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第12話:風雲児あばれ旅
#00
しおりを挟むこの頃、皇都惑星キヨウは荒廃していた―――
約百年前に起きた、星帥皇継承を巡る有力貴族間の武力内紛、いわゆる『オーニン・ノーラ戦役』ではヤヴァルト星系が戦場となり、その戦火は惑星キヨウにまで及んだ。
しかもその復興が完了しないまま三年前、ミョルジ家の侵攻を受け、事実上の支配下に置かれると復興もほとんど行われなくなり、放置状態である。
しかしそんな中でも、直径三十キロメートルにも及ぶ星帥皇府、『ゴーショ・ウルム』とその周辺だけは、優先的に修復されて煌びやかであった。
その『ゴーショ・ウルム』の中心部、全銀河のNNL(ニューロ・ライン・ネットワーク)の中枢である、HMR(ハイエスト・マスター・ルーム)で、座禅と同じ姿で座っているのが現星帥皇テルーザ・シスラウェラ=アスルーガだ。
この部屋ではNNLを通して、全銀河の情報が、テルーザの頭の中に流れ込むようになっている。そのすべてと一体化し、情報の海と融合した自らの意識を、銀河皇国の施政に反映させる事が出来るのが、星帥皇となった者の特権だった。
そしてそれとは別に、テルーザの前には星帥皇の決済を必要とする、認定証類らのホログラムが横一列に並んでいる。各直轄地を統治する貴族からの申請だ。
NNLとの融合接続を切り、瞑想状態から戻ったテルーザは瞼を開く。碧の双眸で一列に並んだ申請書類を見ると、無表情のままあくびを押し殺し、中身も確かめもせずにサーッ…と指先を滑らしてホログラムに触れ、認証を与える。
“どうせ、飾り物の星帥皇だ…”
皇都を占領したナーグ・ヨッグ=ミョルジに祭り上げられただけの、実力無き星帥皇の座…それを選択したのが自分であったとしても、やはり虚しい。
仕事はこれで終わり、と立ち上がったテルーザはHMRを出ると、外で待っていた侍従に命じる。
「今日も略奪集団の討伐に出る…私の『ライオウXX』を用意せよ」
皇都を荒らす、他星系からやって来た略奪集団の乗るBSIユニットを、自分の専用BSHO『ライオウXX』で討伐する。天才的パイロットのテルーザが、このところ没頭している趣味だった。
ただ…テルーザが中身を確かめもせず、無造作に決済を行った書類…そういったもの中に、アルーマ天光閣の『オ・カーミ』を苦しめている、立ち退き交渉代理人の認定証などが紛れ込んでいても不思議ではない………
▶#01につづく
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