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母、異世界に行く。
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「朝だぞー!シゲル!起きろー!」
布団にくるまった息子を揺すり起こすのは、シゲルの母ミチヨ。
彼女は超天才で非凡な才能を多く持ち合わせた超絶美人なお母さんに見えない母……というわけではなく、その辺に居そうなごくごく一般的なアラフォー女性である。悩みの種は慢性の腰痛。あと若干反抗期の息子。
夫とはとうの昔に離婚し、この狭くもないが広くもないボロいアパートにて在宅ワークをこなし、親子ふたりなんとか食いつないでいる。
「早く起きないとお前の弁当を今ここで食うぞ!!お前の大好きなミートボールだぞ!!ほーれほーれ!!」
「起きてたし」
「今起きてても遅いっつーの。もう8時だし」
「遅刻じゃん!」
「そうだね。頑張って」
「ひどい!!どうしておこ」
「起こしたよ散々。私のせいじゃない。お前の夜更かしのせい。」
「……ッチ」
「親に向かってなんだその態度はぁ~」
息子シゲルは耳にタコといった様子で弁当をもぎ取り、ミチヨを部屋から押し出し、急いで制服に着替えて学校へと飛び出して行った。
そう、ちょっと母というには少し無責任な、あるいはマイペースすぎるというか、なんかちょっと親らしくないそんな母・ミチヨであった。
一瞬の静寂の間、今度は部屋の隅からチーチーと鳴き声がこだまする。
「ピーチャン オハヨウ」「オハヨウ」
と2羽のセキセイインコが喋り出す。この時間は早くカゴから出してくれ、という合図である。
「よしよし。チーちゃんもピーちゃんも元気かなー?よしよし。今出すからねー」
そうしてカゴから2羽を離した瞬間、突如大きな揺れが起こった。ミチヨはその揺れに踏ん張ることが出来ず、そのまま後ろ倒しに倒れ……意識を失った……。
朦朧とする意識の中、太陽がジリジリと皮膚に刺さる、そんな感覚を覚えたミチヨは船酔いにも似た頭のふらつきの中、目に映る眩しさに驚いた。
「えっ?すご!」
見渡す辺り一面、白い岩盤が太陽を照りつけ、目を細めずにはいられない。いままで、こんな光景は見た事がない。見渡す限り、白い岩で覆われている。遠くに見える鉛筆のように尖った山も白い岩だ。その辺に転がっている石も、突き刺さっている岩も、揺らいで霞んで見える地平線もまた白い。
そんな中、黒い細い線が動いてミチヨへ向かってきている。徐々に太くなるソレは黒い長いローブを纏った人であると分かるには、少し時間がかかった。
ローブの人はミチヨを見つけると駆け寄りだした。
息も絶え絶えにミチヨの側までくると、急にスライディング五体投地をし、まるでミチヨに平伏しているようだった。
「あっ、あのー……」
恐る恐るミチヨが話しかけると、ローブの人は息を荒らげながら
「きゅ、救世主様、どうか我ら、っを、お救い下さい」
「え、なんて?」
「お言葉が通じませんか…困りました」
顔を上げたローブの人は、人間の肌の色でも質感でもなく、焦げ茶色と深緑のウロコに覆われた、まるでトカゲ人間のような顔をしていた。おそらく困惑しているのだろう。眉はないが、眉根を寄せているように見える。
「おぉ?!にんげんじゃない!!まじ?!」
「おぉ。救世主様。伝承にあらせられる通り、黒いたてがみに柔らかな白い肌、我らをお救いにいらした……」
そう言うと、トカゲの人は鋭い爪のある手でミチヨの手を優しく握り、瞳から涙を流した。
「いや、ちょっと、訳が分からないんだけど」
「これは失礼…というか、私の言葉は理解しておられます…よね?」
「うん。言葉はわかるし、救世主の意味もわかるけど、私がなんでそう呼ばれるのかも分からないし、そもそもこれは夢じゃないの??」
「おぉまさに伝承の通り!『夢じゃないの?』と聞かれたら、里に連れていって、世界の現状を見せよと記されております!」
「なにそのメタい伝承……誰だよそんなの書いたの」
そんなこんなでミチヨはトカゲの人に連れられ、里へ向かう事になったようだ。
つづく?
