残響世界の聖剣譚 -VRMMOで鍛えた魂で侵食されるこの世界を守ります-

気力♪

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第二戦 VSサビク 騎士の国と聖剣達

割れない空

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 夜もふけた頃。人が寝る時間をなんで削らなくてはならないんだと思いながらも、タクマはバイクの上で力を抜いていた。
 そんな姿をパトカーの中にいる刑事栗本は呆れたように見ている。これが“署内最強”の見込んだ少年なのかと。

「なぁ、風見。お前気を抜きすぎじゃねぇか?」
「……そんなもんですか?」
『まぁ、マスターはある意味常在戦場ですから』
「どういう意味だ?」
『戦闘時と現在の精神的コンディションに変化がないのです』
「……足柄から聞いたが、精神汚染の可能性だとかはあるか?」
「生まれつきです」
「なんで現代日本にそんなのが産まれんだよ」
「そんなの俺が知りたいですよ」

 そうしていると、繋げたままの通話の向こう側からは、2D格ゲーで楽しんでいる足柄さんと裕司さんの声が聞こえる。

「あっちの方に注意しなくていいんですか?」とタクマが聞くと、「俺たち今勤務時間外ってことになってんだよ」と返ってくる。

 それは、警察の“現場判断”がまだ続いていることを示していた。

「警察でなんか特殊部隊とか作らないんですか?」
「アニメの見過ぎだ。あと、そういうのをどうにかするために今は上の連中が頑張ってるんだよ。今は努力は見えないだろうが、そんな気にするな」

 その言葉に栗本は続けて言う。トップシークレットというわけではないが、それなりの機密情報を。

「ゲームの安全性が確認できたら本格的に警察も自衛隊も投入していくって話だ。そうなりゃ、お前も安心だろ?」
「……はい、そうですね」

 そうなれば積極的に最後の一人ラストワンになって戦いに絡もうと考えているタクマであったが、メディにそれは止められた。相変わらずブレーキが外付けの少年である。

「これまでの出現パターンから逆算すると、そろそろかな? めんたい……風見くん、皆、警戒強めに」
「明太子でいいですよじゅーじゅんさん」
「リアルでアバターネーム呼ぶなコラ」
「先に振ったのあんたでしょうが」

 そうして、タクマと足柄達との通信が切れる。
 どちらかが切ったわけではない。通信障害の発生だ。

「栗本刑事!」
「わかってる! 病院まで飛ばすぞ!」

 そうして、栗本刑事のパトカーとタクマのバイクは一直線に病院へと進む。

 すると、すぐに異界に侵入した感覚がやってきた。

「エリアデカすぎません⁉︎」
「俺が知るか!」
『ヒョウカ様の病室を中心に半径2キロ半以上敷いた警戒線を優に超えています!』
「んでもって、また来た泥騎士たち!」

 そうして琢磨達の前で、馬に乗った4人の泥の騎士達が並走してくる。
 バイクにわざと並走していることから、速度ば向こうのほうが上。

「馬とパトカーとバイクでチェイスとかどこの破茶滅茶特撮だよ!」
「言ってる場合か! 来るぞ!」

 そうして、泥の騎士達から放たれるのは強弓の斉射。数は4人と少ないが、その狙いは正確無比。
 そして、威力は言わずもがな。

 一撃で栗本刑事のパトカーは吹っ飛ばされ、なんとか躱しタクマの近くの道路は破壊されてその破片がバイクを襲う。

 そして、進行方向には重装と思わしき泥の騎士達が待ち構えていた。

「嵌められた⁉︎」
「みたいだな!」

 とっさにパトカーのフロート機能を起動して空中に出た栗本は、このままでは死ぬと感じていた。

「風見! あれやるぞ!」
「了解です、栗本刑事!」
『どうしてノリノリなのですかマスターは』

 そうして、栗本刑事の乗るパトカーから、暴徒鎮圧用ではなく、対機械兵器武装としてパトカーに積み込まれている空気圧縮弾の装填がされる。

 もちろん、それがそのまま着弾しても泥の騎士達にダメージはない。弾丸のコスト分安いというだけで装備されている武装だ。実のところ重ロボットには効果はそんなになかったりする欠陥装備で、現在普及しているパトカーには搭載されていない。

