呪う一族の娘は呪われ壊れた家の元住人と共に

焼魚圭

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ホムンクルス計画

くず餅

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 古びた家の新たな住人を確認したところで刹菜はいつものニヤけ面と明るい声、そして手で追い払うような仕草で己の意見を主張する。
「この家はもう築70年くらいのボロボロハウス、人だって定年退職してるくらいのご老体なんだ。そんな身体にこんなに沢山の人を乗せてもつと思うかほらほら重量オーバーだよ。那雪ちゃんと一真は出てってイチャラブデートしてきな洋子ちゃんはヴァレンシア・ウェストに力を抑えてもらって力の使い方をご受講願いな私はここに残るから」
「お前だけ残る気かよ」
「私だけじゃない。家主と同居人もいる」
 一真は刹菜を睨み付けつつも那雪の方を見て微笑んで那雪とデートに勤しむのであった。
「よし、ふたりを監視するぞお付き合いのその先は5年後までは行かせないぜ」
 ムダな心配とプライベートへの踏み込みに全力な刹菜をよそに奈々美は紙を広げて十也に問いかけていた。
「肉体年齢は中一みたいだけれども勉強はどれ程までに教えていただいているのかしら」
 優しい顔で問う東院家の魔女に対して幼いホムンクルスは笑顔で答えた。
「多分中学一年生まで終わってます」
「敬語っ!……くっ、魔女研究所の人々めこんなにも純粋無垢な子に大人の作法なんか教えてしまって、なんてことしてくれたのかしら罪深い」
 頭を激しく掻き、左足で何度も地を踏みながらやがて十也を指して早口で言った。
「十也、ちょっといいかしら。あなたには今から記憶を失っていただくわ。敬語というものの使い方だけを都合よく忘れて無垢に笑う純情で元気いっぱいいっぱいで私のことが大好きな男の子に」
「はい、そこまで。やっぱイヤな予感が的中した。まさか私の方がマトモになる日が来るなんてまた那雪ちゃん呪われるんじゃないか?」
 余計な言葉を加えながらも珍しく普通な事を言ってのける刹菜。それを見ながら十也は1度頷き答えた。
「はい、じゃなかった。うん、わかった」
「そうそうそれでいいの、私の事を妻……じゃなくて彼女と思って話してごらん」
「コイツを法廷まで飛ばす日が近そうだなぁ、私より先にお縄にかかりそうだ」
 奈々美の言葉を聞いて十也は顔を赤くして沈黙していた。
「静かな春だな穏やかなみなものような存在感の薄い恋心」
「おバカはお黙り」
 十也は美しい顔をした魔女を眺め、熱を感じていた。
「うふふ、可愛い子ね。そんなあなたにはくず餅をあげるわ」
 奈々美が十也に手渡したくず餅の袋の柄を見て刹菜はある設問を口頭で渡す。
「では問題です! 奈々美が今渡したくず餅。その袋にモモンガの絵が描いてあってしかも名前が『桃ん雅和菓子店』とあります。そこの店番は桃ん雅和菓子店の店主の娘さん、魔女研究所の関係者です。ではあなたはどこの機関にお金という名のこの世の力を流したのでしょうか? 魔力以上に大切な財力を流しちゃったのでしょうか」
「………………魔女研究所」
 気まずそうな奈々美と得意げな刹菜。刹菜はニヤけながら十也に言ってのけた。
「と、まあこんなにも大人気ない私がいるわけで、キミはそんなのになっちゃダメだよ、この世のありとあらゆる残念なものを詰め込んだ邪悪なびっくり箱にならないようにな」
 それだけ残して刹菜は立ち去るのであった。
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