かに、竜馬から聞いたので私は大きくうなずいた。
「私は、絶対に親友には知られたくないと思ってた。」
もしかして、その離婚や再婚の背景に、辛い思いを寄せたことがあるのかもしれない。
芹菜は、とても感情豊かな人だった。
でも、こんなに笑っていない…泣いている…。

人の涙は、何と美しいことだろう。

「私の過去は、封じられていたはずなのにね…。私は、竜馬のお母さんたちと出会うまで、最悪な生活をしていたの。お父さんの呪縛からはなれようとも離れられなかった。だって、お金を払ってくれないから、従わないと…。」

そんなことがあっていいのか…?他人の人生を締め付けて。
「今は、そんな生活じゃないよね?竜馬もいるし。」
すると、芹菜が弱々しく笑った。
「はは、そんなことあるわけないでしょ。竜馬だって、カースト底辺だよ。もちろん愛莉もね。みんなカースト底辺だよ。あ、私は最上位だったかな…。私は、本当に傷つきたくなかったの。他の人より、なんでこんなに傷つかなきゃいけないのかなって、ずっと思ってた。だったら、ずっと幸せそうな紗奈が最上位になって、苦しんでもいいじゃない…。」

結局、全て芹菜の言うとおりにならなかった。
だって、私はピンピンで学校にも行けるのだ。
「芹菜も学校に行けるじゃない。ね、一緒に行こう。みんなもきっと理解してくれるはずだよ、芹菜の事。」
「ごめんなさい…!」
「待って!」
そう言って、芹菜は走っていった。時々後ろを向いたが、その時は私の目を見ていなかった。
私の後ろを見ていた。
「君、芹菜の知り合いかな。」
低音のガラガラ声に振り向くと、ガタイの良い男性が立っていた。
「はい…。親友ですけど…。」
もしかして、芹菜のお父さんだったりしないよね…、と少し不安になりながら堂々と答えることを意識した。
ここで芹菜のお父さんを論破して、芹菜を守ろう…。
「私は、芹菜の親友です。大好きな親友です。芹菜はいつも生活に苦しんでいます。さっきも逃げたあの顔をあなたはどう受け止めたんですか?怯えているようにしか見えませんでしたよ?芹菜はあなたに苦しめられていたんです。だから、少しは気を遣おうと思わないんですか?私が言いたいことはそれだけです。」
「…。」
あっ……と、気づいたとき、私は傷だらけで倒れ込んでいた。
「いっ……た…。」
少しだけ、涙が出てきた。
私の前にはまだ大きな影がある。でも、少しシルエットが違った。
「大丈夫か?ごめん、父さんが。」
竜馬だった。でも、私の心配何てどうでもよかった。
「竜馬…芹菜を、守ってあげて…。殴られて…きっと、苦しいと思う…。」
その後ろに愛莉がいた。
「私が、紗奈を見ているから、竜馬は芹菜の所へ行きなさい。」


「ありがとう…愛莉。」

「前までは敵同士だったのにね。」

少しだけ笑い合った。

どんな敵でも、いつかは仲良くなるはずだ。
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