 しかし、この異界で風使いと組んで戦う分には、最強の兵装であった。

生命転換ライフフォース放出ディスチャージ! 空気に、命を!」

 そう、それはファンタジーのモンスターには魂の乗った攻撃以外通用しないという理外のプロテクトを抜く攻撃。

 今、空中から放たれた空気圧縮弾は琢磨の命の空気を吸い込み、ファンタジーに対して現代兵器を叩き込むというイカサマをやってのけた。

 その一撃は減衰されても尚泥の騎士達を粉微塵にするようなものであり、機動力を活かして致命傷から逃れた騎兵以外、騎士達は全滅した。

 そしてその逃れた騎兵達も、琢磨のバイクによる急接近に反応できずにその馬のコアを切り落とされた。

 メディによる運転により、琢磨は馬のコアの観察を可能にしたのだ。

 もちろん、それは高速で動くバイクの動きに対しての適切な体重移動ができていなければできない荒技だが

 琢磨とメディこのコンビにはさして難しいことではなかった。

「メディ! あの中にコアは?」
『不明です! 泥が覆っているせいで身体が見えません!』
「なら、無視する……って馬作り直せるのかよお前ら!」
『ならば一択!』
「ここで仕留める!』

 そうしてバイクから飛び降りた琢磨は、通じないだろうという諦めはありつつも丹田を通った急所を鉄パイプで打ち抜いた。

 馬を再生できるという事は、速度でバイクを上回っているという事。背後からゲートを使った急襲などされたらどんなに実力があっても死ぬ。少なくとも琢磨はそうだ。

 故に、バイクから抜き取った鉄パイプを、臆病者の剣チキンソードへと置換させながら、再生時の筋肉の動きを観察する。その、どこを庇って動いているかを見る事で、コアの位置を割り出していた。

 そして、そのコアに剣を振るう。

「……右肩あたり!」
『ヒット、です』

 もちろん、この割り出し方とて確実ではない。だが、魂のコントロール能力が互角であったり技量が突出していたりという異常がなければ、彼ら泥の騎士は殺し続ければコアにはいずれ当たる。

 下手な鉄砲なんとやらだ。

 そうして、5分ほど時間をかけて4人の騎兵達を斬り殺し、琢磨と栗本は再び病院へと向かうのだった。

「メディ! 氷華との通信は繋がるか⁉︎」
『……応答がありません! 非常事態に間違いはないかと!』
「何のために高いポイント出してアバター改造したと思ってんだ畜生!」
「ごちゃごちゃ言うならエンジン吹かせ!」

 と、栗本の声にすでにフルスロットルのエンジンにどうにか加速をつけられないかを考えた所で。

 氷華からの、コールがやってきた。アバター機能のものだ。

「氷華! 無事か!」
「……ええ、私は一応五体満足よ」
「……氷華?」
「落ち着いて聞いて、琢磨くん。私達、詰んでるみたい」
「……何があった?」
「まず、足柄刑事は死んだわ。奇襲に反応できたんだけれど、メイスを闇の剣で叩き切られてそのまま」
「……そう、か」
「次に、奏と裕司さんは、戦闘不能。戦ったんだけど、鎧袖一触。二人ともどうにか命は繋いでるけど、傷は深い」
「ああ」

 そして、これから最悪が語られるのを琢磨はなんとなく分かっていた。氷華は、勝ち筋を諦めない。絶対に、可能性がゼロであっても足掻く事を諦めない。

 そんな彼女が、詰んだと言ったのだ。それは、相当なトンデモを向こうがやらかしたという事。

「そして、生き残ったあの黒いのは、自分の体を分け与えていったの。病院にいる人達に。あの侵食速度なら、VIPルームココ以外全滅でしょうね」
「どうして氷華は無事なんだ?」
「今、部屋全体に生命転換ライフフォースを放ち続けてるの。光と氷の結界で、どうにか泥は防げてる。けれど、あの黒いのが戻ってきたら、次は防げない。……だから、あと2分も無いわね」
「……クソが」

