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第四章 ありえないよね?不憫なのはハノエルだけじゃないのかも・・・
ヒャクジュウロク
しおりを挟む兄様はもったいつけるでもなく、ただただ言いづらそうに話し出した。
「でね、ハル。その、赤ちゃん云々なんだけどね?」
「……ん。」
「その……物凄くいい辛いんだけども……。」
もしかして、もうできてしまった?
嫌だ。
それとも兄の子もできなくされてしまうくらい、胎が駄目になったとか?
でも……覚悟は決めよう。
そうだよ……最終的には離れれば……。
離れずに済むって思ったけど、やっぱりアイツの子がいたら別だから……。
「……ハルのここには、命が宿ってる。」
腹を優しく撫でらて告げられたことに、息がとまる。
代わりに止まったはずの涙が溢れ出す。
「あ、ああ、ごめん。後、誤解しないで……俺のいい方が悪かった!
すまない。」
相当焦ったのか、一人称が『俺』になってる。
誤解?
違うの?
『ごめんね。』と沢山のキスをくれる。
「実はね。初めての夜に……胎に命が宿ってて……安定して命が生命に変わるまで時間がかかるし……ハルは幼いから、もしかしたら育たない可能性もあって……第二種の……妊娠は個人差がありすぎてね……何というか、はっきりしないんだよ。
ただ、できたのが分かるのは『サーチ』スキルレベルが高い医師くらいしかいないから。
私も半信半疑だったんだよ?
だって、ハルは……『精通』もまだだったし……未だにないでしょう?」
真っ赤になって頷く。
そう、未だにない。
でも、兄様の子?
いるの?
ここに?
動かない手を無理やり動かして、お腹になんとか手をあてた。
当てることができた。
すると、中からトクリと伝わってきた。
「ハルは魔力視が出来る様になったのだろ?
まだ、見えない?」
魔力視。
伯母様に教わった。
「アズリアが既に『生命』として息づいているから……そろそろ母であるハルなら魔力視で見れるんじゃないかな?って……といっても、ハルがもう少し落ち着いたら話す気だったんだけど。
気に病んでしまうなら、知っちゃった方がいいよね?」
「……この子は、汚されてない?」
あの汚い汚物のような魔力に……。
「大丈夫。ハルの力なのか、それともその子の力なのかな?
アズリアがいうには、胎には一滴もアイツの魔力は入ってないそうだよ。」
兄は魔力って言ったけど、胎の中まではアイツの精は入ってないってこと?
奥に出されたような感覚があったように思うんだけど。
薬でおかしくなっていたから、細かくまでは覚えていない。
ただ、犯されることを身体が悦んでいたことを覚えているだけ……痛みをも悦んで……。
「ハル。兄様をみて?」
「兄様、でも……。」
「ねえ?ハル、ハルと私の子はとても強いらしい。
本当なら、『命』はとても儚いもので、『生命』に変わるのは本当に難しいんだって、知っていた?
『生命』に変わった後にしか、存在がわかりにくいから、第二種は出来やすいし、凄い子が生まれるっていわれるんだよ?
そう、強い子しか『生命』に進化できないんだって。
アズリアも『サーチ』のレベルが高くなって、ようやくわかるようになったって言っていたよ。」
強いの?
強い子なの?
トクリとまた何かを感じた。
魔力視をしでみる。
まだ、スムーズには出来ないけど、ゆっくりとお腹を見つめる。
小さな小さな……見逃してしまいそうなほど儚くみえる魔力を感じた。
こんなに儚いのに?
でも強いの?
「に、いさま、ちい、っちゃ、いよ?」
「ああ、魔力視出来たんだね?まだ、赤ちゃんの種だもの小さいよ。」
あたり前のように言われた。
「うーん、そこら辺はアズリアに説明してもらおうね?」
兄様もあまり詳しく聞いてないみたい。
うん、噛まずに喋れるようになったら質問責めにしよう。
ふふ、現金だな俺。
兄様との子がいるって……嬉しい。
そりゃいつかは…っては思ったよ?
でも、前世も今も男で、未知の領分。
怖くないって言ったら嘘になる。
だけど、兄様との子だって。
それだけで嬉しくなる。
「ああ、やっと会えた。」
「え?」
「笑顔のハルに。」
「に、いさま。」
「やはり、ハルには笑顔が似合う。」
「に、ぃ。」
――コンコン
と躊躇いがちに扉が叩かれた。
だれ?
「なあん。」
ヴァルが扉をカリカリと引っ掻き、甘い声を出す。
こんなことをヴァルがするのは、姉様か……セバスにだけのはず。
あれ?セバスは?
セバスはいつも気がついたら、忍者みたいにいるのに?
「リオーラか?」
「そう、ハルは?」
やはり、入ってきたの姉だった。
「ね、ぇ、さま。」
「ハル!……声出ないって。アズリアが……よかった。
無事で~~~。」
姉がへたりとベッドの脇で座り込み、泣き出した。
滅多に泣いたりしないのに。
それなのにがん泣だ!
「ね……さ、ま。」
「もう!ハルが拐われたって、ハルが大怪我したって、ハルが声でないって~~もう、すっごく心配したんだから~。」
うわーん!と泣いている。
すんごく泣いてる。
ヴァルが隣に座ってるけど、やれやれって顔で見てる。
……そこは慰めてあげて。
「ぶ、ディッジュ、ちょーらい!」
姉様、レディのお顔ではなくなってます。
頭のいいヴァルが、ティッシュを加えて姉に渡した。
「あでぃがどう。」
そして、思いっきり鼻を噛んだ。
「はあ、スッキリした!もう、心配したけど。ハルが無事で笑ってるから良いわ。」
俺、笑ってる?
意識せずに笑えた?
「ふふ、ハル。よかった。」
姉がそばにきて、チュッと頬にキスをくれた。
ああ、うん。
元の生活に戻れそうな、そんな気がする。
やっぱり、姉様は、悪役令嬢なんて似合わない。
絶対に天使だと思うんだ。
でも。
とても大事な人が気になる。
兄様とは違う意味で大切な人だから。
「にい、さま。せ、バスは?」
そう、聞いた時……兄と姉は悲痛な顔をしたのだった。
まさか……本当に?
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