布団にくるまった息子を揺すり起こすのは、シゲルの母ミチヨ。
彼女は超天才で非凡な才能を多く持ち合わせた超絶美人なお母さんに見えない母……というわけではなく、その辺に居そうなごくごく一般的なアラフォー女性である。悩みの種は慢性の腰痛。あと若干反抗期の息子。
夫とはとうの昔に離婚し、この狭くもないが広くもないボロいアパートにて在宅ワークをこなし、親子ふたりなんとか食いつないでいる。
「早く起きないとお前の弁当を今ここで食うぞ!!お前の大好きなミートボールだぞ!!ほーれほーれ!!」
「起きてたし」
「今起きてても遅いっつーの。もう8時だし」
「遅刻じゃん!」
「そうだね。頑張って」
「ひどい!!どうしておこ」
「起こしたよ散々。私のせいじゃない。お前の夜更かしのせい。」
「……ッチ」
「親に向かってなんだその態度はぁ~」
息子シゲルは耳にタコといった様子で弁当をもぎ取り、ミチヨを部屋から押し出し、急いで制服に着替えて学校へと飛び出して行った。
そう、ちょっと母というには少し無責任な、あるいはマイペースすぎるというか、なんかちょっと親らしくないそんな母・ミチヨであった。
一瞬の静寂の間、今度は部屋の隅からチーチーと鳴き声がこだまする。
「ピーチャン オハヨウ」「オハヨウ」
と2羽のセキセイインコが喋り出す。この時間は早くカゴから出してくれ、という合図である。
「よしよし。チーちゃんもピーちゃんも元気かなー?よしよし。今出すからねー」
そうしてカゴから2羽を離した瞬間、突如大きな揺れが起こった。ミチヨはその揺れに踏ん張ることが出来ず、そのまま後ろ倒しに倒れ……意識を失った……。
朦朧とする意識の中、太陽がジリジリと皮膚に刺さる、そんな感覚を覚えたミチヨは船酔いにも似た頭のふらつきの中、目に映る眩しさに驚いた。
「えっ?すご!」
見渡す辺り一面、白い岩盤が太陽を照りつけ、目を細めずにはいられない。いままで、こんな光景は見た事がない。見渡す限り、白い岩で覆われている。遠くに見える鉛筆のように尖った山も白い岩だ。その辺に転がっている石も、突き刺さっている岩も、揺らいで霞んで見える地平線もまた白い。
そんな中、黒い細い線が動いてミチヨへ向かってきている。徐々に太くなるソレは黒い長いローブを纏った人であると分かるには、少し時間がかかった。
ローブの人はミチヨを見つけると駆け寄りだした。
息も絶え絶えにミチヨの側までくると、急にスライディング五体投地をし、まるでミチヨに平伏しているようだった。
「あっ、あのー……」
恐る恐るミチヨが話しかけると、ローブの人は息を荒らげながら
「きゅ、救世主様、どうか我ら、っを、お救い下さい」
「え、なんて?」
「お言葉が通じませんか…困りました」
顔を上げたローブの人は、人間の肌の色でも質感でもなく、焦げ茶色と深緑のウロコに覆われた、まるでトカゲ人間のような顔をしていた。おそらく困惑しているのだろう。眉はないが、眉根を寄せているように見える。
「おぉ?!にんげんじゃない!!まじ?!」
「おぉ。救世主様。伝承にあらせられる通り、黒いたてがみに柔らかな白い肌、我らをお救いにいらした……」
そう言うと、トカゲの人は鋭い爪のある手でミチヨの手を優しく握り、瞳から涙を流した。
「いや、ちょっと、訳が分からないんだけど」
「これは失礼…というか、私の言葉は理解しておられます…よね?」
「うん。言葉はわかるし、救世主の意味もわかるけど、私がなんでそう呼ばれるのかも分からないし、そもそもこれは夢じゃないの??」
「おぉまさに伝承の通り!『夢じゃないの?』と聞かれたら、里に連れていって、世界の現状を見せよと記されております!」
「なにそのメタい伝承……誰だよそんなの書いたの」
そんなこんなでミチヨはトカゲの人に連れられ、里へ向かう事になったようだ。
つづく?
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