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第五章 エルフの谷へ

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さて、聖剣探しのたびに出るとして……どこから出発しましょうか?

「どこから行きましょうか?」
「そうですね、この際、色々な国を回るというのはどうでしょうか?」

アンドリューがさまざまな国を見ることを提案する。
たしかに、それもいいわ。
あたしは、この世界の全てを知らなきゃいけない気がするの。

「それもいいかもしれないわね。
ジークン、あなたが決めるべきだと思うの。」
「な、なぜですか?」
「森の姫様が言っていたじゃない?あなたが進むべき先に望みがあるって。だから、ジークンが信じた道を行ったらいいと思うの。ついでに、魔物退治?みたいなことをしたらどうかしら?
あたし的には、マシロみたいな子を助けたいのだけど……そうするには、まだ力が足りないと思うのよね。」
「そうだな。一人二人は助けられても。何十人になれば匿う場所が必要だからな。」
「ええ、でも、『人』の『王族』は、信用できないじゃない?だから、まだ無理ね。」
「それは、エルフ族に頼んだらどうでしょうか?」
「エリちゃん?」
「エルフ族は、森の人には寛容ですし。ただ、助けてはくれませんが……。エルフの結界内に入れてもらえたら、人には破れないと思うのです。」
「そうなの?」
「はい。」

エリちゃんの言葉なら信じられるわ。でも、果たしてエルフがあたしたちを信用してくれるかしら?

「聖女である姉様の頼みなら聞いてくれるかもしれません。ただ、エルフの王のいる『エルフの谷』は、険しい道のりなんです。
僕も場所は知っていますが……行ったことはなくて。」
「でも、行ってみる価値はある。」
「はい。」
「どうする?ジークン。あなたがこのパーティメンバーのリーダーなの。あなたが決めなさい。」

そう、これは『勇者』の旅なのだから。

「俺が……。」

ジークンは目を瞑り、深呼吸を一度して目をあけた。
その瞳には強い決心の色が見えた。

「はい、では『エルフの谷』へ行きましょう!
俺は、この世界の未来にはすべての種族の力が必要に思うんです!」
「なら、決まりだな。」
「はい。」
「では、行きましょう。」

あたしたちは、『エルフの谷』を目指して旅をすることに決めた。


「行きなさるのですか?」

エイさんにそう聞かれて、ジークンが答える。

「俺は、この世界が好きです。だから、この世界のために頑張りたい。『聖剣』を見つけたいと思います。」
「そうですか、では、これはわしからのプレゼントです。」

エイさんがくれたのは、メダルだった。

「これは世界中の樹人族に、あなた方が『敵』ではないことを示してくれるでしょう。」
「ありがとうございます。」
「それと、聖女様であるサク様にコレを。」
「コレは?」
「わしにはわかりません。」
「え?」
「森の姫様に渡すよう言われただけじゃよ。」
「そう、ありがとう。森の姫様にもよろしく伝えてちょうだい。」
「はいな。……『聖剣』が見つかった暁にはまた、来てくだされ。」
「ええ、ありがとう。」

あたしがもらったのは、くるみのような木の実。
コレが何なのかは、わからないけど。なんとなく、大切なモノだと思うのよね。
あたしの勘がそういってるの。あたしは大事に空間収納マジックボックスにしまったわ。

「さあ、出発しましょう?」

こうして、アタシたちはトワイライの森を後にしたの。
次に目指すは、『エルフの谷』ね。
エルフの小さな森はあちらこちらにあるみたい。
でも、人には決して入ることができないみたい。
稀に森の人といわれる獣人も、暮らしているみたいだけど。
一度出たら戻れないのですって。
エルフにしかね。
エルフの王は、『エルフの谷』にいて、そこが最大の街らしいわ。
でも、エルフ以外入ることは出来ないっていうの。
門があって、そこを守るモノに認められたら……王に伝わるらしいのだけど。
エリちゃんも話を聞いただけみたいなのよね。

まあ、なるようになるわよ!


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