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第二戦 VSサビク 騎士の国と聖剣達
日常と考察 マリオネティカ
しおりを挟むマリオネティカ、それは王国に古くから伝わる邪悪の魔道具。
かつてまだ世界にこのソルディアル以外の国があった頃、魔人国にて猛威を振るった遺物の一つだ。
その力は、魂への寄生操作。
生命転換を逆流させて人形のように操る物。
それにより、3代目魔王の治世は荒れに荒れた。戦争もいくつも起こし、内乱も日常のようにあり、多くの人が死んだ。そして、その全てがマリオネティカの持ち主に利するように操られていた。
まるで人形劇のように。
しかし、それは当時の聖剣使いがマリオネティカを破壊する事で収まった。
各国に伝わっている聖剣使いの伝説の一つである。
■□■
「んで、それがなんで今の王国にあると?」
「さぁね、復元されたのか知らないけれど」
「じゃあ、なんで分かったよ」
「下手人が言ったらしいのよ、“起きろ、マリオネティカ”ってね」
あからさまにあからさまなその言葉に、タクマとメディは疑いの目を向ける。情報が欲しい所にコレとは、情報が軽すぎる。
『……ミスリードでは?』
「どっちでも良いわ。大筋は合ってるでしょ」
あっけらかんと言うヒョウカ。確かに大した情報ではあるが、それだけで決まるような情報ではない。なにせ、証拠はない。証言もマリオネティカという単語のみ。そして、操られていた間の記憶も曖昧。
謎解きのとっかかりという事なのだろうか、そうタクマは思った。本人に謎解きに関与するつもりはかけらもないけれども。
「それで、戦士団の二人はどうなってんだ?」
「そのままだと殺されるから、適当に逃げておけと言っておいたわ」
「そこまでか?」
「私なら殺すもの」
「……納得した」
その言葉と共にウィンドウを見る。デスペナルティ時間の確認だ。
この《Echo World》におけるデスペナルティはワールド転移の時間までの制限のみ。運営曰く生命転換の回復のための時間だそうだが、それがどうなのかはまだ検証できていない。プラクティスの間にズタボロにされて死んだ時の方がデスペナは長いらしいとプレイヤー達は聞いているが、それくらいだ。
タクマのデスペナルティは残り1時間ほど。綺麗に死んだからさほど重いペナルティ現在時刻は22時と少し。明日寝不足になるがもう一度ワールドに行けなくはない。
「どうする?」
「やめておくわ。私そろそろ寝ないと体調に響くもの。今回は割と緊張してるのよ?」
「成功率9割超えてるのに今更何言ってんだよ。ゼロ割をホームランにした女が」
「……だからよ。普通に手術して治るだなんてやった事ないのよ」
この御影氷華という少女の経歴、というか手術歴は異質である。異端である。
なにせ、これまでの手術において成功率4割を超えたものを受けたことはないのだ。しかし、理論上可能であると開発されていたが、誰にも耐えられなかったという術式の成功例になった事すらある。
そんなものを12回も行っているのだから、それは当然に生存率0とみなされてもおかしくはない。
だからこそ、死んでも死なないなのだ。
だがそれは、普通の、成功して当たり前の手術を受けたことがないと言うことの裏返し。
本当に柄にもなく、努力して一厘でも生きる可能性を高める必要のない手術を前にして、Mrs.ダイハードは緊張していた。
成功率0割の手術に遺書を残さないで挑んだ彼女が、本当に珍しく遺書を残し、遺産分配の手続きもしているくらいには血迷っていた。
もっとも、そんなのは笑い話にしかならないと周りの皆は思っているのだが。
「じゃあ、また明日な」
『術後の経過観察期間は終わっていてもまだなにがあるかはわかりません。ご自愛を』
「ありがとうメディ。また明日ね、タクマくん」
■□■
そうして翌日。タクマがバイクで登校していると陰気な気配を漂わせている少女を見かけた。
筆ペンこと、柴田奏である。
良い人のRPとして、その姿を放っておくべきでないと判断したタクマは、その横にバイクを付ける。
「乗ってく?」
「……お願い」
『では、サイドカーを出しますので少しお待ち下さい』
そうしてメディの操作により展開される特殊カーボン製のサイドカー。普段は折り畳まれているが、操作一つで展開できる優れものだ。
「大丈夫なの? コレ」
「案外快適らしい」
『耐久性についても、車に轢かれても砕けず、内部に影響はない事は実証されてます』
「凄いねバイク」
「すげーだろバイク。筆ペ……柴田も持ってて損は無いと思うぞ」
「……けど、高いでしょ? 今はなるべく節約しないと」
そう告げる理由は一つ。彼女は今尚一人で家に住んでいるからだ。家族を取り戻す為にと命をかけて戦うと決めたから。しかし、今は当然収入はない。
だが、彼女が折れるとは欠片も考え付かない琢磨は無自覚に奏を狂気の道へと誘う。
「多分だけど、戦うなら自由に使える足は要るぞ」
そんな、善意に見える言葉と共に。
「なら買う。教えて」
