残響世界の聖剣譚 -VRMMOで鍛えた魂で侵食されるこの世界を守ります-

気力♪

文字の大きさ
59 / 69
第三戦 VSアルフレシャ 自称王女と螺旋の槍

入植者たちの牙

しおりを挟む
 朝食を食べ終えて、琢磨がどこかに行こうとするところで待ったをかけるのは高砂姉妹。

「一宿一飯の恩を返さずにどっか行ってまうん?」
「そうですわ! この際ですからあれこれこき使って差し上げます! お覚悟はよろしくて?」
「……あれこれとは?」
「……あれこれですわ!」

 考えてなかったのだなと思うこの場の全員。

 だが、その優しさに触れて琢磨は逃げられなくなった。
 恩義は返す、そうしたい。
 一晩寝て、朝食を食べた。それだけの日常の一幕は、迷い傷ついていたタクマの心にしみたのだ。

 そして、それは”もしも”の時にプリンセス・ドリルこと高砂瀬奈を殺すのに有利であるという合理的考えも浮かんでいる。

 故に、琢磨はこの二人の優しさに甘えるのだった。

「じゃあ、少しの間よろしくお願いします」
「言質は取りましたわ! さぁ、まずは部屋の掃除からです!」
「……ええの?」
「はい」

 そうして、わーわーと騒ぐ瀬奈に引きずられ家のことをパパっと済ませる琢磨。
 その手際の良さは、家事能力ゼロであった義父凪人との暮らしの結果である。

 そしてあらかたの家事が終わったので、昼食をとることにする3人。その空気は、和やかであった。

「女子力ウチより高いんとちゃう?」
「いや、長いことやってりゃこれくらいは普通ですよ」
「……それは、暗に私のことを罵ってはいませんか?」
「まぁ、少し」
「お姉未だにロボット掃除機に曲芸させるやん」
『基本モードで起動させるだけできちんと掃除をしてくれる機種だったのですが……』
「私は、ちゃんと私の指示で動かしたいのですわ! それが掃除機であったとしても!」
「何言ってるのかわからんわぁ」

 そんな会話の中で、ふと気になったことがあった。

 高砂姉妹の両親の話だ。

 掃除をした限りでは仏壇の類は存在しなかった。という事は両親ともに健在背あるはずなのだが……
 そう琢磨が思った所で玄関の鍵が開く音がする。

「「あ」」

 そんな言葉を姉妹で発したので、これは忘れていただけだなと琢磨は思い、さして散らかしていない荷物をまとめて帰り支度を済ませるのであった。

「帰ったぞー娘たち!」
「お、お帰りなさいお父様。早かったのですわね」
「ああ、向こうでの用事が早く終わってな、サプライズってやつだ。母さんは少し買い出しをしてから帰ってくるからもう少し待っててくれな」
「……そうやったんやー」

 そして、琢磨は昼食を終え、流しにそれを片付けた後に、トイレに隠れる。

 そして高砂一家がリビングに入ったのを音で確認してから、この家を離れるのであった。

『急用ができたので失礼します。昼食ごちそうさまでした』そうメディの声でメッセージを残して。

 ■□■

 近所にあったネットカフェにて再び《Echo World》にログインする琢磨。

 そして、自身のログインと共に開かれたゲートの中へと歩いていく。
 そこには、ダイナと管理AIのマテリアが待っていた。

「首尾はどうだった?」
「……しっかり肉眼で捉えました、高砂瀬奈の姿を」
『こちらが、そのデータになります』
「……マテリア、これでいいのか?」
「はい、十分にデータは取れています。……やはり、彼女には聖剣の使い手としての祝福がありますね。しかし、今まで見たどのパターンの祝福とも違います。……これが、生命いのちの聖剣?」
「なら、盗むか?」
「……それが手っ取り早いでしょうね。とはいえこの武器はもう魂に紐づいてしまっているので、私の権限で盗むことは不可能です」
「そこは、タクマがうまくやるさ」
「他力本願やめてくださいよダイナ師匠。師匠が行けばいいじゃないですか」
「だから動けねぇって言ってんだろ。行けるなら俺が一人で行くっての」
「……わかりましたよ、やりますよ師匠」
「それではタクマ、これを」

 そうして渡されたのは水晶のようなもの。透き通った中身に魂が込められているのがわかる。

「これは、私のゲートの力を結晶化したものです。ここに魂を込めればこの空間への扉が開くでしょう」

「なら、ドリルさんをここに連れてくればいいんじゃないですか?」
「あなたがそれでいいのなら構いません。ですが……もしも彼女が生命の聖剣の持ち主だったなら、あなたが殺すしかありません。手口はあまり見せないほうがいいかと」

 その言葉に、本能が「当たり前だよなぁ」と告げているのを感じる。

 そうしてその作戦を受領したタクマは、ワールドへと転移するのだった。

 ■□■

 そうしてタクマが向かったのは、プリンセス・ドリルの良く行く孤児院だ。この辺りにいれば見つかるだろうという安直な考えだったが、その考えは的を射ていた。

 確かにドリルはいた。彼女に率いられた子供たちもいる。

 しかし、それを囲むように大勢のプレイヤーと入植者が居るのは、想定外だった。

「良いから言えよ! あの殺人鬼はどこにいる!」
「俺はわかってるんだ! 俺はあいつに殺された! けど、あいつを殺せば帰れるんだ! 俺の、家に!」
「何を言ってるのかちゃんちゃらわかりませんわ! ゲームの中でどうこうしようとしても現実に影響はありませんわよ!」
「何言ってやがる!」