 判断を間違えた。琢磨はそう思った。

 あそこで、背後からの急襲のリスクを負ってでも氷華を守りに行くべきだったか? そんな事を考えて。

 魂を犯す感覚が、琢磨を襲った。

「……ラァッ!」

 反射的に風纏にて殺気の方に風の壁を作り、投げられてきたメスなどの刃物の数々を流す。

 そして、その回避と同時に琢磨に影がかかる。

 上空からの急襲。それはファンタジー世界には無いビルの電灯によって察知できたが、壁を蹴って下側に加速してくるその剣を琢磨は防いではならない。

 今、琢磨は痛覚激増状態にある。足の感覚などに影響がないといことは、あの暗殺者の生命転換ライフフォースがトリガーなのだろうと改めて認識できる。状況証拠でしかないが。

「……押し通る」
「できるか?」

 剣を構えつつ、刃の鏡で栗本刑事の動きを見る。目があった瞬間に、逆走を始めて別ルートから病院に向かうようだ。

 刃越しに合った目は、死んでなどいなかった。

『マスター、明らかに会話機能を有している個体です。コアの可能性は高いかと』
「だろうな。だが、実際問題泥は使えないぞ」
『ええ、内の泥を出力するゲートもどきは痛みを伴います。そんなあからさまなのでは、直接流し込まれない生命転換ライフフォースでも起動するでしょう。あの激痛が』

 そうして、暗殺者は闇色の光を剣に纏わせる。閃光剣レイブレードだ。どうして黒いのかは知らないが、相応の威力を有している。

 これで、気合で一発受け流すなんて事も封じられてしまった。

 先に手札を見せるだけでこちらの行動を縛り続けている。これは、明らかに人間相手の剣理が根本にある剣だ。

 だが、その構えを見て彼を暗殺者と断ずるのは早かったと思った。

 剣に、守るあり方が馴染んでいる。
 一太刀も振るわせないこと、それが彼の剣理なのだ。

 だが、そんな戦闘構築は速やかに破壊しなくてはならない。氷華のVIPルームはコイツが目の前にいるからまだ崩れないだろうが、それでも限界はあるだろう。

 故に、剣は自爆覚悟の一発芸。

 生命転換ライフフォースを全開にし、全力で風を踏む。自身でのコントロールを投げ出した暴走剣だ。

「笑止」

 当然、そんなものは幾度となく見てきた彼の剣は、適切に迎撃を選択している。

 だから、さらに風を踏み、超低空へと体の弾道を変化させた。それはもはや地面を滑っているのと変わらない。1センチ浮いているかどうかの違いだ。

 故に、この奇襲は着弾した。対空迎撃に対して、それを潜っての滑り込んでの脛斬りだ。

 そして、それで終わらない。

 片手で振ったその剣をそのままに、逆の手で地面を叩き縦回転。さらに風踏みで垂直の壁を蹴るように踏み抜き、その丹田への剣を叩きつけた。

 その剣は彼の閃光剣レイブレードにて防がれたが、風の刃は臆病者の剣チキンソードを保護した。剣は切られてはいない。

 そして、着弾の瞬間に手を離していた琢磨には、剣を受けたことによるダメージもない。

 そこからは、琢磨のターンだ。完全なる迎撃を殺された経験から破った蓄積の勝利だ。

 踏み込み、ゼロレンジから風を纏った掌底を彼に押しつけ、そこにある命を全て叩きつけた。

 コントロールなど要らない。琢磨の衝動がそう言うのだ。
 コントロールをする必要はない。生命転換ライフフォースは無軌道なそれを叩きつけるだけで十分な凶器なのだから。そう理性は言った。

 その一撃は着弾し。琢磨の戦闘不能と引き換えに。彼の者の胴を吹き飛ばした。

「メディ、再生は?」
『……していません』
「じゃあ、これで氷華達も……?」

 そうして、琢磨は空を見る。

 いつもならば、割れるように世界が戻るそれは。未だ健在であり。

 異界は、確実に現実世界を侵食し続けていた。

 コアは、まだ残っているのだ。

 それが、守ると誓った彼女の死に繋がることが理解できてしまった琢磨は、じっと拳を握りしめた。


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