「シキシマの新しいモデルが良いな。FGシリーズ」
そう告げると、琢磨はARウィンドウを展開してカタログページを見せる。
そこには最新モデルにしては手頃な値段のバイクが映されていた
「……そこそこ高い」
「買えるか?」
「大丈夫。貯金はある」
「マジか」
「大会荒らしてて良かった……コレで、戦える」
そう呟いた奏は、しかしその意気に反してあくびを一つ噛み殺していた。
『差し当たって必要なのは、睡眠でしょうか。顔色からみて寝ずに《Echo World》をプレイしている事は見えています。今の柴田様の体調ならばかなりの確率で眠ってしまうのですし、保健室に赴いては?』
「……そうする。ああ、それと」
サイドカーに乗り込んだ時に、そう呟く奏。
「タクマもメディも、カナデで良い。向こうでも名前を変えた」
『承知しました、奏様』
「あんま無理すんなよ、奏」
その言葉の中には、メディが感じ取れて、琢磨の感じ取れない違和感があったが、その内容について思い至る事はなかった。
それはそうだろう。琢磨もメディも昨日1日のカナデのプレイを見ていないのだから。
奏は、ずっと見守っていた。記憶を無くして新しい環境に置かれ、それでも惹かれ合う実の母と義理の父の事を、ずっと。
それが、カナデなりの戦う為の儀式だった。
「じゃ、飛ばしていくぞ」
「意外と良い座り心地。けど眠れない」
『簡易ガイドカーですから。そこはご容赦を』
そうして二人は、学校へと向かうのだった。
■□■
普段通りに授業を受けて、普段通りに家に帰る。そう思った時に琢磨の端末にメッセージが届いた。足柄からだ。
「昨日の成果報告はこのフォームで? ……うわ、見やすい奴だ」
『恐らく、実際の捜査にも使われているモノでしょう。許可を取っているのでしょうか?』
「……まぁ、いいか。メディ、自作の地図データ出せるか?」
『はい。穴だらけですが昨日のルートは見せられます。参考程度ですが載せておきましょう』
そうしてメディが別窓に出したのは、昨日の道を辿った距離と方向だけで作った地図だ。
こうしてみると、あからさまに回り道をさせられているのが良く分かる。だが恐らくそれは監視網を潜り抜ける為の策だったのかもしれない。そんな事をタクマは思った。
それと騎士団の生き残り、というかアルフォンスとの会話を書いた
完全プライベートの酒場の件は触り程度に描き、
「後は、なんか激痛を伴う狙撃で殺されました。詳細はヒョウカに引き継ぎます、と」
そう送信すると、すぐに氷華が言葉を引き継ぐ。
マリオネティカという魔道具を犯人は使っている事、剣などを用いて魂を犯す洗脳道具だと。
それの手のモノにタクマは殺されたのだと。
ものすごくザックリとした説明である。と、琢磨はそう思った。さては寝不足気味だとも。
それと大グループの方針を書き記してヒョウカは言葉を終えた。
ここからの報告は、琢磨にとって完全に未知のものだ。奏、裕司さん、帝大組、足柄の話だ。
しかし、そのうち奏と裕司と帝大組の話は同一だった。
現実で殺された人達は、ゲーム時間で経過していた数ヶ月分の記憶を持ってソルディアルの住人として過ごしていると。数がそう多くないから今は歓迎され、多くの人が入植者として雇われている。
その上、才能のある人は戦士団にスカウトされたりもしているそうだ。
もしかすると初日に殺させてしまった鉄パイプの男、保科もその辺りに居るのかもしれない。そんな事を琢磨は思う。
そして、足柄が出した情報はプレイヤーのもの。
足柄は騎士団に捕まるなどの件、始まったプレイヤー狩りの件について調べ始めている一団と出会ったそうだ。
一団に大将はいないが、足柄との情報共有に当たったのは先日の戦いに生き延びたプリンセス・ドリルだと。
その一団の中のそれぞれが、第0アバターが見える人、そうでない人について調べていた。
現状は、戦う者の殆どが見えるが、市民には見えない。それは現実で死んだと思われる者も同様だった。
しかし、数人の騎士が第0アバターを見ることが叶わなかったという。
それは牢からの脱走に成功した者の話だから信じるに値する情報だと足柄は述べた。
なにせ、城から逃げる寸前で見つかったのに無視されてしまったからだ。
確実に目線があった。にも関わらず完全に意識の中に止められなかった。その騎士も脱走者の探索に当たっているのにだ。
「……魂視が使えるかの違いか?」
『否定、それでは戦士団の方々が全員見える理由にはなりません。あれは高等技術なのですから』
「なら、その見えない人について調べるのが先……待った、アルフォンスに見て貰えば済む事だな」
『何か考えでも?』
「オカルトな話だよ」
そう言って琢磨はあまり嬉しくない推論を述べる。そうであるのなら、誰を殺せばいいのかとても悩むことになるのだから。
「生き返った奴なら魂が見える、そんな事をさ」
それが成立することはつまり、蘇った戦士達はもうどうしようもないほどに終わっているという話なのだから。
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