「現実であいつを殺すに決まってるだろ!」

 その言葉に、言葉を発した彼の目に、確かな狂気を感じた。

 あれはもう敵だろう。そう断言していいのだと、琢磨は思った。

「すいません、話題に上がった殺人鬼ですけど、何か御用ですか?」
「ッ!? テメェ!」

 その言葉と共に切りかかってくるプレイヤーの男、その拙い剣を受け流し、腕を切り飛ばす。

 この程度は、タクマにとって児戯だった。

「いろいろ面倒なので、ここで殺しましょうか?」
「……上等だ、異界殺人鬼!」
「俺たちが、お前を殺してやる!」
「お前が、すべての元凶だ!」
「お前の、命は許されていない!」

「うっせぇ死ね」

 そうして、タクマに襲い掛かってくる多くのプレイヤーと入植者たち、いずれも生命転換ライフフォースの力で琢磨を攻撃しようとしてくる。

 しかし、タクマにとってそれは遅すぎた。動きではなく、殺す、攻撃すると決めてから行動に起こすまでの速度が遅かったのだ。故に攻撃全て見切られた。

 それからは、作業のような戦いだ。プレイヤーの首はことごとく叩き切り、入植者は腹打ちにて気絶させていく。

 そして、きっかり10分で片付いた男たちを放置して、大丈夫かとドリルと少年少女たちに声をかけようとした時に、背後から異音が聞こえる。

 気絶していた入植者たちがその体を奇怪に動かしながらこう言った。

「「「死ね、風見琢磨」」」

 そうして動き出すのは15の狂人たち。ほとんどは白目を剥いているのにしっかり琢磨を捉えている。

 またしてもマリオネティカのような洗脳系かとタクマは思ったが、その割には本人の意識がしっかりしていた。
 そして、その剣はみな鍛えた武芸の証であると琢磨は見切っていた。

 そうして、襲い来る15の剣士たち、コンビネーションはさして恐ろしくはないが、数が多い。
 これは、入植者の腕くらいは奪うべきかとスイッチを切り替えようとしたところで

 入植者の一人が、あの日病院で殺した一人であることに気が付いてしまった。

 その意識の隙は、タクマにとって致命的だった。

 襲い掛かってくる入植者、その剣は力強いが単調で、あっさりと回避することができてしまい。

 、タクマは入植者の一人を殺してしまった。首を撫でるように頸動脈を切り裂いて。

「この、殺人鬼め」

 そんな捨て台詞を残して、一人目の死人が出た。

 そこからは狂乱だ。恐怖に狂って技もない剣は味方に当たり死人を作り、生命転換ライフフォースの暴走でまた死人ができ、最終的にその場に立っていたのはすべての攻撃を回避したタクマ一人だけだった。

「……タクマくん」
「すいません、騎士団を呼んできます」

 その気遣うような、咎めるような視線に耐え兼ねられずにタクマはこの場を去っていく。

 殺したことには何も感じない。だがその目は、かつて琢磨を、琢磨の日常のすべてをひっくり返したあの異物を見る目に思えて、心が痛かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

チート魔力を持ったせいで世界を束ねる管理者に目を付けられたが、巻き込まれたくないので金稼ぎします

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

魔力ゼロの落ちこぼれ貴族、神々のエラーメッセージが読めるようになる~「神罰」のシステム権限で学園無双しつつ、本人だけはただのデバッグ作業だと

蒼月よる
ファンタジー
魔法(ナノマシン干渉)が使えず、名門アルマンド家の恥晒しとされた三男アッシュ。 実技試験に落ちて旧図書棟の掃除をさせられていた彼は、謎の遺物(管理デバイス)に触れたことで、世界の最高管理者権限(デバッガー権限)を手に入れてしまう。 「魔法」とは環境中の魔素を操作する事象。そして「神の奇跡」とは環境管理AIの気まぐれであるこの世界において。 アッシュの目には、相手の放つ魔法が単なる『不正なプロセスのエラーログ』として映り、頭の中で『YES(強制終了パッチ)』を選択するだけで完全に消去できるようになったのだ! 一切の詠唱も魔力発生も伴わずに、同級生の最大魔法をフッと消し去り、暴走する巨大魔物をワンボタンで光の粒子に還元するアッシュ。 本人はただ「うるさい警告文が出たからOKを押してデバッグ(人助け)しているだけ」のつもりなのだが……。 これは、エラーログを消しているだけの落ちこぼれ少年が、王都の至高魔法学園で「神の奇跡を下す聖者」として盛大に勘違いされながら成り上がっていく、痛快無双ファンタジー! この作品は以下の箇所にAI(Claude Code)を利用しています。 ・世界観・設定の管理補助 ・プロット段階の壁打ち ・作者による執筆後の校正

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった

仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。 そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...