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(野菜狂信者は)何とか肉食できんのか?

事実の発覚・自白添え

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いよいよ明日が物々交換……って所でマレスとサーマがやって来たな。

サーマはベーコンの取引が目的だろうがマレスは明日まで居られるかな?

「あ、ベルちゃん!」

「久しぶり!」

早速マレスが可愛い妹にキャリ、ベルと離脱……

まあ久しぶりに会ったんだし、思い切り遊ぶといい。

「そういやマレスのベーコンはどうだ?」

「ペスカタじゃ肉を入手するのは一苦労だけど、有難い事にウメオのベーコンと同等に売れてるよ……違いが解るのは私達と領主ぐらいじゃないかねぇ?」

一応あの領主には目印を教えてあるからな……

食べ比べた訳じゃないから味の違いについては次の機会にでも検証させて貰うが、多分マレスのベーコンも俺のベーコンと遜色はないだろ。

「そういえば最近になって自分の愛馬にしか興味がないと言われてた領主も結婚するって噂があるんだけど、あんた何かしたのかい?」

「サテナンノコトヤラ……」

判明したらその場で斬首される可能性もあるからな、徹底的にとぼけさせて貰うぞ。

だが万が一バレたら……その時に考える。




「ああそうだ、確か明日はマレスにヒモノって料理を教えたキュアってプリーストが来るんだろう?」

「ああ、確かに来るが……」

プリーストじゃなくて狂信者プリーストらしいけどな。

此方には害がないから触れないけど。

「安心しな、私と旦那だけはマレスから粗方の事情を聞いてるよ……ベーコン程じゃないにしろヒモノのお陰で収入が増えた礼を言いたいだけさ」

なら大丈夫だな。

となればマレスにサーマも泊まり&晩飯は確定か。

「ってペスカタで干物に出来る魚なんてあったか?」

俺の記憶が確かならタコとイカ以外じゃイワシとエビぐらいしかなかった様な……

イワシは煮干しにするならまだしも干物には向かなかった筈だが?

「クラケンにオクトパスは年中採れるし、この時期はダガーって魚がよく採れてね……それがヒモノに向いてたんだよ」

干物に向いてるダガー、短刀みたいな魚……となれば多分だけどサンマの事だな。

あれは塩焼きや刺身が美味いんだが酒が進むからな……妊婦のマリアに知られたら甘酒じゃ止まらなくなっちまうだろうから来年まで我慢しよう。

そもそもサンマはバーベキューじゃ塩焼きぐらいしか思い付かんし、あの苦味が強い内臓は酒か大根おろしがないと美味さが半減する。

何より可愛い妹はサンマの内臓を絶対に食わないからな。

理由は食えなくはないけど苦いから嫌だとか言っていた。




さて夕飯だが……何を作ろうかな?

既に定番と化したベーコンスープと鶏と豆のトマト煮は用意してあるけどメインが決まらん……

この前からタープとマリアがラム肉を狙っているが、あれは物々交換の日に食う肉だから今は焼かんぞ。

かといって可愛い妹とキャリとベルに再会したばかりのマレスに丸投げする訳にもいかんしなぁ。

「パパ、夕飯にバター味のジャガイモ食べたい!」

「ああ、じゃがバターか……よし作ろう」

「やったー!」

まあじゃがバターならバターと一緒にアルミホイルで包んで焼くだけだから大した手間はないしな。

とりあえず1人3個ぐらいでいいか。

「ウメオさん、あのガンボと一緒に食べたマカロニとかいう物を使ったサラダってどんな味なんですか?」

次はベルのリクエスト……しかも当日にも作る予定のベンネのサラダをご所望か?

材料は揃ってるしパスタマシンも作ったから夕飯には間に合うが。

まあ仕方ない、それも作ろう。

「お兄ちゃん、パイを焼くから炭火をちょっと貰うよ」

「おう、抜いた分の炭も追加しといてくれよ」

「はーい」

ふむ、可愛い妹がパイを焼くならメニューはこれで大丈夫だろ。

トゥール様が来たらソース味の何かを作る羽目になるが、明日が物々交換となれば今頃仕事を片付けてるだろうし。

「ウメオ、夕飯やけど最近は米ばっかしやったせいかパンが食いたくなってなぁ……あのBLTサンドいうの頼むで」

タープがBLTサンドを食いたいと申したか……まあ確かに最近はマリアが米を食べたがっててそればかりになってたしな。

マリアには米と甘酒を出すし、代わりにタープにはBLTサンドとカリカリベーコンでも添えてやるか。

……やけに品数が多くなったが本当に今日は手間が掛からない物ばかりで良かった。




「さて、夕飯も終わったし風呂にでも入るか」

「ンナー」

「ヒャー」

……こいつら、たまには他の誰かと一緒に入らんのか?

まあいいけど。

「あ、お兄ちゃん……お風呂なら今サーマさんとマレスちゃんが入ってるよ」

「そうか、なら後にしよう」

危なかったな……あやうくサーマの一撃で挽肉にされる所だった。

なら明日マリアが飲む甘酒でも仕込んで……いや、あれば子供達も飲むだろうし鍋一杯に作ろう。

「所でお兄ちゃんに聞きたい事があるんだけど?」

「唐突だな、俺に解る事なら何でも答えるぞ」

鍋に大量の酒粕と水を入れて火に掛ける、と。

可愛い妹が何か見覚えのある古い紙を持って……ん?

「これ、英語だよね?それも牧場長みたいな特徴的な書き方……」

あれはあのピットメンバー達の遺言……何で可愛い妹が?

あ、そういや簡単に見付からない様にって車にしまっておいたんだった!

そうか、針金を持って来て貰った時に見付けてしまったのか!

「その反応……やっぱりジョニーさん以外の皆も来てたんだね」

「気付いてたのか?」

「話を聞いた限りじゃダニエルさんも来た事があるんでしょ、それにジョニーさんやお兄ちゃんが居るなら他のメンバーがこの世界に居たっておかしくないよ……昔か今か、もしかしたら未来かもとは思ってた」

そうか、考えてみればトゥール様もこの世界に来る迷い人は何故か料理が上手いとか言ってたしなぁ。

俺ごときが来れたぐらいだ、他のメンバーなら確実と言ってもいい。

「……黙ってた理由もこれにはお兄ちゃんに対する遺言しか書いてないから、でしょ?」

「……加えてジョニーさんの指示でもある」

「何となく察した、でも中途半端は嫌だから何て書いてあったのかを教えて」

可愛い妹よ、日本に居た頃に英語だけはちゃんと勉強してくれとあれほど言っただろ。

牧場長の字はちょっとやそっと習った程度じゃ読めんけど。

だがこうなると教えるしかない、か。

スマンなジョニーさん、約束は破らざるを得ない。




「そっか……羊肉を料理したがって、マスタードやローズマリーを探してたのはこれが理由だったんだね」

この際だからシェラフの爺さんがスコッチさんだった事や実は全員2度目の転移だった事も話してしまった……

許せよジョニーさん、拳骨30発までなら甘んじて受けるから。

おっとアルコールも飛んだし砂糖と塩、ショウガの絞り汁を加えて溶かして……よし。

「ねえ、皆のお墓ってあるのかな?」

「……解らん、それについてはジョニーさんも教えてはくれなかった」

それは来月……貝を生でやりに行く際に聞いておこう。

クソ両親の供養をする気は全くないが、あのピットメンバーの冥福は絶対に祈らねばならん。

だがまずは明日の物々交換を済ませてからだ。
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